2022 年 2022 巻 p. 147-174
2021年の国内政治,特に与野党間対立は,米中の対立と重なるものであった。5月以降に新型コロナウイルス感染症が拡大したが,政府によるワクチン調達は中国の妨害にあい,蔡英文政権は日本やアメリカ政府に支援を求めた。一方,国民党の親中保守派は,政府に中国製ワクチンの輸入を迫った。9月の国民党主席選挙では,親中保守派と距離を置き,対米関係を重視する朱立倫が当選した。ただし,輸入食品に対する安全規制の緩和をめぐっては,反対する国民党と,日米との通商交渉を進めるために前向きな姿勢を示す蔡英文政権の対立が続いた。
経済面では,前年から世界的な半導体不足が続いたことで,2021年は台湾の半導体企業が注目された。とくに,世界最大の半導体受託製造企業(ファウンドリ)である台湾積体電路製造(TSMC)が,サプライチェーンの要所を占めていることに世界の関心が集まった。対外経済関係では,台湾政府は2度にわたってアメリカとの経済対話を実施するとともに,環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(TPP11/CPTPP)への加盟申請を行った。
対外関係では,中国が軍事的威嚇を強めた。また,中国はワクチンや経済的誘因を用いて,ガイアナに台湾との代表部相互設置を撤回させ,ニカラグアとの外交関係を台湾から奪った。その一方で,バイデン政権に交代したアメリカは,台湾を軍事外交的に支援する姿勢を一層強めた。台湾を支援する動きは,リトアニアなどヨーロッパ諸国やオーストラリアにも広がった。このように,台湾は政治・経済両面で,国際社会での存在感を高めている。
2月19日,総統府は厳徳発国防部長が国家安全会議諮詢委員に転任し,新任の国防部長に邱国正国家安全局長,同じく国家安全局長に陳明通大陸委員会主任委員,大陸委員会主任委員に邱太三・前法務部長(元大陸委員会副主任委員)が就任すると発表した。このうち,注目されたのは文民として2人目の国家安全局長に任命された陳明通であった。同局には中国を主な対象とした情報部門のほか,総統府侍衛長(中将級ポスト)が副指揮官を兼務する「特種勤務指揮中心」があり,局内の文官にも軍事訓練を課すなど軍の影響が強い組織である。
4月2日には,台湾鉄路の特急「太魯閣」(タロコ)号が花蓮県で脱線し,最終的に台湾の鉄道事故として最多の50人が死亡した。国営の台湾鉄路は2018年にも「普悠瑪」(プユマ)号脱線事故を起こし,呉宏謀・前交通部長が引責辞任している。今回も林佳龍交通部長が19日に引責辞任した。
5月30日には,楊翠促進転型正義(移行期正義促進)委員会主任委員が大学教員に復帰するために辞任し,葉虹霊副主任委員が職務を代行した。時限立法での設立後,延長された同委員会の設置期限は,2022年5月で満了する予定である。
相次ぐ議員罷免運動国民党やその関係者は,韓国瑜高雄市長の罷免(2020年6月)に対する報復として,与党民進党や同党に立場の近い小政党および無所属の議員の罷免を求める署名活動を行った。その結果,同年12月には,民進党の王浩宇桃園市議会議員(第7選挙区)と,無所属の黄捷高雄市議会議員(第9選挙区)の罷免の是非を問う投票の実施が決まった。王浩宇は2021年1月16日の投票で罷免が確定した。直轄市議員の罷免が成立したのはこれが初めてである。王浩宇は過激な発言が多かったほか,当選後に脱退した緑党(民進党と立場の近い小政党)から批判されたことで,与党支持者にも見放されたと考えられる。これに伴う補欠選挙は実施されなかった。一方,黄捷の罷免は2月6日の投票で否決された(表1)。
(注)罷免の成立には「賛成」が「賛成せず」と有権者数の4分の1を上回る必要がある。
(出所)中央選挙委員会ウェブサイト(http://www.cec.gov.tw)。
また,7月2日には,やはり民進党と立場の近い,台湾基進の陳柏惟立法委員(台中市第2選挙区)の罷免の是非を問う投票の実施が決まった。投票日は当初8月28日とされたが,新型コロナ感染拡大の影響で10月23日に延期された。投票の結果,罷免が成立したが,王浩宇の場合と異なり,「賛成せず」にも一定の票が集まった(表1)。これに伴う補欠選挙では国民党が,前回(2020年)選挙で敗北したものの,過去2回の当選歴を持つ顔寬恒・元立法委員を擁立した。台湾基進は候補を立てず,民進党が林靜儀・前立法委員(比例区)を擁立した。2022年1月9日の補欠選挙では,林靜儀候補が当選した。
12月3日には,無所属の林昶佐立法委員(台北市第5選挙区)の罷免の是非を問う投票の実施が決まったが,2022年1月9日の投票では罷免が否決された。
新型コロナウイルス感染拡大と,それをめぐる政局新型コロナの感染者数は,5月初旬まで1日当たり1桁台で推移した。衛生福利部桃園医院(国立病院)では1月12日に感染クラスターが発生し,2人の死者が出たが,2月19日に通常の診察体制に戻った。3月17日にはパラオへの(現地社会との接触を回避する)「バブル方式」による団体旅行の実施が発表され,28日には同国のスランゲル・ウィップス・ジュニア大統領が,新型コロナ禍で最初の外国元首として来訪した。
しかし,後に明らかになったところでは,4月後半に旅客機乗務員が宿泊した桃園県のホテルや,台北市の風俗店で感染クラスターが発生していた。5月11日には経路の不明な感染例が発生し,中央疫情指揮中心(CECC)は警戒レベル第2級を発令して,大規模な集会やイベントの開催を禁止した。同15日には国内における感染者の確認数は1日当たり180人に急増し,台北市と新北市で警戒レベル第3級が発動され,屋内の遊興施設や飲食店などの営業が禁止された。同19日から7月26日の間は警戒レベル第3級が全土に適用され,その後も警戒レベル第2級が維持された。
それでも,新規感染者数は多い時期でも1日当たり500人程度と,他国に比べて小規模であった。とはいえ,社会には不安が広がり,ワクチン接種の早期実施を求める声が強まった。医療従事者への優先接種は3月に始まったが,基礎疾患のない一般市民への公的接種は7月以降にずれ込んだ。その背景には,中国側が台湾政府によるワクチン調達交渉を妨害し,中国製ワクチンの購入を迫ったこと(「対外関係」の項目を参照)や,国内企業である高端疫苗生物製剤の開発したワクチンの接種が8月にずれ込んだことなどの事情があった。
野党国民党は,政府に中国製ワクチンを調達するよう要求した。また,同党の保守派にはアストラゼネカ(以下,AZ)製の副作用を誇張し,政府による調達や日本からの提供を批判する者もいた。しかし,こうした批判をした丁守中・前立法委員や張顕耀・元大陸委員会副主任委員ら,複数の国民党関係者が医療関係者と偽ってAZ製ワクチンの優先接種を不正に受け,罰金を課されていた。
