アジア動向年報
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各国・地域の動向
2021年の中国 3期目を見据えて社会への引き締め強化を図る習近平政権
内藤 寛子(ないとう ひろこ)山田 七絵(やまだ ななえ)
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2022 年 2022 巻 p. 97-126

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2021年の中国

概 況

2021年の中国は,習近平党総書記・国家主席が政権の第3期目を見据えるなかで,権力基盤の強化に力を注いだ一年であった。国内政治では,歴史決議の採択や建党100周年の重要演説によって習近平の権威の強化が図られた。習近平政権は宇宙開発や海洋問題の中心的な役割を担う人民解放軍との関係を深化させるとともに,少数民族やデータセキュリティへの統制を強めている。

経済は前年と合わせた2年平均で5.1%の成長となり,第14次5カ年計画の初年としてまずまずのスタートを切った。輸出と生産が好調な一方,「ゼロコロナ」政策や不動産不況の影響を受け内需は低迷した。法規制の徹底により民間企業への統制が強化された。「双循環」戦略のもと,イノベーションの推進や都市化による国内市場の活性化と格差の是正を目指すと同時に積極的な対外開放を展開した。

対外関係では,アメリカのインド太平洋戦略にみられるような欧米諸国の対中包囲網に対抗するため,「一帯一路」構想やワクチン外交を用いた国際新秩序の形成を目指した。そのため,アフガニスタン情勢や対ASEAN外交を「地域の問題」とし,中央アジアやASEAN諸国との関係強化に努めている。

国内政治

第三の「歴史決議」の採択と習近平の権威を強調

2022年秋の中国共産党全国代表大会(党大会)を見据え,習近平総書記は自身の権威を一層強調した。中国共産党第19期中央委員会第6回総会(第19期6中全会)では,「党の100年にわたる奮闘の重大な成果と歴史的経験に関する党中央の決議」(以下,歴史決議)が採択され,習近平政権のこれまでの成果を総括した。

建国以降,歴史決議は2度採択されてきた。ひとつ目は,1945年第6期7中全会の「若干の歴史問題に関する決議」である。これは,中国共産党結成以降の成果を振り返るとともに,そのなかでの誤りを指摘することで党内の反対勢力を抑え込み,毛沢東路線の正当性を主張した内容であった。この決議が採択されたことで,毛沢東の党内における絶対的な主導権は確立された。ふたつ目は1981年第11期6中全会の「建国以来の党の若干の歴史問題に関する決議」である。鄧小平によって起草された決議で,1966年から10年続いた文化大革命を「建国以来最大の深刻な挫折と損失」と認め,毛沢東の後任として党主席となった華国鋒が主張する「2つのすべて」路線を否定する内容を含んでいた。この決議を契機として鄧小平は党内における権力を奪取し,その後改革開放路線に進んだ。2つの歴史決議の共通点は中国共産党の歴史的成果を総括している点と,前政権の誤りに言及することで現政権の権威付けを行っている点である。

これまでの歴史決議と比べ,第19期6中全会で採択された歴史決議は2つの特徴がある。第1に,中国共産党あるいは前政権の歴史的成果の是非を明確にするよりも建党100周年を踏まえた中国共産党100年の歴史を総括している点である。第2に,習近平政権以前の中国共産党の歴史を3つに区分するなか(①新民主主義革命の時代,②社会主義革命と建設の時代,③改革開放と社会主義現代化の新時代),習近平が政権についた第18回党大会(2012年)以降を「中国の特色ある社会主義の新時代」とすることで江沢民や胡錦濤とは異なる一時代を築く指導者であることを印象付けた点である。これまでの歴史決議のように前政権の直接的な批判こそ行ってはいないものの,中国共産党史における習近平政権の重要性を明確化させようとするねらいであろう。

また,歴史決議は習近平政権期を「小康社会が全面的に完成する時代」「全人民の共同富裕を徐々に実現していく時代」「中華民族の偉大な復興という中国の夢を実現する時代」「中国が人類により大きな貢献をし続けていく時代」と位置付けている。習近平政権は,これまでと同様に今後も,経済的には持続可能な発展を維持しながら,核心的利益とされる対象への統制を確実にし,国際社会においては新しい秩序の形成を主導するアクターになることを目指すと考えられる。

建党100周年を迎えて高められる習近平の権威

7月1日の中国共産党創建100周年を記念する祝賀式典の重要演説で,習近平総書記は中国共産党の指導的立場を強調するとともに自らを党中央・全党の核心に位置付け,第3期目を見据えて自身の権威化を加速させた。習近平はそのなかで,これまでの政権運営は「五位一体」(経済建設,政治建設,文化建設,社会建設,エコ文明建設の一体化の推進)と「四つの全面的」(小康社会の全面的実現,改革の全面的深化,法に基づく国家統治の全面的推進,全面的な厳しい党管理)を推し進めたと総括した。そして習近平は,これからの中国共産党による一党支配体制を維持するために,「四つの意識」(政治意識,大局意識,核心意識,一致意識)を高め,「四つの自信」(中国の特色ある社会主義の道の自信,理論の自信,制度の自信,文化の自信)を固め,「二つの守る」(党中央の核心,全党の核心としての習近平の地位を守り,習近平を核心とする党中央の権威と集中統一指導を守る)を成し遂げなければならないと強調した。「二つの守る」として習近平を核心に位置付けながら,これまでの指導者である毛沢東,鄧小平,江沢民,胡錦濤を,中国共産党を代表する党員として列挙するにとどめたことから,習近平の権威が一層高められているようにみえる。

習近平は重要演説のなかで香港と台湾についても言及し,アメリカへの対抗姿勢を強めている。また,香港の「一国二制度」と「港人治港」(香港住民による香港管理)を貫徹するためには国の主権・安全保障・発展の利益を守ることが必要であるという従来の主張がみられた。台湾に関して習近平は,「あらゆる『台湾独立』のたくらみを断固として粉砕し,民族復興の素晴らしい未来を共に築かなければならない」「いかなる者も,国家の主権と領土保全を守る中国人民の強固な決意,断固たる意志,強大な能力を過小評価してはならない」と述べ,より強硬的な発言を行った。このような台湾に対する強気な姿勢は,10月9日に北京で開かれた辛亥革命110周年記念式典における習近平の重要演説でも確認することができる。習近平は,軍事的な手段を放棄しないながらも「平和的な方法」でと前置きをしつつ,「台湾統一を必ず実現する」という意志を鮮明にした。

そして,このような建党100周年記念大会で述べられた「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」(習近平思想)が9月から高校までの教材に組み込まれることとなった。これに関して教育部は「教育に対する党の命令的指導の強化は,党や国のための人材を育て,党中央の政策を貫徹するために必要な要求である」との通知を出した。習近平の権威の高まりは思想教育においても進んでいる。

アメリカを意識した「強軍路線」の推進

習近平政権はアメリカを意識しながら,引き続き「強軍路線」を突き進んでいる。2021年の国防費予算は前年度比6.8%増の1兆3553億元を確保し,前年度伸び率は2018年度以来3年ぶりに上昇した。習近平政権は第3期目を見据え,人民解放軍幹部の処罰・異動を実施することで軍への統制を強化するとともに,宇宙開発や台湾をめぐる安全保障といった重要分野における軍の活動を活発化させている。幹部の処罰・異動として注目されたのは西部戦区であった。同戦区は人民解放軍の地方別統合作戦指揮組織として全国で5つ設けられたうちのひとつで,四川や重慶,新疆ウイグル,チベットといった中国西部を管轄するとともにインドやアフガニスタン,中央アジアの国境管理を担当する。前年12月から戦区司令官を担当していた張旭東が体調不良を理由に辞任し,その後任に徐起零が就任したことが7月6日の中央軍事委員会上将昇進式で明らかになった。しかし,徐起零はわずか2カ月で退任し,汪海江が後任に据えられた。徐起零の異動先は明らかになっていない。

