アジア動向年報
Online ISSN : 2434-0847
Print ISSN : 0915-1109
各国・地域の動向
2020年のタイ 政治的緊張に揺れるプラユット政権
船津 鶴代(ふなつ つるよ)塚田 和也(つかだ かずなり)
著者情報
解説誌・一般情報誌 フリー HTML

2021 年 2021 巻 p. 259-286

詳細

2020年のタイ

概 況

2020年のタイでは,2019年末に中国・武漢市で発生し,世界各地に広がった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止策が,年初から最重要課題のひとつに浮上した。2月には,野党である新未来党に下された解党命令をきっかけに学生・若者中心の反政府運動が組織され始め,7~11月には示威行動の急拡大により,1970年代以降の学生運動として最大規模の反政府デモに発展した。

陸軍出身のプラユット・チャンオーチャー首相は,2014年クーデタを主導した国家平和秩序維持評議会(National Council for Peace and Order:NCPO)による暫定政権を5年率いた後,NCPO体制の継承を掲げるパラン・プラチャーラット党(Phalang Pracharat Party:PPRP)に推され,2019年総選挙後の7月16日,正式に首相に就任した。しかし,新政権の不安定要素は多い。就任から半年で新型コロナウイルス問題と経済不況が発生し,2月から11月まで反政府運動に伴う政情不安に直面したうえ,政権内部の運営も不祥事や相次ぐ閣僚辞任で揺らいでいる。

経済面では,新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う世界的な経済活動の縮小により,外需が減退したことから,経済成長率は-6.1%と11年ぶりのマイナス成長に落ち込んだ。とくに,国内総生産や雇用に占める割合の大きい観光産業に対する海外からの需要が,第2四半期以降,完全に消失したことの影響が大きい。政府は,中小企業に対する金融支援や低所得者層向けの現金給付および消費支出補助などを機動的に実施して影響の緩和に努めた。しかし,経済不況の影響が長引くにつれ,分配政策がもたらす財政負担は増大している。東部経済回廊(EEC)などに期待される高度な産業クラスター形成もいまだ途上であり,本格的な経済成長路線への回帰には困難も予想される。

対外関係では,中国との関係強化の実績が積み重ねられた。一方で,米中間の安全保障問題と経済対立の深刻化から,大国の利益の狭間におかれたタイは政治的バランスのとり方を模索している。

国内政治

新型コロナウイルス感染症第1波対策の成功と年末の第2波到来

タイの新型コロナウイルス感染症拡大防止策は,第1波の感染者と死者数の少なさにおいて,アジア諸国のなかでも際立った成功例とされる。他方,ASEAN全体の年間経済成長率(-4.4%)を下回るタイの成長率(-6.1%)が象徴するように,国内の経済的ダメージは大きく,世帯の負債拡大や失業が社会問題化した。

1月12日,公衆衛生省はスワンナプーム国際空港に到着した武漢からの中国人観光客にタイ初の新型コロナウイルス感染者を確認した。これは,中国外で確認された感染者の世界初のケースとなった。その後19日には,武漢への渡航後,ナコンパトム県で入院治療していた73歳のタイ人女性が,タイ人初の感染者として報告された。公衆衛生省は,3月1日に新型コロナウイルス感染症を危険伝染病に指定し,内閣は3日に防疫総合対策計画を策定した。さらに25日,国内の感染者数累計が1000人を超えたタイミングで,政府が拡大防止のため「仏暦2548年(西暦2005年)非常事態における公務執行に関する緊急勅令」を適用した非常事態宣言を発出した。同勅令により各省庁に分散する法的権限が首相の下に集中し,首相が関連機関を取りまとめる「COVID-19問題解決センター」(Center for COVID-19 Situation Administration:CCSA)が設置され,素早い政策施行が可能になった。

同宣言に基づく国内向け措置の第1号として,(1)越境入国の管理,(2)感染リスクのある地域や施設への立入禁止や閉鎖,(3)CCSAの定めに応じた外出自粛や外出禁止,(4)営業可能な業種の指定,(5)県境を越えた移動禁止,(6)違反者への罰則,(7)集会禁止,(8)フェイクニュースの統制など,日常生活全般にわたる細かい措置が定められた。当初3月26日から4月30日までの期間限定で出された非常事態宣言は,その後もほぼ1カ月ごとの延長・更新を繰り返し,2021年3月現在,同宣言と緊急勅令第9条に基づく措置規定が国内で継続されている。

市民生活への影響が大きい措置では,3月26日から一部指定業種を除く民間施設の営業が禁止され,4月3日から全国に夜間外出禁止令(22時~翌朝4時)が出された。しかし日常生活に必要な商業施設(市場・飲食店など)の営業は5月3日から再開され,17日に条件付きで大多数の商業施設の営業も再び始まり,6月15日には夜間外出禁止令も解除された。

当初の対外的施策としては,内務大臣が伝染病法に基づき,3月12日から9月30日までの入国制限措置として(1)18カ国を対象とする到着ビザ発給の停止,(2)香港,イタリア,韓国に対するビザなし入国許可の停止を発表した。

さらに8月13日の閣議で,経済界が要請した経済対策の一元化を図るため「COVID-19経済対策センター」(Center for Economic Situation Administration due to the Impact of the Communicable Disease Corona Virus:CESA)が設置され,緊急経済対策をCESAのもとで進める体制が整備された(新型コロナ関連の経済対策は「経済」の項を参照)。しかし,各種経済対策の実施にもかかわらず,コロナ後の経済・社会問題が顕在化している。スアン・ドゥシット大学による2021年3月9~12日の調査では,コロナ後の負債増大を懸念する世帯は75.41%,失職者がいる世帯は69.96%,抑うつ感情による不調を訴える世帯は67.19%にのぼり,経済・社会面の不安が広がっている(Bangkok Post,2021年3月14日)。

2020年の新型コロナウイルス感染者・死者数統計をみるかぎり,タイでは同じASEANのフィリピンやインドネシアと比べて早期に感染防止策が進んだ。公式発表では,4月中旬から1日の新規患者数は30人前後に落ち着き,6月17日にテレビ出演したプラユット首相は,タイ人の助け合い精神を賞賛しつつ「タイはコロナに勝利した」と宣言した。その後6月から年末まで市中感染は抑制され続けた。公衆衛生省によれば,6月15日時点でそれぞれ3135人と58人であった感染者数と死者数は,12月末時点でも6884人,61人で推移した。

タイの新型コロナウイルス感染症拡大防止策の初期の成功について,世界保健機関(WHO)テドロス事務局長も第73回世界保健会議の場で言及し,タイ公衆衛生省が村落に保健ボランティア網を張りめぐらせてきた長年の努力や感染防止の一元的管理が,効率的な感染予防につながったと評価した。

しかし,2020年末には新型コロナウイルス感染症拡大の第2波が訪れ,状況は変わりつつある。12月11日,ミャンマー国境から入国した49人の感染が判明した。19日にはサムットサーコン県海産物市場でも548人を超えるクラスター感染が確認された。これを受けてプラユット首相は,非常事態緊急勅令第9条に基づく集会禁止などの緊急措置を発動した。今後,国境地域を中心に爆発的流行が生じる可能性も考慮し,感染拡大防止策の徹底や外出禁止措置に伴う経済対策の策定などが急がれる。

