アジア動向年報
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各国・地域の動向
2020年のインド 新型コロナウイルス禍に苦慮するモディ政権
近藤 則夫(こんどう のりお)佐藤 創(さとう はじめ)
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2021 年 2021 巻 p. 459-490

詳細

2020年のインド

概 況

2020年のインド政治は,3月までは市民権改正法への反対運動で揺れた。移民問題に敏感なインド北東部諸州の学生,地元住民,あるいはムスリムを排除することに反対する学生,市民が反対運動を繰り広げ,警察や与党系団体と衝突した。反対運動はデリーなどで先鋭化したが,新型コロナウイルス問題で中断された。その新型コロナ問題に対してナレンドラ・モディ政権は,3月に全国的ロックダウン(都市封鎖)を実施した。しかし唐突な実施であったため出稼労働者など弱者層は困窮した。新型コロナ問題に加えて9月からモディ政権は,農業改革3法の立法に対する農民の広範な反対運動にも対処しなければならなかった。

経済に関しては新型コロナ問題で2020/21年度の成長率はマイナスとなることが確実である。厳しいロックダウン政策による影響がとりわけ大きかった産業部門は宿泊・飲食サービス,運輸・倉庫,建設などであり,生活という観点からは都市部への出稼労働者の苦境が著しかった。1年を通じてみると,農業部門はプラスの成長率を記録し,また新型コロナ禍の継続にもかかわらず外資の流入は堅調で,株価指数はロックダウン以前の水準を超えて活況を呈した。実体経済もロックダウンの影響から着実に回復している。ただし,新型コロナ禍による支出増などで拡大することが必至である財政赤字の影響,また新型コロナ問題に焦点があたり背景に退いていた不良債権問題や若年層の失業問題,さらには農業部門改革の政治問題化といった不安材料もまた年末にかけて前景化してきている。

対外関係に関しては6月に未確定国境をめぐり中国との武力衝突が発生し,インドは対応に苦慮した。パキスタンとは2019年以来の対立関係が続いた。アメリカとは良好な関係を維持している。

国内政治

市民権改正法をめぐる混乱

モディ政権は2019年12月に1955年市民権法を改正する「市民権(改正)法」(CAA)を成立させたが,市民の激しい反対運動で混乱が続いた。CAAはアフガニスタン,バングラデシュ,パキスタンから流入したムスリム以外の難民に対し,2014年12月31日以前にインドに入国し,帰化申請前に計6年以上インドに居住していたことを条件に市民権を与える法律である。政府が宗教的少数派の難民に市民権を与える措置をした理由は,彼らが難民となったのは迫害を受けたからと想定したためである(『アジア動向年報2020』参照)。

CAAへの抗議運動により混乱は北東部やデリーで広がった。北東部のアッサム州では2019年12月以来の広範な反対運動が1月も続いた。アッサム州インド人民党(BJP)州政権は州民に対して,同12月にさまざまな経済支援を約束し懐柔をはかった。2020年1月9日にも土地無しの地元農民への土地譲渡証明の発給,学生への財政支援,操業停止した工場の従業員に対する資金援助などを発表している。経済支援によって事態を収拾しようとする州政府の意図は明白であった。

アッサム州の場合,事態を複雑にしたのは「国民市民登録」(NRC)の実施である。同州には独立前から多くの移民が流入してきたこともあり,市民権の確定は複雑かつ大きな問題となってきた。そのため1951年にNRCが行われたが,1971年のバングラデシュ解放戦争時にベンガル人難民が大規模に流入するなど実態が大きく変化したにもかかわらず,NRCは更新されていなかった。市民権がはっきりしない大量の流入民の存在はアッサム州で土地や雇用,そして選挙での投票者名簿への登録などをめぐってさまざまな軋轢を生じせしめ,それが1980年代前半の暴力的な「反外国人運動」の原因になった。1985年に中央,州政府と全アッサム学生連盟との間で「アッサム合意」が結ばれ,1971年3月24日以前に同州に住み始めたかどうかをひとつの基準として市民権を定義し(法的には1955年市民権法にアッサム州に例外的に適用される条項が付け加えられた),不法滞在している移民の扱いが定められた。NRCの更新作業は2013年以降行われ,2019年8月末に最終版が発表されたが,約191万人が登録から漏れることとなった(『アジア動向年報2020』参照)。

この登録を拒否された191万に対しては登録拒否通知がなされ,通知を受けた者は120日以内に外国人審判所に申し立てできることとなった。決定に不満な者はさらに高裁,そして最高裁に提訴が可能だが,最終的に登録が認められなかった場合は拘留所に移される。しかし,このような手続きは新型コロナウイルスや洪水といった問題が相次いで発生したため,最終版発表から1年たった2020年8月時点でも,多くの場合,登録拒否通知の段階で停止している。

以上のNRCによる市民権の確定あるいは拒否は宗教を基準としないが,問題はCAAにより非ムスリムの移民が市民権を得る抜け道が生じうるという点である。CAAは,宗教や民族・部族が交錯する北東部諸州では,特別な入域許可制の対象となっている諸州およびメガラヤ,ミゾラム,トリプラ,そしてアッサムの部族民地域を適用外としたが,アッサムの非部族民地域は適用対象とした。そのためアッサムの非部族民地域ではNRCで市民権が拒否されても,非ムスリムの場合,CAAによって市民権が取得できる可能性が生じる。そのような抜け道は他の北東部諸州の不法移民も利用しうるものとなる。また一般的にCAAにせよアッサムのNRCにせよ,多くの人々,とりわけ社会的弱者層や女性は公的な書類を整えて出自を証明することが難しい場合があり,混乱が生じうる。アッサム州も含めて北東部諸州でCAAへの反対運動が広がったのはこのような背景がある。

一方,デリーなど大都市で反CAA運動が広がったのは,ムスリムをあからさまに排除しようとするモディ政権への反発が学生,市民,ムスリム住民などの間で広まったからである。デリーでの反対運動は2020年1月に入っても衰えをみせず,ジャミア・ミリア・イスラミーヤ大学やネルー大学など諸大学の学生や教員,市民グループなどが反CAA運動を繰り広げた。CAAと関係は不明だが,1月5日にはネルー大学の学生や教員が,右翼系とみられるマスクをした数十人の暴徒に襲撃される事件も起こり,学生,市民の不安をあおった。

2020年2月23日から激化したデリーでの反対運動は翌24日から反対派と警察や賛成派の暴力的対立となり,26日までには宗派間暴動の様相を呈するに至った。24日にトランプ米大統領が来訪しアーメダバード,アグラ訪問後,25日にはデリーでモディ首相との会談が行われたが,そのさなかにも北東部などで暴動が続いた。死者は42人に上ったとされる。デリー南東部のジャミア・ミリア・イスラミーヤ大学に近いシャヒーン・バグではムスリム女性の座り込みなどの抗議活動が,新型コロナの感染防止対策で解散させられる3月中旬まで続いた。

反CAAの動きは全国に広がり3月までに非BJP州政権のケーララ,西ベンガル,パンジャーブ,ラージャスターン,マディヤ・プラデーシュ(MP),テーランガーナー州で反対決議が行われた。運動は新型コロナ感染症拡大の影響で停止したが,アッサム州では北東部州の学生組織により「北東学生組織」が結成された。北東学生組織は,連邦上院を通過しCAAの成立が決定的となった前年12月11日を「ブラック・デー」として反CAA運動継続をアピールした。

新型コロナウイルスに苦慮するモディ政権

新型コロナはインドに大きなダメージを与えた。インド政府は1月に入り対応を急ぎ,28日には中国の湖北省から国民を避難させるためのプロセスを開始した。また,感染拡大防止のためすべての国を対象に発給済みのビザを3月13日から無効にした。これ以降,各地で感染例が報告され,対策として列車の運休,各州政府による集会禁止,ロックダウンなどより強い措置が漸次取られていく。3月24日時点では新型コロナ感染者数は562人,うち死亡は13人と犠牲者は比較的少なかったが,危機感を抱いたモディ政権は25日から4月14日までの全国を対象とするロックダウンを発令し,鉄道なども全面運休に入った。翌26日に政府は1兆7000億ルピーの新型コロナ対策を発表した(「経済」を参照)。ロックダウンは何回か延長され最終的に5月末まで続いた。