2021年は中国の宇宙開発が特に活発にみられた。その中心的な役割を担っているのが人民解放軍であることは,同軍の戦略支援部隊が宇宙開発に深くかかわっていることや,中央軍事委員会装備発展部長の李尚福が中国有人宇宙飛行計画の総指揮を担当していることからもわかる。中国初の有人宇宙ステーションの建設が開始され,4月29日にはコアモジュールである「天和」が打ち上げられた。習近平総書記は宇宙強国の建設をリードする重要なプロジェクトであると指摘している。6月17日には有人宇宙船「神舟12号」が打ち上げられ,「天和」とドッキングし3人の宇宙飛行士が乗り移ることに成功した。その他にも中国とロシアによる共同での国際月研究センターの建設合意(3月9日)や火星探査ミッション探査機「天問1号」の着陸成功(5月15日)など,習近平政権は積極的に宇宙開発を推進している。中国の宇宙開発について,習近平は「人類の宇宙の平和的利用を目的とする」としているが,宇宙開発に関わる科学技術を軍事的に利用する可能性も高いとして,国際社会は警戒感を強めている。

2月1日から海警部隊に武器使用を認める「海警法」が施行されることを受けて,中国の南シナ海や東シナ海への実効支配をどの程度強めるのか,その際に人民解放軍はどのような役割を担うのかに注目が集まった。海警法への対応から,アメリカと台湾は3月26日に海岸警備に関する協力覚書に調印した。台湾国防部によると,米台の協力覚書が調印された同日に台湾が設定する防空識別圏に合計20機の中国軍機が侵入したという。9月15日には米英豪3カ国の新たな安全保障協力枠組であるAUKUSが結成され,日米豪印(QUAD)と合わせて安全保障面における対中包囲網の強化が図られた。10月2~3日(沖縄南西海域)および4~9日(南シナ海)には日本,アメリカ,イギリス,カナダ,オランダ,ニュージーランドの6カ国が初めて合同軍事演習を実施し,中国に対する軍事的圧力を加えた。これに対抗するように,10月2~4日には習近平が中央軍事委員会を緊急で開催し,台湾の南西域で台湾への軍事的圧力を強化するよう指示を出したとされる。12月31日に行われた新年茶話会では,習近平は両岸関係の平和的な発展に言及しているものの,2021年の中国による台湾海峡の中間線や防空識別圏への侵入回数は過去最多となり,台湾への軍事的圧力を確実に強めている。

進む少数民族の「漢化」政策

アメリカが「ウイグル強制労働防止法」を成立させるなど(2022年6月下旬施行予定),新疆ウイグル自治区の人権問題に関して国際社会から多くの批判を受けているなかで,習近平総書記は少数民族地域を多く訪れており,「中華民族共同体意識の定着」を推し進めると強調した。各少数民族の国家への帰属意識を高める「漢化」をさらに展開することを指しているのだろう。4月25~27日に習近平は広西チワン族自治区を視察した。同自治区は広東省および東南アジア諸国と接しており,広東香港マカオ大ベイエリア建設や「一帯一路」構想の重要地域であることから,「独特の地理的優位性を開放発展の優位性に転換しなければならない」と指摘されている。加えて,「中国の特色ある社会主義の道で中華民族の偉大な復興を実現できると確信するよう教育,指導」するとも強調され,宣伝教育の重要性が示された。6月7~9日の青海省視察で習近平はチベット民族関連地域を訪問し,生態環境保護に関する状況や同民族の人々の生活状況などの聞き取りを行った。そのなかで,青海省が新疆・チベットの安定を維持するために重要な地域であると確認し,「中華民族の共同体意識を固め,民族団結進歩のモデル省建設を深めなければならない」と述べた。

その後7月21~23日に習近平は党書記就任後初めてチベット自治区を訪れている。党書記の同地への訪問は1990年に江沢民が訪れて以来であり,31年ぶりであった。また習近平は視察として,川蔵(四川=チベット)鉄道の建設状況やチベット文化の伝承・保護といった事業などを訪れ,そのなかで「党中央のチベット工作の方針・政策は完全に正しいものである」と党中央のこれまでの対チベット政策の正当性を主張した。8月19日のチベット解放70周年の記念式典では,特設会場に習近平の肖像画が飾られ,同地への習近平の権威付けが図られた。

少数民族地域への視察後となる8月27~28日に2014年以来7年ぶりの中央民族工作会議が開催された。習近平が重要演説として,「党の民族工作で得られた最大の成果は,中国の特色ある民族問題解決の正しい道を開いたことにほかならない」と述べ,これまでの少数民族政策の正しさをアピールした。そして,中華民族共同体意識をしっかりと根付かせることと,各民族が中国の特色ある社会主義に対する強い帰属意識をもつようにさせることが重要であると強調された。今後の少数民族政策は一層「漢化」政策を徹底することになるだろう。

社会を管理するための制度の整備

中国共産党は,企業による情報の越境やSNSなどのメディア,少子高齢化対策など社会を管理する制度の整備を進めた。6月7~10日の第13期全国人民代表大会常務委員会(以下,全人代常務委)第29回会議で「データ安全法」(9月1日施行)が可決され,データの取り扱いに関する包括的な法律が制定された。本法に基づき,データの安全保障義務やデータの越境移転制限が課せられることになり,7月2日にはタクシー配車アプリ最大手の「滴滴出行」(ディディ)が扱っている電子データに国家安全上のリスクがあるとして審査対象となった。ディディがアメリカ市場に上場して間もなくのことだった(12月上場廃止を申請)。また『環球時報』に「巨大インターネット企業に国家よりも詳細な中国人の個人情報データベースを掌握させることも,それを許可なく利用できる権利を与えることも決してすべきではない」との主張が掲載されたため,多くの情報を掌握するIT企業への政権側からの管理の強化だとする見方もある。

中国で利用者の多いSNSなどを含むメディアやそのコンテンツなどへの規制も強化された。8月に国家新聞出版総局は未成年者のオンラインゲームの規制を一段と厳しくする通知を出した。すでに6月1日に施行された「未成年保護法」で夜間にゲーム企業が未成年の利用者に対してオンラインゲームを提供することを禁止しており,本通知によってその時間がさらに拡大した。ユーザーのゲーム依存を規制強化の理由としているが,ゲーム内容に対しても厳しい審査が行われるようになっていることから,ゲームを介して接する欧米文化や思想の影響を排除する目的やオンラインによってユーザーが組織化することへの懸念があるのではないかと考えられている。

また,9月2日にはアイドルオーディションのような番組を放映しないことと,ファンのコミュニティー文化を排除することの通知が出された。これはオーディションの際に行う投票と共通の趣味を通じた集団の形成への規制であった。この他にも女優の鄭爽(ジェン・シュアン)やインフルエンサーの黄薇(ウェイヤー)が脱税で処罰を受けたことがわかった。中国では近年娯楽市場が急拡大していることもあり,俳優の納税や芸能事務所の経理への審査が厳しくなってきている。なかでも,有名女優の趙薇(ヴィッキー・チャオ)は8月から消息不明である。依然としてその理由は不明だが,中国電子商取引大手のアリババ・グループ傘下の映画会社であるアリババ・ピクチャーズ・グループへの多額の出資やペーパーカンパニーの創設など不透明な金銭の動きが問題になっているようである。

社会を管理する制度の整備の3つ目として,出産に関する政策の変更が決定した。2016年1月に「一人っ子政策」が撤廃され,すべての夫婦が2人目の子供をもつことが可能となっていた。5月31日の党中央政治局会議では「出産政策を最適化し,人口の長期的に均衡のとれた推移を促す決定」が審議され,1組の夫婦に3人まで出産を認める政策を実施すると決定した。人口過疎の省から先行して実施するとし,すでに20あまりの省で人口計画出産条例の改正が完了している。しかし,2020年度の出生率は前年度比で18%減少しており,「一人っ子政策」が撤廃された後もその低下が著しい。今回の政策も出生率の増加に寄与するかどうかは疑わしく,中国の高齢化社会は急速に進むことになるだろう。

(内藤)