国民党主席選挙国民党主席選挙は当初,7月24日に予定されていたが,新型コロナ感染の拡大を受け,9月25日に延期された。同選挙には現職で本省人の江啓臣,外省人だが保守派とも距離を置く朱立倫・元同党主席,保守派の張亜中・元台湾大学教授(洪秀柱元同党主席の元政策顧問),卓伯源・元彰化県長が出馬した。このほか,李登輝時代に離党した,保守派の趙少康中国広播董事長(会長)が出馬の意向を示し,2月に復党したが,結局出馬を見送った。
張亜中は中国との統一を掲げ,また朱立倫を国民党の内情を漏らす「アメリカのスパイ」と中傷し,急進的な親中保守派である統一派の支持を集めた。9月に国民党が委託した世論調査(本来は非公表)では江啓臣(12.8%)や朱立倫(27.5%)をおさえて,張亜中が首位(30.6%)に立ったと報じられた(「風傳媒」の9月16日付記事)。
とはいえ,張亜中の急進的な言動には,趙少康のような保守派も懸念を示した。また,張亜中が「小切手」(実際は見本)を示して,自らが華僑から党への寄付金を集めたと主張したことも問題視された。結局,9月25日の投票では,態度未定票が朱立倫に流れて,張亜中は次点にとどまった(表2)。
(注)有権者数は37万711人,投票数は18万7999票,投票率は50.71%,無効票数は1980票であった。
(出所)中国国民党「110年中国国民党主席選挙結果公告」(http://www.kmt.org.tw/2021/09/110_25.html)。
今回当選した朱立倫には前職の江啓臣の時と異なり,習近平中国共産党総書記の名義による祝賀が届いた。ただし,それは当選当日でなく,翌26日であった。また,祝文には台湾海峡の緊張への言及と「国家統一」への呼びかけが含まれていた。中国側には,朱立倫が同党のアメリカ駐在事務所を再設置し,アメリカの関係改善を図る動きを見せたことを牽制する意図があったと考えられる。
4件の国民投票の否決12月18日に4件の国民投票(中国語では「全国性公民投票」)が実施された。当初は,8月の第4土曜日(22日)に実施されるはずであったが,新型コロナ感染拡大のため,実施が延期されていた。いずれも蔡英文政権の政策と異なる提案であり,うち3つは国民党関係者が発案した。事前の世論調査では,第17案の賛否が拮抗したのを除き,概ね「賛成」が多数を占めていた。しかし,実際の投票では,4件とも「賛成せず」が多数を占め,否決された(表3)。これは投票率が低迷したことで,与党支持者の割合が相対的に高まったためと考えられる。
(注)有権者数は1982万5468人。可決には「賛成せず」および有権者の4分の1を上回る賛成票が必要。
(出所)中央選挙委員会ウェブサイト(http://www.cec.gov.tw)。
林為洲立法委員(国民党副秘書長)が提案した第18案は,世論の関心が高い食品安全問題であり,当初は世論調査で「賛成」が6割を超えることが多かった。同時に,この問題は事実上アメリカ産食肉の輸入にかかわり,日本の5県産食品輸入規制に類するものであった。アメリカとの通商交渉やCPTPP参加の実現を目指す蔡英文政権は,学校給食に国産食肉を用いることや,市販の食品や外食における産地表示義務などについて説明し,世論に同案への反対を求めた。
第20案の扱う液化天然ガス(LNG)受入基地の予定地は自然保護区に隣接するため,生態破壊を懸念する環境保護団体と民進党の関係に亀裂を入れた。同計画が頓挫すれば,LNG火力発電の増強が難しくなり,電力需給の安定には第4原発が必要になる。黄士修(国民党の洪秀柱や韓国瑜の元政策顧問)が第17案で第4原発問題を問うたのは,こうした民進党のジレンマを突くためであった。江啓臣国民党主席が提案した第19案には,政権に不利なテーマの国民投票を提案して,国政選挙で優位に立つ狙いがあったと考えられる。
(竹内)
2021年の経済成長率は6.45%であった(速報値)。経済成長率が5%を超えたのは,リーマンショック後にV字回復をした2010年以来のことであった。TSMCをはじめとする半導体企業の設備投資,船会社による船舶の購入など民間部門の固定投資が19.1%増となり,また世界経済の回復によって輸出が17.0%増加したことが経済成長の要因として挙げられる。一方,民間消費は新型コロナウイルス感染症の蔓延による影響で前年に続き商品クーポン券(振興5倍券)を10月に発行したが,プラス成長に回復できなかった。
消費者物価指数の上昇率は2000年以降3番目に高い1.96%を記録した。賃金をみると,2021年の基本給に残業手当を除く定額の諸手当,およびボーナスを加算した名目経常性賃金は前年比1.93%増の4万3211元であった一方,物価上昇分を差し引いた実質経常性賃金(2016年基準)は4万1422元で前年から0.04%下落することとなった。
税関統計に基づく財貿易をみると,輸出総額は前年比29.4%増の4464億ドル,輸入総額は同33.3%増の3815億ドルであった。主要輸出品は電子製品1720億ドル,情報通信機器613億ドル,機械278億ドルであった。電子製品の代表的な輸出品目である半導体は前年から331億ドル増の1555億ドルとなり,輸出全体の34.8%を占めた。主要輸入品は電子製品913億ドル,機械443億ドル,情報通信機器265億ドルであった。
半導体をめぐる動き台湾の半導体産業は,世界最大のファウンドリであるTSMCを中心に近年注目されてきた。TSMCは10ナノメートル以降の最先端プロセスで大きなシェアを持ち,世界のファウンドリ市場で50%以上を生産する半導体メーカーでもある。2020年には米中対立のなか,アメリカはTSMCに対して中国へ高性能半導体の輸出禁止を求め,TSMCもそれに応じた。また,TSMCはアメリカ政府の要請を受け,2020年5月にアリゾナ州に回路幅5ナノメートルの半導体製造工場の建設を決め,2024年第1四半期に量産開始予定である。
2021年の世界における半導体市場では,需給のひっ迫が継続した。とくに,車載用半導体が2020年後半から不足が続く状況であった。車載用半導体が不足したのは2020年前半に新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延によって,自動車の需要が落ち込み,自動車メーカーは車載用半導体の製造委託をキャンセルしたためである。同年後半には自動車の需要が回復したものの,自動車メーカーはキャンセル分をすぐに再委託することができず,車載用半導体の不足につながった。また,パソコンやスマートフォンでもコロナ禍での巣ごもりによって需要増が続き,これらの半導体も不足することとなった。