反政府運動の拡大と憲法改正の要求

2020年2月21日,憲法裁判所は,都市部の若者を中心に支持を集めていた新未来党(Future Forward Party)に解党判決を下し,さらに党執行委員16人に10年間の被選挙権停止を言い渡した。判決の理由は,タナートン党首による党への貸付金(1億9100万バーツ)が1000万バーツ以上の個人献金を禁じた政党法に違反するというものであった。このほか,憲法裁には元国家オンブズマンのナタポン弁護士が,新未来党の党是に「国王を元首とする民主主義統治」が掲げられていないことを理由に,「国王を元首とする民主主義体制」転覆を意図している,として解党審理を申請したが,この申請は退けられた。

新未来党は,自動車部品企業タイ・サミット・グループの元副社長タナートン・ジュンルンルアンキットが2018年3月に立ち上げた新興政党である。同党は,2019年3月の総選挙でタクシン元首相を支持するタイ貢献党とは異なる立場から軍政に対峙し,バンコク都や中部,地方都市の若い世代の支持を得て第3党に躍進した。また新未来党は,学生による反政府運動に先立ち,2019年12月に野党合同で2017年憲法の改正審議を下院に求めており(2017年憲法については後述),実質的に軍政を継承した政権に退陣を迫る急先鋒でもあった。解党判決後は,少数政党であった「前進党」に議員54人が移籍し,新未来党の理念を引き継いで現政権への追及を続けている。

2020年半ば,新聞社インタビューに答えたタナートン元党首は,「2006年クーデタ後の政治対立の根源は,軍政と軍の権力維持を目的としたクーデタ,憲法,王室の権威を借りたクーデタ承認システムにある」と明言した(Matichon Weekly,2020年6月26日)。さらに自身は,1932年立憲革命を成立させた「人民党」(Khana Ratsadon)が唱えた立憲主義の確立を目指し,国会外で「進歩派運動」を展開するとした。

各地の大学生や若者は,新未来党に解散命令が下された直後から,散発的な抗議集会を開き始めた。実際,2006年のタクシン政権追放以来,司法による政党解散は6度目となり,抗議集会では対抗勢力の排除に躍起となる軍事政権と司法機関への批判が展開された。抗議活動のリーダーは,「軍や枢密院の政治的干渉のもと,エリートによるエリートのための政権交代の手段として,選挙と等しくクーデタを用いる『タイ式民主主義』」(玉田芳史・船津鶴代編『タイ政治・行政の変革1991-2006年』アジア経済研究所,2008年,6ページ,351ページ)を批判し,政治改革なしに,長引く社会分裂と経済低迷からの脱却はできないと主張した。このように,新未来党の元党首と学生・若者主導の運動理念には共鳴しあう関係がみられる。しかしタナートン自身は保守層から「体制転覆の扇動者」と攻撃される事態を避けるため,デモや学生団体との表立った接触から距離をおき,共通する理念の支持者というスタンスを示している。

表1のとおり,当初タマサート大やチェンマイ大の学生を中心に始まった反政府運動は,新型コロナ禍の学校閉鎖期間中にソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を通じて賛同の輪を広げ,7月18日にはバンコク民主記念塔前に数千人のデモ参加者を集めるまでに活発化した。7月までの「解放青年団」ら反政府運動の要求は,(1)政治的自由の保障(王室への不敬罪を定めた刑法典第112条廃止を含む),(2)2017年憲法改正(後述),(3)現政権退陣の3点に絞られていた。しかし8月に入ると,3日に行われたアーノン弁護士による君主制批判を端緒に,10日のタマサート大学構内集会で,政治的禁忌とされてきた君主制改革の要求を「タマサート学生会」が掲げ始めた。この要求は社会に波紋を広げ,王制護持派が7~8月に反対集会を開始したことから,多くの識者や政党人は1976年10月の「血の水曜日」における学生襲撃事件の再来を恐れ,若者を暴力から守る必要性を訴えた。

表1 2020年反政府運動の主な出来事と要求(2020年2~12月)

(出所)新聞,青木まき「立ち上がるタイの若者たち――『法の支配』の実現を目指して」『IDEスクエア』2020年,などから筆者作成。

タマサート学生会が掲げた君主制改革は以下の10項目である。

  • (1) 国王を不可侵の存在とする憲法第6条の廃止。

    (2) 不敬罪を定めた刑法典第112条の廃止。

    (3) 王室財産法の2018年改正見直し(国王の意思により王室財産管理局の資産処分を可能とした改正の取り消し)。

    (4) 王室に配分される国家予算の見直し。

    (5) 法改正により王室直轄とされた王室警護の軍・警察組織の原局復帰。

    (6) 王室・関連財団への寄付の慣習廃止。

    (7) 国王の政治的発言の禁止。

    (8) 王室中心の広報活動や教育の見直し。

    (9) 王制批判・不敬罪に係る過去の暗殺事件の真相究明。

    (10) クーデタ後の政権に対する国王承認の取りやめ。

    (出所)Prachatai English(https://prachatai.com/english/node/8709).

以上のうち,(2)~(6)は王室関連制度の透明性を求めたものであり,(10)は「タイ式民主主義」の核心部分である王室によるクーデタ承認の慣行を断ち切ろうとする提案であった。1990年代の「タイ式民主主義」において,軍と民主化運動の仲裁者として機能した王室は,2006年クーデタ以降,政変を認める当事者の一部に位置付けられ,反政府運動が公然と改革を求める対象に転じている。

反政府運動は,8月17~18日には,全国14県の中等学校に飛び火し,中高生が国家斉唱から始まる朝礼の場で白リボン(抵抗の象徴)を着け,左手3本指をあげた姿勢(映画『Hunger Game』にちなんだ独裁への抵抗のシンボル)で一斉示威行動をとり,その姿がSNS上で拡散された。9月19日には,「解放青年団」,「タマサート学生会」などが合同でデモを組織し,運動側が参加者15万人と発表した大規模デモが王宮前広場で繰り広げられた(表1)。同時期,プラユット首相は,8月4日に行われる予定だった憲法改正審議を11月に先送りしたうえ「学生組織は一部の党派的利益で動いている」と非難し,学生側の怒りを招いた。事態の拡大に為す術のない政権に世論も厳しさを増し,民間世論調査機関のスーパーポールがSNS利用者278万人を対象に9月に行った調査では,「現政権を支持しない」(44.3%)が「現政権を支持する」(21.7%)を上回る結果を示した(Krungthep Thurakit,2020年9月28日)。