経 済

貿易と生産は好調,内需は低迷

2021年の国内総生産(GDP)は114兆3670億元,経済成長率(実質)8.1%を達成した。成長率は前年の2.3%から5.8ポイント上昇し,所期目標の6%を大きく上回ったが,これは2020年前半のコロナショックによる落ち込みの反動によるところが大きい。四半期ごとの成長率をみると1~3月は前年がマイナス6.8%であった反動で18.3%と極端に高く,それ以降の4~6月は7.9%,7~9月は4.9%,10月~12月は4.0%と大幅に減速し,前年との2年平均は5.1%にとどまった。

輸出と製造業,サービス業は好調だった。2021年の輸出入総額は39兆1009億元,前年比で21.4%増加し,貿易収支は4兆3687億元の黒字となった。生産についてみると,農業は食糧(穀物とマメ類,イモ類を含む中国独自の主食概念)総生産量が前年比2.0%増の6億8285万トンに達し,目標値の6億5000万トンを上回った。製造業は夏場に発生した電力不足により一時落ち込んだが,炭鉱の稼働再開や石炭輸入により持ち直した。品目別にみると電気自動車(EV),産業用ロボット,集積回路などハイテク産業の成長が著しい。EVの躍進は目覚ましく,販売台数(出荷ベース)は前年の2.8倍の331万2000台,乗用車全体に占める比率は15.7%に達した。サービス業は,通信や金融分野が好調だった。

一方,消費と投資は低調であった。個人消費の指標である社会消費品小売総額は44兆823億元,前年との2年平均で3.9%増にとどまった。なお,このうちネット通販が24.5%を占める。新型コロナの感染クラスターの断続的な発生や2022年2月の冬季オリンピックに向けた「ゼロコロナ」政策,不動産不況により夏場以降は飲食業がマイナス成長となるなど停滞した。固定資産投資(農家を含まず)は54兆4547億元,2年平均で3.9%増となり,消費と同様不動産市場や民間投資の冷え込みを受けて後半は足踏み状態となった。民間投資は製造業,ハイテク産業は比較的好調だったが,インフラ投資はマイナス成長であった。

消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年比0.9%,政府が合理的と考える範囲の3%を下回った。前半は上昇傾向にあったが6月以降豚肉価格の下落の影響で下がり,10月の天候不順による農産物の値上がりやエネルギー価格の高騰により11月以降再び上昇した。なお,食品を除くコアCPIの上昇率は1.4%にとどまった。工業生産者出荷価格(PPI)は国際的なインフレを背景に8.1%のプラスとなった。

人民元の対ドルレートの推移をみると,旧正月明けから元安が進み3月31日には1ドル6.57元(終値)で底値となった後は元高に転じ,6月1日には6.36元でピークに達した。秋以降再び元高が進み,年末は6.38元で幕を閉じた。中国人民銀行は人民元の急激な上昇を緩和するため,外貨預金準備率を6月15日と12月15日に2ポイントずつ引き上げ,9%とすることを決定した。外貨預金準備率の引き上げは,2007年に4%から5%へ引き上げて以来,14年ぶりとなる。

第14次5カ年計画(2021~2025年)の始動

2021年は第14次5カ年計画の初年であった。3月の全人代第4回会議の政治活動報告で,李克強総理はマクロ経済,イノベーション駆動型の発展戦略,民生や福祉,環境保全,安全保障に関する主要な目標値を発表した。

マクロ経済運営については経済成長率の安定を重視,「一減,一増,一穏中有降」(中央政府支出の削減,直接交付金の範囲拡大,レバレッジ率の安定と企業の資金調達コストの引き下げ)を継続する方針を示した。具体的な目標として,経済発展の質の向上,都市の調査失業率を5.5%以内に抑えること,常住人口ベースの都市化率を2020年の60.6%から2025年には65%に引き上げることが挙げられた。特に雇用は,都市の新規労働力約1400万人(うち大卒者は過去最高の909万人)と推定2億8000万人の出稼ぎ農民の雇用確保が喫緊の課題であり,ギグ・エコノミーと呼ばれる非正規の就業機会の確保も重視する。イノベーション駆動型の発展戦略としては,「科学技術強国」行動要綱のもと,研究開発費の増額と先進国に比べて低い基礎研究の比率の向上,製造業の研究開発投資に対する100%加算控除措置,「双創」(大衆による起業,万人による革新)の推進を掲げている。

米中対立やコロナ禍など不透明な国際情勢を反映し,国内外の2つの経済循環を促進する新しい経済発展モデル「双循環」が謳われた。これは食料,資源・エネルギー,金融分野の経済安全保障と国内市場の活性化を主軸に,加工貿易に依存した従来の発展戦略からの脱却を目指すものである。2月21日公布の中央一号文件のテーマとなった「農村振興」にも,耕地の保護や農業の現代化による食料安全保障と,都市化と戸籍制度などの改革による内需拡大というねらいがある。

環境問題への積極的な姿勢も示され,生産・生活様式のグリーン化,エネルギー構成と利用効率の是正,GDP当たりエネルギー消費と二酸化炭素(CO2)排出量をそれぞれ13.5%,18%削減することなどが掲げられた。

「農村振興」と「共同富裕」による所得格差の是正

所得格差の是正への方策として,政府は農村経済の振興と貧困層の所得向上を目指す「農村振興」と富の再分配による「共同富裕」の2つを提示している。

習近平は,2月25日に北京で開催された全国貧困脱却難関攻略総括表彰大会において現行の基準による中国の農村貧困人口9899万人がすべて貧困を脱却し,国連の貧国削減目標を10年前倒しで達成したと宣言した。現5カ年計画期は貧困脱却のための支援から「農村振興」の全面的推進に移行するための過渡期と位置付けられており,国務院扶貧開発領導小組弁公室に代わり国家農村振興局が発足,6月1日に農村振興促進法が施行された。関連して,4月13日に国家発展改革委員会は「2021年新型都市化および都市・農村の融合的発展の重点任務」を発表し,市街地の常住人口が300万人以下の中小都市における戸籍取得制限の全面撤廃,都市で5年以上就労・居住する農民工の非農業戸籍取得の許可などを定め,都市と農村を隔ててきた戸籍制度の改革に大きな一歩を踏み出した。

習近平は8月17日の中央財経委員会第10回会議で,「共同富裕」の促進と所得の合理的な調整を指示した。市場による「一次分配」と政府による「二次分配」を補うものとして,高所得層の自由意思に基づく寄付や公益事業による「三次分配」とこれに対する税減免措置の整備を決定した。中国の中所得層は推定約4億人,2035年には8億人に達する見通しで,所得の再分配によりオリーブ型の構造を目指す。中国は2035年の長期目標で1人当たりGDPを中等先進国水準にすることを目指しているが,先進国との差は依然大きく,差別的な戸籍制度などの改革を通じた農村住民の所得向上による中間所得層の拡大がカギとなる。今後は税制面のインセンティブ,信託法律制度の整備や直接税率の引き上げ,遺産相続税などの政策手段も検討される可能性がある。不動産税については全人代常務委員会が10月23日に一部地域で試験的導入を決定し,立法化に向け一歩前進した。

不動産市場の冷え込みと地方債務問題

中国人民銀行などは不動産バブルの抑制のため1月から住宅ローンの総量規制を実施し,8月5日に北京市,浙江省杭州市,四川省成都市の3都市が一斉に住宅購入規制を厳格化する政策を打ち出した。一連の規制を契機として不動産企業の資金繰りが困難となり,秋口から大手の中国恒大集団を筆頭に債務不履行(デフォルト)が相次いだ。不動産会社による大幅値下げで新築住宅の販売単価は8月に前年同月比で2.7%落ち込み,コロナショック直後の2020年4月以来の下落幅となった。70大・中都市の新築分譲住宅価格の動向をみると,8月までは前月比で「上昇」した都市数が多かったが9月に逆転し,11月には「下落」の都市が59と大半を占めた。下落した都市が過半数を占める状況は2015年5月以来となる(図1)。