自動車の主要生産国である日米独は2021年1月に外交ルートを通じて台湾側に車載用半導体の増産を要請した。これを受けて,経済部(経済産業省に相当)は1月27日にTSMC,聯華電子(UMC)などファウンドリ4社を招いて意見交換を実施するとともに,増産への協力を呼び掛けた。
TSMCは4月に中国の南京工場に28億ドルを投資し,前世代の回路幅28ナノメートル生産ラインを新設することを決めた。また,日本政府の要請を受け,2月に茨城県つくば市に100%子会社でパッケージングの3D化を進める研究開発拠点を設置するとともに,11月にはソニーの子会社と合弁会社を設立し,熊本県菊陽町に工場を建設することを明らかにした。熊本工場では回線幅22から28ナノメートルのロジック半導体を生産する予定である。なお,2022年2月15日にはデンソーが上記合弁会社に出資すること,回線幅12から16ナノメートル半導体の製造にも乗り出すことが明らかになった。熊本工場の建設は2022年に着工し,2024年末までの生産開始を目指す方針である。
鴻海精密工業の電気自動車参入電気自動車(EV)の開発が世界的に進むなか,台湾では電子機器製造受託サービス(EMS)の世界最大手企業である鴻海精密工業(以下,鴻海)が積極的な動きをした。鴻海は2020年11月に台湾大手自動車メーカーである裕隆汽車製造グループと合弁会社フォックストロン・ビークル・テクノロジーズ(鴻華先進科技)を設立するとともに,EVを共同で開発するためにオープンプラットフォーム(Mobility in Harmony[MIH]コンソーシアム)の設置を発表した。また,2021年1月にはEVや半導体などの研究開発を行う研究機関を本格的に始動させた。MIHコンソーシアムには欧米や日本も含む4000社以上の企業が参加しているが,70%は台湾企業で占められており,今後世界における自動車産業に変革をもたらす可能性がある。同コンソーシアムでは3種類のEV試作車を10月18日に公開し,鴻海はヨーロッパ,インドや南米の各市場向けEVを生産することを明らかにしている。
EV生産の面で鴻海は1月に中国の大手自動車企業である浙江吉利控股集団と合弁会社を設立した。この合弁会社はEV以外の自動車やその部品の生産業務を含み,自動車産業への関与を強めた。このほか鴻海は,9月にタイ石油公社とEV生産のために合弁契約を締結するとともに,アメリカの新興EVメーカーであるローズタウン・モーターズ社のEV組み立て工場と設備を2億3000万ドルで購入することを発表し,11月に購入契約を締結した。
一方で,鴻海はEV生産に必要な車載用半導体の生産にも乗り出した。8月には台湾の半導体メモリ企業である旺宏電子から新竹科学園区の150ミリウエハー工場を25億元あまりで取得した。また,12月にはオランダに本社があるステランティスN.V.社と車載用半導体の開発に関するMOUを締結した。さらに同月末には,鴻海傘下の富智康集団が鴻海の合弁相手である浙江吉利控股集団の傘下会社と新たに車載用半導体生産のための合弁会社を設立した。
鴻海はEV製造を事業の中心のひとつに位置付け,5年後には売上高1兆元を目指している。また,車載用半導体製造への参入によって,自社で半導体を調達し,EV生産につなげようとしている。
アメリカとの経済対話米中対立が深刻化するなか,台湾とアメリカは経済分野でも関係を深めた。対話の阻害要因になっていたアメリカ産牛肉と豚肉の輸入再開を台湾側が2020年8月に決定し,2021年1月から実施した。この阻害要因が解決したことで,米台両政府間での経済会合が活発に行われた。
2020年11月に次官級協議である米台経済繁栄パートナーシップ対話が初めて開催され,7分野に関するMOUが締結された。そのMOUに基づき,2021年2月には半導体産業のサプライチェーンフォーラムが開催された。この協議には米台の政府関係者だけではなく,TSMCやアメリカの半導体ファブレスであるクアルコム社などの企業も出席した。また,11月には第2回米台経済繁栄パートナーシップ対話がオンラインで開催され,サプライチェーンの強靭性,デジタル経済と第5世代移動通信システム(5G)ネットワークの安全性など4議題で意見交換が行われ,翌年に米台間で科学技術に関する会議を開催することで合意した。
このほか,6月30日にはアメリカ通商代表部と貿易投資枠組み協定(Trade and Investment Framework Agreement: TIFA)に基づく第11回協議が5年ぶりに行われた。この会合では知的財産権やサプライチェーン,医療器材など10項目が協議され,今後TIFAの枠組みを使って作業グループを設置することになった。
CPTPPへの加盟申請台湾政府は9月22日にCPTPPへの加盟申請を行った。台湾は多国間の地域経済連携協定にまったく加盟していないことから,蔡英文総統は2016年の就任時からアメリカが離脱する前のTPPへの加盟に意欲を燃やしてきた。加盟にあたっては全加盟国の賛同が必要である。アメリカがTPPから離脱したこともあって,台湾は加盟国のなかで最大の経済規模を持ち,CPTPPを主導した日本の協力に期待した。日本の協力を得るためには,福島第1原発の事故によって禁止した同県を含む5県産食品の輸入再開の解決が必要であった。蔡政権は2016年11月に福島県以外の4県産食品の輸入規制緩和を実施しようとしたが公聴会での反対などで断念した。また,2018年11月に行われた国民投票で禁輸継続が賛成多数となったため,2年間はその結果に拘束されることになり,台湾政府はCPTPPへの加盟申請が難しい状況になった。
このような状況下で,中国が9月16日にCPTPPへの加盟申請をしたこともあり,5県産食品の輸入再開の決着をつけずに中国の申請から1週間後に加盟申請をした。蔡政権側は中国の動きとは関係なく,日本が2021年の議長国であるために申請をしたという立場である。新規加入は加盟国の協議によって決定することもあり,現状では申請した中国,台湾とも加盟の見通しは立っていない。
(池上)
アメリカのトランプ政権は台湾との関係を重視し,退陣直前もマイク・ポンペオ国務長官が米台政府間接触の制限撤廃に言及した(1月9日)。また,ケリー・クラフト国連大使は1月7日に,13日から15日の予定で来訪すると表明したが,政局が混乱したため中止し,蔡英文総統とオンライン会談を行った(14日)。
1月20日に発足したバイデン政権には,前政権ほど台湾を重視しないとの見方もあった。しかし,同政権は台湾の蕭美琴駐米代表を同日の大統領就任式に招待した。台湾の駐米代表が,新政権から正式な招待を受けてアメリカの大統領就任式に出席したのは,米台断交後初であった。
