アジア動向年報
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各国・地域の動向
2021年のバングラデシュ 経済の復調と地方選挙での混乱
日下部 尚徳(くさかべ なおのり)
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2022 年 2022 巻 p. 441-464

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2021年のバングラデシュ

概 況

2021年のバングラデシュでは全国市長選挙が実施され,与党アワミ連盟(Awami League: AL)の候補者が8割以上の市で勝利した。また,チョットグラム特別市市長選挙においてもALの候補者が勝利を収めた。主要野党のバングラデシュ民族主義党(Bangladesh Nationalist Party: BNP)は,多くの市でALによる不正を訴え選挙をボイコットした。また,2021年後半にかけて実施された全国ユニオン(行政村)議会選挙では,ALの推薦を得られなかった党員が独立候補として戦い,多くの議席を獲得した。しかし,野党候補者や独立候補への脅迫や支持者への暴力が平然と行われ死者が多数出るなど,大きな混乱が生じた。

一方,政権批判に対するデジタル・セキュリティ法の恣意的な運用に批判が高まり,同法によって拘束された作家の死亡事件から全国的な抗議活動が展開された。また,交通事故によって学生が死亡したことを受けて,道路の安全を求める学生運動が全国規模で活発化した。

経済は,企業支援策と輸出先国での需要回復から主力の繊維・縫製産業を中心に輸出産業が順調な回復を遂げ,実質国内総生産(GDP)は前年比5.43%増のプラス成長となった。出稼ぎ労働者からの海外送金も復調し,過去最高額を記録した。

外交面においては,新型コロナウイルスワクチンの確保をめぐって印中間を揺れ動いたものの,デルタ株の爆発的な感染拡大でインドからのワクチン供給が滞ったことから,中国製ワクチンの確保に舵を切った。また,バングラデシュ独立50周年記念式典に参加するため南アジア各国の首脳がダカを訪れたが,インドのモディ首相訪問時にイスラーム保守系団体のメンバーによる抗議デモが勃発し,全国でヒンドゥー教徒やヒンドゥー教寺院が襲われる事態となった。

国内政治

全国市長および特別市市長選挙でALが圧勝

新型コロナウイルスの影響を受け,全国市長選挙は5つのフェーズに分けて実施され,そのうち第2~第5フェーズが2021年の間に行われた。1月16日に第2フェーズとして60の市で実施された市長選挙では,AL候補が46人,BNP候補が4人,独立候補が8人,国民党(Jatiya Party: JP)候補と国民社会主義党(Jatiya Samajtantrik Dal: JSD)候補がそれぞれ1人ずつ選ばれる結果となった。続く第3フェーズは1月30日に62の市で,第4フェーズは2月14日に55市で,第5フェーズは2月28日に29の市で実施されたが,多くの市でBNPがALによる不正を訴えてボイコットしたことから,ALの候補が圧勝した。2020年末から続いた市長選挙全体では,ALが185市,BNPが11市,独立候補が32市,JPとJSDがそれぞれ1市ずつで勝利する結果となった。

一連の市長選挙では,多くの市で電子投票機(Electronic Voting Machine: EVM)が使用された。EVMが使用された市では一般的な投票用紙を使用した市よりも投票率が平均して5ポイント低く,また前回の選挙と比べて30ポイント近く投票率が下がった選挙区もあったことから,EVM使用選挙への不信や国民への周知不足が指摘された。選挙管理委員会はEVMの使用によって有権者の選挙に対する信頼の低下はなかったとしている。

また,1月27日にチョットグラムで特別市市長選挙が実施された。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け2020年3月から1年近く延期されていた今回の選挙では,市長の座をめぐってALのレザウル・カリム・チョウドゥリー候補とBNPのシャハダット・ホセイン候補が争った。結果的に2015年の前回選挙に引き続きALの候補者であるレザウルが36万9248票を獲得し,5万2489票のシャハダットに大差をつけて勝利した。選挙をめぐっては各地でAL支持者とBNP支持者との間で衝突が発生し,2つの投票所が閉鎖されたほか,AL関係者が投票所を訪れたBNP支持者を暴力的に妨害する様子があちこちで目撃され,SNSなどによって拡散された。こうした混乱を避けるために外出を控えた人が多かったことから,投票率は22.52%の低水準にとどまった。国民はこうした不公正かつ暴力的な選挙に諦めに近い感情を有しており,ALによる一党支配体制のもと非民主的な選挙が常態化している。

ユニオン議会選挙

2021年後半にかけては全国でバングラデシュの最小行政単位であるユニオンの議会選挙が実施された。前回の2016年選挙同様に全6フェーズに分けられた一連の選挙のうち第1~第4フェーズが2021年中に実施された。ユニオン議会選挙は前回選挙から政党ベースで行われるようになったが,与党ALでは党公認候補の決定に際して各地で造反者が続出した。その背景には,有力野党不在の状況で党の内部統制に綻びが生じ,候補者を一本化できなかったことや,縁故主義に対する反発などから党の地方本部が推薦した人物を党中央が公認しなかったことなどがある。造反者が独立候補として立候補するにあたっては,脅迫などの立候補妨害が公然と行われて大きな混乱が生じたが,地域に強い地盤をもつ独立候補が善戦する結果となった。

注目される議長ポストに関しては,第1フェーズの6月21日(204ユニオン)と9月20日(160ユニオン)でALが76%,第2フェーズの11月11日(835ユニオン)で56%,第3フェーズの11月28日(1000ユニオン)で53%,第4フェーズの12月26日(836ユニオン)で49%のポストを獲得した。BNPが多くの選挙区でボイコットを宣言していたにもかかわらず,回を重ねるごとにAL候補が苦戦を強いられる形となった。躍進したのはALの造反候補を含む独立候補で,選挙管理委員会によると2021年に選挙結果が確定した2985のユニオンのうち1251カ所で独立候補が勝利した。

交通安全を求める学生の抗議活動

11月24日,ダカ南特別市において,17歳の学生がゴミ収集車に轢かれて死亡する事故が発生した。死亡した学生の通っていたカレッジの学生たちが学校周辺やダカの交通の要所であるグリスタン通りを封鎖し,亡くなった学生のための正義の実現,遺族への補償,無免許運転の取り締まりなどを求める抗議活動を行った。抗議行動は他の学校に通う学生らを巻き込んで大規模化し,要求項目も「公共交通機関において学生料金を半額にすること」「公共交通機関における女性の安全」「近代的な交通システムの構築」などにまで拡大した。これに対し警察は抗議活動の参加者を拘束する厳しい取り締まりを行った。また,ALの学生組織であるチャットロリーグ(Bangladesh Chhatra League: BCL)のメンバーが抗議活動参加者に暴力を振るう様子が多数のメディアで報道された。