しかし全国的なロックダウン実施は準備も十分でなく唐突であった。そのため都市部の出稼労働者など経済的弱者層に大きなダメージを与えた。モディ首相は3月29日には突然のロックダウンで不便をかけたことに対して国民に謝罪した。雇用を失った出稼労働者は,ウッタル・プラデーシュ(UP),ビハール,MP,オディシャなど各州の出身村に帰村しようとしたが,州間移動が禁止され困窮に陥った。内務省はようやく4月29日に行き場を失った出稼労働者などに州間で移動する許可およびそのためのガイドラインを出した。列車とバスを含む公共交通機関での移動は引き続き停止されたため,中央政府は州政府が人々を帰還させる措置をとるよう求めた。そのため各州政府はバスを用意するなど対応に奔走した。しかし,政府の報告によると6月4日時点でも260万人の出稼労働者が立ち往生していた。出身の村に帰還した出稼労働者に対しては,雇用と所得を与えるため「マハトマ・ガンディー全国農村雇用保証事業」などが5月以降大規模に活用された。政府統計によると同事業による雇用供給は,6月,7月にそれぞれ6億4000万・人日,3億9000万・人日となり,前年同月の約2倍に達した。

全国的ロックダウンの経済的ダメージは大きく,政府は経済を回復させるため6月以降,ロックダウンを段階的に解除していく。しかしその後,感染は急速に拡大し,ピークの9月16日には1日の感染者が約9万8000人に上った。国会は予算会期が終わった3月23日から新型コロナのため長期にわたり休会となり,例年は7月に開かれるモンスーン会期が9月14日からとなった。この間,労働や環境関連法の立法が政府の政令によって行われた。政令は国会再開後,立法化しなければ失効するものの,政令の多用に対しては,政府は多くの法を非民主主義的な方法で通していると批判も上がった。

新型コロナウイルスの累積感染者数は2021年1月中旬時点で約1050万人,累積死亡者数は約15万人となったが,新規感染者数は2020年9月のピーク以降,減少している。2021年1月中旬に行われた血清有病率調査では,相当数の人々がすでに抗体をもっていることが明らかになった。デリーでは人口の5~6割が抗体をもつと推定され局地的に集団免疫が獲得されたのではないか,との楽観論もでた。デリーの新規感染者数は2021年1月には1日200人台にまで減少し,1日当たり死者数も大幅に低下した。新型コロナウイルスワクチンの接種も同1月16日から開始された。ただし,変異株の出現もありインド全体としてみると依然として予断を許さない状況である。

農業改革関連法をめぐる混乱

モディ政権は農民の所得を2022年までに倍増するという目標を掲げ改革を進めている。改革の特徴は最低支持価格(MSP)制度,各種補助金など従来の制度を維持しつつ,構造改革・自由化を目指すことである。具体的には農産物取引の自由化,契約農業や農地リースの推進などである。このような改革の流れはBJP率いる前国民民主連合(NDA)政権(1999~2004年)に遡る。

2003年に当時のNDA中央政府は,各州が改革のために参照すべきモデル法として「州農産物取引(開発・規則)法」を示した。従来,農産物取引は1960~1970年代に各州で作られた「農産物取引委員会」(APMC)法で州政府により強く規制されていた。APMC法は業者による農民の搾取を防止するため,州政府の規制の下で許可を受けた仲介業者としか市場での農産物売買を許さない制度である。しかし,それは農産物取引の自由化を妨げ,かえって農民がよりよい価格で農産物を販売する妨げになっていると批判されてきた。2003年のモデル法は,農民を保護しつつ農産物取引の自由化を進めるものであった。

また2018年,第1次モディ政権はモデル法として「州農産物・家畜の契約農業(促進・助成)法」を作成し,各州にこれに沿った立法を求めた。同モデル法は市場における価格変動のリスクを緩和しつつ農民を輸出業者や農産物加工業者など大量購入者と結びつけ,農民によりよい生産価格を実現するものとされた。

以上のような中央政府のイニシアティブにそって2020年5月15日にはBJP州政権のMP,UP,およびグジャラート,そして21日には非BJP州政権のオディシャがAPMCの独占的販売体制を迂回し一定の規制の下で取引の自由化を許す政令を出した。このような改革の機運を受けて連邦財務大臣N・シターラマンは5月15日に農民の権利を守りつつ農産物の自由取引を許し,契約農業を促進する中央立法を行う計画を発表した。それが6月4日に政令として出された「農産物商取引(促進・助成)令,2020年」「価格保証および農業事業に関する農民の合意(権利と保護)令,2020年」「1955年基本物資(改正)令」であった。

政令は時限的であり,モディ政権は国会が再開された後に立法化を行う必要があったため,9月14日に法案を連邦下院に提出した。法案は20日に連邦上院を通過したが,その際,副議長が強引に発声による採決という方法をとり賛否の数が不明のまま採択を行った。それに対して野党は強く反発し議場は混乱に陥った。これらの法案は27日に大統領の裁可を得て公布された。

農業改革3法に対して農民,とくに従来の独占的ではあるが安定した制度下で余剰穀物を供出し利益を得ていた農民は強く反発した。農民が恐れたのは,一定価格での政府買い取りにより利益を保証したMSP制度がなし崩し的に崩壊すること,そして,契約農業への大企業の参入により自分たちのバーゲニングパワーが低下し,農産物価格の設定などさまざまな面で不利益を被ることである。

3法案に対しては野党およびNDA内の一部はすぐさま反対を表明した。法案が連邦下院に提出された後の9月17日,NDA構成党でパンジャーブ州の農民の利害を代表するアカリー・ダルの連邦食品加工大臣ハルシムラト・K・バダルは,法律が反農民的であるとして抗議し辞職した。同党は26日にNDAから離脱した。

農民の抗議運動も広がった。9月24日以降パンジャーブやハリヤーナーでは列車停車運動やゼネストが行われた。農民運動と歩調を合わせて会議派州政権でも対抗措置が講じられた。10月20日,パンジャーブ州会議派政権は州議会で農業改革3法に対抗する立法を行い,同時に中央政府にMSP制度を守り,政府の農産物調達制度を継続する政令を出すように要求した。11月2日にはラージャスターン州会議派政権も同様の立法を行った。

11月に入ると農民運動はさらに拡大した。26日にはパンジャーブ,ハリヤーナーの農民は抗議行動として「デリーに行け」運動を開始し,多数の農民が行進を開始した。同日にはBJPと関係の深い労働センターを除く主要な労働組合センターが困窮する労働者の要求を掲げ,農民運動にも呼応して全国的ゼネストを組織した。デリー警察は当初は農民の流入を警戒したが,結局,農民を受け入れ,多数がデリー近郊に集結した。農民代表と中央政府の度重なる交渉は妥協に達していない。中央政府は法の部分的改正を提案したが農民は12月9日に拒否した。30日には,煙害を引き起こすと批判されている藁の野焼きを犯罪としないこと,電力補助金の支給に関して農民に不利になる可能性がある審議中の電気法改正案を,農民に不利にならないようにすることなどで合意に達したが,あくまで部分的妥協である。モディ政権はたびたびMSP制度は撤廃せず,農業自由化では農民の利益保護が法に盛り込まれていると説明し理解を求めた。しかし,農民は3法の廃止を求め交渉は膠着している。

デリー首都圏議会選挙における庶民党の勝利

デリー首都圏議会選挙は投票が2月8日,開票が11日に行われた。結果は前回選挙と同様に庶民党の圧勝となった(表1)。定数70議席のうち,庶民党は2015年選挙の67議席から今回は62議席となった。得票率は53.6%と前回の54.3%からほとんど変化はなかった。BJPの得票率は前回の32.2%から38.5%と増加したが8議席の獲得にとどまった。会議派は0議席であった。A・ケジュリワル率いる庶民党政権が大勝を収めた理由のひとつは2015年以来のガバナンス重視の姿勢である。庶民党政権は各世帯へ月2万リットルまでの飲料水の無料供給を実現するとともに,医療クリニック・ネットワークを拡充し,スラムの改善にも取り組んだ。また教育分野でも公立の学校の質の改善,私立学校の授業料の制限など庶民の評価に直結する事業に力をいれてきた。デリーではCAAへの反対・賛成をめぐり社会不安が高まったが,選挙戦には結果的に大きな影響は与えなかったといえる。BJPはモディ政権の成果を前面にだし選挙を戦ったが,大きな成果は得られなかった。2月16日に現職のケジュリワルは州首相に就任した。