その後10~11月にかけては,「人民党2020」の名の下に各運動組織がゆるい連合関係を築き,バンコク王宮前広場や民主記念塔,首相府前を中心に,反政府デモを連日繰り広げた。この運動が特定政党・政治団体によって組織化された運動ではないにもかかわらず,SNSを通じて参加者数が膨れ上がる事態に,政権側の危機感が強まった。SNSを駆使した2020年の反政府運動は,学生らリーダー層の一部が警察に拘束されても流動的かつ散発的デモを持続できる「フラッシュ・モブ」型抗議の形をとり,当初は当局の排除に抵抗せず,警察との衝突を避ける方針をとった。しかし10月14~15日の集会以降,デモの規模拡大が顕著になると,政府はバンコク都に重要緊急事態宣言による集会禁止令を出し(15日),警察による催涙ガス使用やリーダー層の逮捕・拘留が始まった。11月8日には警察の放水により5人が負傷,さらに11月17日の反政府集会ではデモ隊と警官隊が衝突し,催涙弾による負傷を含む負傷者55人を出す事態に至った。

情勢の緊迫化を受け,10月末にチュワン・リークパイ下院議長は臨時国会招集による改憲審議を決め,プラユット首相も運動側に譲歩して集会禁止令を22日に解除した。政府は,12月末までに改憲の課題を整理し,早期の国民投票実施を目指すことを約束した。他方,プラユット首相は11月18日に反政府運動リーダーに対し,刑法112条の適用を含む司法告発や起訴を辞さないと述べ,11~12月に運動組織の活動家やデモ参加者に対し不敬罪容疑による逮捕状を発行するなど,司法を通じた運動への圧力を強めている。さらに,12月中旬から新型コロナウイルス感染症拡大の第2波をうけて再び集会禁止令が出され,反政府活動は12月から2021年2月まで一時休止した。

2017年憲法改正の問題点

NCPO統治下で起草された2017年憲法には,総選挙後の政権をNCPOが継承しやすくする仕組みが内在化されている。具体的には,2022年までの5年間「NCPOの助言により国王が任命する上院」が設置され,上院の非民選議員250人と民選の下院議員500人を合わせた計750人のうち過半数(376議席以上)をもって首相を指名する仕組みが用意されていた。NCPOが国会の3分の1を占める上院議員を予め掌握し,その上院議員が首相指名に加わるため,民政移管後2期は軍出身の首相による政権が続く見込みである。しかも同憲法は,上院議員3分の1(82人)以上が賛成しない憲法改正を不成立にする第256条を備え,同条の改正には,国民投票の実施まで義務づけている。

野党や民主党は,2017年憲法の起草当初からこうした内容を鋭く批判してきた。憲法改正に向けた野党案は,(1)小規模政党に有利に設計された下院議員選挙制度(第90~93条)(2)上院議員の任命制(第270~271条),(3)上院議員の首相指名参加(第159条,第272条)の3つを主な改正点に挙げた。これに対して,学生など在野の反政府運動は,軍の政治介入の排除を求め,NCPOの布告,命令,行為を合法とする第279条の廃止を求めたほか,王室の地位に関わる第1条と第2条の修正にも言及した。しかし,実質的にNCPOの後身である与党が,審議において王室関連の制度改正要求に歩み寄り,現政権の存立基盤である第279条の廃止に応じる可能性は低い。これらの改憲をめぐる議論に先立ち,憲法改正手続きに高すぎるハードルを設定した第256条の修正変更が,与野党間では最初の難関になっている。

プラユット首相が改憲問題を喫緊の課題と認めた後,11月18日の臨時国会では野党のタイ貢献党と与党が提案した改正案2案の審議入りが決定された。報道によれば,(2)上院議員の任命制や(3)上院の首相指名参加については,廃止または修正の方針で合意の余地が生まれている。ところが,実際の手続きに関わる議論は難航し,タウィー・ソートン改憲審議委員事務局長が,同憲法の元起草委員を招聘し,困難を極める改正手続きを設けた理由を問い正した,とも報道された。

2020年12月17日までに5回開催された改憲審議委員会の議論は紛糾した。与野党は,第256条改正と憲法制定議会の設置に合意したものの,ほかの手続きに関わる論点(憲法制定議会の選出方法,抜本改正または一部条項改正,改正期間など)では合意に至っていない。今後,第256条改正と国民投票,憲法制定議会の発足・審議のプロセスを経て新憲法が発布されるまで,2年の歳月を要する見込みである。そうなると,憲法改正後の次期総選挙までに現政権の任期はほぼ満了となる可能性があり,反政府運動が求めた政権の即時退陣要求と起草過程の時間的隔たりが,新たな紛争の種となりえることも憂慮されている。

動揺するプラユット政権内部と世論の動向

国会外で学生中心の民主化勢力による政治の緊張局面が生じた一方,PPRPを中心とする連立政権内部も,不祥事や軋轢といった不安定要因に直面している。

年初1月の下院における2020年度予算案審議では,出席しなかった与党議員の代理投票問題が発覚し,国会議員174人がこの不祥事を憲法裁判所に提訴し審議をやり直した。もともと内閣発足が2019年7月にずれ込んだため,2020年度国家予算の成立は本来の執行時期から5カ月遅れ,2021年2月26日に歳出予算法施行となった。予算配賦の遅延は,EECやスマートシティ計画など数々の主要な政府投資計画の遅れを招き,経済不況下での不安材料のひとつとなった。

さらに7月には,PPRP党内の民選議員派と,非議員から閣僚に任命された党幹部の間で生じた閣僚ポスト争いを背景に,PPRP党創設を支えた主要閣僚7人が政権を離脱した。6月27日のPPRP党理事会選挙において,非議員の閣僚メンバーは理事を外され,党主要ポストに民選議員派を重用するプラウィット党首とアヌチャー幹事長が選出された。これを受けて,7月14日に2015年から各政権の経済政策を担当し続けてきたソムキット副首相が辞任し,さらに翌15日に経済・エネルギー関連ポストにあった6閣僚が一斉に辞表を提出した。加えて8月6日の第3次内閣では,プラユット首相の肝いりで経済復興を担う民間出身閣僚としてプリディ・ダオチャイ財務相(タイ銀行協会会長)が新入閣したが,就任から26日でPPRP党政治家と人事面で対立し,辞任した。後任には元運輸相アーコム・トゥームピッタヤーパイシットが就任して事態を収拾したが,与党内の激しいポスト争いを収めきれない政権の困難さが,一連の辞任騒動で露呈した。

このほか,2月24日から行われた首相と6閣僚の不信任案審議では,タイ貢献党ソムポン党首ほか野党陣営が,首相の非民主的言動を追求したほか,プラユット政権の大企業優遇策,首相の父が特定企業から利益供与をうけた土地取引疑惑,タイ中高速鉄道事業・コンドミニアム投資政策・潜水艦購入等における中国に対する行き過ぎた配慮などの問題を追及した。与党多数の議会では閣僚の不信任動議は可決に至らなかったものの,国内外の特定企業への利益分配に腐心する政権の実態が告発され,その後の利益供与問題に対する世論の関心は高まった。

しかし,年末に行われた世論調査によれば,国民の過半は,政治的混乱の有無にかかわらず2021年8月頃まで現政権が存続するであろうと予想している。国立開発行政大学院のNIDAポールが全国18歳以上,1326人を対象に12月24~25日に行った世論調査では,41.63%の回答者が2021年は2020年と同程度の政治的混乱が起こると予測し,35.30%は混乱が増すと予想した。さらに,回答者の54.15%は,現政権が1年後も国会に留まる可能性を予測し,13.12%が内閣改造を示唆した。これに対して国会解散(8.45%),プラユット首相の辞任(7.26%)を予測する回答は少数にとどまった。こうした観測が強まる背景には,スーパーポールが12月5日に行った世論調査において,80.5%がプラユット首相の後継として「適切な候補がみつからない」と回答したように(Matichon Online,2020年12月5日),現状の消極的肯定の心理も作用していると考えられる。