そうしたなか,5日後の11月29日,ダカで再び19歳の学生がバスに轢かれて死亡する事故が起きた。その日のうちに学生と周辺住民数百人が集まって道路を封鎖し,複数台のバスを破壊するに及んだ。相次ぐ交通事故に抗議行動は全土に拡大し,12月まで続いた。

こうした学生たちによる道路の安全を求める全国規模の運動は2018年にも見られた。しかし,学生たちの抗議にもかかわらず,バングラデシュでは現在でも多くの人が無謀な運転や無免許運転によって引き起こされた交通事故で死亡している。道路安全財団が発表したレポートによると,2021年11月の1カ月間に379件の交通事故によって413人が死亡,532人が負傷した。全国に拡大した抗議活動を受けてカデル運輸・橋梁相は,公営バスの学生料金の導入を発表し,学生たちの要求を一部認める姿勢を示した。しかし,12月4日に学生へのBCLの暴力や警察による過剰な取り締まりを否定したうえで,学生の抗議運動の背後に政治勢力の関与があるのではないかと発言し,物議を醸した。

言論の自由に対する抑圧

デジタル犯罪の取り締まりを目的に,裁判所からの令状なしに捜索または逮捕する権限を治安当局に認めるデジタル・セキュリティ法(Digital Security Act: DSA)が2018年9月に可決された。それ以降,政権に批判的なジャーナリストやブロガー,政府職員,大学教員,野党政治家らの逮捕・拘束が相次いでおり,国内外の人権団体から批判が高まっている。

2021年2月26日,作家のムシュタク・アハメドが政府のコロナ対応をFacebookで批判したことを理由に裁判なしで約10カ月間拘留された末,死亡した。同氏をはじめ風刺画家や市民団体のメンバー11人がDSAの下に起訴され,2020年5月6日から拘束されていた。この事件に対する世論の反発は大きく,翌日ダカでDSAの廃止と拘束者の解放を求めるデモが開かれ,国際的な人権団体からも非難が相次いだ。

3月1日には,ミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官が政府に対して同氏の死亡に関する調査とDSAの運用見直しを求める声明を発表した。また,9月26日にブリュッセルで開かれたEUのガナー・ヴィーガンド欧州対外活動庁アジア太平洋総局長とモメン外相との会談で,EU側からDSAがデジタル犯罪との闘いという掲げられた目的以外のために使われることへの懸念が伝えられた。

批判の高まりを受け,内務省は同氏の死亡に関する調査委員会を設置したが,一方でDSAに基づく拘束や言論弾圧はその後も相次いだ。国際シンクタンクのカーネギー国際平和基金によると,2020年1月から2021年10月31日までの間にDSAに基づいて754件の訴訟が起こされ1841人が起訴された。訴えを起こされた人びとのうち同基金が職業に関する情報を収集できたのは675人で,そのうち29.5%が政治家,25.6%がジャーナリストであった。

言論の自由に対する抑圧はDSAの濫用にとどまらない。5月17日に政府の汚職や違法行為に関する調査報道で知られる『プロトム・アロ』紙の記者ロジナ・イスラムが,保健・家族福祉省管轄下の保健サービス課での会議の後,政府文書を盗み出そうとしたとして国家機密法(Official Secret Act)違反容疑で逮捕された。同氏が保健省の職員らによって5時間にわたって拘束,暴行を受け,警察に携帯やパスポートを没収されるなど不当な扱いを受けたことから,ジャーナリストらは保健省の記者会見をボイコットし,抗議の姿勢を見せた。同特派員は事件前,新型コロナウイルス対策における保健省の汚職についてのリポートを執筆しており,今回の逮捕との関連性が疑われた。一連の経緯を重く見たオランダのフリー・プレス・アンリミテッドは,同特派員に「自由報道賞2021」を贈ることで国際的にこの問題をアピールした。

国境なき記者団(RSF)が2002年より発表している報道自由指数では,バングラデシュは2010年に178カ国中126位だったのが,2021年には180カ国中152位となり,徐々に順位を落としている。

ロヒンギャ難民キャンプにおける治安の悪化

2017年のミャンマー軍によるロヒンギャ集落の大規模掃討作戦から4年が経ち,難民たちを当初好意的に受け入れてきたホストコミュニティもコロナ禍で疲労の影がみられた。また,帰還を前提とした受け入れ政策の影響により教育や就労の機会が制限されてきた難民たちは,社会のなかでますます周縁化され不満を募らせた。

難民の流入は現地の人びとのこれまでの生活を一変させる。例えば,援助物資として配給されるコメや豆,調理用油をロヒンギャが転売するため,これらの商品の価格が下落する。一方,十分な配給がない新鮮な野菜や肉,魚,薪,小麦粉などは,ホストコミュニティを通じて購入することになるため,これらの市場価格は上昇する。また,原則禁止されてはいるものの,現金収入を得たいロヒンギャが低賃金で日雇い労働に就くことで,労働賃金の低下もみられる。国連開発計画(UNDP)の調査によれば,キャンプ周辺では2018年の段階で20%もの賃金低下がみられた。

こうした価格変動をうまく捉えた一部の商人は利益を上げることに成功し,土地持ちの富裕農家は賃金の低下により日雇い労働者を雇いやすくなった。しかしながら,稲作を主な生業とする大多数の農民,とりわけ土地なし貧困層にとっては負の影響のほうが大きく,次第に人びとはロヒンギャのせいで生活が厳しくなったと感じるようになった。膨大な数の援助関係者が地域に入ってくることで,家の賃料やリキシャ(人力車),三輪タクシーの乗車賃など,日常生活にかかわるものの価格が目に見えて上昇したことも,ロヒンギャに対する怒りへとつながった。加えて,難民を狙うブローカーがホストコミュニティの住民も標的とすることで,人身売買や児童婚の脅威が以前よりも高まったとの認識や誘拐,強盗といった犯罪が増えたと感じる人が増加したとの調査結果もある。