図1 2021年の70大・中都市の新築分譲住宅価格の動向(前月比)

(出所)国家統計局ウェブサイト(http://www.stats.gov.cn/)より作成。

事態を収拾するため,一部の地方政府は不動産の値下げを制限する通達を出した。政府は資金繰り難から高格付け企業を保護するため,不動産会社による資産担保証券(ABS)発行を3カ月ぶりに許可した(Bloomberg News, 2021年11月17日)。不動産企業による人民元建て社債の発行は10月までに大きく落ち込んでいたが,11月には前月比3倍超の356億元に増え,信用力の高い国有企業を中心に回復に転じつつある。12月10日に閉会した中央経済工作会議では不動産投機の抑制は継続しつつも中低所得層向けの住宅開発を支援するなど,不動産関連政策の部分的な修正が示された。財政基盤がぜい弱で不動産開発への依存度の高い地方都市は,不動産不況に加え中小企業への減税措置による税収の減少により苦境に立たされており,たとえば12月23日に産炭地の黒竜江省鶴崗市が財政破綻を公表した。

関連して,地方政府がインフラ建設の資金を地方融資平台(LGFV)などのインフォーマルな金融組織から調達するいわゆる隠れ債務が増加しており,政府は問題視している。ゴールドマン・サックスによれば,2020年末時点で地方政府のLGFVの総負債額はGDPの約52%に相当する約53兆元に膨らんだ。

法規制の強化によるIT企業の締付け

2020年秋以降,独占禁止法の適用強化により大手IT企業が次々と厳しい処罰の対象となった。2020年12月に独禁法違反の疑いで捜査を受けていたネット通販最大手のアリババ集団は,2021年4月10日に出店業者に「二者択一」(自社のネット通販サイトの出展業者に競合サイトを利用しないように求める行為)を要求したとして,182億2800万元もの巨額の罰金を科された。このほか騰訊(テンセント),百度(バイドゥ)など多くのIT企業が独禁法違反による処分を受けた。

習近平は8月30日,中央全面深化改革委員会第21回会議で独占禁止の強化に関する意見などを採択し,「企業が党の指導に従うよう促さなければならない」と述べた。11月18日には国家市場監督管理総局の一部局だった独禁局を国家独禁局に格上げし,局長に就任した元副局長の甘霖は独禁法の適用を強化していく考えを示した。「一連の取り締まり強化で中国のネット大手5社の時価総額は今年,すでに計1530億ドル減った」(The Economist, 2021年7月27日)との報道もあり,中国のIT企業は信頼を失い,売上や株価に大きな打撃を受けた。

政府はデータに関する法整備の強化を本格化させ,2017年のインターネット安全法に続き,2021年9月1日にデータ安全法,11月1日に個人情報保護法を施行した。データ分野で先行するアメリカに追随し,制裁などの影響を受けない独立したデジタル経済圏を構築することがねらいとみられる。

規制の対象は中国企業の海外の活動にも広がり,6月末にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した配車アプリ最大手のディディは,上場の数日後に国家安全保障上の理由から当局のデータ管理に関する審査を受け,7月3日にNYSEの上場を廃止することを発表した。同社の株式時価総額は上場初日の682億ドルから7月2日時点で376億ドルに急減した。

知的財産権の保護も強化された。国家知識産権局によれば,1~9月の中国の知財権使用料の輸出入額は2800億元近くに達した。世界知的所有権機関(WIPO)によると,中国は世界第12位である。9月22日,政府は「知的財産権強国建設要綱(2021~2035年)」を発表し,2025年までに特許集約型産業の付加価値をGDPの13%に,知財権使用料の年間貿易額を3500億元とする目標を掲げた。

暗号資産取引の全面禁止とデジタル人民元の実用化

国務院金融安定発展委員会会議は5月21日,暗号資産(仮想通貨)のマイニング(採掘)および取引行為の取り締まりを求めた。9月24日に金融監督当局と中国人民銀行が「仮想通貨取引の投機的リスクの一層の防止・処理に関する通達」を公布し,暗号資産関連業務を全面的に禁止した。当局は犯罪への利用防止を理由に2017年から国内での取引を禁止していたが,この措置で2020年秋まで約3分の2を占めていた中国のビットコインの世界シェアは7月以降ゼロとなった。

デジタル人民元(DC/EP)の実用化に向けた実証実験も進展した。2021年6月末までに132万カ所以上でパイロットテストが行われ,金額は345億元に達した。5月には大連市で住宅ローンの返済に初めて用いられるなど実用化に近づいた。今後の国際的な普及については,中国金融学会会長の周小川は,「DC/EPの目的は国内の決済システムの現代化であり米ドルの地位に代わることではない」と述べ,中国人民銀行は他国のニーズに基づき通貨主権を尊重すると表明している。

低炭素化への取組みと電力のひっ迫

中国は対外的に2030年までにCO2排出量のピークアウト,2060年までにカーボンニュートラルを実現することを強調しており,習近平は2021年9月21日の国連総会で国外の石炭発電事業を新たに手掛けないことを表明した。7月16日には全国炭素排出権取引市場がオンライン取引を開始し,12月22日時点で炭素排出枠(CEA)の累積契約量は1億4000万トン,金額は58億200万元に達した。

ただし,依然として安価な石炭燃料への依存度は高い。9月23日以降,東北地方の遼寧や吉林など複数の地域で電力不足による停電が発生した。背景には,石炭の主要な輸入元であるオーストラリアの経済制裁による輸入停止や政府の国内の生産調整による石炭不足と価格の高騰がある。政府は各省に電力消費の抑制を求め,国家発展改革委員会は10月以降,備蓄石炭の放出,増産や輸入による調達への支援,石炭火力発電に対する基準電力価格への原則20%までの上乗せ許可などの施策を迅速に打ち出し,退蔵や投機の禁止を呼びかけた。一連の対策により11月には石炭のひっ迫はおおむね解消され,内蒙古伊泰集団など民間企業に続き,国家能源投資集団など国有企業も相次いで自発的に電力価格を引き下げた。

クリーンエネルギーへの転換も進められている。国家エネルギー局によれば1~11月の再生可能エネルギーによる発電量は前年同期比3割増の1兆355億7000万kWhに達した。これは電力消費量全体の13.8%に相当する。再生可能エネルギーの内訳は風力56.7%,太陽光29.0%,バイオマス14.3%となっている。

積極的な対外開放と多国間協定への参加

米中貿易摩擦はバイデン政権の発足後も継続し,中国の人権問題を理由とした欧米諸国からの制裁が相次いで発動されるなど膠着状態に陥った。中国は欧米のルールによる包囲から脱却するため対外開放を進め,特にデジタル分野での多国間貿易協定への参加に積極的な姿勢をみせた。9月16日,中国はかねてから参加に意欲を表明していた「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定」(TPP11/CPTPP)への加入を,また11月1日にはシンガポール,チリ,ニュージーランドが2020年6月に立ち上げた世界初のデジタル貿易協定「デジタル経済パートナーシップ協定」(DEPA)への加入を申請した。DEPAはEC,データ移動,個人情報を主要内容とし,人工知能(AI),フィンテックなどでの協力強化について規定している。

国内では外資参入規制の縮小を図り,先進技術やサービス分野での誘致を目指す。海南自由貿易港と既存の21の自由貿易試験区では,高度な市場開放のテストを行っている。6月10日に施行された海南自由貿易港法の定める自由で利便性の高い輸出入管理制度,外国人雇用制度,越境サービス分野における初めての外資参入ネガティブリストの施行に内外の期待が集まっている。

ただし,審査基準の厳しいCPTPPに中国が加入するためのハードルは高い。障壁のひとつとされる国有企業の改革については,「国有企業改革3カ年行動計画(2020~2022年)」のもと混合所有制改革が進められている。国務院国有資産監督管理委員会の郝鹏主任によれば,2021年12月までに同計画の70%が達成されたとされるが(『中国経済導報』2021年12月31日),詳細は明らかではない。

(山田)