表1  デリー首都圏議会選挙開票結果(2月11日) 定数70議席,投票率62.6%

(注)カッコ内数値は得票率(%)。

(出所)インド選挙委員会データ(https://eci.gov.in/)。

マディヤ・プラデーシュ州における会議派州政権の崩壊

MP州では会議派政権が派閥抗争から3月20日に崩壊し,BJP政権が成立した。MP州では2018年12月の総選挙で会議派が勝利し,カマル・ナートが州首相に就任した。しかし州議会(定数230議席)では会議派が114議席,BJPが109議席と僅差であり,BJPによる政権の切り崩しが懸念されていた。3月2日に同州の会議派国会議員D・シンは,BJPが会議派の州議会議員を買収しようとしていると非難した。会議派の懸念は現実のものとなり,非主流派のJ・シンディアが3月9日に造反を明らかにした。ソニア・ガンディー総裁など会議派中央はシンディアと妥協を図ろうとしたが,結局不調に終わった。翌10日にシンディアはモディ首相と面会後に会議派を離脱し,同時にシンディア派の州議会議員19人を含む22人の会議派議員が辞職した。シンディアは翌11日にBJP総裁J・P・ナッダなどの立ち会いの下BJPに入党した。

カマル・ナート政権は議会の信任を維持するため多数派工作を試みたが失敗におわった。BJPが州議会第1党となることが確実となり,カマル・ナートは3月20日にL・タンドン知事に辞表を提出した。23日にはBJPのS・S・チョーハンが州首相に就任し,4月21日に大臣5人を任命した。BJP州政府は新型コロナへの対応が最優先事項であると表明し,5月にはロックダウンによる出稼労働者の大規模な移動・帰還に対処した。

シンディア派のBJPへの参加は7月までに完了した。シンディアは6月19日にBJPから連邦上院議員に選出され,また7月2日には州内閣改造でシンディア派の9人を含む28人の大臣が新たに任命された。11月10日に開票された州議会28議席の補欠選挙では,BJPが16議席,会議派が5議席を獲得し,BJPは州議会での安定多数を得た。

派閥抗争によるラージャスターン州会議派州政権の混乱

ラージャスターン州でも州会議派の派閥抗争やBJPの揺さぶりで7~8月に州会議派政権が不安定化した。7月11日に州首相アショク・ゲーロートは,コロナ禍のさなかに会議派政権を不安定化させようとしているとしてBJPを非難した。ことの発端は会議派のゲーロート州首相と副首相のサチン・パイロットの間の派閥抗争の激化である。これは,2018年12月の州議会選挙で会議派が勝利した際に両者が州首相の座をめぐり対立し,党中央がゲーロートを選んだことに起因する。7月12日にパイロットは主流派からの離反を発表したが,翌13日には会議派州議員主流派がゲーロート州首相のリーダーシップに対する信頼を表明し,州首相は14日にパイロットを副州首相から罷免した。15日にゲーロート州首相は,パイロットはBJPと協力して会議派州政権を揺さぶったとして非難したが,これに対してパイロットはBJPに移る意図はないと釈明した。しかし,パイロット派と目された会議派州議会議員が中央政権のBJP閣僚と相談する録音が暴露されたことで,一連の派閥抗争にBJPの関与があったことは明らかであった。

事態は8月に入り収束した。8月1日にゲーロート州首相は,会議派中央が承認すればパイロット派を受け入れると態度を軟化した。状況が好転したのは中央の会議派指導部の迅速な介入があったからである。会議派中央はMP州での失敗に鑑み,迅速に説得を行った。それを受けて,13日にパイロット派の州議会議員は会議派に復帰した。翌14日には再開された州議会で政府に対する信任投票が行われ,パイロット派議員の協力の下信任を得た。

ビハール州議会選挙におけるNDAの勝利

2015年のビハール州議会選挙ではジャナター・ダル(統一派)[JD(U)],民族ジャナター・ダル(RJD),会議派,ナショナリスト会議派党からなる連合が勝利し,JD(U)のニティシュ・クマールが州首相に就いた。しかし,JD(U)はRJDとの対立から2017年7月に連合から脱退し,それまで対立していたBJPの支持を得て政権を維持した。クマール州首相は,NRCをビハールでは実施しないという態度を明確にし,CAAについても合憲性に留保をつけたように,BJPと利害関係が一致するわけではない。しかし,当時政権内でRJDとの決裂が決定的となったとき,政権を維持するためにBJPとの連携に踏みきったのである。

2020年州議会選挙はコロナ禍もあり,与党連合に不利とみられていた。ビハール州は貧困州でデリーやムンバイなど大都市部への出稼ぎが多く,コロナ禍で大きな影響を受けた。ロックダウンに伴い行き場を失った出稼労働者の多くはビハール州に送り返された。これに対してクマール州首相は3月28日,何千もの出稼労働者をビハールへバスで送り返す他州をロックダウンが台無しになると非難する一方,他州で足止めされている出稼労働者に対する食糧や飲料水などの支給支援を表明した。このような状況では選挙は難しいと7月10日にRJDは延期を求めたが,結局,投票は10月28日から3回に分けて行われることになった。

選挙戦はJD(U)とBJPなどのNDA連合に対して,RJD,会議派,3つの共産党からなる大連合が対立する構図となった。NDAに加わっていた人民の力党(LJP)はJD(U)との対立から離脱し,単独で選挙を戦った。11月10日の開票の結果,NDAが僅差の勝利を収めた。表2のように得票率合計はNDAが37.3%であったのに対して大連合は37.2%であったが,小選挙区制度の効果により議席数ではそれぞれ125,110議席となった。2015年前回選挙と比較すると得票率ではBJPが5.0ポイント,JD(U)は1.4ポイント減少したのに対して,RJDは4.8ポイント,会議派は2.8ポイント増加であった。BJPが最大与党となったが,州首相には選挙キャンペーンであらかじめ示されたように現職のニティシュ・クマールが就任することとなり,就任式が16日に行われた。

表2  ビハール州議会選挙開票結果(11月10日) 定数243議席,投票率56.9%

(注)政党/連合のカッコ内数値は得票率(%)。政党名略は以下のとおり。JD(U):ジャナター・ダル(統一派),HAM:ヒンドゥスターニー人民戦線(世俗主義),RJD:民族ジャナター・ダル,CPI(ML):インド共産党(マルクス・レーニン派),CPI:インド共産党,CPI(M):インド共産党(マルクス主義),AIMIM:全インド統一ムスリム評議会,BSP:大衆社会党,LJP:人民の力党。

(出所)インド選挙委員会データ(https://eci.gov.in/)。

(近藤)

経 済

ロックダウンとその経済対策

前年度(2019/20)の成長率は4.0%であり,不良債権問題に伴う貸し渋り等を一因とする投資需要の低迷や個人消費の伸び悩みにより,インド経済はすでに明らかに減速傾向にあった。この状況のなかで,2020年3月の新型コロナウイルスによるロックダウンという経済に著しい影響のある措置が実施された。政府は,3月中旬にかけて感染者が100人を超えて増えだすと,3月25日から21日間のロックダウンに踏み切った。その内容は非常に厳しいもので,食料品店や物流,金融などの生活必需部門を除き,店舗や学校のみならず官公庁や民間企業(工場を含む)も閉鎖され,鉄道,飛行機なども停止された。その後,5月には外出規制も徐々に緩和され,工場も再開されはじめた。しかし,ロックダウンは繰り返し延長され,感染ゾーンを区分けしつつ本格的な封鎖解除が開始されたのは6月に入ってからである。ただし,その後も9月中旬まで感染者数が増え続けるなかで,経済活動の再開を模索せねばならない状況となった。

実際,新型コロナ問題による経済への影響はインドでも甚大なものであった。ロックダウンの影響で4月には1億4000万人あまりが職を失ったと推計されており,とくに都市部の日雇いによる生計維持者は困難に陥った。周知のように,インドでは非組織部門の就業者が就業者人口のおよそ9割を占める。とりわけ影響が大きかった階層は,都市へ出稼ぎに出ている労働者とその家族である。鉄道やバスも運行停止となり,州間の移動や都市・農村間の移動も禁止されるなかで,生活の糧を失い数千キロを徒歩で移動せざるをえない人々が続出した。その数は数百万から数千万と推計されている。政府も5月にはこのような移動を認めざるを得ない状況となる。失業率も4月にはおよそ26%にまで増えたという推計もある。4月の輸入は対前年同月比で約47%,輸出は約37%減少した。9月初頭に発表された2020/21年度第1四半期(4~6月)の実質国内総生産(GDP)成長率推計値はマイナス23.9%と衝撃的な数値であった。その後,ロックダウンの解除が本格的に開始された6月には,失業率も10%台,7月には7%台にまで戻り,また,11月末に発表された第2四半期(7~9月)のGDP成長率推計値はマイナス7.5%であった。