こうした不安定な状況を反映して難民キャンプとその周辺では治安が著しく悪化し,不審火や殺人事件,薬物の密輸入業者と警察・国境警備隊との銃撃戦が相次いだ。3月22日には,コックスバザールのバルカリ難民キャンプにおいて大規模な火災が発生し,国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表によると15人が死亡,550人が負傷,400人が行方不明となり,4万5000人が避難を余儀なくされた。火災の原因は特定されていないが,ホストコミュニティやロヒンギャ内部抗争関連の放火の可能性も噂された。

また,9月29日には,ウキヤ難民キャンプにおいてロヒンギャ難民の活動家モヒブ・ウッラーが殺害された。同氏はミャンマーでの迫害や難民キャンプでの生活を国内外に発信する目的で設立された「平和と人権のためのアラカン・ロヒンギャ協会」(ARSPH)の代表で,2019年にはジュネーブに招かれUNHCRの会合に参加したこともあったが,帰国して以降何者かに脅迫を受けていた。

こうしたホストコミュニティと難民間の軋轢を緩和し,キャンプの環境を改善するため,政府は難民の一部をコックスバザールからベンガル湾に浮かぶバシャンチョール島へ移送する取り組みを進めてきた。しかし,国際人権団体が離島の災害リスクや難民の意に沿わない形での強制的な移住が行われることへの懸念を表明してきたこともあり,国連機関は対応を明確にしていなかった。

5月26日,インドにサイクロン「ヤース」が上陸し,隣国であるバングラデシュでも5人が死亡する被害が出たが,バシャンチョール島では死者や負傷者が出なかったとして政府関係者は島の安全性を強調した。

しかし,5月31日にUNHCRの職員がバシャンチョール島を訪問した際に,すでに島に移住していた難民による数千人規模の移送反対デモが発生するなど,移送に関する説明が難民や援助団体に十分に行なわれているとは言い難い。難民にとって島への移送は単に災害リスクだけの問題ではなく,コックスバザールのキャンプでは規制を潜り抜けてわずかに確保できていた移動や労働の機会までもが奪われることを意味する。2021年にはバシャンチョール島から脱出を図ったロヒンギャ難民が多数拘束されている。

経 済

コロナ禍の影響からの経済回復

2020/21年度(2020年7月~2021年6月)の実質国内総生産(GDP)は28兆3394億4400万タカ(基準年2015/16年度)となり,GDPは前年比5.43%(新基準年2015/16年度。旧基準年2005/06年度価格では5.47%)成長となった。特に工業部門の伸びは著しく,前年に新型コロナウイルスによる落ち込みがあったとはいえ,コロナ禍前の2018/19年度に次ぐ前年比10.29%(新基準年)増となった。新型コロナウイルス流行が始まった2019/20年度のGDP成長率は3.51%(旧基準年)にまで落ち込んだが,政府による経済支援策と輸出先国での需要回復から主力の繊維・縫製産業を中心に輸出産業が順調な回復を遂げたことで全体のGDPが押し上げられた。中低価格商品が主力のため,先進国の景気悪化の影響を大きく受けなかったことも幸いした。2020/21年度の既製服の輸出額は,新型コロナウイルス感染拡大のなかでも前年比12.55%増となった。

2020/21年度の消費者物価指数に基づくインフレ率は年平均5.56%で,食料品に限ると5.73%,非食料品は5.29%となった。政府の同年度のインフレ目標5.4%をわずかに上回る結果となった。財務省は新型コロナウイルスの影響を受けるなかでも,政府の企業支援策によりサプライチェーンへの影響が最小限に抑えられ,インフレ圧力の軽減につながったと評価している。

しかし,食料品においてはロックダウンにともなう国内での供給不足や主要輸入元の生産減によって,ニンニクやタマネギ,唐辛子,鶏肉など国民に身近な食材の多くに価格上昇がみられ,とりわけコロナ禍で苦しむ貧困層の生活を圧迫した。また,2021年末にかけては非食料品のインフレ率がやや上昇基調にあり,液化石油ガスや軽油,灯油の値上がりが相次いだ。石油輸出国機構(OPEC)による原油の協調減産やウクライナ情勢の緊迫化が続くなか,エネルギー価格の上昇にともなうインフレ圧力の上昇・長期化に懸念が示された。

新型コロナウイルス対策

政府によるコロナ禍の経済支援の総額は2020年11月までに1兆2135億タカ,GDPの4.3%の規模にまで達していたが,その大半が企業向け融資で,経済への影響を最小限に抑えるための施策であった(『アジア動向年報2021』参照)。

こうした大規模経済対策により輸出型産業を中心に企業の業績は持ち直したものの,2021年に入ると度重なるロックダウンによる国内需要の減少から,農村を中心に生活が立ち行かなくなった人びとの苦境が目に見える形で現れるようになった。政府は,4月18日に新型コロナウイルスと自然災害により影響を受けた低所得層350万世帯に対して一世帯当たり2500タカ,4月4日の暴風による被害を受けた農業従事者10万世帯に同5000タカを単発で給付することとした。しかし,一世帯当たりの額があまりにも少ないことから,形だけの貧困層支援であるとして批判が高まった。

そのため政府は7月13日に追加の支援策を打ち出した。コロナ禍の影響を受ける労働者に対して1人当たり2500タカの現金給付を行うもので,計45億タカが計上された。日雇い労働者約144万人,運輸交通に携わる労働者約24万人,小規模事業者5万445人,海運に携わる労働者1603人が対象となった。しかし,支援対象は全人口の1%にも満たず,ごく少数の労働者を対象に少額の支援が繰り返されたことに,国民からは落胆の声が聞かれた。また少数民族や大河の中州に暮らす最貧困層など,社会的マイノリティが排除されているとしてNGOなどは非難を強めた。

繊維・縫製産業における新型コロナウイルスの影響

7月1日,政府はデルタ株の急速な感染拡大を受け再度ロックダウンを敷いた。政府関係者はこれまでで最も厳格なロックダウンだと言及したが,多くの人びとが帰省するイスラーム教の祭日・イード・アル=アドハーにあたる7月21日の前後に移動制限が解除される一方で,すべてのオフィスや工場に対して7月23日から8月5日まで閉鎖を指示するなど,政策に一貫性がみられなかった。