その後も,同政権は台湾を重視する姿勢を見せ続けた。ソン・キム米国務次官補代行と蕭美琴代表(2月10日)のほか,米台双方の世界貿易機関(WTO)代表(アメリカ側は代表代理,同11日)や駐日臨時代理大使および代表(3月4日と5月24日)などによる会談が行われた。3月25日には,沿岸警備ワーキンググループ設置に関する覚書が米台の間で締結された。4月9日には米国務省が,ポンペオ前国務長官による上述の方針を踏襲したとみられる「アメリカ政府と台湾側の交流に関する新ガイドライン」(内容は未公表)を定めたと発表した。
4月16日の日米首脳会議では,「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する」との文言を含む日米首脳共同声明が発表された。その直前には,クリストファー・ドッド元上院議員やジェームズ・スタインバーグ元国務副長官,リチャード・アーミテージ元国務副長官が来訪し,蔡英文総統や蘇貞昌行政院長,与野党の立法委員らと会談した(それぞれ14日と15日)。ドッド元議員はバイデン大統領の盟友であり,事実上の大統領特使であるとみられた。
台湾で新型コロナウイルスワクチンの不足が政治問題化すると,アメリカは6月3日に同ワクチンの提供を表明した。6日には,軍の大型輸送機で来訪した上院議員3人(民主党2人,共和党1人)が,その数を75万回分と発表した。なお,20日に台湾に到着したワクチンの数は250万回分に上積みされた。後の追加分を含めると,年内には約400万回分が届けられた。11月にも共和党の上下院議員6人と,民主党を中心とする下院議員5人が軍の要人輸送機で来訪し,台湾側にアメリカの存在感を示そうとした。
10月には,台湾の国際組織への参加に関する米台間のオンライン会議が開催され,リック・ウォーター米国務次官補代理は,中国代表権に関する国連総会第2758決議(1971年)を理由に,台湾の参加を妨害する中国を批判した。同月26日にはブリンケン米国務長官が「台湾の国連システムへの参加」を支持した。
12月にアメリカが開催したオンラインでの「民主主義サミット」には,台湾の蕭美琴駐米代表と唐鳳(オードリー・タン)政務委員が参加した。唐鳳政務委員が講演中に政治参加の開放性に基づき,各国を色分けした地図を示すと,画面が消え,音声のみの配信になった。アメリカ国務省は「単純な手違い」と釈明したが,中国の反発を恐れたホワイトハウス高官の指示であったとの報道もある(12月13日,ロイター)。
なお,台湾の代表機関「台北経済文化代表処」の「台湾代表処」への改名は,2021年内の実現が見送られた。7月にはアメリカ在台湾協会(AIT)台北事務所長がブレント・クリステンセンから,サンドラ・オウドカークに交代した。
経済的手段を用いた中国の圧迫台湾政府は2020年12月末にドイツのビオンテック社(以下,B社)と新型コロナウイルスワクチンの調達交渉を終えていたが,その後,B社は台湾に発表資料で「我が国」という文言を避けることや購入量の再検討を求め,正式契約を引き伸ばした。台湾の陳時中・中央疫情指揮中心指揮官は2月17日,中国側の妨害がその原因だと述べた。この背景として,B社には台湾政府と交渉する一方で,台湾を含む「大中華圏」(Greater China)におけるワクチンの販売権を中国の上海復星医薬集団(以下,復星)に認めていたという事情があった。
5月に台湾での新型コロナ感染が拡大すると,復星はB社の許諾を受けて中国で製造したワクチンの販売を台湾側に打診したと述べた(22日)。中国の国務院台湾事務弁公室も「政治的障碍がなければ,どのワクチンでも提供できる」と述べ,台湾政府が中国製ワクチンの購入を拒んでいると批判した(26日)。
蔡英文総統は「B社との契約を妨害したのは中国だ」と反論したが(27日),後日には鴻海およびその関連財団やTSMCとの間で,両者が購入した復星製ワクチンの寄贈を受けることに同意した(6月18日)。後日,政府は慈済基金会とも同様の合意をした(7月1日)。3者は各約500万回分,合計1500万回分のワクチンを購入し,9月以降,納入されたワクチンを台湾政府に寄贈した。
このほか,中国は害虫の防疫を名目に,台湾産パイナップル(3月1日以降)や,バンレイシおよびレンブ(ワックスアップル)の輸入を禁止した(9月20日より実施)。また,11月には,台湾の遠東集団が中国に設立したセメントや紡績の工場などが環境や労働規制に違反したとして,現地当局から罰金処分を受けたと報じられた(22日)。国務院台湾事務弁公室の朱鳳蓮報道官は,これが政治的制裁であると示唆した(24日)。30日には徐旭東遠東集団董事長(会長)が,聯合報に台湾独立に反対するとの投書を載せ,中国側の理解を求めた。
香港,マカオとの関係中国による「香港特別行政区の選挙制度の改善に関する決定」(3月11日)について,台湾の大陸委員会は民主派を排除し,中国共産党の直接統治を招くとの見方を示し,蔡英文総統も「一国二制度」の約束を損なったと批判した。また,蔡英文総統は香港の『蘋果日報』(アップル・ディリー)の停刊(6月24日)に遺憾の意を示しつつ,その民主主義や自由への貢献を讃えた。同紙の台湾版も5月17日に紙媒体での発行を中止したが,香港版と異なり,ウェブ上で記事配信を継続した。
一方,香港政府は5月18日に,台湾政府による「援港専案」(香港人亡命者への支援策)を批判し,香港経済貿易文化弁事処(台湾における香港政府の出先機関)の運営を即日中止すると発表した。6月19日にはマカオ政府も同じく,マカオ経済文化弁事処の運営を中止した。また,香港側が査証手続きの際に「一つの中国原則」への同意を求めたため,香港の台北経済文化弁事処(台湾政府の出先機関)では7月30日に最後の台湾人職員が滞在期限を迎えて帰国し,香港人職員のみで運営されることになった。大陸委員会は7月6日,香港人職員に迫害が及ぶ場合,本人や家族の台湾移住を認める意向を示した。
深刻化する中国の脅威とアメリカの軍事的支援台湾の国防部は『国防報告書』(10月に公表)で,中国軍による威嚇や心理戦,サイバー攻撃を,台湾の疲弊や動揺を促して「不戦奪台」(戦わずに台湾を併合する)を試みる(戦争と平和の)「グレーゾーンの脅威」と呼んだ。
特に深刻なのは,中国軍機の編隊による台湾側防空識別圏(領空外の警戒空域)への進入であった(表4)。最も機数の多かった10月4日には,殲16戦闘機34機など56機が飛来した。11月28日には運油20空中給油機を伴った戦闘機の編隊が台湾東部沖に現れた。アメリカのロイド・オースティン国防長官は,こうした中国軍の動きを「台湾攻撃の予行演習に見える」と評した(12月4日)。ブリンケン米国務長官も「実際に攻撃すれば,恐ろしい結果を招く」と強い表現を用いて,中国を牽制した(同3日)。