ロックダウンに伴う経済活動の停止・停滞に対して,政府はもちろん経済支援対策を実施した。中央政府レベルと各州政府レベルの対策があるが,中央政府レベルの対策としては,以下の4度の対策が2020年中に発表されている。

まずロックダウン翌日の3月26日に表明された対策は,およそ1兆7000億ルピー,対GDP比で1%ほどの規模であった。これは,貧困層約8億人を対象とするコメ・小麦などの1人当たり5キログラムの3カ月間無償支給,約8000万の貧困世帯に対するガスシリンダーの3カ月間無料提供,そして貧困層女性約2億人を対象とする月500ルピーの3カ月間給付などの困窮者対策を柱とし,そのほか医療従事者や中小企業向けの支援も含む内容である。なお,翌日の27日に,インド準備銀行(RBI)は政策金利を緊急で5.15%から4.40%に引き下げるとともに,3兆7400億ルピー規模の金融システム支援を打ち出し,その後,4月中にもRBIは金融システム安定化のための施策を発表している。

次に,政府は,5月12日に「自立したインド」というキャッチフレーズとともに,約20兆ルピーの対策を打ち出した。対GDP比で約10%の規模である。ただし,この金額には先に表明された1兆7000億ルピーや,それまでに実施されたRBIの金融システム支援措置(累計約8兆ルピー)が含まれている。その具体的な内容として,中小企業に対する緊急の担保不要ローンや出稼労働者に対する配給支援,露天商等に対するローン提供,農業や漁業についてのインフラ整備支援などが順次発表された。さらに,防衛産業や鉱業,電力,民間航空などの分野における民営化や海外直接投資政策の変更を含む構造改革を盛り込んだ内容となっている。

その後,10月12日に,政府は「自立したインド2.0」として,7300億ルピー規模の対策を発表した。その内容は,インドで最も重要な祝祭であるディワリを前にした国家公務員に対する休暇旅行手当の還付や無利子の前貸し,また道路や防衛などに対する公共投資など,需要喚起策が中心である。

4度目の経済対策として11月12日に発表された「自立したインド3.0」は約2兆6500億ルピーの規模である。その内容は,雇用対策として新規に雇用された従業員分の社会保障費の政府負担,中小企業支援の緊急融資スキームの2021年3月末までの延長,農家を対象とする肥料補助金の支給などとなっている。そのほか,自動車・自動車部品,次世代化学電池,医薬品など10の主要分野に対する5年間の生産連動型インセンティブ,都市部での安価な住宅供給補助のための予算の追加,開発途上国への輸出促進支援,国内の防衛機器や産業インフラ,グリーンエネルギーに対する支出を含む。

マクロ経済の概況

以上のような経済支援策が,新型コロナウイルスによる世界的な経済活動の停滞やロックダウンに伴うインド経済への負の影響をどの程度緩和したのか評価することは難しい。まず,表明された金額が実際にどう用いられたかの全体像がまだ明らかではない。たとえば,5月に発表された20兆ルピーのパッケージのうち,3兆ルピーが緊急融資に割り当てられたが,そのうち実際に支出された額は12月の時点では1兆2000億ルピーであると報告されている。さらに,経済支援対策のうち,実質的な財政支出増加の部分と政策金利低下などの政策や制度変更の部分,また,短期的な緊急支援策と中長期的な産業政策的な性格を帯びる施策が混然としている。とくに,銀行部門は不良債権問題を解決できないままに新型コロナ問題に直面するなど,政策の実効性について,当然ながらほかの要因も複合的に影響している。そこで,ここではマクロ経済の指標を観察することで,インド経済全体としての動向を確認しておく。

2020/21年度の経済成長率はマイナス8.0%と予測されており,マイナス成長は,旱魃が起こった1979/80年度以来,約40年ぶりである。当時と異なり,農業部門がプラスの成長率を記録するなかでの今回のマイナス成長は,インドの産業構造が,とりわけ1980年代に自由化がはじまって以降,大きく変化してきたことの証左でもある。

産業部門別では,卸売・小売業,宿泊・飲食サービス業,運輸・倉庫業,通信業部門がもっとも大きなダメージを受け,2019/20年度に6.4%だったこの部門の成長率は2020/21年度にマイナス18.0%と予測されている。また建設業の成長率が1.0%からマイナス10.3%,鉱業がマイナス2.5%からマイナス9.2%,製造業がマイナス2.4%からマイナス8.4%へとそれぞれ落ち込む見込みである。プラスの成長率を記録すると予測されている部門は農林水産業の3.0%(前年度4.3%),電力・ガス・水道部門の1.8%(前年度3.1%)だけである。

支出別の統計を確認すると,GDPのおおよそ6割を占める民間最終消費支出の成長率は,2019/20年度の9.7%から2020年度はマイナス6.0%に落ち込むと予測されている。総固定資本形成は2019/20年度の6.1%に対し,2020/21年度はマイナス10.6%となる見込みであり,その結果,GDPに占めるシェアも28.8%から26.7%に後退することになる。投資需要の減退がとりわけ著しかったことが確認できる。輸出入も著しく減速し,とくに輸入についてはマイナス15.5%の成長率と予測されている。他方で,財政出動を余儀なくされ,政府最終支出成長率の予測値は8.0%であり,GDPに占めるシェアも前年度11.2%から2020/21年度は12.6%へと増加する見込みである。

物価については,消費者物価指数の上昇率はインフレーション・ターゲット(4%±2%)の上限を超えて高く推移した(図1)。ロックダウンに伴う需要減と,サプライチェーンの分断という物価に対して相反する方向へ働く力の現れ方が分野ごとに異なっており,食料においては供給網がロックダウンにより寸断されインフレ方向に働いた。他方で,卸売物価指数はロックダウン後にマイナス圏に落ち込んでいる(図1)。そのおもな理由は燃料・電力価格の下落である。世界的な経済活動の縮小のなかで原油価格が下がったことがその背景にある。こうした状況のなかでRBIは,インフレ抑制と経済活動の刺激という難しいかじ取りを迫られて,政策金利をロックダウン対策として,3月に5.15%から4.4%,5月にさらに4.0%に引き下げた。食料品卸売物価指数は,9月には10%近くまで上昇したものの,年末にかけてマイナスとなり,これを反映して消費者物価指数も12月には下降している。他方で,製造製品卸売物価指数の上昇率はロックダウン解除後に徐々に高まっている。

図1  物価上昇率の推移(2018~2020年)

(注)前年同月比。消費者物価指数(CPI)は2020年12月は暫定値,卸売物価指数(WPI)は2020年11,12月は暫定値。

(出所)CPIはMinistry of Statistics and Programme Implementation(http://www.mospi.nic.in/),WPIは,Office of Economic Adviser, Ministry of Commerce and Industry(https://eaindustry.nic.in/default.asp)のウェブサイト・データより作成。

国際収支については,2020/21年度上半期は,例年と異なり,経常収支が黒字となっている。コロナ問題の影響で輸入が落ち込み,貿易収支赤字が減少したことが背景にある。金融収支については,影響は一時的であり,直接投資,証券投資ともにその流入は堅調である。株式市場はコロナ問題勃発まで活況を呈しており,株価指数SENSEXは4万を超えていたが,3月には2万6000近くまで暴落したものの,その後,早期に回復し,11月には新型コロナ禍以前の水準を超えて,史上最高値を更新している(図2)。RBIの金融緩和措置,新型コロナ問題対策による世界的な流動性増加などを受けて,有望な投資先としてインドに資金が流入していることがうかがえる。為替レートについても,新型コロナ問題の影響が著しい。問題が深刻化する前までは,1ドル=71ルピー前後で推移していたが,ロックダウンとともに資金が流出する局面では急速にルピー安となり,3月24日には史上初めて1ドル=76ルピーを超え,7月頃まで1ドル=75~76ルピーで推移した。9月以降は資金の流入とともにルピーも対ドルで上昇傾向に転じ,73~75ルピーで推移している(図2)。

図2  為替レートおよびSENSEX(株式指数)の推移(2017~2020年)

(出所)為替レートはReserve Bank of India(https://www.rbi.org.in/Home.aspx),SENSEXはBombay Stock Exchange(https://www.bseindia.com/)のウェブサイト・データより作成。