感染拡大初期の2020年3月には,欧米のアパレルメーカーがバングラデシュの工場への注文を大量にキャンセルしたことが問題となったが,2021年7月のロックダウン時には欧米諸国からの需要は復調していた。そのためバングラデシュ商工会議所(FBCCI)は7月16日,工場閉鎖によって海外からの注文に対応できず,経済に深刻な影響を与えるとして輸出産業関連工場を規制対象から外すよう政府に要求した。

この要求を受け,政府は予定されていた規制解除の日程を前倒しし,縫製業をはじめ輸出産業に対しては特別に8月1日からの工場再稼働を認めた。しかしながら,デルタ株によって感染が急拡大しているなかでの工場再開は労働者を感染リスクにさらす。また,イード前後で地方に帰省していた労働者たちが工場再開を前に都市部に殺到することで人流が増え,感染が拡大することに対して国民の批判が高まった。

7月18日からはガジプルの縫製工場の労働者向けに,8月28日からはチョットグラムとコルノフリの輸出加工区(EPZ)の労働者向けにワクチン接種が開始されたが,脆弱な労働環境に置かれた人びとを感染から守るための措置としては遅きに失した感が否めない。工場でクラスターが発生したという噂は絶えず,労働者たちも陽性反応が出て仕事を失うことを恐れ,検査を積極的に受けようとはしなかった。

また,コロナ禍で働く労働者の待遇も問題視された。縫製工場が多く位置するダカのアシュリア地区やガジプル市などの計7824カ所の縫製工場のうち,7月15日時点で20%にあたる1539の工場が労働者に対して6月分の給与を,イードのボーナスに至っては75%近い5824の工場が支払っていなかったことが,現地報道機関による分析で明らかになった。コロナ禍においても政府の支援によって成長を維持した繊維・縫製産業だが,その成長の果実が末端の労働者たちに届いているとは言い難い。

海外送金額が過去最高

12月に国際移住機関(IOM)が発表した「世界移住レポート2022」によると,2020年時点でバングラデシュはインド,メキシコ,ロシア,中国,シリアに次いで世界6番目の移民送り出し国となっており,約740万人のバングラデシュ人が国外で生活している。

2020/21年度の海外送金額は暫定値で2兆1013億1000万タカ(約247億7771万米ドル)と過去最高に達した。新型コロナウイルスの影響を受け,各国で出稼ぎ労働者の新規受け入れが停止されたことで2020年に海外へ出国した新規出稼ぎ労働者人口は21万7669人と前年の3分の1以下まで減少したが,2021年には61万7209人となり急速に回復した。また,違法な送金を抑止し正規ルートでの送金を促すため,政府が送金時のインセンティブの割合を引き上げたことも送金額増加に寄与した。

一方で,新型コロナウイルスの影響から自国民の雇用を優先する動きや,景気の悪化による労働市場の供給過多などにより,バーレーンやイラク,クウェート,ブルネイ,モーリシャスといった国々への新規派遣が停滞した。また,4月にはデルタ株の急速な感染拡大にともない,湾岸諸国が相次いで南アジアからの入国規制を強化するなど,新型コロナウイルスの感染状況が出稼ぎ労働者に与える影響はいまだ小さくない。

対外関係

対インド関係:モディ首相訪問とヒンドゥー教徒への暴力拡大

3月26日,バングラデシュは独立50周年を迎え,政府主催の式典が10日間にわたって開催された。その間,南アジア諸国の代表らがダカを訪問し相次いで首脳・外相級会談が行われた。インドのモディ首相との会談は3月27日に行われ,防災および軍の士官育成に関する協力,貿易是正措置,情報通信技術(ICT),スポーツ等の分野で覚書を交わしたほか,鉄道建設計画や両国間の懸案事項であるティースタ川の水配分問題について議論がなされた。式典の最終日にはモディ首相が対面で出席し,ハシナ首相の父親ムジブル・ラフマン元大統領・首相にガンディー平和賞を授与するなど,両政権の親密ぶりをアピールした。

しかし,ムスリムに対する排外的かつ強権的な政治姿勢が問題となっているモディ首相の訪問に対して,イスラーム保守強硬派のヘファジャテ・イスラーム(Hefajat-e-Islam: HI)のメンバーが全国各地で抗議活動を実施した。参加者の一部は暴徒化し,28日には全国の複数の県でヒンドゥー教寺院が破壊された。暴動は新型コロナウイルス対策として実施されたロックダウンの影響もあって次第に沈静化していったが,10月13日,クミッラでヒンドゥー教の祭日のひとつであるドゥルガ・プジャのために設置された神像の足元にコーランが置かれているという趣旨の投稿がSNS上で拡散したことをきっかけに,再び大規模なヒンドゥー教徒への暴力へと発展した。報道によると同日中に全国5県で少なくとも13カ所のヒンドゥー教寺院が攻撃を受けたほか,ヒンドゥー教徒の一般市民が営む商店40カ所が襲撃を受け,少なくとも95人が負傷した。

ハシナ首相は翌14日,事件に対して遺憾の意を表明するとともに関係者を拘束し,事態収拾のため然るべき処罰を下すと述べた。22県に準軍事組織である国境警備隊が配備され,クミッラでは41人が逮捕された。

こうした対応にもかかわらずヒンドゥー教徒に対する暴力は続き,同14日にはガジプルで少なくとも3カ所の寺院が攻撃を受けた。15日にはノアカリで数千人の人びとが寺院や商店を攻撃し寺院の管理委員会のメンバーの男性1人が殺害されたほか,シレットでもヒンドゥー教徒の住宅や商店が破壊された。チョットグラムやダカなどの大都市では,ドゥルガ・プジャのための仮設の建物を攻撃しようと集まった人びとと警察隊との間で大規模な衝突が発生するなど,混乱は全国に拡大した。

一連の暴力はドゥルガ・プジャ後も続き,バングラデシュ・ヒンドゥー教・仏教・キリスト教統一評議会が11月6日の記者会見で発表したところによると,10月13日から11月1日の間に27県で少なくとも117の寺院が破壊され,ヒンドゥー教徒が所有する家や事業所301棟が破壊された。