2006年以降のタイでは,「タイ式民主主義」を背景に,軍事クーデタによる政権樹立と路上の抗議活動による政権打倒が繰り返され,軍に対抗する政治・社会勢力に強い圧力がかけられてきた。その結果,議会制度や野党,社会運動の弱体化が進み,2019年に軍政の後身である現政権が成立した後,民選を基盤とした他の選択肢がみえにくい状況が続いている。ところが,若者中心の反政府運動の拡大やタクシン派と反タクシン派の対立が示すように,「タイ式民主主義」を受け入れてきた社会の価値観にも分裂の兆しがみえる。限られた政治的選択の問題とともに,出口戦略のみえない政争が政治・社会に不安定をもたらしている。

(船津)

経 済

11年ぶりのマイナス成長

2020年のタイ経済は,新型コロナウイルス感染症の拡大による世界的な経済活動の縮小によって,2009年以来11年ぶりとなるマイナス成長に転落した。通年の経済成長率は-6.1%であり,ASEAN地域全体の平均-4.4%と比較しても,相対的に大きな経済成長率の下落を経験した。

四半期別の動向をみると,経済成長率はすでに第1四半期から,対前年同期比-2.1%となった。これは,2019年の米中貿易摩擦やバーツ高による輸出の減少傾向を引き継ぐとともに,干ばつによる農業生産の低下が生じたためである。また,2020年度予算法案の上下院における成立が2月中旬にずれ込んだことも,政府支出の支えを欠き,経済が低調な滑り出しとなった一因である(タイの会計年度は10月から翌9月まで)。3月下旬,新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大を受けて,海外の渡航者に対する事実上の入国禁止措置と,国内の非常事態が宣言されると,経済は第2四半期にピークとなる-12.1%の減少を記録した。第3四半期と第4四半期は,防疫対策の成果に基づく活動制限の緩和,政府による経済対策の効果,さらに中国の経済回復を受けて,経済成長率は-6.4%と-4.2%となりそれぞれ減少幅を縮小した。しかし,すべての四半期でマイナスの成長率に陥ったことは,今回のショックが長期的なものであることを示唆している。

国内総生産の支出面をみると,もっとも大きな減少率となったのはサービス輸出の-60.0%である。外国人観光客数は,2019年の年間3980万人から670万人に大きく減少し,とくに第2四半期以降は実質的にゼロとなった。稼ぎ頭である海外からの観光収入を失った結果,サービス収支は大幅な赤字に転落している。同様に,民間総固定資本形成(-8.4%),財輸出(-5.8%),民間最終消費(-1.0%)もマイナスの成長率となった。ただし,財輸入(-11.9%)の減少が大きかったため,貿易黒字はむしろ拡大している。全体としては,民間需要の国内外における全面的な縮小に対して,政府の総固定資本形成と最終消費のみがプラスの伸びを示して経済を支える格好となった。第4四半期に民間最終消費がプラス成長に転じたことは明るい材料であり,政府の消費刺激策が一定の効果をもたらしたものと考えられる。

次に,国内総生産の生産面をみると,農業と非農業の経済成長率はそれぞれ-3.4%と-6.3%となった。農業は,第1四半期に大きく落ち込んだ。干ばつの影響は中部タイにおける乾季の稲作やサトウキビ生産でとくに大きく,全国でもコメの年間生産量は対前年比-13.2%の1766万トン,年間輸出量は-25.0%の567万トンにとどまった。非農業については,宿泊・飲食業(-36.6%)と運輸・保管業(-21.0%)が大きな減少率を示した。やはり,観光関連産業への打撃がもっとも深刻であったといえる。製造業は,第2四半期に急激に落ち込み,通年では-5.7%の成長率となった。主力の自動車産業は,年間生産台数が対前年比で-29.1%となる143万台,年間輸出台数が-30.2%となる74万台まで減少している。ただし,製造業の成長率は,第4四半期に-0.7%まで回復しており,同じ四半期に2桁のマイナス成長を続けている観光関連産業とは対照的な状況である。今後も異なる産業間では,回復のペースに差異が生じる可能性がある。

その他のマクロ経済指標をみると,消費者物価指数は-0.8%となり,需要圧力の弱さから物価水準の下落が生じた。一方,失業率は1.6%で,2019年の1.0%から上昇する傾向にある。経済見通しが悪化するなか,タイ中央銀行は2月から4月までの段階的な利下げによって,政策金利を史上最低水準となる0.5%まで引き下げた。一方,為替市場は年後半にバーツ高の基調が強まり,輸出産業にとって再び懸念材料となりつつある。経常黒字や外貨準備高の増加という構造的要因の下,海外からの資本流入が続いた。為替市場の動向は輸出や直接投資を通じて経済成長に影響を与えることから,政策当局は市場の方向性を注視している。

政府の経済対策

政府は,国内における新型コロナウイルス感染症拡大防止の措置を徹底する一方,経済活動の停滞にともなう影響を軽減するため,さまざまな対策を打ち出した。中小企業を対象とする金融支援,低所得者層向けの現金給付,消費支出への補助がそうした対策の中心である。タイ経済は外需に依存する割合が大きく,なかでももっとも深刻な低迷に見舞われた観光関連産業は,国内総生産と雇用のおよそ2割を占めている。経済対策の内容は,観光関連産業が多くの中小企業やインフォーマルな雇用を抱えている状況にも対応したものといえる。

対策の第1次措置は,3月10日の閣議で承認された。中小企業への金融支援を柱とする内容であり,この段階では,検討されていた低所得者層向け現金給付は見送られた。対策の中身は,政府貯蓄銀行が商業銀行に貸出原資を供給して実施する1500億バーツの低利融資,債務の元利返済に関する猶予措置,所得税や社会保険料の時限的な引き下げ,などの包括的パッケージであり,政府の財政負担は総額4000億バーツとされた。

第2次措置となる対策は,低所得者層向けの現金給付となった。非常事態宣言と前後して,商業施設の閉鎖命令などで一時的に職を失った労働者のうち,社会保険に未加入,または社会保険に加入しているものの失業給付の受給資格がない者を対象とした所得補償である。月額5000バーツを3カ月間給付するものであり,対象者は約900万人となる。これによる財政負担は1350億バーツと見積もられた。