政府財政については,モディ政権は,財政責任・予算管理法に定められた財政赤字のキャップである対GDP比3%に近づける努力をして2017/18年度,2018/19年度と財政赤字を3%台に抑え,政権当初からのスローガンのひとつである「最大限のガバナンスと最小限の政府」の成果を主張してきた。しかし,2019/20年度の財政赤字は4.6%となり,新型コロナ禍に襲われた2020/21年度は9.4%に達する見込みである。額面ほどの支出はないと考えられているものの,新型コロナ対策により政府歳出が拡大したことは確かであり,経済活動の停滞や減税措置などにより経常歳入の大幅な減少が予測されているためである。このような財政収支の悪化によりインド経済に対する信用が揺らぎ,海外からの資金流入に悪影響が懸念されているが,上述したように,今のところインドへの投資は堅調である。

プロ・ビジネスな改革の持続

ロックダウン対策の一環として政府が5月に発表した「自立したインド」は,経済,インフラストラクチャー,技術指向のシステム,人口,需要の5つの柱からなるとされる。その意図は,新型コロナ問題を超えて,あるいは契機として,グローバル・サプライチェーンへより強固に割って入り,「メイク・イン・インディア」を推し進めることと考えられる。実際,「自立したインド」として発表された経済政策の内容をみると,上述したように,主要産業への生産インセンティブや開発途上国への輸出促進など,ロックダウンに伴う負の影響の救済というよりも,産業構造変化を目指す性格の項目が含まれている。

周知のように,モディ政権が展開する経済政策の柱のひとつは「メイク・イン・インディア」であり,製造業のGDPに占めるシェアを高め,製造業において雇用を生み出すことを目指している。その背景には,2000年代にインド経済は高い成長率を記録したものの,サービス産業主導であり,また組織部門での雇用が増えていないという意味で「雇用なき成長」とも評されていることがある。実際,毎年1000万人単位で労働市場に参入する若年層のための雇用創出は喫緊の課題であり,持続可能な経済発展という観点からは,製造業の成長こそがその有力な解決方法であるという政府の考えが根底にある。政権は,2022年までに製造業のGDPシェアを25%に引き上げるという目標を掲げているが,新型コロナ禍でそのシェアは今年度も停滞し,16%に届いていない。

「メイク・イン・インディア」あるいは「自立したインド」を進める手段のひとつは,海外直接投資の積極的な誘致である。2020年の間にも,農業,防衛産業などで外資に対する規制緩和があり,電力・エネルギーや航空分野でも民営化や事業活動に関連して外資に対する規制緩和が行われた。また,インドを魅力的な投資先とするため,ビジネス・フレンドリーな環境を整備する努力も引き続き行われている。モディ政権下では,IT化も著しく,商業紛争処理,破産・倒産処理,税務などにおいてプロ・ビジネスな改革は着実に進んできたが,今年度において特筆すべき改革として,労働に関する3つの法典の制定がある。

インドの労働関係の規制は複雑かつ煩雑であることが問題視されてきた。しかし,その改革は,労働組合や労働者の反対などの理由により,容易ではなかった。この点,モディ政権は,2019年に賃金法典を成立させ,2020年9月に労使関係法典,社会保障法典,職業安全衛生および労働条件法典の3つの法典を成立させた。29の法律を4つの法典に統一して簡素化するとともに,内容的にも概して労働者側の権利よりも経営側の利害にウェイトをおいた改正で,施行されれば労務関連のコストや手続きが軽減される見込みである。たとえば,事業所閉鎖時に政府による許可が必要な規模が100人から300人に緩和されている。ただし,詳細については法典が政府の規則制定に委ねている事項も多いため,それらの詰めの作業を進めて2021年4月の施行を政府は目指している。もちろん,こうした改革が,労働者の権利や福利厚生にとって,また雇用創出や経済社会発展にとって長期的にどのような影響があるかは別に検討する必要があるが,少なくともプロ・ビジネスな改革として産業界に評価されていることは確かである。

新型コロナ問題は,このような海外直接投資の誘致と民間部門の活性化による経済運営を進めるという1980年代からの大きな流れに変化はもたらさなかったように思われる。とくに直接投資先としてのインドをモディ政権は精力的にアピールし続けている。新型コロナ問題にもかかわらず,7月には,Googleがインドに対し今後5~7年で約100億ドルの投資を行うと発表するなど,直接投資の流入は好調である。

ただし,国内の反対により実現できなかったものとして,土地収用法の改革があるが,2020年9月に成立した農業関連の3つの法律も大きな火種となっている。これらの法律は農産物流通プロセスの自由化や農地リースの規制緩和を目指すものである。1970年代から電力や肥料,さらには買上げ制度などの補助金政治により動きがとれなくなっている農業部門の改革は,歴代政権が手を付けかねていた領域である。そこにモディ政権は切り込んだものの,従来からのシステムに権益をもつ商人や農民,さらには州によっては州政府が反対運動を展開している(「国内政治」参照)。

保護主義的な動きの併存

このように,海外直接投資を積極的に呼び込む政策が展開され,プロ・ビジネスな改革が実施されてきているのと同時に,保護主義的な動きもみられる。2019年には,地域的な包括的経済連携(RCEP)協定からの撤退をモディ政権は決めたが,2020年に入って,1月には,モディ政権の対ムスリム政策に批判的なマレーシアからの精製パーム油輸入を念頭に関税を引き上げ,2月の2020/21年度予算案では,食料品,家具,靴,携帯電話部品,玩具など100以上の品目の関税引き上げを表明した。4月には,陸の国境を接する国からの外国直接投資を許可制に変更した。これは中国勢によるインド企業の買収を警戒するものと捉えられている。また,7月には耕運機とその部品を規制輸入品目とし,10月にはエアコン輸入の関税を引き上げている。さらに,9月には,ASEANを経由して輸入される中国製品を念頭に,原産地規制を強化するルールが施行された。なお,締結が近いと報道されていたモーリシャスとのFTAも2020年中には実現には至らず,中国とモーリシャスのFTAが先行して2021年1月に発効することになった。

また,新型コロナ問題による輸出入の停滞に加え,6月には死者を出すまでの衝突に発展した中国との国境紛争による緊張の高まりは,最大の貿易相手国である中国との関係で,保護主義的傾向を強める結果となった。武力衝突で,政府は道路や鉄道関連のプロジェクトからの中国企業の締め出しや中国製アプリの使用禁止などを打ち出し,インド社会のなかにも広く中国製品に対するボイコット運動が起こるなど,中国との経済関係が顕著に政治問題化した。上述した耕運機やエアコン,さらに議論されている太陽光関連機器の関税引き上げについても,おもに中国からの輸入が念頭におかれている。しかし,これらの産業のほかにも自動車産業や医薬産業は多くの部品や原料,製品を中国から輸入している。また携帯電話などの電子機器の輸入も多く,中国からの輸入を規制することによりインド企業が受ける打撃も大きい。さらには,中国からの直接投資案件も目白押しで,技術移転と雇用創出という観点からは,これらの輸入や直接投資を抑止することによる影響も小さくない。

したがって,2020年になって新型コロナ禍のなかで打ち出された「自立したインド」という考え方や中国との国境衝突は,一時的に保護主義的な傾向を強めたようにみえるものの,プロ・ビジネスな改革を進めるという2014年に政権を奪取して以来のモディ政権による経済運営の方向性を大きく変えるものではないと考えられる。すなわち,可能な範囲で自国企業重視,輸入依存の軽減を進めようという保護主義的な政策の展開を包含しつつ,海外直接投資の受け入れについては雇用創出や技術移転という観点から積極的に進める方向に変化はない。インドの喫緊かつ重要な課題はやはり質の良い雇用の創出であろう。中国からの投資を警戒しつつ海外直接投資を積極的に誘致し,製造業の振興を図る方向での努力に引き続き取り組むものと考えられる。

(佐藤)

対外関係

国際関係では中国との国境未画定地域をめぐって6月に軍事衝突が起こったことがインドの政策に大きな影響を及ぼした。中国と密接な関係にあるパキスタンとは2019年の衝突以来,本格的な関係改善の動きはみられないままである。アメリカのトランプ政権とはイランやロシア関係および貿易をめぐって食い違いはあるが安定した関係を維持した。ロシアとの関係も良好に推移した。R・シン国防大臣は対独戦戦勝記念日の軍事パレードでモスクワを訪問し,6月23日には対空ミサイル・システムS-400の早期引き渡しなど防衛協力の強化を要請している。日本との戦略的関係も進展し9月9日に両国は,両国軍の軍事・兵站で緊密な協調を可能にする「日・インド物品役務相互提供協定」(日印ACSA)に署名した。