こうしたヒンドゥー教徒をターゲットにした暴力,威圧行為の背景には,インドでムスリムに対する襲撃事件が相次いでいることやインド北東部アッサム州での国民登録簿から多くのベンガル系住民が除外されたこと,さらには2019年12月の市民権改正法によりイスラーム教徒の難民が市民権付与の対象から排除されたことに対するバングラデシュ国民の反発がある。しかし,イスラーム保守強硬派のHIが社会的影響力を誇示するためにメンバーを動員し暴動を煽っている側面は否定できない。ハシナ首相は,事件を受けて開いた10月14日の会見のなかで暴動を主導したHIのメンバーに対して厳しい措置をとるとともに,インドに対し宗教間の調和を保つよう求める発言をしている。ただしHI全体に対する徹底的な取り締まりは行っておらず,2023年に控える選挙に向けてイスラーム保守勢力への配慮をにじませるなど,対応に苦慮している様子がうかがえる。

対米関係:特殊部隊幹部に対して制裁措置

12月9日から10日にかけてバイデン米大統領主催の「民主主義サミット」がオンライン開催されたが,バングラデシュは招待国に含まれなかった。南アジア諸国のなかではインドやパキスタン,ネパール,モルディブが招待を受けた。バングラデシュが招待されなかったという事実は,驚きと落胆をもって現地で報じられた。パキスタンとネパールは中国の隣接国で,南アジアの対中政策の緩衝地帯としての役割が期待されており,モルディブは2018年の選挙を通じて中国の影響力拡大に歯止めをかけたことが評価されたなど,さまざまな分析がなされた。一方のバングラデシュは,歴史的にアメリカと関係の深い野党BNPが地方・国政選挙に公平なかたちで参加できていないことや,人権侵害ともいえる言論統制,特殊部隊による超法規的殺害が問題視された可能性がある。

民主主義サミットと時を同じくした12月10日,アメリカでグローバル・マグニツキー人権問責法に基づく大統領令が発表され,バングラデシュの特殊部隊にあたるRAB(Rapid Action Battalion)の現・元幹部6人が制裁対象となった。米財務省は声明のなかで,RABが2009年以降600件以上の強制失踪,2018年以降600件弱の超法規的殺害,その他複数の拷問に関与していると述べている。

モメン外相は,RABを「テロ,麻薬密売,その他の凶悪な国境を越えた犯罪との戦いの最前線に立つ政府機関」と説明し,アメリカに抗議した。

対中国関係:ワクチン外交を通じた中国の影響力拡大

李駐バングラデシュ中国大使は5月10日,日米豪印による協議の枠組み(QUAD)に参加すれば中バ両国間の関係は大きく傷つくだろうと発言し,QUADによる中国包囲網ともいえる新たな外交・安全保障枠組を牽制すると同時に,バングラデシュに対して積極的なワクチン外交を展開した。

前年8月,政府は中国シノバック・バイオテック社製ワクチンの国内治験を許可し,中国製ワクチン確保の目処をたてた。しかし,9月末の治験開始直前に中国が治験に対する資金負担をバングラデシュに求め,バングラデシュ側がそれを拒否したことから中国との交渉は暗礁に乗り上げた。政府は同時に交渉を進めていたインドへのアプローチを強化し,11月にバングラデシュ政府,インドのシーラム・インスティテュート・オブ・インディア(SII),バングラデシュの大手製薬企業ベキシムコ(BEXIMCO)製薬との間で覚書が結ばれ,ワクチン3000万回分をBEXIMCOが買い上げ,政府に提供することで合意した(『アジア動向年報2021』参照)。

しかし,2021年に入りインドでデルタ株の感染が急拡大したことを受け,インドからのワクチン供給も諦めざるを得ない状況となった。ワクチン確保の見通しが不透明となるなか,バングラデシュは再度中国との交渉をスタートさせた。4月27日にインドが欠席するなかで開催された南アジア諸国とのビデオ会議において,中国は南アジアの国々へのワクチン提供を表明した。バングラデシュの保健当局は中国製ワクチン5000万回分を調達予定であることを明らかにしている。これらのワクチンには,中国からの購入分と国内生産分が含まれる。

8月16日,中国のシノファーム社とバングラデシュ政府は,バングラデシュでワクチン製剤を行うことに合意した。これによりバングラデシュ国内でシノファーム製ワクチンが生産可能となった。初期段階では月に500万回分を製剤化し,生産量を徐々に向上させ最終的には月1500万回分になることが見込まれている。また,8月29日には中国人民解放軍からバングラデシュ軍に対しワクチンが提供されるなど,ワクチンを通じた軍事交流も見られた。

対ミャンマー関係:クーデタで遠のく難民の帰還

2月1日,ミャンマーで軍事クーデタが発生したことにより,南東部コックスバザールに暮らす90万人のロヒンギャ難民の帰還に向けた道筋はこれまで以上に不透明なものとなった。クーデタを受け,バングラデシュ政府は新たな難民流入を防ぐために国境警備を強化する一方,クーデタそのものに関してはミャンマーの内政問題であるとして干渉しない立場をとった。6月18日に国連でミャンマーにおける軍事クーデタを非難する決議が採択された際も,バングラデシュは棄権している。ラバブ・ファティマ国連大使はミャンマーの政権が民主的に選ばれたものであれ軍事政権であれ,ロヒンギャの帰還を進めることが優先課題であると述べており,二国間関係を悪化させることによって帰還が妨げられるのだけは避けたいバングラデシュ政府の思惑がうかがえる。1978年および1991~1992年の過去2回の大規模難民発生時の送還事業も,軍事政権下のミャンマーとの間で実施されている。

対日関係:テロリスクの低下から危険情報レベルの引き下げへ

2021年に国際協力機構(JICA)が公表した資料によると,2020年度の日本の対バングラデシュ有償資金協力額(承認額)は3732億円となり,日本のODA供与先としてはじめてバングラデシュが1位となった。また,バングラデシュの2020/21年度予算においても,世界銀行やアジア開発銀行,他の主要ドナーをおさえて日本の援助額が1位となった。バングラデシュはASEANへの玄関口に位置し,経済と安全保障の両面で重要視されるベンガル湾を有する地政学的優位性と近年の急激な経済成長から,同国に対してインド・中国・日本が強い関心を示している。2014年9月に安倍首相が訪問した際には4~5年間で円借款を中心に6000億円の援助を約束し,マタバリ石炭火力発電所(チョットグラム)や都市高速鉄道(ダカ)に代表される「ベンガル湾産業成長地帯」(BIG-B)構想を表明した。2020年度の供与額は1年でその半分を超える大規模なもので,2016年に習近平国家主席自らダカを訪問し,200億ドルの融資を表明したもののプロジェクトが進まない中国に対して,実行力でその存在感を示すものであった。