第3次措置となる対策は,もっとも大規模なものとなった。4月7日の閣議で決定された対策の内容としては,第1に,タイ中央銀行が5000億バーツの貸出原資を商業銀行に供給して行う低利融資が挙げられる。この融資でも,中小企業は一定の条件のもとで元利の返済が猶予される。第2は,同じくタイ中央銀行が社債流動性安定化ファンドを通じて,最大4000億バーツを債券市場に供給するものである。これは,社債のロールオーバーを容易にするための措置として実施された。最後に,政府は1兆バーツの借り入れを行い,そのうち(1)6000億バーツを国民の救済措置や医療支援に,(2)4000億バーツを雇用創出,地域のインフラ整備,消費刺激などの経済復興に充てることとなった。国民の救済措置には,月額5000バーツの支給を3カ月間から6カ月間に延長するという内容も盛り込まれた。また,4月28日の閣議では,復興予算の4000億バーツを用いて農家にも月額5000バーツの支給を行う方針が追加決定された。対象となる農家は1000万世帯にのぼる。さらに,9月16日に開催された,新型コロナ経済対策本部の全体会合では,低所得者層を対象とした国家福祉カードによる既存の現金給付に関して,3カ月間にわたり月額500バーツを増額することが決定された。政府によるこの1兆バーツの借り入れにより,公的債務残高の対GDP比は57%まで上昇することとなり,上限規定である60%に接近する状況となった。

中小企業を対象とする金融支援,低所得者層向けの現金給付策に続いて,経済復興の足掛かりとなる消費刺激策も導入された。ひとつは,9月16日に決定された「コン・ラ・クルン」と呼ばれる政策である。これは,官製の電子決済システムを通じて,登録店舗における支出額の50%を国が負担するものである。補助は1人1日150バーツを上限とし,総額3000バーツまで受けられる。また,10月12日の閣議では,1人最大3万バーツまでの消費支出を所得控除できる,「ショップ・ディ・ミー・クーン」と呼ばれる政策も導入された。消費者は付加価値税(VAT)登録された商店で財・サービスを購入して領収書を保管する必要があり,中高所得者層に向けた消費刺激策であると考えられる。

政府の経済対策は,ショックの影響を軽減するため,中小企業および低所得者層への緊急措置として始まり,その後,経済復興を目的とする消費刺激策などの政策に重点を移行していった。年の比較的早い段階から後半まで,機動的に対策が実施され,政策のカバーする対象者も広範に及んだ。この背景には,現金給付や消費支出補助に関して,オンライン申請やアプリの利用など,既存の枠組みがすでに存在していたことも大きい。不正な申請なども指摘されたが,政策の実施はスムーズであったといえよう。逆にいうと,政府による補助を必要とする層がショック以前からかなり存在していたことを意味する。そのため,経済の低迷が長引くにつれて,補助政策の財政負担はますます大きくなり,持続性の観点から懸念が生じつつある。

経済復興と産業高度化への課題

軍政時からプラユット政権の経済政策は,低所得者層の底上げを通じた民間の購買力強化と,大規模なインフラプロジェクトと外国企業の投資による高度な産業クラスターの形成を2本の柱としてきた。こうした経済政策を理論的にも支えてきたのが,ソムキット副首相が率いる経済チームであった。連立政権内の対立によりソムキット副首相が辞任したことで,今後の経済運営には不透明性も増しているが,これまでのところ大きな方針転換はみられない。

高度な産業クラスターの形成という目標に際して,政権がもっとも力を注いでいるのは,東部3県(チャチュンサオ,チョンブリー,ラヨーン)にまたがる東部経済回廊(EEC)開発である。とくに,ドンムアン,スワンナプーム,ウタパオ(ウータパオ)の3空港連結高速鉄道の建設や,ウタパオ空港・臨空都市開発事業などが,主要なプロジェクトとして進展している。このうち,3空港連結高速鉄道の建設は,CPグループの主導する企業連合が工事を受注しており,2023年中の一部路線開業を目指している。ウタパオ空港・臨空都市開発事業については,地場の航空会社であるバンコクエアウェイズを中心とする企業連合との間で,6月19日に契約署名がなされ,開発が本格的に動き出した。ウタパオ空港の拡張工事により,旅客能力を2024年までに,年370万人から年1590万人にまで増強することを計画している。ただし,観光客などの旅客需要の落ち込みは深刻であり,回復にも数年の時間を要することが見込まれている。5月19日にタイ国際航空の経営破綻が決定したように,航空会社の経営はひっ迫しており,旅客サービスの供給能力拡張が,関連産業や経済に与えるメリットは,現時点では不透明である。

高度な産業クラスターの形成は,投資の減少によってもブレーキがかかっている。タイ投資委員会(BOI)によると,2020年の対内直接投資(申請ベース)は,対前年比-54%の2131億バーツにとどまった。国別では,日本が前年の2位から返り咲いて首位となり,中国が2位となった。内外からの投資申請額の合計は4811億バーツであり,投資奨励政策における業種別では,電子・電気機器(503億バーツ),農業・農産物加工(411億バーツ),自動車・自動車部品(378億バーツ)の順に大きかった。中国によるASEANへの生産拠点移転は足踏み状態となったが,中長期的には増加することが予想されるため,産業クラスター形成に与える影響が注目される。

タイの経済発展は,大規模なインフラ開発と海外からの直接投資が大きくけん引してきた。そこでは,新たな産業クラスターを形成するための,投資奨励政策が経済戦略の中心を占めてきた。しかし,経済発展が進むにつれ,新規の投資案件が経済成長に与える影響は徐々に小さくなってきている。また,人材育成にも時間を要することから,高度な産業クラスターの形成が期待通り進展しているわけではない。そうしたなか,近年,経済の成長セクターとなったのが,観光とその関連産業であった。しかし,観光関連産業は中小企業やインフォーマル雇用に依存している部分が多い。また,農業のように,政府の恒常的な保護が必要となりつつあるセクターも存在する。そのため,今後の経済復興においては,新たな産業クラスターの形成だけでなく,既存セクターの生産性を高める努力も重要だといえよう。投資奨励政策に加えて,労働市場における労働力の再配分や,労働者と企業のマッチングを改善するための政策などが必要になると思われる。

(塚田)

対外関係

中国:多層的な関係強化と情報・インフラ整備面の協力の進展

中国とタイの外交関係は,2014年クーデタ後に中国が軍の暫定政権支持を表明した後,多層的な関係強化が進んだ。2020年は,タイ・中国交樹立45周年記念行事も執り行われ,両国関係の深化を印象づける出来事が相次いだ。

年初の新型コロナウイルス感染症拡大時の1月30日,プラユット首相は李克強中国首相宛に感染による犠牲者を悼む書簡を発出した。7月1日には,タイ中間の国交樹立45周年に際し李首相に祝電を送り,加えて16日にも習近平主席と電話会談を行い,両首脳がタイ中間の友好関係継続を祝った。さらに10月14日,中国の王毅外相がASEAN諸国歴訪の一環でタイを公式訪問し,アメリカとの対立関係が長引くなか,中国の安全保障戦略に対する支持・理解を求めるとともに,今後の経済協力について協議した。

軍事面では,2017年4月の暫定政権期にタイ海軍が中国製潜水艦Yuan Class S26Tの第1期納入を非公開で決め,タイと中国の間で安全保障を視野にいれた新たな関係の始まりを印象づけた。しかし,緊急の新型コロナ対策を盛り込んだ2021年度予算審議(8月21日)において,残る第2期,第3期の潜水艦購入に225億バーツの予算支出が明らかになり,世論の批判が高まった。内閣は8月31日,中国製潜水艦2隻の購入計画を1年延期し,野党や世論の批判に譲歩した。