ラダック地域での領土紛争で緊張が高まった中国関係

中国との関係は,6月にラダック地域で領土をめぐって犠牲者をだす大規模な軍事衝突があり冷え込んだ。大規模な緊張は2017年6月に領土帰属があいまいなインド,ブータン,中国の3国が接するドークラームでインド軍と中国軍が2カ月間にらみ合った時以来で(『アジア動向年報2018』参照),また死者がでたのは,1975年10月にアルナーチャル・プラデーシュ州でインド軍兵士4人が死亡した事件以来である。両国を分ける境界線としては,西部のラダックやアクサイチン地域の実効管理線(LAC),東部のインド・アルナーチャル・プラデーシュ州のマクマホン・ライン(広義ではこれもLACに含めることもある)があるが,いずれも公式な国境線ではない。衝突の背景として両国とも境界が定まっていないLAC沿いに道路など大規模なインフラ建設を戦略的に強化してきたことがある。たとえばインド内務省は緊張が続く6月3日に中国の境界に沿ったインフラを改善するため中央政府事業で資金を10%増額することを決定している。

両国間では紛争を回避するため1990年代から多くの合意,取り決めがなされてきた。近年では2012年の「係争地における紛争を話し合いで回避するためのインド・中国国境問題協議調整作業メカニズム」,2013年の「インド・中国間の境界防衛協力合意」が取り決められており,紛争は対話で解決することが同意された。にもかかわらず,両国の小規模な紛争はたびたび生じている。2020年は5月5日に東ラダックで,同月9日にはシッキムのナク・ラ境界未確定地域で紛争が起こり,兵士数人が軽傷を負った。対立を解消するため,6月7日,12日と両国の軍レベルの協議が行われ,さまざまな双務協定に従い国境地帯の状況を平穏に解決し,両軍の引き上げが開始されつつあった。衝突はそのさなかに起こった。

6月15日には東ラダックのガルワーンで両軍の衝突が起こり,インド軍兵士20人が死亡した(中国の犠牲者数は不明)。両国間の取り決めで銃器が使用されなかったことで,犠牲者数は紛争の規模に比して抑えられた。モディ首相は,インドは「国土と自尊心をインチたりとも渡さない」と述べたが,一方で衝突拡大を防ぐために協議も開始した。17日に行われた両国外務大臣S・ジャイシャンカルと王毅の間の対話で,問題を拡大しないことが合意された。18日には中国がインド軍捕虜10人を解放した。23日にはインド軍は紛争を解決するため「相互のコンセンサス」に至ったと説明した。両軍は衝突地点から一定の距離に退いたものの対峙は続いた。9月13日にはモスクワでの上海協力機構の会合で両国外務大臣が会談し5ポイントの行動方針に同意し,また現地軍レベルの協議も続いているが,小規模な紛争は散発的に続き,安全な地点までの両軍の撤退は実現していない。

両国間の対立は経済面でも顕在化した。モディ政権は中国の経済的浸透に警戒的であったが,4月18日には中国の投資を制限する動きとして,インドと国境を接する国々からの海外直接投資に政府承認を義務づけた。従来,パキスタンとバングラデシュからの投資だけがそのような制限に直面したが,中国も適用対象となった。改正は明らかに中国企業の進出を警戒したものであり中国は反発した。また政府は6月28日に安全保障に関わるとして中国製の59アプリを禁止した。中国製アプリの禁止は7月27日,11月24日にも追加発表された(「経済」参照)。

中国は最大の貿易相手国のひとつでありインドも対立拡大は望んでいないが,国境問題は緊張緩和の最大の障害となっている。

好転の兆しがみえないパキスタンとの関係

パキスタンとの関係は,2019年2月にインドのジャンムー・カシミール(JK)州プルワーマー県で起きたパキスタンのテロ組織によるテロ事件,その報復としてインドがパキスタンのバーラーコートに行った空爆,同年8月のインド政府によるJK州の特別な自治権を保証する憲法370条の無効化へのパキスタンの反発など,一連の事件のため改善の兆しがみえない。

2019年2月の事件後,インドはパキスタンへの最恵国待遇を無効とし,また,パキスタン国境のパンジャーブ州ワーガー・アターリー国境,JKの実効支配線(LoC)を通過する貿易を停止した。そのため両国間の貿易は大きなダメージを受けた。経済関係の冷却化をもたらした両国間の国際関係は,改善に向かう兆候も時折みせるが,基本的に低調のままである。

両国は,サバクトビバッタによる蝗害へ対処するため国際連合食糧農業機関(FAO)が3月11日に催したインド,パキスタン,アフガニスタン,イランの南西アジア諸国のビデオ会議で接触があった。会議は参加国の間で情報交換を行うことを合意した。また3月13日にモディ首相は新型コロナウイルスの脅威に対処するため南アジア地域協力連合(SAARC)のビデオ会議を提案し,パキスタンも応じた。会合は15日に行われパキスタンも協力の必要性に同意した。これらの動きは関係改善につながるものとして期待されたが,そうはならなかった。

6月23日にインドはパキスタンに対して,デリーおよびイスラマバードの両国の高等弁務官事務所の人員を双方とも半減するように要請した。イスラマバードでインド人スタッフが拘束されたことや,インド内でパキスタン高等弁務官事務所スタッフがスパイ活動を行ったとして追放された事件がその背景にあった。6月末までには両国は人員を半減させた。

パキスタンはパキスタン・アフガニスタン通過貿易合意の下,7月15日からワーガー経由でアフガニスタンがインドへ品物を送ることを認めると発表し,関係改善の糸口になるのではと期待された。しかし,9月24日に行われた2つのビデオ会議,SAARC外相会議およびアジア信頼醸成措置会議で両国は,お互いに名指しは避けたがカシミール問題やテロリズムをとりあげ非難の応酬となった。また,JKでも散発的な衝突は続いており関係改善の障害となっている。10月1日にはJKのクプワーラおよびプーンチ県のLoC近辺でパキスタン軍から銃撃を受けインド兵士3人が死亡した。また11月13日にはカシミールのLoCで砲撃戦があり,軍民あわせて11人が死亡している。インドは一連の衝突で「停戦違反」とパキスタンを非難した。

良好なアメリカとの関係

インドとアメリカの関係は良好に推移した。とはいえ両国の外交政策には対ロシアや対イランに関して大きな齟齬がある。たとえばインドにとってイランは石油政策,中央アジアへの足がかりとして重要な位置を占める。しかしアメリカのトランプ政権はイラン封じ込め政策をとり,インドはイランとアメリカとの板挟みになった。アメリカは数々のテロを指揮したとされるイラン革命防衛隊司令官カセム・ソレイマーニーを報復のため1月3日に爆殺したが,インド外務省はコメントを控えた。しかし,インド周辺国へ影響力を浸透させようとする中国への対抗,両国間の戦略的相互依存の深化では,両国の利害関係は一致する。

2月24~25日にトランプ大統領が来訪したが,24日のアーメダバードでの「ナマステ・トランプ」と題された華々しい歓迎式典の反面,成果は多くなかった。25日にデリーで首脳会談が行われ,共同声明では,両国の関係を「包括的グローバル戦略的パートナーシップ」に格上げすること,インド,アメリカ,日本,オーストラリアから成る4カ国(Quad)対話の重要性の確認,防衛協力の推進,テロリズムとの戦いでの協力強化などが強調された。しかし懸案の貿易・関税交渉に大きな進展はなかった。両国の戦略的関係は10月27日に国防,外務大臣間の2プラス2会合が行われるなど順調に推移した。会合では「地理空間協力のための基礎的な交換・協力協定」が締結され,両国は軍事目的に使える精密な地理空間情報を共有することとなった。会合でアメリカはインドと中国の対立に関して中国を批判した。11月3~20日にはQuadの4カ国海軍共同訓練マラバールがベンガル湾を中心に行われている。

(近藤)

2021年の課題

新型コロナ問題は,ワクチン接種が開始されたものの,ひきつづき慎重な対応が求められる。コロナ後の政治において中央政府が喫緊に対応すべきは,経済再建のため2021年度の予算をどのように組むか,農民による農業改革3法廃止要求にどう対応するかという問題である。CAAに対する反対運動が再び大規模に表面化する可能性も考えられ,その場合は対処が求められる。現在JK連邦直轄領の自治権運動,分離主義は力で押さえ込んでいるが紛争再燃の可能性もあり,警戒を要する。

経済については,プロ・ビジネスな方向での改革が着実に進むなかで,2020年年末から政治問題化している農業関連の改革の行方がひとつの試金石となると考えられる。またコロナ問題にもかかわらず今のところ堅調な外国投資の流入が持続するのかどうかに加え,4月に予定されている新労働法典の施行や,いまだ解決したとはいいがたい不良債権問題も注視する必要がある。中長期的には,雇用創出と産業構造変化の動向が引き続き重要である。