対外関係

対立が続く米中関係

1月12日に発足したアメリカのバイデン政権は対中強硬路線を維持しており,米中関係の緊張は継続している。バイデン大統領は就任後初の外交演説で,新型コロナウイルス感染症対策や気候変動など中国との協力が不可欠な分野があることを認めながらも,中国を「最も深刻な競争相手」と位置付けた。翌月に行われた米中首脳電話会談においても,バイデンは中国政府による不公正な経済慣行や,香港の民主化運動の弾圧,新疆ウイグル自治区での人権侵害や,台湾を含む周辺地域での威圧的行為に対して懸念を表明した。

中国もアメリカへの対抗姿勢を崩していない。3月18~19日に王毅外交部長と楊潔篪中央外事工作委員会弁公室主任がブリンケン米国務長官,サリバン米大統領補佐官と米中ハイレベル戦略対話を行った。その際に楊潔篪は「アメリカには上から物をいう資格はなく,中国はその手は食わない」と発言し,アメリカに対する強烈な反発を示した。そして,これまでのアメリカからの内政干渉や対中制裁に対抗するため,第13期全人代常務委第29回会議で「反外国制裁法」が採択された。本法は,中国の主権,安全,発展の利益を脅かす行為に対して法的に対抗措置を講ずることを可能にしている。7月16日にバイデン政権が対中金融制裁を実施したことを受け,同月23日には「反外国制裁法」に基づきロス前商務長官を含む7個人および組織に対する制裁を決定した。

米中共に対抗姿勢を崩さないなかで,国際協調主義を掲げるバイデン政権の取り組みが追い風となり,経済や気候変動分野での米中協力の可能性が出てきた。6月10日の王文濤商務部長とレモンド米商務長官との電話会談では,貿易や投資といったビジネス分野などにおける意見の相違を適切に処理することで合意し,翌日の楊潔篪とブリンケンの電話会談では,対話や交流を強化し協力を主軸に据えることで一致した。9月1~2日の米中気候変動協議や9月10日の米中首脳電話会談で気候変動分野の協力について意見交換がなされ,習近平総書記は「両国が協力すればより多くのプラス要因を添えることができる」と前向きな姿勢を示した。このような両国の協力姿勢は,米中「グラスゴー共同宣言」へと繋がった。

米中対立は継続しているものの定期的な対話も試みられている。10月6日には楊潔篪とサリバンが会談し,米中関係を正しい軌道に戻すよう両国がともに努力することで一致した。その際に,バイデンと習近平が初のオンライン形式で首脳会談を実施することも決まった。11月16日の米中首脳テレビ会談では,バイデンが中国と衝突を起こす考えはないと強調した。会談では,米中対立が偶発的な軍事衝突に発展しないよう対話の継続で合意するなど一定の歩み寄りがみられた。

中国主導の国際新秩序構築の模索

アメリカ主導の「インド太平洋における戦略的枠組み」に対する中国の対抗姿勢は,国際社会における新たな秩序形成の模索という形で示されている。5月31日の中国共産党中央政治局会議で習近平総書記は「多国間主義を提唱し,一国主義と覇権主義に反対し,国際社会がより公正で合理的となる国際新秩序を共に築き,新型国際関係を構築するように導かなければならない」と述べた。これまで中国は平和的発展を主張し,現行の国際秩序の最大の受益者であると言及してきたが,習近平政権は中国を中心とする国際秩序を形成しようという動きをみせつつある。このような意図は,「ワクチン外交」や「一帯一路」構想の動向から看取できる。

「ワクチン外交」とは,中国が開発および製造した新型コロナウイルスワクチンを友好親善関係にある国に提供し,対象国への影響力を高めるという外交手段を指す。5月21日の世界健康サミットで習近平は,中国が積極的にワクチン外交を展開してきたと指摘した。実際に,2021年末までに,約20億回分の中国製ワクチンを120か国余りの国々や国際機関に対して提供している。中国の「ワクチン外交」の対象国の多くは,「一帯一路」構想の参画国であり,6月23日の「一帯一路」アジア太平洋地域国際協力ハイレベル・テレビ会議では,「一帯一路」ワクチン協力パートナーシップ・イニシアチブが発表された。

「一帯一路」への参画国は中央アフリカ共和国,ギニアビサウ,エリトリア,ブルキナファソ,シリア,サントメ・プリンシペなど確実に増えており,特にアフリカ地域への影響力を強めている。11月29日の中国・アフリカ協力フォーラム第8回閣僚級会議では,参加国のほぼすべてが「一帯一路」へ参画したことを確認するとともに,新型コロナウイルス対策や気候変動,デジタル経済や貿易などの実務での協力も強化していくことで合意した。中国のアフリカ支援の強化をめぐり欧米諸国からは「『債務の罠』を仕掛けている」という批判を受けたが,外交部報道官はこれを否定している。12月1日には中国とアフリカ連合が「一帯一路」共同建設協力業務調整メカニズム第1回会議を開き,了解覚書に調印した。

中国とロシアの蜜月関係の深化

米中対立が長期化するなかで,中国とロシアはこれまで以上に緊密な関係を築いている。王毅外交部長とロシアのラブロフ外相は2月4日の電話会談で,国際問題で内政不干渉という国際関係の基本準則を堅持し,世界と地域の戦略的安定に協力することで合意した。3月23日には中ロ外相の対面での会談が実現し,中ロは全面的戦略協力パートナーシップを高いレベルで体現していることを確認している。また,双方は国連,上海協力機構(SCO),アジア太平洋経済協力会議(APEC),BRICSなどの多国間の枠組みでの協力も一段と強化することを約束し,「グローバル・ガバナンスの若干の問題に関する共同声明」と「二国間協力文書」に調印した。中ロは共同声明で,人権問題と民主主義の推進といった内政干渉への反対を明記していることから,中ロの急速な緊密化は明らかにアメリカを中心とするインド太平洋戦略への対抗であるといえよう。さらに,6月28日の中ロ首脳テレビ会談でも共同声明を発表し,「中ロ善隣友好協力条約」の延長を正式に決定した。

中ロ協力が推進されている分野は,第1に,軍事面である。10月31日の中ロ外相会見では,AUKUSへの懸念を表明しており,翌月23日の中ロ国防相のオンライン会談では,軍事演習や巡視活動などの軍事協力を強化していく方針を確認した。すでに中ロ両軍初の「海上合同パトロール」や日本海と東シナ海上空の共同パトロールを実施している。12月15日の中ロ首脳オンライン会談では,習近平総書記が「中ロ双方はより一層共同行動を展開し,双方の安全保障上の利益を一段と有効に守らなければならない」と述べている。こうした動きからも,中ロの軍事協力のさらなる強化が予想される。

第2に,エネルギー分野である。5月19日に,習近平とプーチン大統領は中ロ原子力協力プロジェクトの田湾原発と徐大堡原発それぞれ2基の発電ユニット着工式にリモートで立ち会った。習近平は,「エネルギー協力は両国の実務協力のなかで一貫して最も重要」と強調した。11月の中ロ・エネルギー協力委員会第18回会議と第3回中ロ・エネルギービジネス・フォーラムでは,原子力分野といった重大戦略事業の協力の深化,再生可能エネルギーなどの新分野のエネルギー協力の推進,気候変動対応への協力が提案された。

そのほかにもアフガニスタン情勢をめぐる中ロ協力や,両国が参加しているSCOといった多国間枠組みにおける経済協力などを推し進めている。

アフガニスタン情勢をめぐる中央アジア諸国との連携の模索

バイデン米大統領は4月14日,アフガニスタンからの米軍撤退を発表した。これを受けて中国は,5月12日に「中国+中央アジア5カ国」外相第2回会合を開催し,アフガニスタン問題に関する共同声明を発表した。アフガニスタン情勢をめぐり,中国は中央アジア諸国との連携強化に努めると同時に,王毅外交部長が内政不干渉原則の強調やアメリカのアフガニスタン政策への非難など対米牽制姿勢をみせている。中国の動態を踏まえ,アフガニスタンのガニー大統領は習近平総書記との電話会談で,政治的危機には中国の役割が必要であると言及した。