経済面でも緊密な協力関係の実績が積み重ねられた。2020年の中国からタイへの年間直接投資の実績額(申請ベース)は2131億ドルに達し,申請ベースで日本に次ぐ対タイ投資額を記録した。このほか情報通信技術の分野でも,中国の華為技術(ファーウェイ)社がラヨーン県第5世代移動通信システム(5G)特別区に関心を示し,この分野における存在感を高めている。さらに,インフラ整備計画の目玉事業であるタイ中高速鉄道バンコク=ナコンラーチャシーマー間2号線・3号線契約について,タイ政府が506億バーツの負担を了承し,10月にタイ国鉄と中国中鉄,中国鉄路設計集団の間で正式署名に至った。11月26日には同事業の工事請負会社との契約も終え,2025年の開通予定にむけてタイ中高速鉄道計画に実現の目途が立ち始めた。このようにタイ中間では,インフラ整備事業や各種事業投資計画の協力が進展し,官民レベルでの合意調整が急ピッチで進んでいる。

アメリカ:安全保障協力の強化と通商問題の浮上

2020年の対米関係は,安全保障面と通商面の課題が交錯し,複雑さを増している。安全保障面では,1月にコブラ・ゴールド多国籍軍演習にタイ軍から151人が参加し,アメリカとの同盟関係重視の姿勢を示した。2019年11月にはプラユット首相が「タイ米防衛同盟のための共同ビジョン宣言2020」に調印し,相互安全保障の関係強化を確認しており,「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)構想を軸にASEAN=アメリカ間の協力を進める方針が両国間で共有された。2021年1月に成立したバイデン政権も,引き続きアジア同盟国重視の姿勢を打ち出しており,タイの外交担当者はアメリカとの安全保障関係は基本方針において不変,との見方を示している。

他方,通商面では2019年来の懸案事項として,アメリカによる一般特権関税制度(GSP)の適用除外問題が浮上した。アメリカ通商代表部(USTR)は,2019年10月25日にGSPを適用したタイからの輸入品のうち,573品目を対象から除外する措置を通告し,2020年4月25日にこの措置を実施に移した。加えてUSTRは,アメリカの豚肉製品にタイ側が公正な市場アクセス権を与えていないと事前通告のうえ,タイ産品231品目(2019年対米輸出の8億1700万ドル相当)について新たにGSP適用の停止を官報に告示し(2020年11月4日),12月30日に2度目のGSP除外措置が発効した。タイの対米輸出実績に一定の打撃を与えるGSP適用除外は,今後も拡大する可能性が予想され,タイ商務省は新たな貿易市場の開拓を急務ととらえている。

多国間通商枠組みへの参加

主要先進国や中国,ASEAN間の国際通商枠組みが大きく変容するなか,外資・貿易に依存したタイは主要な国際通商政策の波に乗り遅れないよう準備を進めている。政府は11月10日の閣議で地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に署名することを承認した。今後2021年半ばのRCEP発効を目指し,国会承認と加盟15カ国間の批准手続きを推進する。他方,環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(TPP11/CPTPP)については,特別委員会が国内の農業・医薬品・保健衛生分野と貿易面への影響から時間をかけた利害調整(とくに大豆・豚肉・メイズ生産農家への救済策)と緩和策の準備が必要との結論に至っている。今後,バイデン政権発足に伴い,アメリカが同協定への参加交渉を再開する可能性もあり,タイは国内の救済策整備を含め,国の姿勢を明確化していく必要に迫られている。

反政府運動をめぐる欧州諸国との関係冷却化

2020年7月から11月に拡大した反政府運動に対する政府の強硬姿勢をめぐり,EU諸国や国連機関が人権と表現の自由を重視する立場から憂慮を示し,タイ政府との立場の違いが表面化している。12月18日,国連人権高等弁務官事務所はデモ参加者35人に不敬罪容疑による出頭要請や拘束を行ったタイ政府に,遺憾の意を示した。翌日,タイ外務省広報官が「デモ参加者への逮捕状は言論の自由の制限を意味するのではなく,タイ王室の品位を保つための措置である」と釈明した。しかし,政治的自由の理念をめぐる立場の違いが,EUとの貿易協定締結などに影を落とすことがないか,今後の関係が注視される。

2021年の課題

2021年のタイでは,引き続きプラユット政権と反政府運動との政治的駆け引きが最大の焦点になるだろう。「タイ式民主主義」への異議申し立てが強まるなか,軍の力を背景に成立した政権が,政権の維持と政治的自由や経済回復問題にいかに折り合いをつけていくのか,難題が待ち受けている。

政府は,2021年1月~2月15日に20件の不敬罪容疑による召喚を反政府運動リーダーらに行い,同運動を封じ込めようとする動きを顕在化させている。しかし,政府の権威主義的対応によって反政府運動が過激化すれば,政治・経済の混乱は増し,事態収拾にむけた道筋をつけることがより困難になる。運動を鎮静化させる憲法改正案を下院議会が約束どおりに提示することが,政局の安定を左右する一要因となろう。また新型コロナウイルスへの対応では,2020年末から拡大する感染第2波を食い止めつつ,政府が十分なワクチン量を確保し,広範な国民に予防接種の機会を提供することが重要課題である。

経済面では,新型コロナウイルス感染症の拡大を抑えながら,経済の復興を図ることが,引き続き最大の課題となる。世界経済の回復を,輸出や対内直接投資の増加に結び付ける政策は必要である。しかし,感染状況が落ち着き,外国人観光客の受け入れを全面的に再開するまでには,なお相当の時間を要する可能性がある。そのため,低所得者層や観光関連産業などで雇用される労働者への対応が継続的な問題となろう。

外交面では,国際貿易関係に新局面が発生しており,海外からの投資や輸出に依存するタイ経済の強化に向けて,市場開拓や多国間通商協力への積極的な取り組みが必要である。とくにRCEP発効とTPP11/CPTPPをめぐる国内調整が,当面の重要課題として認識されている。米中に対しては,両国間の安全保障面・経済面の対立が深刻化するなか,両国との政治的バランスに配慮しながら,分野ごとに舵取りの方向性を模索することになるだろう。

(船津:新領域研究センター)(塚田:開発研究センター)