対外関係で喫緊の課題は中国との間の境界紛争を解決すること,そしてパキスタンとの関係改善の糸口をみいだすことである。

(近藤:地域研究センター)(佐藤:南山大学総合政策学部)

重要日誌 インド 2020年
   1月
1日アッサム州やデリーなどで市民権改正法(CAA)への反対運動広がる。
5日デリーのネルー大学でマスクをした暴徒が学生,教員を襲撃。犯人は未逮捕。
8日中央政府,鉱山および鉱物(開発・規則)法1957年,炭鉱(特別規定)法2015年を改正する政令を承認。
8日商工業省,精製パーム油の輸入を制限。カシミール問題等を批判するマレーシアからの輸入が主たる対象。
10日ジャンムー・カシミール(JK)州に関して最高裁,基本権および自由な運動を制限するすべての命令を見直すよう政府に命令。
10日世界貿易機関(WTO),インドによる対米28品目の輸入関税引き上げ措置につきアメリカの要請を受け紛争処理小委員会を設置。
20日インド人民党(BJP)の新総裁としてJ・P・ナッダが選出。
23日インド準備銀行(RBI),政府関連証券における外国人投資家による短期投資の制限を20%から30%に緩和するなど外資導入促進措置。
27日内務省,アッサム州政府およびボードーグループ,4県にまたがるボードーランド領域県(BTAD)を再編・改名する協定に署名。
30日ケーララ州でインド最初の新型コロナウイルス感染者確認。
   2月
1日中国の武漢からインド人避難者第1陣324人が特別機でデリーに到着。
1日2020/21年度連邦予算案発表。支出として30.4兆ルピーを計上。100品目以上の輸入関税の引き上げ措置を含む。
5日ウッタル・プラデーシュ(UP)州政府,スンニー・ワクフ理事会へアヨーディヤーの破壊される前のバブリ・モスクから25km離れた場所に5エーカーの土地を配分。内務省はラーマ生誕トラストの設置を告知。
6日RBI,政策金利5.15%を維持し,緩和的スタンスを継続。
8日スリランカ首相マヒンダ・ラージャパクサ来訪。インドへのローン返済,民族和解,第13次スリランカ憲法改正などを協議。
11日デリー首都圏議会選挙開票,庶民党大勝。16日に現職のA・ケジュリワルが引き続き州首相に就任。
16日インドとロシア,兵器部品生産などに関する14の覚書を締結。
24日トランプ米大統領来訪(~25日)。
24日デリー北東部でCAAの反対派と賛成派や警察が衝突。コミュナル暴動の様相(~27日)。数十人死亡。
28日メガラヤ州でCAAをめぐってカーシー学生連盟と非部族民の間で衝突。
   3月
10日マディヤ・プラデーシュ(MP)州で与党会議派からJ・シンディア派の州議会議員が離脱しBJPへ。会議派州政権崩壊。
11日サバクトビバッタによる蝗害に対処するため国際連合食糧農業機関(FAO)の南西アジア諸国ビデオ会議にインド参加。
14日物品・サービス税(GST)評議会,携帯電話の税率を12%から18%に引き上げる一方で,航空機の保守サービスに関わる税率を12%から5%に引き下げる等の変更。
18日株価指数SENSEX,新型コロナの世界的感染拡大を受けて,3万をおよそ3年ぶりに割り込む。
19日商工業省,防護服やマスクなどの輸出を禁止。
20日MP州で会議派のカマル・ナート州首相辞任。23日にBJPのS・S・チョーハンが州首相に就任。
20日RBI,流動性確保のため国債購入を通じて1000億ルピーの資金を市場に注入。
20日資金流出に伴いルピー安。史上初めて1ドル=75ルピーを超える。
24日新型コロナ感染拡大防止のためモディ首相,全国的ロックダウン発表。
26日財務省,ロックダウンに伴う経済対策として,貧困層への現金支給などを含む1.7兆ルピーの支出を発表。
27日RBI,経済対策として,政策金利を5.15%から4.40%に引き下げ。
   4月
14日モディ首相,5月3日までロックダウン延長を発表。
18日政府,国境を接する国からの投資を事前認可制に。中国の投資を制限。
29日全国的ロックダウンが続くなか,内務省は行き場を失った出稼ぎ労働者,学生などに対して州間移動のガイドラインを発表。
   5月
1日政府,5月17日までロックダウンを延長。
5日インドと中国,5日に東ラダックで,9日にシッキムの未確定境界上で衝突。兵士数人が軽傷。
7日アーンドラ・プラデーシュ(AP)州,ヴィシャカパトナムでLGポリマーズ・インディア(LG Polymers India)のガス漏洩事故。12人死亡。数千人避難。
12日モディ首相,ロックダウンに伴う経済対策第2弾として約20兆ルピーの支出を「自立したインド」の構想とともに表明。財務省,中小企業や貧困層に対する支援策などの詳細を翌13日から17日にかけて発表。
15日MP,UP,グジャラート,農産物取引委員会(APMC)による農産物取引体制を改革。中央政府財務大臣N・シターラマン,州間での農産物取引の自由化,契約農業を促進する中央立法を行うことを発表。
17日政府,5月31日までロックダウンを延長。
20日サイクロン「アムファン」,西ベンガル州とオディシャ州で猛威。
20日インド外務省,ネパールの新しい政治地図にウッタラーカンド州の一部が含まれていることに抗議。
22日RBI,政策金利を4.40%から4.00%に引き下げ。
27日トランプ米大統領,インドと中国が管理ライン(LAC)での緊張を解決するのを支援すると申し出。
30日政府,ロックダウンの緩和を発表。感染が深刻な地域ではロックダウンを延長する一方で,ほかの地域では6月8日から段階的に解除。
   6月
2日JK行政府,新メディア政策を承認。政府の検閲強化。
4日中央政府,農業改革関連の3つの政令を公布。
4日モディ首相,オーストラリアのスコット・モリソン首相とビデオ会議。両国の関係を「包括的な戦略的パートナーシップ」へと格上げ。
7日カシミールで,ヒズブル・ムジャヒディンの指導者,戦闘員5人が治安部隊との遭遇戦で死亡。
15日ラダックと中国を隔てるLACのガルワーン地域で軍事衝突。インド側20人死亡。中国の犠牲者数は不明。17日,両国外務大臣は会談で衝突を拡大させないと合意。
22日政府,中国などからの一部の鉄鋼製品にアンチダンピング課税。
28日政府,中国製59アプリを禁止。さらに7月27日に47アプリ,11月24日に43アプリを追加禁止。
30日モディ首相,首相の貧困福祉穀物事業(PMGKAY)で行われる穀物の分配事業を11月末日まで延長すると発表。
   7月
6日インドと中国間で軍事衝突が起こったラダックのLACで両軍,後退開始。
12日ラージャスターン州会議派政権内で権力抗争激化。14日,州会議派委員会,州副首相サチン・パイロットを罷免。
13日米グーグル(Google),今後5~7年でインドに約100億ドル投資予定と発表。
20日電子商取引の増加などを反映した2019年消費者保護法が施行。
23日政府,中国との対立を背景に,政府調達に関する2017年一般財政規則を改正。国境を接する国からの入札を制限可能に。
29日フランスに発注したラファール戦闘機,最初の5機が到着。
29日WTO,情報通信技術(ICT)製品に対するインドの関税引き上げ措置につき,台湾と日本の要請を受け紛争処理小委員会を設置。
30日マニプル州でアッサム・ライフル部隊3人,過激派との戦闘で死亡。
   8月
1日国家教育政策,教えるべき外国語リストから標準中国語を削除。
3日タミル・ナードゥ(TN)州のアンナ・ドラヴィダ進歩連盟(AIADMK)州首相,新しい国家教育政策の3言語方式の受け入れを拒否。2言語方式を維持と説明。
5日ミゾラムから追放されたBruコミュニティーを代表する3つの組織,再定住に提案された用地を拒絶。
6日RBI,政策金利を4.00%で据え置き。
9日国防大臣,国防部品の国産化のため,101部品の輸入停止を12月から行うと発表。
11日最高裁,2005年ヒンドゥー相続(修正)法の施行以降,ヒンドゥー合同家族における女子の相続権は出生に基づくと判示。
13日ラージャスターン州首相A・ゲーロト(会議派),対立していたサチン・パイロット派と和解。政治的混乱が収拾。14日の信任投票で信任。
15日アッサムの洪水悪化。5月22日より112人死亡。
16日元デリー高裁首席判事,3月23日の国会閉会後,政府は法案を非民主主義的な方法で通していると批判。
22日JKの6政党,憲法370条の復活を目指して共闘するグプカル宣言IIに署名。
25日中央の10労働センター,政府発表の3空港の民営化などに反対表明。
25日政府,マスクや防護服の輸出制限を緩和。
29日アッサム州の国民市民登録(NRC)で市民証明できなかった191万人への拒否告知,新型コロナ,洪水などで未発送。
   9月
1日政府,第1四半期(4~7月)のGDP,対前年同期比で記録的な23.9%の減少と発表。
4日スリランカの東海岸沖を航行中の大型石油タンカーの火災消火のため,インドとスリランカの海軍艦艇が消火作業。
9日日本とインド,「日・インド物品役務相互提供協定」(日印ACSA)に署名。
20日連邦議会下院を通過した農業改革関連法案,上院で採決。投票用紙ではなく発声での採決が不正であるとして野党抗議。22日に野党ボイコットのなか,上院通過。
21日政府,原産地証明の手続をより厳しくした規則を施行。
24日南アジア地域協力連合(SAARC)外相会議およびアジア相互協力信頼醸成措置会議のビデオ会議で印パ両国,非難の応酬。
26日農業改革関連法に反対しアカリー・ダル,国民民主連合(NDA)から離脱。
27日農業改革関連法案を大統領,裁可。パンジャーブ,ハリヤーナーなど各地で農民が反対運動拡大。
28日労働3法典(労使関係法典,社会保障法典,職業安全衛生および労働条件法典)を大統領裁可。前年に成立した賃金法典とあわせて,2021年4月施行を目指す。
29日UP州でレイプ被害者の被抑圧民(ダリト)の少女死亡。
30日中央捜査局(CBI)による特別法廷,1992年のバブリ・モスクの破壊事件に関してBJPのL・K・アドヴァニー,カリヤン・シンらを証拠不十分で不起訴。
  10月
8日中央政府の消費者問題・食糧・公共配給大臣R・V・パースワン(人民の力[LJP])死去。
9日RBI,政策金利4.00%で据え置き。
12日財務省,追加的な経済刺激策を発表。政府による公共設備投資や国家公務員に対する無利子の祝祭用前貸しなどの措置を含む。
13日JK行政府,公安法の下で拘留されていた元州首相で人民民主党(PDP)党首メーブーバ・ムフティを14カ月ぶりに解放。
15日商工業省,国産化促進のため,冷媒を利用したエアコンの輸入を禁止。
18日アッサムとミゾラムの州境で住民が衝突。
20日パンジャーブ州,連邦による農業改革関連3法を無効化するための法案を可決。
26日UP州アラハバード高等裁判所,同州での反牛屠殺法の乱用を非難。
27日中央政府,JKで州外人も土地(農地を除く)を取得できる新法を制定。
27日インドとアメリカ,「地理空間協力のための基礎的な交換・協力協定」を締結。
31日西ベンガル州議会選挙に向けてインド共産党(マルクス主義)は会議派を含むすべての世俗政党との協力によってBJPと草の根会議派に対抗することを承認。
  11月
3日印,米,日,豪4カ国海軍共同訓練マラバール,フェーズI,II,開始。フェーズIIは20日終了。
5日農業改革関連3法と電気法改正案に反対し18州の農民が抗議運動で道路封鎖。
9日株価指数SENSEX,米大統領選挙結果を受けて高騰,4万2000を史上初めて超える。
10日ビハール州議会選挙開票。民族ジャナター・ダル(RJD)が第1党も,ジャナター・ダル(統一派)(JD(U)),BJPのNDA連合が多数派を形成。16日に現職のニティシュ・クマール(JD(U))が州首相に就任。
12日財務省,追加的な経済対策を発表。雇用促進,経営難企業支援などを核とする約2.65兆ルピーの支出。
13日カシミールの実効支配線(LoC)でパキスタンと砲撃戦。11人死亡。
24日UP州政府,不正な改宗を保釈無しの罰則の対象とする政令を発令。
28日政府,第2四半期(7~9月)のGDPが対前年同期比で7.5%の減少と発表。
  12月
4日インド洋東部でインドとロシア海軍合同演習(~5日)。
4日RBI,政策金利を4.00%で据え置き。
9日カルナータカ州議会でカルナータカ家畜屠殺禁止・保護法通過。
10日西ベンガル州を遊説に訪れたBJP総裁ナッダ一行に暴力的反発。
12日中央政府と西ベンガル州,インド警察職(IPS)3人の中央政府への配属をめぐって対立。17日,州政府は中央政府の要求を拒否。
22日インドと日本の国防担当大臣,電話会談。
29日MP州政府,不正手段での改宗を禁じる政令を承認。
30日農業改革関連3法に抗議する農民と連邦大臣が会合。藁の野焼きの容認,電力補助金の維持に関して合意。