また,2016年7月1日に発生したダカ襲撃テロ事件以降,外国人が巻き込まれるテロ事件が発生していないことから,外務省は11月10日にダカ管区の危険情報レベルをレベル2からレベル1(十分注意してください)に引き下げた。治安当局によるイスラーム武装勢力の取り締りが強化されたことから,テロ関連死者数は2016年以降減少しており,民間人の死者数は2020年にはゼロとなった(図1)。日本同様に自国民が殺害されたイタリアをはじめ,主要各国はすでに危険レベルを下げており,日本にとっては翌年に日バ国交樹立50周年を控えたこのタイミングで両国関係を前進させる意味合いもあった。

図1 テロ関連死者数

(出所)South Asia Terrorism Portal(https://www.satp.org/)より作成。

シドニーに本拠を置くシンクタンク経済平和研究所(IEP)が公表するテロリスクの高さを示す世界テロ指数では,2020年のバングラデシュのリスク順位は163カ国中41位で,2019年は同33位,2018年同31位と徐々に順位を下げている(上位ほどリスクは高い)。2020年の同指標ではパキスタンが8位,インドが10位,スリランカが21位,ミャンマーが24位,ネパールが30位となっており,近隣諸国のなかで最もテロの脅威を軽減することに成功した国のひとつであるといえる。

しかし,ダカ襲撃テロ事件の首謀者であるネオJMB(neo Jamaat-ul-Mujahidin Bangladesh)は水面下で活動を継続しているとみられており,警察のテロ・国際犯罪対策班(CTTC)からの情報によると,ネオJMBの軍事部門出身者20人が「イスラーム国ベンガル州」を名乗る委員会を結成したとされる。また,シリアやイラク,アフガニスタンで活動するイスラーム武装勢力に合流したバングラデシュ人が帰国して,国内のグループに参加するケースが報告されている。

2022年の課題

政権寄りであると批判されたヌルル・ヒュッダが率いる5人の選挙管理委員会の5年の任期が2022年2月14日に終了することから,政府は次期総選挙に向けた委員会の人選に着手した。しかし,BNPは選出手続きそのものがALに有利に働く不公正なものであるとして,2011年に廃止された中立的な非政党選挙管理内閣制度の復活を求めている。2022年はナラヤンゴンジ特別市市長選挙など2023年末の国民議会選挙を占ううえで重要な選挙も予定されており,与野党間の駆け引きなど選挙に向けた動きが激しくなると考えられる。

BNPは国民から一定の支持を得ているものの,カレダ・ジア総裁をはじめとする党のリーダーが拘束され,党勢の巻き返しを図るのが難しい状況にある。また,ジアBNP総裁は2021年の間に6回もの入退院を繰り返しており,体調の悪化が懸念される。

一方のALも選挙を前に74歳のハシナ首相の後継者問題がいよいよ顕在化する。本人の続投が有力視されているが,党内部では後継者レースによって党の結束が揺らぐ可能性を不安視する声もある。

バングラデシュは11月24日の第76回国連総会で,ラオス,ネパールとともに後発開発途上国(Least Developed Country: LDC)卒業が認められた。これにより今後5年間の準備期間を経て2026年11月24日にLDCを卒業する予定だ。卒業するとLDC向けの関税優遇措置が終了することから,産業界は政府に対して主要貿易相手国との自由貿易協定(FTA)や特恵貿易協定(PTA)の締結を求めており,交渉への準備が進められる見込みだ。

経済においては,燃料価格の高騰にともなう物価上昇の抑制が課題となる。とりわけ食料価格の高騰は国民生活を圧迫し,政権の支持率にも影響しかねない。コロナ禍においては輸出産業を守ることに主眼をおいた対策をとったことから不公平感を感じている国民も多く,政府としては物価上昇によってこれ以上国民の不満が高まることは避けたい。

外交面では,ワクチン確保に向けて一転して中国との交渉が進んだが,インドからのワクチン供給も再開され,印中間をまたにかける全方位外交が展開されるだろう。中国はバングラデシュがQUADに参加することを警戒しており,2022年もインフラ輸出や民間投資,ワクチン外交を通じてバングラデシュに接近する姿勢を見せることが予想される。

(立教大学異文化コミュニケーション学部准教授)