重要日誌 タイ 2020年
   1月
1日天然資源・環境省,大手スーパーほかにプラスチック袋無償提供の廃止を要請。
5日マハー・ワチラロンコーン国王,スラユット大将を枢密院議長に任命(官報4日)。
5日多国間合同軍事演習コブラ・ゴールド(於ハワイ)にタイ軍151人参加(~22日)。
7日日本の茂木外相,来訪。外相会談後にプラユット首相を表敬訪問。
7日内務省,全国14県69郡を重度の干ばつ被害地域に指定。
8日大気汚染情報アプリ,バンコクのPM2.5濃度を世界ワースト3位と報告。
11日2020年度予算法案,下院第3読会を通過。
12日スワンナプーム空港で中国人観光客の新型コロナウイルス感染症患者を確認。
19日公衆衛生省,タイ人初の新型コロナ感染者(武漢に渡航した73歳女性)を確認。
21日内閣,ナラティワート県での移動閣議で南部経済特区を承認。総額190億バーツ。
21日内閣,バンコクにおけるトラック運行規制などを含む大気汚染問題対策を承認。
22日下院の予算法案採決(11日)における代理投票問題が発覚。与野党議員174人が法案の有効性について憲法裁判所に提訴。
30日プラユット首相,中国に新型コロナ感染の犠牲者を悼む書簡を送付。
   2月
5日タイ中央銀行,政策金利を0.25%引き下げ,年1.00%に変更。
8日ナコンラーチャシーマーのショッピングセンターで銃乱射事件,死傷者88人。
14日2020年度の予算法案が上下両院で再可決され成立。総額3.2兆バーツ。
16日国家放送通信委員会(NBTC),5G用の3周波数オークション実施。5事業体が48ライセンスを取得。
19日ドーン外相,メコン-ランツァン協力外相会議出席(ラオス首都ヴィエンチャン)。
21日憲法裁判所,党首からの貸付金問題で新未来党に解党命令。チェンマイ大とタマサート大で学生が抗議集会。
21日国家経済社会開発評議会事務所,2020年国家戦略計画の現状をセミナー報告。
24日下院議会で6閣僚不信任案を審議(28日に6閣僚を信任)。
25日内閣,干ばつ被災農家への支援を承認。総額31.2億バーツ。
29日ナラティワート県バチョー区で軍トラック爆破事件。死亡1人,負傷5人。
   3月
1日公衆衛生省,新型コロナウイルス感染症を危険伝染病に指定する省令を施行。
3日内閣,防疫総合対策計画を決定。
9日タイ証券取引所の株価指数,アジア最大の下落幅を記録。
10日内閣,新型コロナ問題の影響を軽減するため総額4000億バーツの景気刺激策を承認。低所得者層向けの現金給付は見送り。
11日ソムキット副首相,国家電気自動車政策委員会の第1回会合を開催。
18日新型コロナ感染防止のため,全国一斉休校(8月13日全面再開)。
20日タイ中銀,政策金利の年0.75%への引き下げを決定。
22日タイ民間航空局,全渡航者に医師の診断書提出を義務づけ。
24日内閣,インフォーマルセクター労働者への現金給付を決定。300万人を対象に月5000バーツを3カ月間。
25日内閣,新型コロナ感染症拡大防止のため非常事態を宣言(26日施行)。COVID-19問題解決センター(CCSA)設置。
25日公衆衛生省,タイの新型コロナ感染者数が1000人を超え,1045人と報告。
25日タイ国際航空,国際線全便の運航停止を決定。
31日政府,インフォーマルセクターの労働者への現金給付対象を900万人に拡大。
   4月
3日内閣,全国に夜間外出禁止令を発出。海外からの航空便乗り入れを停止。
7日内閣,追加の経済対策を決定。財務省が最大1兆バーツを借入。うち4000億バーツを雇用創出や消費刺激策に充てる。
7日タイ中銀,中小企業向け低利融資と債券市場安定化のため,9000億バーツの資金を供給。
14日プラユット首相,ASEAN+3特別首脳会議にオンラインで参加。COVID-19 ASEAN対策基金設立を提言。
14日内閣,新型コロナ拡大防止のためソンクラーン(タイ正月)行事延期を要請。
27日国家安全保障会議(NSC)ほか治安関連機関会合,非常事態宣言の延長を決定。
28日内閣,月5000バーツの現金給付を農家にも支給決定。対象は1000万世帯。
   5月
3日CCSA,日常生活に必要な商業施設(市場・飲食店等)の営業再開を許可。
10日進歩派運動,国防省ビルに「2010年5月19日の悲劇」の真相究明を求めるプロジェクションを映写。
17日CCSA,商業施設の営業再開を条件付きで認可。夜間外出禁止は23時以降に。
19日内閣,タイ国際航空への事業更生法適用を決定。
20日タイ中銀,政策金利を年0.5%に引き下げ。
   6月
8日タイ国鉄,バンスー中央駅を2021年1月に開業させる計画を公表。
15日CCSA,夜間外出禁止令を解除。非常事態宣言は継続を決定。
17日投資委員会(BOI),新たなアグロ・インダストリーへの投資奨励策を承認。
17日プラユット首相,タイはCOVID-19の抑制に成功したとテレビで「勝利宣言」。
19日東部経済回廊(EEC)政策委員会,ウタパオ(ウータパオ)空港・臨空都市開発事業契約に署名。
24日全国学生連盟,立憲革命記念行事を実施,バンコク民主記念塔にホログラム映写。
29日CCSA,7月から特定目的での外国人の入国許可緩和を発表。
   7月
1日プラユット首相,タイ中国交樹立45周年の祝電を中国首相宛てに送付。
14日ソムキット副首相,内閣に辞表提出。
15日ウッタマ財務相,ソンティラット・エネルギー相,スウィット高等教育・科学・研究・イノベーション相ら,内閣に辞表提出。
16日プラユット首相,タイ中国交樹立45周年に際し,習近平国家主席と電話会談。
18日民主記念塔で反政府デモ(数千人規模)。「政治的拘束の中止,憲法改正,政権退陣」を要求。
20日テワン首相府相とチャトゥモンコン労働相が辞任。
   8月
1日スラートターニー県サムイ島でフェリーRahca4が沈没。5人が死亡。
6日内閣改造によりプリディ財務相,スパタナポン・エネルギー相,スチャート労働相らの就任が官報に告示。
10日タマサート大学で「君主制改革10項目の要求」を掲げた学生が集会。
12日反政府運動体「解放人民団」,2原則(反クーデタ・反非民選政権)とひとつの夢(君主制を憲法下に)を発表。
13日内閣,経済対策管理のため新型コロナウイルス経済対策センター(CESA)設置。
16日民主記念塔前で学生主導の数万人規模の反政府デモ。憲法改正と現政権の退陣を要求。
17日チュアン下院議長,タイ貢献党の要請を受け,憲法改正に取り組む意向を表明。
17日全国14県の中等学校の朝礼で,中高生が白リボン着用と3本指をあげる姿勢で一斉示威行動(~18日)。
19日中高生による教育省前の示威行動。
20日1万人規模の反政府デモ行進。警察が強制排除し,指導者を逮捕。
24日プラユット首相,第3回メコン-ランツァン協力首脳会議にオンラインで出席。
25日刑事裁判所,レッドブル創業者の孫ウォラユット・ユーウィッタヤーに過失致死罪・ひき逃げなどの容疑で逮捕状発行。
28日マハー・ワチラロンコーン国王,シニナート妃に第2王妃の称号を回復。
31日内閣,中国製潜水艦2隻を225億バーツで購入する計画の1年延期を発表。
   9月
1日プリディ財務相,辞任(官報公示)。
5日反政府運動に加わった中等学校生が教育相と面会,教育カリキュラム改革を訴え。
11日ドーン外相,第1回メコン-アメリカパートナーシップ閣僚会議に出席。
12日第27回ASEAN地域フォーラム(ARF)オンライン会議,開催。
15日商務省,電子ゴミ輸入を全面禁止。
16日総額510億バーツの景気対策を閣議決定。消費支出助成や現金給付の上乗せにより低所得者層の購買力を支援。
18日2021年度予算法案,下院を通過。
19日王宮前広場で15万人規模の反政府集会。首相府への行進を断念し解散。
21日プラユット首相,第75回国連総会に録画ビデオで出席。
23日下院議会で憲法改正動議を審議。
28日CCSA,外国人入国規制緩和策を決定。「特定外国人の王国滞在特別許可」について内務省布告を発出(29日付)。
30日プラユット首相,国連生物多様性サミットに録画ビデオで出席。
  10月
1日国軍人事公布。
2日タイ警察,過失致死罪等の容疑者ウォラユットを190カ国に国際手配。
5日元運輸相アーコム氏の財務相就任が官報に告示。
10日デジタル経済社会相,Twitter社による陸軍関連926アカウント停止にコメント。
12日内閣,消費支出の最大3万バーツまで所得控除する措置を承認。
14日中国の王毅外相,公式訪問。安全保障や経済協力を外相間で協議。
14日10月14日事件と同日に「人民党2020」が1万人超の反政府デモを組織。民主記念塔前から行進し,首相官邸前に到着。
15日プラユット首相,バンコク都に重要緊急事態宣言を発出,集会を禁止。未明に14日の集会リーダー5人を逮捕。
16日タイ警察,パトゥムワン交差点に集まった反政府デモ隊に催涙ガス入り水を放水。
16日デジタル経済振興機構,タイランド・スマートシティ展示会開催(~22日)。
17日「人民党2020」,2万2000人を動員。全国17県で反政府集会。
20日特別観光ビザによる外国人観光客受け入れを再開。隔離施設における14日間の経過観察を義務づけ。
21日「人民党2020」,戦勝記念塔から首相府にデモ行進。
22日プラユット首相,反政府運動に譲歩し重要緊急事態宣言と集会禁止措置を解除。
22日サムットプラカーン県バンポー郡で送ガス管が爆発。3人死亡,66人負傷。
23日マハー・ワチラロンコーン国王,王宮前広場で国王支持者に直接声をかける。
26日学生リーダー,ドイツでの国王公務に関する調査を要求。国王はドイツへの出国予定を変更。
26日臨時国会召集。改憲の議論開始(~27日)。
27日ルンピニ公園で王室支持派(Thai Phakdi派)が大規模集会。
28日タイ国鉄と中国中鉄,中国鉄路設計集団,タイ中高速鉄道バンコク=ナコンラーチャシーマー間2号線・3号線契約正式署名。
  11月
1日マハー・ワチラロンコーン国王,欧米の記者に「タイは妥協の国」とコメント。
4日トランプ米政権,タイからの輸入品231品目について一般特恵関税制度の適用停止を官報に告示。
8日王宮前広場で首相辞任を求めるデモ。枢密院宛書簡を提示したデモ隊に警察が放水。
9日EEC事務局,ラヨーン県バーンチャーン郡に5G移動通信システム特区の設立を決定。
12日プラユット首相,第37回ASEAN首脳会議にオンライン出席。ASEAN感染症対策センター設立を確認(~15日)。
13日プラユット首相,ASEANビジネス投資サミットに録画で出席。アジア15カ国が参加する地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の合意に向け交渉。
14日プラユット首相,第12回日メコン首脳会議およびASEAN+3首脳会談,ASEAN・米首脳会議にオンライン出席。
14日世界保健機関(WHO)事務局長,タイを新型コロナ対策の成功例として,世界保健会議で言及。
15日第4回RCEP首脳会議開催。タイもRCEP協定に署名。同日,第15回東アジア首脳会議(EAS)開催。
17日内閣,新型コロナウイルスワクチン購入予算60億バーツの確保を決定。
17日改憲と首相退陣を求める反政府デモ隊と警察が衝突。55人の負傷者。
18日臨時国会(17日~)で憲法改正案第1読会。与野党提出の2案が承認,審議入り。
20日プラユット首相,アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に出席。
25日タイ首都警察,デモ指導者12人に対して不敬罪容疑で呼出状を発出。
26日運輸省,タイ中高速鉄道バンコク=ナコンラーチャシーマー間工事請負会社との契約に署名。
  12月
8日内閣,特別観光ビザ発給の対象を全世界向けにする方針に修正。
11日公衆衛生省,ミャンマー・ターチーレックから入国した49人が新型コロナウイルスに感染と報告。
14日エーヤワディー・チャオプラヤー・メコン経済協力戦略(ACMECS)首脳会議,開催。
16日プラユット首相,高架電車のモーチット=クーコット間延伸とゴールド線の開通式に出席。
18日国連人権高等弁務官事務所,デモ参加者に逮捕状を出したタイ政府に憂慮を表明。
19日サムットサーコン県海産物市場で548人の新型コロナウイルス感染者が判明。
20日6年ぶりの県自治体首長選挙実施。
24日CCSA,新型コロナウイルス感染症第2波発生。感染リスクによるゾーン制導入。
25日プラユット首相,非常事態緊急勅令第9条に基づく措置規定を発令。感染リスクのある施設を閉鎖し特定地域・施設の立入禁止,集会禁止などの措置を発動。
31日マハー・ワチラロンコーン国王,新年スピーチで「タイ人の美徳と見識によりコロナ禍を乗り切ろう」と国民に呼びかけ。