アフガニスタンの政治的危機によって中東地域に出現した「力の空白」に対し,中国は比較的早い時期に,アフガニスタンの反政府武装勢力であるターリバーンとの接触を実現させた。7月28日に王毅は天津を訪問していたアフガニスタン・ターリバーンの政治委員会責任者バラーダルと会見し「アフガン・ターリバーンが国家と民族の利益を重んじ,和平交渉の旗を高く掲げ,和平の目標を確立し,プラスのイメージを打ち立て,包摂政策を実行すること」を求めた。その後,8月15日にターリバーンが首都カーブルを占拠し,事実上の権力奪取に成功した。

同月16日には王毅とブリンケン米国務長官が,17日には王毅とロシアのラブロフ外相がアフガニスタン情勢について電話会談を行った。王毅は双方に対してアフガニスタンで新たな内戦が発生しないよう平和構築に協力する意思を伝える一方で,ブリンケンには内政干渉への反省と内政不干渉原則の順守を要求した。このような中国の戦略的な姿勢は,多国間枠組みにおいても示された。8月30日の国連安全保障理事会で耿爽国連常駐副代表は「自らのモデルを人に押し付ける誤ったやり方を確実に改めるべき」と語気を強めた。9月8日に開かれた初のアフガニスタン隣国外相会議においても王毅は「いわゆる『民主主義改造』は失敗に終わった」と指摘した。また,10月12日の20カ国・地域グループ(G20)アフガニスタン問題首脳特別サミットにおいても,王毅は内政不干渉の基本原則を実行することを要求している。

そして,中国はアフガニスタン・ターリバーン暫定政府との直接対話をいち早く実現させた。カタール訪問中であった王毅はバラーダル副首相代行(10月25日)とムッタキ外相代行(同月26日)とそれぞれ会見を行った。両者とも国際社会が関心を寄せる人権の保護やテロの取り締まりなどについて前向きな姿勢を示すとともに,中国との二国間関係の交流を活発化させていくことを希望した。中国のアフガニスタンに対する関与政策が着実に進んでいる。

海洋問題をめぐり不安定な日中関係

2月1日に「海警法」が施行されたことにより,海洋をめぐる日中関係の緊張が増している。同日に開催された日中海洋協議団長会談においても,中国は尖閣諸島問題における原則的立場を確認するとともに日本に対して懸念を表明し,歩み寄る姿勢はないことを明確にさせた。この会談をふまえて翌月3日には日中高級事務レベル海洋協議が開催され,日本も東シナ海における中国の行動に対する懸念を表明するとともに,海警法を国際法と整合的に運用するよう求めた。

海洋をめぐる対立に関して日中防衛相の対話が複数回行われた。3月29日の「海空連絡メカニズム」第3回年次会議では,尖閣諸島の領有権および海警法の制定に関する双方の主張は平行線をたどったが,海空安全保障を維持するためのホットラインを早期開設するといった二国間安全保障関係構築に積極的に努力することでは一致した。日本の岸防衛相は4月22日の自民党議員会合で「中国は目立たないところで一歩ずつ(尖閣諸島を)侵略しようとしている」と発言し中国への警戒感を露わにしたが,12月27日の魏鳳和国防部長とのテレビ会談においては海洋をめぐる日中協力を推し進める意向を示した。

日中防衛部門の対話においては協調関係の構築を目指した話し合いが何度も行われているが,3月1日に国防部報道官は「尖閣諸島の領海内で中国公船の法執行行為を常態化させる」と表明し,2021年をとおして日本側が主張する尖閣諸島周辺領域への中国公船の侵入が頻繁に発生した。9月10日には,鹿児島県・奄美大島東方沖に中国海軍の潜水艦が潜航したことがわかり,岸は「緊張感をもって,情報収集,警戒監視に万全を期すこと」と指示している。また日本は,日米外相・防衛相2プラス2協議(3月16日)や日米首脳会談(4月16日)で海警法の施行や尖閣諸島周辺での中国公船の行動の活発化といった中国に対する懸念を表明し,共同声明には「日米両国はともに,尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動に反対する」と明記された。そのほかにも,日米共同軍事演習(9月27日~10月1日)や日米英など6カ国の集団合同軍事演習(10月2~3日)など,日本は中国を意識した軍事演習を頻繁に実施している。

岸田首相は所信表明演説で,「普遍的価値を共有する国々と連携しながら中国に対応する」と述べた。長らく延期になっていた習近平総書記の日本への公式訪問はすでに取り消されたようで,日中首脳会談(10月8日)も電話で行われた。その後11月18日の日中外相電話会談では,双方が尖閣諸島,香港,新疆ウイグル自治区といった問題に対する原則的立場を表明するとともに,2022年の日中国交正常化50周年に向けて二国間関係の長期的な安定を図るよう努力することで一致した。

中国のASEANへの戦略的な接近

中国は南シナ海問題では妥協しない姿勢をみせながらも,アメリカや欧州諸国による対中包囲網に対抗するように,ASEANとの緊密な関係構築を図っている。1月10~17日にかけて王毅外交部長はミャンマー,インドネシア,ブルネイ,フィリピンの4カ国を歴訪した際に「われわれはASEAN加盟国と共に,多国間主義を隠れ蓑にしたグループ政治に反対する」と言及し,アメリカが主導するインド太平洋戦略的枠組みを牽制した。中国のASEANへの接近として,第1にASEAN加盟国を対象としたワクチン援助がある。1月の王毅によるASEAN4カ国歴訪だけでなく,2月3日の王毅とラオスのサルームサイ外相とのテレビ会談や6月4日の李克強国務院総理とベトナムのファム・ミン・チン首相との電話会談でも新型コロナウイルス感染症対策支援を強化することで合意した。8月3日に行われた中国・ASEAN外相会議では,王毅が「中国はすでにワクチン1億9000万回分提供しており,緊急に必要な防疫物資を数多く援助した」とその成果を強調した。ただし,インドネシアやタイなどでは中国製ワクチンの効果を疑問視しており,欧米製ワクチンへの切り替えが起こっている。

第2に,ミャンマー情勢である。2月1日のミャンマーでの軍事クーデタに対し,王毅は同月19日にインドネシアのルトノ外相と電話会談を行い「内政不干渉と協議一致の原則という『ASEAN方式』に基づいてミャンマーと早期に接触し,意思疎通を図ることを支持する」と強調した。6月7日の中国・ASEAN対話関係樹立30周年記念特別外相会議でも,一方的制裁と不当介入の回避を求めている。中国はミャンマー問題を「地域の問題」とすることで,欧米諸国に対抗できるようなASEAN諸国との繋がりを構築しようと試みている。

第3に,南シナ海問題である。ブリンケン米国務長官は1月28日と4月9日のロクシン・フィリピン外相との電話会談で,中国の国際法で認められた範囲を超えた主張を拒否し東南アジア諸国の側に立つと表明した。アメリカは4月12日にフィリピンと,8月5日にインドネシアと南シナ海で合同軍事演習を実施しており,積極的に対中牽制を図っている。これに対し,中国は,「南シナ海行動規範」(COC)の協議を進める必要性を主張した。6月7日には中国とASEAN加盟国における「南シナ海各国行動宣言」(DOC)履行に関する第19回高官会議が開催され,COCの早期妥結を目指すことで合意した。李克強総理も第24回中国ASEAN首脳会議で同様の発言をしており南シナ海問題をめぐる中国とASEAN加盟国の歩み寄りが着実に進んできている。

第4に,2022年1月に発効した地域的な包括的経済連携(RCEP)協定を通じた経済交流である。4月24日には中国ASEANビジネスセンターが中国(広西)自由貿易試験区南寧エリアに正式に設立された。これに加えて,中国は9月16日にCPTPPへの加入を申請し,マレーシアやシンガポール,ベトナムは歓迎の意向を表明している。RCEP協定やCPTPPをめぐる中国の動向は,経済と先端技術の両方で覇権を争うアメリカを牽制するねらいがあるとの見方が強い。