重要日誌 バングラデシュ 2021年

1月
6日 バ印両国,6河川における取水量のデータを二国間で共有することに合意。
15日 新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)対策のため,教育機関閉鎖,1月30日まで延長。コウミマドラサは対象外。
16日 60の市で市長選挙実施。
19日 バングラデシュ,ミャンマー,中国の3カ国外務省関係者による会合。ロヒンギャ送還事業を協議。
21日 インドが無償提供したワクチン200万回分が到着。25日にはバングラデシュ政府購入の500万回分が到着。
27日 国内初のコロナワクチン接種実施。
27日 チョットグラム特別市市長選挙の実施。
29日 ロヒンギャ難民約3000人,バシャンチョール島に移送。
30日 62の市で市長選挙。1市で延期,1市は対抗候補がおらず無投票当選。
2月
3日 カーン内相,ミャンマーでのクーデタ発生を受け国境警備強化を発表。
14日 55の市で市長選挙実施。
15日 バシャンチョール島にロヒンギャ難民約3500人が移送される。
23日 モメン外相,訪米。ブリンケン米国務長官と会談。
26日 デジタル・セキュリティ法(DSA)に基づき起訴されていた作家のムシュタク・アハメドが拘束中に死亡。各地で抗議デモ。
28日 29の市で市長選挙実施。
28日 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と伊藤駐バングラデシュ大使,コックスバザールのホストコミュニティと避難民支援のための無償資金協力に係る覚書調印。
3月
1日 バチェレ国連人権高等弁務官,政府に対しムシュタク・アハメドの死亡に関する調査とDSAの運用見直しを求める。
2日 ロヒンギャ難民1073人,バシャンチョール島に移送。
3日 米・豪・日の駐バングラデシュ大使,合同でコックスバザールを訪問(~4日)。
3日 高等裁判所,DSAの下10カ月にわたって拘束されていた風刺画家アフメド・コビル・キショルの保釈を認める。
4日 ジャイシャンカル印外相来訪。モメン外相と会談。
8日 タシュヌバ・アナン・シシル,トランスジェンダー女性初のニュースキャスターとして番組登板。
9日 モメン外相,アメリカのミラー駐バングラデシュ大使と会談。
14日 フォトジャーナリストのショフィクル・イスラム・カジョル,DSAに基づき起訴される。
17日 シェク・ムジブル・ラフマン生誕記念日。政府は独立記念日の3月26日までの10日間にわたるイベントを開始。
17日 スナムゴンジ県でヘファジャテ・イスラーム(HI)の支持者らがヒンドゥー教徒コミュニティを襲撃。
17日 国連代表団バシャンチョール島訪問。
18日 ハシナ首相,モルディブのソリ大統領と会談。
20日 ハシナ首相,スリランカのラージャパクサ大統領と会談。
22日 ハミド大統領,ネパールのバンダリ大統領と会談。
22日 コックスバザールのバルカリ難民キャンプで大規模火災発生。
24日 ハシナ首相,ブータンのツェリン首相と会談。
26日 独立50周年記念式典にモディ印首相出席。HIのデモ隊が警察と衝突し死者多数。
27日 ハシナ首相,モディ印首相と会談。
28日 モディ印首相来訪を受けてHI支持者らが起こした抗議活動が複数の県で過激化。ヒンドゥー教寺院の破壊相次ぐ。
4月
3日 欧米諸国,日本,トルコなどの駐バングラデシュ大使が合同でバシャンチョール島を視察。
5日 ロックダウン開始。宗教省,ラマダン期間中のモスクでの食事の禁止を発表。
6日 政府,コロナ拡大を受け,コウミマドラサの閉鎖を決定。
7日 政府,サイバー法廷を全国8管区すべてに新設。
7日 ケリー米大統領特使来訪。ハシナ首相と会談。
17日 チョットグラムの石炭火力発電所でのデモに警察が発砲し5人死亡。
19日 政府,インドからのコロナワクチン調達が困難となったことを受け,他の調達元を見つけることを目的に委員会を設置。
22日 ハシナ首相,アメリカ主催のオンラインでの気候変動サミットに出席し演説。
26日 ハシナ首相,第77回国連アジア太平洋経済社会委員会会合にオンラインで出席。
27日 モメン外相,中国主催のインドを除く南アジア各国との閣僚級会合に出席。
5月
8日 国内初のデルタ株感染者確認。
9日 バングラデシュ民族主義党(BNP)のジア総裁の海外渡航申請棄却。
10日 中国の李駐バングラデシュ大使,バングラデシュがQUADに参加すれば中バ両国間の関係は大きく傷つくだろうと発言。
11日 モメン外相,中国の李駐バングラデシュ大使の前日の発言に遺憾の意を表明。
17日 大手新聞「プロトム・アロ」のロジナ・イスラム記者,国家機密法違反容疑により拘束。
18日 政府と国連,ロヒンギャ人道危機に対する合同対応計画立ち上げ。
19日 政府,中国シノファーム社からのワクチン購入を決定。
21日 モメン外相,中国の王外相と電話会談。中国はワクチン60万回分の無償提供を表明。
23日 スリランカとの間で2億ドル相当の通貨スワップ協定成立。
23日 ロジナ・イスラム記者保釈。
26日 サイクロン「ヤース」により子ども4人を含む5人が死亡。
26日 教育機関閉鎖,6月12日まで延長。
27日 政府,シノファーム社からのワクチン1500万回分購入を決定。
29日 シレットで地震発生。
31日 UNHCR職員,バシャンチョール島訪問。難民による数千人規模のデモ発生。
6月
6日 独立戦争問題省,シェク・ムジブル・ラフマン暗殺に関与した4人の武勇勲章剥奪。
8日 アラム外務担当相,伊藤駐バングラデシュ大使と会談。
10日 選挙管理委員会,コロナ感染拡大を受け163のユニオンでの選挙の延期を発表。
15日 モメン外相,国連総会出席。ロヒンギャ問題に対する安保理の関与を求める。
18日 国連総会,ミャンマー軍に対し暴力の即時停止を求める決議案を採択。バングラデシュは棄権。
21日 204のユニオンと2つの市での地方議会選挙,ロッキプル2区補欠選挙の実施。
27日 ハミド電力・エネルギー・鉱物資源担当相,10の石油火力発電所建設プロジェクトの中止を正式に発表。
28日 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の調査委員会,5月にロジナ・イスラム記者が拘束された件の法的根拠を60日以内に示すよう政府に書面で求める。
29日 政府,7月1日からのロックダウン期間中の不要不急の外出に対する罰則を決定。
7月
1日 ロックダウン開始。
4日 災害対策・救援省,災害とコロナにより失業などの影響を受けた人々の支援のため地方当局に現金とコメを割当。
8日 ナラヤンガンジ県で工場火災。9日までに52人死亡。
13日 政府,総額320億タカのコロナ禍の経済対策パッケージを発表。
13日 政府,コロナ感染拡大防止のためイード後の7月23日から8月5日まですべての工場を閉鎖するよう通知。
15日 モメン外相,訪問中のウズベキスタンで中国の王外相,インドのジャイシャンカル外相とそれぞれ会談。
16日 モメン外相,訪問中のウズベキスタンでロシアのラブロフ外相と会談。
16日 バングラデシュ商工会議所(FBCCI),工場閉鎖によるサプライチェーンへの悪影響に懸念を表明。政府に工場稼働の承認を要求。
19日 政府,23日から原則すべての企業のオフィス・工場の閉鎖を発表。
26日 政府,3つの郡の新設を承認。全国の郡の数は495となる。
30日 政府,工場閉鎖に関する方針を転換し,8月1日から輸出産業の工場稼働を認めると発表。
8月
2日 政府が工場操業再開を認めたにもかかわらず公共交通機関が運行されていない状況に抗議し,ガジプール県で衣料品工場労働者らが2時間にわたり高速道路を封鎖。
10日 コックスバザールでロヒンギャ難民に対するコロナワクチン接種開始。
11日 政府,中国シノファーム社からワクチン6000万回分を追加購入することを決定。
16日 政府,シノファーム社,バングラデシュのインセプタ社が覚書に調印。インセプタ社がワクチンのボトリングなどを請け負う。
17日 ミャンマー軍のロヒンギャに対するジェノサイド・人道に対する罪についてのアルゼンチンでの裁判に関連し,難民がバングラデシュのキャンプからオンラインで証言。
27日 ADB,17.8億ドル規模の融資承認。
27日 タンガイル県のヒンドゥー教寺院で女神像が何者かによって破壊される。
28日 ダカでメトロレール試験走行。
31日 モメン外相,ジュネーブでバチェレ国連人権高等弁務官と会談。
9月
2日 ハシナ首相,ダカ=アシュリア間高架高速鉄道プロジェクトに関する中国輸出入銀行の融資案を承認。
2日 バングラデシュ民間航空公社(CAAB),5日からの航空便運行再開でインドと合意。
6日 モメン外相,ラーブ英外相と会談。
8日 アラム外務担当相,国連・EU主導のターリバーンとの対話への参加を発表。
9日 第4回バ英戦略対話でイギリス側がDSAやバングラデシュでの超法規的殺害に懸念を表明。
12日 学校の対面授業を部分的に再開。
18日 コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプにおいて2回目のコロナワクチン接種開始。
20日 160のユニオンと9市で選挙実施。
24日 ハシナ首相,国連総会で演説。
29日 ウキヤの難民キャンプにおいてロヒンギャ市民団体のモヒブ・ウッラー代表が殺害される。
10月
1日 マレク保健・家族福祉相,ジュネーブで世界保健機関(WHO)テドロス事務局長と会談。
4日 ハシナ首相,新たな選挙管理委員会は首相管轄下の調査委員会のもとで設立されると発表。
9日 政府,バシャンチョール島での支援活動に関して国連との間で覚書調印。
10日 ループプル原子力発電所1号機の原子炉圧力容器の運用開始。記念式典でハシナ首相は原子力発電所増設の可能性に言及。
13日 クミッラでヒンドゥー教徒に対する暴力事件発生。各地でヒンドゥー・コミュニティに対する襲撃相次ぐ。
22日 コックスバザールの難民キャンプでロヒンギャ6人殺害。UNHCRは深刻な懸念を表明。
25日 ハシナ首相,パキスタンのシッディーキー高等弁務官と会談。
11月
1日 ハシナ首相,国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の全体会合で演説。
3日 ハシナ首相,ジョンソン英首相と会談。
9日 ハシナ首相,フランスを訪問しマクロン大統領,カステックス首相と会談。
11日 835のユニオンで議会選挙実施。
17日 第76回国連総会第3委員会,ミャンマーのロヒンギャおよびその他のマイノリティの人権状況に関する決議を採択。
23日 国産コロナワクチン「ボンゴヴァックス」のヒトへの臨床試験実施承認。
24日 ダカ南特別市で17歳の学生がゴミ収集車に轢かれ死亡。学生が街頭で抗議活動。
24日 国連総会でバングラデシュ含む3カ国の後発開発途上国卒業に関する決議採択。
26日 アルゼンチンの裁判所,ミャンマー軍のロヒンギャに対するジェノサイドについての公判を行うと決定。
26日 政府,抗議活動を受けバスの学生運賃を12月1日から半額とすることを決定。
28日 1000のユニオンで議会選挙実施。
29日 ダカで19歳の学生がバスに轢かれて死亡。事故を受け大規模な抗議デモが発生。
30日 各地で交通安全を求める学生デモ。
30日 ハシナ首相,インドのドーライースワミー高等弁務官と会談。
30日 スジョン鉄道相,スペイン訪問。
12月
2日 UNHCRの代表団がバシャンチョール島訪問。
2日 シュリングラ印外務次官来訪。モメン外相と会談。
9日 バイデン米大統領が「民主主義サミット」開催も,バングラデシュは招待されず。
10日 アメリカ,グローバル・マグニツキー人権問責法に基づく大統領令。バングラデシュの特殊部隊(RAB)とその現・元幹部6人が制裁対象となる。
10日 国内初のオミクロン株感染者確認。
10日 2017年に女性2人が性暴力を受けた事件の被告5人に無罪判決。判決を受け女性権利擁護団体が抗議。
16日 戦勝記念日。50周年記念パレードにコーヴィンド印大統領ら出席。
16日 アルゼンチンの裁判所でミャンマー軍のロヒンギャに対するジェノサイドについての公判開始。
19日 モメン外務次官,イスラーム協力機構(OIC)会合でアフガニスタンへの人道支援を表明。
19日 イムラン在外居住者福利厚生・在外雇用相,マレーシアのサラバナン人的資源相と覚書調印。
19日 イスラム鉄道相,ロシア訪問。
23日 ハシナ首相,モルディブのソリ大統領と会談。
26日 836のユニオンで議会選挙実施。