参考資料 タイ 2020年
①  国家機構図(2020年12月末現在)
①  国家機構図(続き)

(注)各省の大臣官房は省略。

(出所)官報など。

②  閣僚名簿

(注)カッコ内は軍・警察における階級。政党名は,PPRP(パランプラチャーラット党),PJT(タイ矜持党),DP(民主党),CTP(タイ国民開発党),ACT(タイ国民合力党),CP(国民開発党)。*は兼務。

(出所)官報を参照。

③  国軍人事
④  警察人事

(注)カッコ内は任命日。

(出所)官報および警察ウェブサイト。

主要統計 タイ 2020年
1  基礎統計

(出所)タイ中央銀行(http://www.bot.or.th/)。

2  支出別国内総生産(名目価格)

(注)2019年と2020年は暫定値。2015~2018年は修正値。国内総生産(生産側)-国内総生産(支出側)は統計上の誤差。

(出所)国家経済社会開発評議会事務局(https://www.nesdc.go.th/main.php?filename=index)。

3  産業別国内総生産(実質 基準年=2002)

(注)2019年と2020年は暫定値。2015~2018年は修正値。

(出所)表2に同じ。

4  国・地域別貿易

(注)EUはイギリスを含む28カ国の合計値。CLMVはカンボジア,ラオス,ミャンマー,ベトナムの合計値。中東は15カ国の合計値。

(出所)表1に同じ。

5  国際収支

(注)2019年と2020年は暫定値。IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。ただし,金融収支の符号は(-)は資本流出,(+)は資本流入を意味する。

(出所)表1に同じ。

 
© 2021 日本貿易振興機構 アジア経済研究所
feedback
Top