(出所)中華民国国防部ウェブサイト(https://www.mnd.gov.tw/)を参照し,筆者作成。
アメリカとその同盟国は2021年も,軍艦による台湾海峡の通過を継続して行った(表5)。9月15日には,AUKUS(豪英米の安全保障協力)の一員であるオーストラリアのスコット・モリソン首相やピーター・ダットン国防相が,台湾有事におけるアメリカとの連携に繰り返し言及した。また,10月に来訪した同国のトニー・アボット元首相は台湾有事への対応のほか,台湾の自決権にも言及した。蔡英文総統は台湾に少数のアメリカ軍が駐留していることを認めた(10月26日)が,これもアメリカと連携した対中牽制の一環と考えられる。12月15日には台湾を環太平洋合同演習に招くよう求める国防授権法がアメリカ議会上院で可決され,27日にバイデン大統領の署名を経て成立した。
(注)米はアメリカ,英はイギリス,仏はフランス,加はカナダ,Dは駆逐艦,Fはフリゲート,Iは情報収集艦,Pは沿岸警備隊の巡視船を指す。8月28日の「米D」と「米P」は別行動であった。
(出所)各種資料を参照し,筆者作成。
従来のアメリカは,台湾有事への対応を明言しない「戦略的曖昧さ」を外交方針としてきた。しかし,フィリップ・デービッドソン・インド太平洋軍司令官やジョン・アキリーノ次期同司令官(4月30日に就任)は「中国軍が6年以内に台湾侵攻の準備を整える」と述べた(3月9日,22日)。ハリー・ハリス前駐韓大使(元太平洋軍司令官)も「侵攻を抑止するには,『戦略的曖昧さ』を放棄するべきだ」(9月5日)と主張した。一方,バイデン政権のインド太平洋調整官に就任したカート・キャンベルは,「戦略的曖昧さ」の見直しを否定している(5月5日)。また,4月に来訪したアーミテージ元国務副長官は,「戦略的曖昧さ」の放棄は中国側の行動次第であると述べた(5月3日)。
しかし,8月末のアメリカ軍のアフガニスタン撤退をめぐって,台湾の親中保守派や中国の『環球時報』は,台湾もアメリカに見捨てられる可能性があると主張した。これには,蘇貞昌行政院長や蔡英文総統がそれぞれ,「台湾は内乱状態にない」「他者の保護ばかりに依存しない」と述べた(18日)だけでなく,アメリカのジェイク・サリバン大統領補佐官も「台湾とアフガニスタンは違う。台湾を含め,同盟国への約束は神聖不可侵である」と反論した(8月17日)。
そして,バイデン大統領は8月19日に「北大西洋条約機構(NATO)加盟国と同様,台湾の防衛に責任を持つ」と述べ,「戦略的曖昧さ」を否定した。ホワイトハウスはこの発言を「言い間違いである」と釈明した。しかし,バイデン大統領は10月21日にも同様の発言を繰り返し,米中首脳オンライン会談(11月16日)の直後には「台湾は独立している。自分で自分のことを決める」と述べた。バイデン大統領は同日中に「我々は台湾に独立を勧めていない」と釈明しつつ,改めて「台湾のことを決めるのは我々でなく,台湾だ」と述べた。この発言は,台湾の自決権を主張し,中国から「独立派」と呼ばれる蔡英文政権や民進党の立場を擁護するものであった。
共和党のコンドリーザ・ライス元国務長官は「(筆者注:2014年の)ロシアのウクライナ侵略と同じハイブリッド戦を中国が台湾に仕掛ける可能性がある。立法院における与野党の攻防も台湾人同士の争いなのか疑わしい」と述べ,親中派の勢力が強い国民党に疑念の目を向けた(10月15日)。バイデン政権も,同様の懸念を持っている可能性が高い。国民党の朱立倫主席は,ライス発言について,民進党が「国民党は親中派」と吹聴したためだと述べたが,上述のようなバイデン大統領の発言は,親中派の言説に対抗したものであった。
中国との外交戦と,欧米諸国の支援1月11日,台湾は水面下で,南米のガイアナと代表部を相互設置する協定を締結し,同国で「台湾弁公室」の開設準備を進めた。中国がガイアナ側に中止を求めて圧力をかけたため,2月4日,台湾は協定の締結を公表し,アメリカのジュリー・チャン国務次官補代理(西半球担当)も歓迎の意を示して,同国を台湾側へ引き戻そうとした。しかし,ガイアナは同日中に協定の破棄を発表し,中国はこれを評価した。一方,蔡英文総統や外交部は中国の圧力を非難し,アメリカ国務省は中国との外交戦において,台湾側への支援を継続すると表明した。
3月にはパラグアイが,台湾との断交を条件としたワクチン提供の申し入れを中国から受けたと公表し,台湾の呉釗燮外交部長が中国の動きを非難した。4月20日には同国大統領府がインド製ワクチンを入手したと発表し,中国の圧力に屈しない姿勢をみせた。この背景には,3月にアメリカがパラグアイを説得しつつ,同国のワクチン購入費を拠出するよう台湾側に求めた経緯があった。また,台湾は8月以降,国産ワクチンの臨床試験を同国で実施するなどの便宜も図った。
7月20日には,リトアニアへの「台湾代表処」の設置が発表され,11月18日にその開業式が行われた。リトアニア側も台湾に「貿易事務所」を開設する意向を示したほか,台湾に新型コロナワクチン計25万回分を送った。一方,中国は「台湾」という名称が「一つの中国原則」に反すると猛反発した。中国は,リトアニアへの経済制裁を発動し,また大使を帰国させ,外交関係を事実上格下げした。リトアニアも安全上の問題を懸念し,中国から自国の大使館員を引き上げた。
アメリカやヨーロッパ連合(EU)は,中国と各国のいう「一つの中国」の内容が異なると指摘し,リトアニア側を擁護した(8月10日)。チェコやポーランドも9月に新型コロナワクチンをそれぞれ約3万回分と40万回分,台湾に融通した。EU議長国であるスロベニアのヤネス・ヤンシャ首相は,リトアニアや台湾との連帯を公開書簡で訴えた(9月13日)。スロバキアも新型コロナワクチン16万回分を提供し(同26日),12月にはカロル・ガレック経済副大臣が政府専用機で来訪した。ヨーロッパ議会「EUの民主的プロセスに対する外部干渉に関する特別委員会」公式訪問団(11月)や,フランス(10月に元老院,12月に国民議会)およびバルト3国(11月)の議員も相次いで来訪した。
台湾からは,10月に龔明鑫国家発展委員会主任委員(スロバキア,チェコ,リトアニア)と呉釗燮外交部長(スロバキア,チェコ,ベルギー),11月に陳建仁・前副総統(ポーランド,リトアニア)がヨーロッパを訪問した。日時は不明だが,呉釗燮外交部長がEU本部を訪れたとの報道もある。