(内藤)

2022年の課題

国内政治では,秋に開催される党大会で習近平政権の第3期目が開始することはほぼ確実である。第3期習近平政権に,江沢民派とされる上海閥や胡錦濤派とされる中国共産党青年団と繋がりのある幹部が,どの程度登用されるか注目される。秋に向けて,人事の動きは活発化し,習近平の権威化とそれに伴う権力闘争が先鋭化するだろう。また習近平政権がこれまで進めてきた制度面での中央集権化や国家機関および社会に対する統制は今後も継続すると考える。

経済は,12月の中央経済工作会議で示された「需要の縮小,供給の打撃,弱気の予想」の3重苦に直面している。マクロ経済は引き続き安定を重視した積極的な財政政策と穏健な金融政策が維持されるであろう。戸籍や所有制の改革は進展しているが,地方財政の脆弱性やエネルギー安全保障など構造的な問題も浮き彫りとなった。好調だった輸出も競合国の生産が回復するなか競争の激化が予想される。さらに法規制が強化されれば,民間企業の活力が損なわれる懸念がある。

対外関係では,米中の多国間枠組みに対する影響力の行使をめぐるせめぎあいや価値を共有するレジーム同士の対立といった緊張関係が継続するであろう。南シナ海や東シナ海の海洋をめぐる緊張は依然として続くと予想される。中国は内政干渉や「核心的利益」とする香港や台湾,少数民族に関しては主張を変えないものの,その他の分野においては事務レベルの対話のチャネルを活用し,各国と実務的な協力関係の構築を目指すことになる。

(内藤:地域研究センター)

(山田:新領域研究センター)

重要日誌 中国 2021年

1月
9日 中国商務部,「外国法律・措置の不当な域外適用の阻止に関する弁法」を公布。
10日 王毅外交部長,ミャンマーのアウンサンスーチー国家顧問兼外相と会談。
13日 王毅,インドネシアのルトノ外相と会談。
14日 王毅,ブルネイのボルキア国王と会見。
15日 王毅,フィリピンのロクシン外相と会談。
15日 中央政法委員会全体会議開催。
16日 王毅,フィリピンのドゥテルテ大統領と会見。
18日 習近平党総書記・国家主席,北京市と河北省視察(~19日)。
20日 第13期全国人民代表大会常務委員会(全人代常務委)第25回会議開催(~22日),「海警法」可決。
23日 中国共産党第19期中央紀律検査委員会第5回全体会議開催。習近平は重要演説。
2月
1日 「海警法」施行。
1日 日中海洋協議団長会議開催。
3日 日中高級事務レベル海洋協議開催。
3日 王毅,ラオスのサルームサイ外相とテレビ会談。
3日 習近平,貴州省視察(~5日)。
4日 バイデン米大統領,外交演説で中国を「最も深刻な競争相手」と定義づけ。
4日 王毅,ロシアのラブロフ外相と電話会談。
7日 国務院独占禁止委員会がプラットフォーム経済分野における独占禁止ガイドラインを発表。「二者択一」の違法性を明確化。
11日 米中首脳電話会談。
12日 財政部,地方政府債権の情報公開プラットフォームの管理を規範化する規則発表。
19日 王毅,ルトノと電話会談。
19日 王毅,ブルネイのエルワン外相と電話会談。
21日 中央一号文件「農村振興の全面的推進と農業・農村の現代化の加速に関する中共中央と国務院の意見」を発表。
25日 北京で全国貧困脱却難関攻略総括表彰大会開催。国家農村振興局発足。
26日 政治局会議開催。「14.5」計画要綱,「普通大学末端組織工作条例」などを審議。
3月
5日 第13期全人代第4回会議開催(~10日)。「全人代組織法」改正法案,香港特別行政区選挙制度草案などを説明。
18日 王毅と楊潔篪中央外事工作委員会弁公室主任,ブリンケン米国務長官,サリバン米大統領補佐官と米中ハイレベル戦略対話(~19日)。
22日 習近平,福建省視察(~25日)。
23日 王毅,ラブロフと会談。
25日 中国人民銀行デジタル通貨研究所とアント・グループが技術戦略協力に調印。
26日 国務院国有資産監督管理委員会が「地方国有企業債務リスク管理・制御工作の強化に関する指導意見」を発表。
29日 日中両国国防部門の「海空連絡メカニズム」年度テレビ会議開催。
29日 第13期全人代常務委第27回会議開催(~30日)。「香港基本法」の選挙制度改正案可決。
4月
1日 王毅,マレーシアのヒシャムディン外相と会談。
10日 国家市場監督管理総局,独禁法違反でアリババ集団に182億元超の罰金を科す。
13日 国家発展改革委員会,「新型都市化および都市・農村の融合的発展の重要任務」発表。
14日 バイデン,5月1日から9月11日にかけてアフガニスタンから米軍の撤退を完了させると発表。
20日 博鰲(ボアオ)・アジアフォーラム2021年次総会開催。
24日 中国ASEANビジネスセンター,中国(広西)自由貿易試験区南寧エリアに正式に設立。
25日 習近平,広西チワン族自治区視察(~27日)。
26日 第13期全人代常務委第28回会議開催(~29日)。「個人情報保護法」草案の審議,「海上交通安全法」可決。
29日 コアモジュール「天和」打ち上げ。
29日 「反食品浪費法」施行。
5月
12日 「中国+中央アジア5カ国」外相第2回会合開催。アフガニスタン問題に関する共同声明発表。
14日 習近平,「南水北調」後続プロジェクトに関する座談会で重要演説。
15日 火星探査ミッション探査機「天問1号」着陸成功。
17日 王毅,アフガニスタンのアトマル外相と電話会談。
19日 習近平とロシアのプーチン大統領,中ロ原子力協力プロジェクト2基の発電ユニット着工式にリモートで立会い。
21日 世界健康サミット開催。
21日 中国・フィリピン南シナ海問題2国間協議メカニズム第6回会議開催。
31日 政治局会議開催,3人までの出産許可について審議。
6月
1日 「未成年保護法」,施行。
1日 中国人民銀行,「反マネー・ローンダリング法」の改正法案を発表。
2日 劉鶴米中全面経済対話中国側代表,イエレン米財務長官とテレビ協議。
3日 第4回中国・アフガニスタン・パキスタン外相テレビ対話開催。
4日 李克強国務院総理,ベトナムのファム・ミン・チン首相と電話会談。
7日 習近平,青海省視察(~9日)。
7日 第13期全人代常務委第29回会議開催(~10日)。「データ安全法」「反外国制裁法」などを可決。「反外国制裁法」は即日施行。
7日 中国・ASEAN対話関係樹立30周年記念特別外相会議開催。
7日 中国とASEAN加盟国,「南シナ海各国行動宣言」(DOC)履行に関する第19回高官会議開催。
10日 王文濤商務部長,レモンド米商務長官とテレビ会談。
11日 楊潔篪,ブリンケンと電話会談,米中は協力を主軸とすることで一致。
15日 第12回中国・ASEAN国防相非公式ビデオ会合開催。
15日 中国人民銀行,外貨預金準備率を5%から7%へ2ポイント引き上げ。
17日 有人宇宙船「神舟12号」打ち上げ。
23日 王毅,「一帯一路」アジア太平洋地域国際協力ハイレベル・テレビ会議に出席。「一帯一路」ワクチン協力パートナーシップ・イニシアチブ発表。
28日 中ロ首脳テレビ会談。共同声明を発表。「中ロ善隣友好協力条約」延長を正式決定。
7月
1日 中国共産党創建100周年を記念する祝賀式典,習近平重要演説。
2日 タクシー配車アプリ最大手「滴滴出行」(ディディ),取り扱っている電子データに国家安全上のリスクがあるとして審査対象に。
6日 中央軍事委員会上将昇進式。西部戦区司令員に徐起零が就任。
14日 王毅,アフガニスタンのアトマル外相と会見。
15日 中ロ外相,アフガニスタン情勢をめぐりアメリカを中心とするインド太平洋戦略枠組みを牽制。
15日 習近平,アフガニスタンのガニー大統領と電話会談。
16日 全国炭素排出権取引市場がオンライン取引を開始。
21日 習近平,チベット自治区視察(~23日)。
21日 河北省鄭州市で洪水が発生,292人死亡。
23日 「反外国制裁法」に基づき,ロス前米商務長官を含む7個人および組織に対する制裁を決定。
28日 王毅,アフガニスタン・ターリバーンの政治委員会責任者バラーダルと会見。
30日 政治局会議,企業の海外上場に関する監督・管理制度の整備などを要求。
8月
3日 中国・ASEAN外相会議開催。
16日 王毅,ブリンケンとアフガニスタン情勢について電話会談。
17日 王毅,ラブロフとアフガニスタン情勢について電話会談。
17日 中央財経委第10回会議開催,共同富裕の推進,金融リスクの防止・解消を要求。
17日 第13期全人代常務委第30回会議開催(~20日),「人口・計画出産法」改正案や「個人情報保護法」などを審議,可決。
19日 チベット開放70周年記念式典。
23日 習近平,河北省承徳市視察(~24日)。
27日 中央民族工作会議開催(~28日)。
30日 国家新聞出版総局,未成年者のオンラインゲームの規制を強化する通知を出す。
30日 国連安保理,アフガニスタン情勢をめぐる決議採択。
9月
1日 「データ安全法」,「海上交通安全法」施行。
1日 王毅と楊潔篪,ケリー米大統領気候問題特使とテレビ会見。気候変動政策の交流と実務協力強化を確認。
2日 国家ラジオテレビ総局,アイドルオーデションやファンのコミュニティー文化を排除することなどを指示する通知を出す。
6日 中央軍事委員会上将軍昇進式。西部線戦区司令員に汪海江が就任。
8日 アフガニスタン隣国外相会議開催。
8日 アフガニスタン情勢について22カ国外相会議開催。
10日 米中首脳電話会談。
10日 鹿児島県奄美大島東方沖に中国海軍の潜水艦が潜航。
13日 習近平,陝西省視察(~14日)。
16日 中国,「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定」(TPP11/CPTPP)への加入申請。
17日 上海協力機構加盟国元首理事会第21回会議開催。
21日 上海協力機構加盟国,パキスタンで合同テロ対策演習(~10月4日)。
21日 習近平,第76回国連総会で「グローバル発展イニシアチブ」を提起。
24日 カナダで拘束され,米司法省に起訴された孟晩舟・華為技術(ファーウェイ)副会長が司法取引で釈放,帰国(25日)。
24日 中国人民銀行などが暗号資産関連業務の禁止を通達。
26日 東北地方の複数地域で停電が発生。
27日 中央人材工作会議開催(~28日)。
30日 党中央紀律検査委員会,重大な規律・法律違反があったとして孫力軍元公安部副部長の党籍,公職剥奪を発表。
10月
2日 中央軍事委員会を緊急開催(~4日)。習近平は台湾への軍事圧力を強化するよう指示。
2日 党中央紀律検査委員会,重大な規律違反や違法行為の疑いで傅政華前司法部長を調査と発表。
6日 楊潔篪,サリバンと会談。米中関係を正しい軌道に戻すよう両国がともに努力することで一致。
8日 日中首脳電話会談。
9日 辛亥革命110周年記念式典,習近平重要演説。
9日 劉鶴,タイ米通商代表部代表とオンライン会議。
12日 20カ国・地域グループ(G20)アフガニスタン問題首脳特別サミット開催。
17日 中ロ両軍初の「海上合同パトロール」(~23日)。
18日 政治局会議開催。「歴史決議」審議。
18日 第2回「一帯一路」エネルギー担当閣僚会議開催。
19日 第13期全人代常務委第31回会議開催(~23日)。「独占禁止法」草案審議。「家庭教育促進法」,一部地域で不動産税改革を施行する権限を国務院に付与する決定など採択。
25日 王毅,アフガニスタン・ターリバーンのバラーダル副首相代行と会見。
26日 王毅,アフガニスタン・ターリバーンのムッタキ外相代行と会見。
26日 李克強,第24回中国ASEAN首脳会議出席。
31日 中ロ外相会見。AUKUSへ懸念表明。
11月
1日 「個人情報保護法」,施行。
1日 中国,「デジタル経済パートナーシップ協定」(DEPA)への加入を申請。
8日 第19期中央委員会第6回総会開催(~11日)。
10日 「米中の21世紀20年代の気候行動強化に関するグラスゴー共同宣言」発表。
10日 日中海洋協議団長会議開催。
12日 第4回中国アフリカ地方政府フォーラムを開催。
15日 北京証券取引所が取引を開始。
16日 米中首脳テレビ会談。
17日 中国ロシア・エネルギー協力委員会第18回会議開催。
18日 日中外相電話会談。中国交正常化50周年に向けて二国間関係の長期的な安定を図るよう努力することで一致。
18日 国家反独占禁止局が発足。
19日 中ロ両軍,日本海と東シナ海上空で共同パトロール。
23日 魏鳳和国防部長,ロシアのショイグ国防相と会談。
28日 上海協力機構モデル区に中国ロシアセンター,正式進出。
29日 中国・アフリカ協力フォーラム第8回閣僚級会議開催。
12月
1日 「一帯一路」共同建設協力業務調整メカニズム第1回会議開催。了解覚書調印。
3日 ディディ,ニューヨーク証券取引所の上場廃止の手続き開始を発表。
3日 恒大集団,香港証券取引所で保証責任不履行を発表。
4日 国務院新聞弁公室,「中国の民主主義」白書発表。
8日 中央経済工作会議開催(~10日)。
15日 中ロ首脳オンライン会談。
15日 中国人民銀行,金融機関の預金準備率の0.5ポイント引き下げを決定。外貨預金準備率を7%から9%へ2ポイント引き上げ。
20日 日中高級事務レベル海洋協議開催。
20日 第13期全人代常務委第32回会議開催(~24日),「会社法」など審議。
23日 アメリカで「ウイグル強制労働防止法」(22年6月下旬施行予定)成立。
25日 中央農村工作会議開催(~26日)。
27日 魏鳳和,岸防衛相とテレビ会談。

