アジア動向年報
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各国・地域の動向
2022年のバングラデシュ ウクライナ危機下の経済不安とバランス外交
日下部 尚徳(くさかべ なおのり)
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2023 年 2023 巻 p. 447-470

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2022年のバングラデシュ

概 況

2022年のバングラデシュではユニオン(行政村)の一部と,全国の県で議会選挙・議会議長選挙が実施された。最大野党のバングラデシュ民族主義党(Bangladesh Nationalist Party: BNP)が実質的に選挙をボイコットしたため,事前の予想どおり与党アワミ連盟(Awami League: AL)が大勝した。しかし,政党単位で立候補者をだす方式で選挙が実施されたことから,全国でALによる公認候補の決定を巡り造反者が続出し,党内部での結束のほころびを露わにした。

2024年1月に実施が予定されている国民議会選挙を前に,ALは野党に対する攻勢を一段と強めたため,野党BNPは学生組織などを動員して抗議活動を激化させた。ALの一党支配体制のもと与野党対立が先鋭化するなか,欧米諸国は暴力的な政治活動への懸念と公正な選挙を求める声明を出したが,与野党が歩み寄る兆しは全く見られなかった。

経済は実質国内総生産(GDP)成長率が7.10%を記録するなど,新型コロナウイルス禍でもマイナス成長に陥ることなく堅調な成長を見せた。その一方で,ウクライナ危機による国際的な食料・資源価格の高騰や,アメリカの長期金利引き上げによるタカ安の進行から物価が急上昇し,国民生活を圧迫した。また外貨準備高も減少に転じたことから,IMFとの間で借入に関する協議が行われた。

外交面に関しては,引き続きインド・中国間でのバランス外交を堅持したが,バングラデシュ・インド間での懸案事項である河川水配分の係争地(ティスタ川)に在バ中国大使が訪問し,同問題を国内外に暗にアピールするとともに,介入する意思があるかのように振る舞ったことから波紋を呼んだ。また,国際政治の場面においては,欧米とロシアの対立構図が先鋭化するなか,そのどちらにも付かない外交姿勢を貫いた。ロシアのウクライナ侵攻をめぐる国連総会の非難決議においてバングラデシュは2回賛成し,3回棄権にまわった。

国内政治

ユニオンおよび県議会選挙の実施

2022年には,バングラデシュの最小行政単位であるユニオンの一部と,全国の県で議会選挙・議会議長選挙が相次いで実施された。

1月から2月にかけては,2021年から行われてきたユニオン議会選挙のうち,第5~7フェーズが相次いで実施された。投票日は第5フェーズが1月6日(707ユニオン),第6フェーズが同月31日(218ユニオン),第7フェーズが2月7日(138ユニオン)であった。

投票にあたっては,政府が積極的に推進している電子投票機(EVM)が部分的に導入された。特に第6フェーズでは,218のユニオンのうち216カ所でEVMによる選挙が行われた。農村部でEVMが大規模に使用されるのは今回が初めてであり,有権者の混乱から投票に時間がかかった地域もあった。また,一部の投票所では,ALの支持者らが混乱に乗じ,有権者が電子投票機を操作するよりも前に,勝手にALへの投票ボタンを押してしまう等の違法行為があったとする訴えもあった。AL関係者は「電子投票機の使用を手伝っただけだ」と主張しているが,こうした違法行為は氷山の一角であると推測される。混乱拡大への懸念もあってか,第7フェーズにおいてEVMが使用されたのは138カ所中わずかに9ユニオンにとどまった。選挙自体は,BNPが実質的にボイコットしたため,ALが圧勝する結果となった。

10月17日には,県議会選挙が全国64県のうち57県で実施された。今回選挙が実施されなかったのはチョットグラム丘陵地帯3県のほか,裁判所が選挙日程発表後に実施を差し止めたチャパイナワブガンジとノアカリの2県,さらには2016年に引き続き議長も議員も対立候補がおらず無投票で当選が確定したボラとフェニの2県である。県議会に関しては2016年に初めて選挙が実施されるまで政府による任命制が取られていたため,今回が2回目の全国規模の選挙となる。