中米では,11月のホンジュラス大統領選挙において,中国との外交関係樹立を掲げたシオマラ・カストロ候補が当選したが,アメリカの説得に応じて,この方針を取り下げた(12月11日)。一方,同じく11月に行われたニカラグア大統領選挙では,ダニエル・オルテガ大統領が再選されたが,同選挙での不正を指摘したアメリカとの対立が深まった。同国は12月9日に台湾と断交し,27日には大使館など台湾側の資産を中国側に引き渡すと発表した。両国は中国から新型コロナワクチンの提供を受けたほか,投資の拡大も期待した。特にニカラグアでは,中国系企業がパナマ運河に代わる運河の建設を構想しているといわれる。
日本との関係日本も緊迫する台湾海峡に関心を示し,閣僚級の日米安全保障協議委員会(3月16日)や日米首脳会談(4月16日)後の共同声明,日EUオンライン首脳会談(5月27日)で「台湾海峡の平和と安定の重要性」に言及した。12月には安倍晋三元首相が「台湾有事は日本,日米同盟の有事でもある」と述べた。
新型コロナウイルス感染拡大では,日本が台湾側の要請に応じ,6月以降6回にわたってAZ製新型コロナワクチン(合計420万回分)を提供した。蔡英文総統は日本側の検討表明時(5月28日)や初回到着時(6月4日),提供されたワクチンの接種開始時(同16日)に謝意を示した。台湾も,9月16日に酸素濃縮装置1000台と血中酸素濃度測定器1万台の日本への提供を表明した。
9月23日,台湾のCPTPPへの加盟申請について,日本の茂木敏充外相は歓迎の意を示した。ただし,星野光明日本台湾協会台北事務所副代表が支持表明していない加盟国の存在を指摘すると,台湾側では同政府の楽観姿勢を戒めたとの見方がなされた(同18日)。
日本政府は4月29日と11月3日に,それぞれ3人,合計6人の台湾人への受勲を発表した。また,2020年に続いて,2021年もコロナ禍のため,日台漁業委員会の開催が中止され,日台漁業取決に基づく漁船の操業ルールは2019年のものが継続して適用された。日台貿易経済会議は2021年中の開催が見送られたが,2022年1月には同年3月にオンラインで開催されることが発表された。
(竹内)
国内政治では,11月26日に地方統一選挙が予定されている。台北市長選挙では,第三政党である台湾民衆党を率いる柯文哲市長の退任に乗じて,国民党が同職の奪還を目指すであろう。一方,蔡英文総統や民進党は,県(省轄)市の合併と財政的に優遇される直轄市への昇格を争点にして,前回(2018年)選挙での大敗から挽回を図ろうとしている。
行政院主計総処は2022年2月24日,2022年の経済成長率を4.42%,消費者物価指数の上昇率を1.93%と予測した。引き続き半導体企業の投資が見込まれること,輸出も堅調に成長することが予測されている。半導体の世界的な不足は2022年も続くとみられ,TSMCは前年より100億ドル以上増額した400億ドルから440億ドルの投資を想定している。2022年には3ナノメートルプロセスの量産を開始する予定であり,アメリカ,日本に続いてヨーロッパへも投資を行うのかが注目される。
台湾では近年住宅価格の高騰が顕著になっており,蔡英文総統の2022年新年談話でもこの問題が取り上げられた。2021年には低所得者向けの社会住宅の継続的供給,税制や金融面を通じた住宅価格の抑制策が実施された。2022年はこれらの抑制策によって住宅価格の高騰が抑えられるかが重要になろう。また,2022年2月21日に台湾政府は福島県など5県産農産品対する輸入禁止措置の緩和を決定,即日実施した。この緩和策実施は台湾政府がCPTPP加盟協議の進展を望んでいることが背景にあり,今後の行方が注目される。
対外関係では,ロシアがウクライナで緊張を高めるなか,台湾の蔡英文政権はアメリカと共に,ウクライナ情勢に乗じた中国側の挑発行為を警戒している。とはいえ,こうした安全保障上の危機は,地理的に離れた台湾と中東欧諸国の連携や欧米諸国による「一つの中国原則(もしくは政策)」の実質的な見直しを促すなど,外交上のチャンスになる可能性もある。
(竹内:地域研究センター)
(池上:開発研究センター)
1月 | |
9日 | アメリカのポンペオ国務長官,米台政府関係者の交流制限の撤廃を発表。 |
12日 | 衛生福利部桃園病院で新型コロナウイルスの感染クラスターが発生。 |
14日 | 蔡英文総統とクラフト米国国連大使,オンライン会談。 |
14日 | 鴻海精密工業(以下,鴻海)と中国・浙江吉利控股集団,合弁会社設立。 |
16日 | 王浩宇市議の罷免の是非を問う投票で,罷免成立。 |
27日 | 経済部,半導体大手4社に対して車載用半導体の増産を要請。 |
30日 | 立法院,中華民国の国章の変更を内政部に求める決議を採択。 |
2月 | |
4日 | 外交部,ガイアナと駐在機関の相互設置を発表。ガイアナ,合意を撤回。 |
4日 | 中央疫情指揮中心(CECC),国際的な新型コロナワクチン分配枠組み(COVAX)で476万回分を割り当てられたと発表。 |
5日 | 米台,半導体サプライチェーンフォーラムを開催。 |
6日 | 黄捷高雄市議の罷免の是非を問う投票,反対多数で罷免は成立せず。 |
10日 | CECC,モデルナ社と新型コロナワクチン505万回分の購入契約を締結したと発表。 |
10日 | 蕭美琴駐米代表,ソン・キム米国務次官補代行と会談。 |
11日 | 羅昌発世界貿易機関(WTO)代表,ビスビーWTO代表部副代表(代表代理)と会談。 |
17日 | 陳時中CECC指揮官,中国が独ビオンテック社とのワクチン調達交渉を妨害したと発言。 |
17日 | 台湾積体電路製造(TSMC),茨木県つくば市への3D材料研究センター設置を発表。 |
19日 | 総統府,邱国正国防部長,陳明通国家安全局長,邱太三大陸委員会主任委員の人事を発表。 |
26日 | 中国海関総署,3月1日より台湾産パイナップルの輸入を禁止すると発表。 |
3月 | |
3日 | CECC,アストラゼネカ(AZ)製新型コロナワクチン第1弾の到着を発表。 |
4日 | 謝長廷駐日代表,アメリカ駐日大使公邸を訪問,ヤング臨時代理大使と会談。 |
9日 | デービッドソン米インド太平洋軍司令官,「6年以内に中国軍が台湾に侵攻する可能性がある」と発言。23日にアキリーノ次期同司令官も同様の発言。 |
16日 | 日米安全保障協議委員会,共同発表で「台湾海峡の平和と安定の重要性」に言及。 |
22日 | 医療従事者への新型コロナワクチン公費接種,開始。 |
22日 | 空軍のF-5E戦闘機2機,空中衝突。パイロット2人が死亡。 |
23日 | 長栄海運運航のコンテナ船,スエズ運河で座礁。29日離礁。 |
25日 | 米台,沿岸警備ワーキンググループ設置に関する覚書を締結。 |
28日 | パラオのウィップス大統領ら,来訪。 |
4月 | |
1日 | パラオとのバブル方式による団体観光旅行,開始。 |