参考資料 バングラデシュ 2021年

① 国家機構図(2021年12月末現在)
② 行政単位(2021年12月現在)

(注)1)2021年7月26日に3つのUpazila(郡)が新設され,全国の総数は495となった。

(出所)Statistical Yearbook of Bangladesh 2020(May 2021 発行)より作成。

③ 要人名簿(2021年12月31日現在)

(注)*女性閣僚。

主要統計 バングラデシュ 2021年

1 基礎統計

(注)1)消費者物価上昇率,為替レートは年平均値。

(出所)人口データはBangaldesh Bureau of Statistics, Gross Domestic Product of Bangladesh, 2020-21Final)より,その他はBangladesh Bank, Monthly Economic Trends, January 2022より作成。

2 支出別国民総所得(名目価格)

(注)1)2020/21年度は暫定値。

(出所)Bangladesh Bureau of Statistics, Bangaldesh Bureau of Statistics, Gross Domestic Product of Bangladesh, 2020-21p) などより作成。

3 産業別国内総生産(基準年2015/16年度価格)

(注)1)2020/21年度は暫定値。2)市場価格。3)固定市場価格。

(出所)Bangladesh Bank, Monthly Economic Trends, January 2022より作成。

4 主要輸出品

(注)1)2020/21年度は暫定値。

(出所)Bangladesh Bank, Monthly Economic Trends, January 2022より作成。

5 国際収支

(注)金融収支の符号は(-)が資本流出,(+)は資本流入を意味する。1)2020/21年度は暫定値。

(出所)Bangladesh Bank, Bangladesh Bank Quarterly, July-September 2021 などより作成。

6 政府財政

(出所)Ministry of Finance,Budget in Brief 2021/22などより作成。

 
© 2022 日本貿易振興機構 アジア経済研究所
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