参考資料 インド 2020年
①  国家機構図(2020年12月末現在)
②  連邦政府主要人名簿(2020年12月末現在)
③  国民民主連合閣僚名簿(2020年12月末現在)
③  国民民主連合閣僚名簿(2020年12月末現在)(続き)

(注)カッコ内政党名略号。BJP:インド人民党,RPI(A):インド共和党(アトヴァレ派)。

(出所)政府発表の閣僚名簿(https://www.india.gov.in/my-government/whos-who/council-ministers)およびその他各省庁のウェブサイトなどから筆者作成。

主要統計 インド 2020年
1  基礎統計

(注)1)暦年。2)年度平均値。2020/21は4~12月の平均値。3)2次予測値。4)4~12月の平均に対する値。なお12月は暫定値。

(出所)人口はMinistry of Statistics and Programme Implementation(MOSPI), National Accounts Statistics 2020, およびPress Note on Second Advance Estimates of National Income 2020-21, 出生率はMinistry of Finance, Economic Survey 2017-18, 2019-20, 2020-21, 食糧穀物生産はMinistry of Agriculture and Farmers Welfare, First Advance Estimate of Production of Foodgrain for 2020-21,消費者物価上昇率はMinistry of Finance, Economic Survey 2020-21,為替はRBIのウェブサイト・データより作成。

2  生産・物価指数

(注)1)産業労働者についての総合指数。2)都市部と農村部の統合指数。3)4~11月。11月は暫定値。4)暫定値。5)4~12月。11月、12月は暫定値。6)4~8月。9月以降は2016=100にBase Yearを変更するなどした新シリーズとなっているため今回は含めず。7)4~12月。12月は暫定値。

(出所)鉱工業生産指数はMinistry of Finance, Economic Survey 2020-21およびMOSPI, Press Note on Quick Estimates of Index of Industrial Production and Usebased Index for the Month of November, 2020, 農業生産指数,卸売物価指数,消費者物価指数(産業労働者)、消費者物価指数(総合指数)はMinistry of Finance, Economic Survey 2020-21より作成。

3  支出別国民総所得(名目価格)

(注)1)3次改定値。2)2次改定値。3)1次改定値。4)2次予測値。

(出所)MOSPI, Press Note on First Revised Estimates of National Income, Consumption Expenditure, Saving and Capital Formation for 2019-20, およびPress Note on Second Advance Estimates of National Income 2020-21より作成。

4  産業別国内総生産(実質:2011/12年度価格)5)

(注)1)3次改定値。2)2次改定値。3)1次改定値。4)2次予測値。5)基本価格表示の粗付加価値(GVA)。

(出所)MOSPI, Press Note on First Revised Estimates of National Income, Consumption Expenditure, Saving and Capital Formation for 2019-20, およびPress Note on Second Advance Estimates of National Income 2020-21より作成。

5  国際収支

(注)1)暫定値。2)4~9月の予測値。

(出所)RBI, Handbook of Statistics on Indian Economy 2019-20,およびRBI, Press ReleaseDevelopment of India's Balance of Payments during the Second Quarter of 2020-21, 30/Dec/2020)より作成。

6  国・地域別貿易

(注)1)2019/20以降はイギリスを含まない27カ国。2)アイスランド,ノルウェー,スイス,リヒテンシュタイン。3)2019/20以降はイギリスを含む。4)非特定地域(unspecified region)を含む。5)暫定値。

(出所)Ministry of Commerce and Industryのウェブサイト・データより作成。

7  中央政府財政

(出所)Ministry of Finance, Union Budget 2019-20, 2020-21,および2021-22より作成。

 
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