参考資料 中国 2021年

① 国家機構図(2021年12月末現在)
② 中国共産党・国家指導者名簿(2021年末現在)
② 中国共産党・国家指導者名簿(2021年末現在)(続き)
③ 各省,自治区,直轄市首脳名簿(2021年末現在)

主要統計 中国 2021年

1 基礎統計

(注)1) 2021年のデータはすべて速報値。2)都市部失業率は,各地の就業サービス機関に失業登録を行った人数に基づく数値である。

(出所)『中国統計年鑑 2021』,国家統計局「中華人民共和国2021年国民経済和社会発展統計公報」,為替レートは中国人民銀行ウェブサイト(http://www.pbc.gov.cn/rmyh/107046/107165/index.html)。

2 国内総支出(名目価格)

(出所)『中国統計年鑑 2021』。

3 産業別国内総生産(名目価格)

(注)1)2021年のデータはすべて速報値。

(出所)表1に同じ。

4 産業別国内総生産成長率(実質価格)

(注)1)2021年のデータはすべて速報値。

(出所)表1に同じ。

5 国・地域別貿易

(出所)海関(税関)総署『2021年12月輸出入商品主要国別(地域)総額表』,海関総署ウェブサイト(http://www.customs.gov.cn/customs/302249/zfxxgk/2799825/302274/302275/4122070/index.html)。

6 国際収支

(注)IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。資本・金融収支の符号は(+)は資本流出,(-)は資本流入を意味する。1)その他投資には,金融デリバティブを含まない。

(出所)『中国統計年鑑』(各年版)。

7 国家財政

(出所) 『中国統計年鑑 2021』,中国財政部「2021年財政収支情況」(http://gks.mof.gov.cn/tongjishuju/202201/t20220128_3785692.htm

 
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