2日 | 花蓮県で台湾鉄路の特急タロコ号が工事車両と衝突,脱線。最終的に50人が死亡。 |
3日 | CECC,COVAXによるAZ社製ワクチンの初入荷分が4日に到着すると発表。 |
9日 | アメリカ国務省,台湾との接触に関する新ガイドラインを制定したと発表。 |
11日 | 張崇哲駐ブラジル代表,アメリカのチャップマン大使と面会時の写真を公開。 |
13日 | 原子能委員会,福島第一原発の汚染水放出に遺憾の意を表明。 |
13日 | アメリカ政府主催の半導体会議にTSMCが出席。 |
14日 | アメリカのドッド元上院議員ら,来訪(~16日)。 |
14日 | CECC,15日より国内航空会社の国際線乗組員に対する防疫措置を緩和すると発表。 |
16日 | 「台湾海峡の平和と安定の重要性」に言及した日米首脳共同声明,発表。 |
19日 | 林佳龍交通部長,引責辞任。 |
21日 | 海外渡航の予定がある一般市民向けの新型コロナワクチン自費接種,開始。 |
23日 | CECC,国内航空会社のインドネシア国籍パイロットの新型コロナ感染を発表。 |
23日 | 中米経済統合銀行,台湾に事務所を開設。 |
25日 | オーストラリアのダットン国防相,台湾有事の可能性に言及。 |
25日 | 台中捷運緑線,正式営業開始。 |
29日 | 日本政府,蔡清彦・元工業技術研究院董事長に旭日中綬章,翻訳家の蔡焜霖氏と楊明風・元嘉南農田水利会会長に旭日双光章を授与すると発表。 |
5月 | |
6日 | オーストラリアのモリソン首相,台湾有事ではアメリカなどを支援すると発言。 |
10日 | 65歳以上の高齢者への新型コロナワクチン公費接種,開始。 |
11日 | 新型コロナ警戒レベル第2級,発令。 |
13日 | 台湾電力興達発電所(高雄市)で事故発生。緊急の停電を実施,約400万世帯に影響。 |
15日 | 台北市と新北市限定で新型コロナ警戒レベル第3級,発令。 |
17日 | 水不足による水力発電の出力低下のため,計画停電を実施。約66万戸に影響。 |
17日 | 『蘋果日報』(アップル・デイリー)台湾版,紙媒体を停刊。 |
18日 | 香港経済貿易文化弁事処(台湾における香港政府の出先機関),運営中止。 |
19日 | 新型コロナ警戒レベル第3級,全国に拡大(~7月26日)。 |
20日 | 蔡英文総統,未登録の銃で狩猟を行ったプヌン族の男性に対する恩赦を実施。 |
24日 | アメリカのヤング駐日臨時代理大使,駐日代表公邸を訪問,謝長廷代表と面会。 |
24日 | アメリカ政府,台湾製タイヤのアンチダンピング関税率を決定。 |
27日 | 日EUオンライン首脳会談,共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」に言及。 |
28日 | 日本の茂木外務大臣,台湾など各国への新型コロナワクチンの提供を検討と発言。 |
30日 | 楊翠促進転型正義(移行期正義促進)委員会主任委員,辞任。 |
30日 | 立法院,宇宙開発法案を可決成立。 |
6月 | |
3日 | アメリカ,台湾への新型コロナワクチン提供を表明。 |
4日 | 日本の茂木外務大臣,台湾へワクチン124万回分の提供を発表。同日午後,到着。 |
6日 | ダックワース,クーンズ(民主党),サリバン(共和党)ら上院議員3人,来訪。ワクチン75万回分の提供を発表。 |
9日 | 日豪2プラス2閣僚オンライン会談,共同声明で「台湾海峡の平和と安定」に言及。 |
9日 | 台湾製新型コロナワクチン,生産開始。 |
10日 | 鄧振中政務委員とアメリカのタイ通商代表,オンライン会談。 |
16日 | マカオ,駐台湾マカオ経済文化弁事処の運営中止(19日以降)を発表。 |
18日 | 立法院,コロナ特別予算第3次追加案を可決。 |
20日 | アメリカから新型コロナワクチン250万回分,到着(19日に追加を表明)。 |
20日 | 駐香港台北経済文化弁事処,台湾人職員7人が帰国。 |
30日 | 第11回米台貿易投資枠組み協定協議,開催。 |
7月 | |
12日 | 上海復星医薬集団とTSMC,鴻海,新型コロナワクチン売買契約を締結。 |
13日 | 一般向けの新型コロナワクチン公費接種の受付サイト,受付開始。 |
15日 | アメリカ在台湾協会(AIT)のサンドラ・オウドカーク台北事務所長,着任。 |
20日 | 外交部,リトアニアに「台湾代表処」を設置すると発表(設置は11月)。 |
28日 | 政府要人のLINEアカウントがサイバー攻撃を受けたと報道される。 |
28日 | 台湾電力第2原発2号機,人為ミスで緊急停止。 |
30日 | 駐香港台北経済文化弁事処,最後の台湾人職員が帰国。 |
31日 | リトアニアが融通した新型コロナワクチンが到着。 |
8月 | |
4日 | アメリカ国務省,台湾へのM109A6自走榴弾砲40輌(7.5億ドル)の売却を承認。 |
17日 | 行政院,商品クーポン券(振興5倍券)の10月発行決定。 |
19日 | アメリカのバイデン大統領,米台同盟は北大西洋条約機構と同じと発言。 |
20日 | 日本の外務省,徐興慶中国文化大学校長および2団体に外務大臣表彰を授与。 |
23日 | 台湾製ワクチンの接種,開始。蔡英文総統が最初の接種を受ける。 |
27日 | 民進党と日本の自民党,「外交防衛政策意見交換会」を開催。 |
9月 | |
5日 | ポーランドが融通した新型コロナワクチン,到着。 |
16日 | ヨーロッパ委員会の「インド太平洋協力戦略」,台湾海峡の安定に言及。 |
17日 | 柯文哲台北市長と鄭文燦桃園市長,中東欧諸国による「自由都市協定」に署名。 |
18日 | 中国,台湾産バンレイシおよびレンブ(ワックスアップル)の輸入禁止を決定(20日以降実施)。 |
22日 | 行政院と経済部,環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(TPP11/CPTPP)への加盟申請を発表。 |
25日 | 国民党主席選挙で朱立倫が当選。 |
26日 | スロバキアが融通した新型コロナワクチン,到着。 |
26日 | 鴻海,米ローズタウン・モーターズ社のEV組み立て工場と設備購入を発表。 |
10月 | |
3日 | アメリカ国務省,中国に台湾への威嚇の中止を要求。ブリンケン同長官も(6日)。 |
5日 | オーストラリアのアボット元首相,来訪。蔡英文総統と会談(7日)。 |
6日 | リシャール元国防相らフランス元老院(議会上院)議員4人,来訪(~10日)。 |
9日 | リトアニアが融通した新型コロナワクチンの第2弾が到着。 |
18日 | MIHコンソーシアム,3種類のEV試作車を発表。 |
20日 | 龔明鑫国家発展委員会主任委員,スロバキア,チェコ,リトアニア訪問(~30日)。 |
22日 | 外交部とアメリカ国務省,台湾の国際社会への参加について事務レベルで協議。 |
23日 | 陳柏惟立法委員(台中市第2区)の罷免の是非を問う投票で,罷免が成立。 |
24日 | 呉釗燮外交部長,スロバキア,チェコ,ベルギー訪問。 |
25日 | オーストラリアのダットン国防相,台湾有事でのアメリカとの共同行動に言及。 |
26日 | アメリカのブリンケン国務長官,台湾の国連システムへの参加を支持すると発言。 |
26日 | 蔡英文総統,CNNのインタビューで,国内に少数の米軍が駐留していると発言。 |
31日 | アメリカ,2回目の新型コロナワクチンの提供を発表。12月1日に到着。 |
11月 | |
3日 | ヨーロッパ議会「EUの民主的プロセスに対する外部干渉に関する特別委員会」公式訪問団,来訪(~5日)。 |
3日 | 日本政府,王金平・元立法院長に旭日大綬章,何美玥・元経済建設委員会主任委員に旭日重光章,宝覚禅寺の林善超主任委員に旭日双光章を授与すると発表。 |
9日 | アメリカ議会上下院議員6人,来訪。蔡英文総統と会談,国防部を訪問(10日)。 |
9日 | TSMC,ソニー子会社と合弁で熊本に工場設置を表明。 |
12日 | ホンジュラスのエルナンデス大統領,来訪(~14日)。 |
12日 | オーストラリアのダットン国防相,台湾有事でのアメリカとの共同行動に再度言及。 |
15日 | 陳建仁・前副総統,ポーランド,リトアニア訪問(~22日)。 |
16日 | アメリカのバイデン大統領,米中首脳会談で台湾関係法と「6つの保証」に言及。 |
18日 | 駐リトアニア台湾代表処,開設。 |
22日 | 遠東集団の中国法人,罰金処分を受けたと報じられる。 |
23日 | 第2回米台経済繁栄パートナーシップ対話,オンラインで開催。 |
25日 | アメリカのタカノ下院議員ら5人,来訪(~27日)。26日,蔡英文総統と会談,国防部や退役軍人委員会を訪問。 |
26日 | 中国軍東部線区,台湾海峡で戦闘準備のための巡回を行うと発表。 |
29日 | 蔡英文総統,バルト3国議員団と会談。 |
29日 | ロイター通信,アメリカなど7カ国が台湾の潜水艦建造を支援していると報道。 |
30日 | 徐旭東遠東集団董事長(会長),聯合報への投書で,台湾独立への反対を表明。 |
30日 | 韓国と租税協定締結。 |
12月 | |
1日 | 安倍晋三元首相,「台湾有事は日本,日米同盟の有事でもある」と発言(7日にも)。9日,台湾外交部が謝意を表明。 |
2日 | 外交部,立法院,台湾亜洲交流基金会,アメリカのNational Democratic Institute,「開放国会論壇」を開催(~3日)。 |
3日 | アメリカのブリンケン国務長官,中国軍の台湾攻撃を強く牽制する発言。オースティン国防長官も同様の発言(4日)。 |
5日 | スロバキアのガレック経済副大臣,来訪(~10日)。台湾と9項目でMOU締結(9日)。 |
6日 | ソロモン諸島のソガバレ首相,同国内の暴動を台湾の仕業と発言。外交部,「事実無根」と反論。 |
7日 | 王美花経済部長,アメリカのレモンド商務長官とオンライン会談。米台技術貿易および投資協力枠組みの創設に合意。 |
9日 | ニカラグア,台湾との断交を発表。 |
9日 | アメリカ主催の「民主主義サミット」(~10日),オンライン開催。蕭美琴駐米代表と唐鳳政務委員が参加。 |
10日 | 立法院,コロナ特別予算第4次追加案を可決。 |
14日 | 高雄市の集合住宅で大規模火災。46人死亡,41人負傷。 |
15日 | アメリカ議会上院,台湾の環太平洋合同演習参加を求める国防授権法を可決。 |
15日 | ドルジ前議長らフランス国民議会議員6人,来訪。16日,蔡英文総統と会談。 |
18日 | 4件の公民投票,実施。すべて否決。 |
20日 | 経済部投資審議委員会,TSMCの熊本工場投資を認可。 |
24日 | 2018年に制定した三大投資支援プラン,2022年から3年間の延長決定。 |
29日 | 台湾株式市場,過去最高の1万8248.28ポイントを更新。 |
(注)1)「山地原住民区」のみ例外として,「地方自治団体」とされ,また「区民代表会」が設置される。
(出所)行政院(http://www.ey.gov.tw/),監察院(http://www.cy.gov.tw/)および司法院(http://www.judicial.gov.tw/)ウェブサイトを参照。
(注)1)*は女性。2)下線は行政院会議での議決権を持つ。 3) 点下線ほか,6直轄市の市長が閣議に列席可能。
(注)*は女性。
(注)
1)パプアニューギニア,フィジー共和国とは相互承認関係にあるとされてきた。しかし,パプアニューギニアは2018年2月に台湾側駐在機関の外交特権を剥奪した。
2)2020年2月にソマリランドと二国間協定を締結し,相互に国家承認した。ただし,台湾のほかに,ソマリランドを国家承認している国はない。
3)2021年12月,ニカラグア共和国と断交した
4)1),2)を除き,台湾と正式に国交を締結している国は14カ国。
(出所)内政部ウェブサイト(https://www.moi.gov.tw),行政院主計総処ウェブサイト(http://www.dgbas.gov.tw/),中央銀行ウェブサイト(http://www.cbc.gov.tw/)。
(注)2019年,2020年は修正値。2021年は暫定値。
(出所)行政院主計総処ウェブサイト(http://www.dgbas.gov.tw/)。
(注)2019年,2020年は修正値。2021年は暫定値。
(出所)表2に同じ。
(注)2018年~2020年は修正値。2021年は暫定値。
(出所)財政部ウェブサイト(http://www.mof.gov.tw/)。
(注)2017~2020年は修正値。2021年は暫定値。資本勘定と金融勘定の符号は(+)は資本流出,(-)は資本流入を意味する。
(出所)中央銀行ウェブサイト(http://www.cbc.gov.tw/)。
(注)2021年と2022年は法定予算。歳入および歳出には中央政府債発行に伴う収入と償却費が含まれないため,歳入と歳出は一致しない。債務費は中央政府債の利子支払いである。また,この数値に特別予算に対する決算は含まれていない。2019年~2021年は修正値。
(出所)表2に同じ。
(注)承認ベース。
(出所)経済部投資審議委員会ウェブサイト(http://www.moeaic.gov.tw/)。