しかし与党ALが多数を占める郡やユニオンレベルの議長および議員にのみ選挙権が付与された間接選挙であったことから,前回選挙に引き続きBNPは選挙をボイコットした。そのため,選挙前からALが圧勝との見通しが立っており,実際議長ポストについては無投票で当選が確定した2県を含む48県でALが支援する候補が当選を果たした。他方で,残り11県では国民党(Jatiya Party: JP)のほか,AL所属だが党の支援は受けていない「独立系候補」が勝利した。

ユニオン議会選挙でも県議会選挙でも,前回の2016年選挙から政党ベースでの立候補制度が適用されたことにより,党公認候補の決定に際して造反者が続出し,大きな混乱が生じた。党としての支援を受けていない独立系のAL所属候補が,党が正式に支援する候補に勝利したケースも少なくない。その背景には,有力野党不在の状況で党の内部統制にほころびが生じ,候補者を一本化できなかったことや,縁故主義に対する反発などから党の地方本部が推薦した人物を党中央が公認しなかったことなどがある。造反者が独立候補として立候補するにあたっては,脅迫などの立候補妨害が公然と行われて大きな混乱が生じたが,地域に強い地盤をもつ独立候補が善戦する結果となった。

特に10月の県議会議長選挙をめぐっては,国会議員3人に加え,ヌルル・マジド・マフムド・フマユン工業相やMAマンナン計画相など一部の閣僚が独立系候補の支援にあたったとしてAL内部で物議を醸した。57県中26の県議会議長ポストでALが対立候補なしで勝利した一方で,党としての支援を受けていないAL所属議員は31の県で出馬し,そのうち9つの県で勝利した。国民議会選挙を控え,党内の結束維持を図りたいALとしては,こうした党内での造反ともいえる行為に神経を尖らせているものと見られる。

第12回国民議会選挙を見据えた与野党の攻防と野党幹部の拘束

2024年1月に第12回国民議会選挙(以下,国会選挙)を控え,バングラデシュ国内では与野党間の攻防が激化した。

2022年1月,ハミド大統領は選挙管理委員会の設置に向けて各党の代表と相次いで会談を行ったが,最大野党BNPをはじめ7党は,2012年と2016年に行われた同様の会談での自分たちの提案が何ら反映・評価されていないことから,会談は無意味だと主張してボイコットした。

2022年も後半に差し掛かると各党やその傘下にある学生団体による集会が各地で活発に行われるようになった。特に8月以降,BNPは各地で大規模な集会を開催して政権交代を訴えると,与党ALとBNPの活動家・支持者の間で衝突に発展する事態が相次いだ。BNPの活動家や支持者が暴力を受けたり警察に拘束されたりしたケースも少なくない。BNPが12月10日に首都ダカでの大規模集会の開催を控えていたなか,7日には幹部級の党員3人が,さらに9日にはミルザ・ファクルル・イスラム・アラムギール幹事長ほか党員1人が警察に拘束され,波紋が広がった。

自由で公正な国会選挙の実施に黄色信号が点滅するなか,国際社会からは懸念の声が高まった。国際的な人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは2022年10月に声明を発表し,選挙を前にして当局による抑圧や与党支持者による暴力が激化していることに深刻な懸念を表明した。また12月6日には,オーストラリア,イギリス,カナダ,デンマーク,EU,フランス,ドイツ,イタリア,日本,オランダ,ノルウェー,スペイン,スウェーデン,スイス,アメリカの計15の国と地域の駐バングラデシュ大使館が合同で,自由で公平,包括的で平和な選挙プロセスの重要性を強調する声明を発表した。11月には駐バングラデシュ日本大使が次の国会選挙が自由で公正なものになると期待していると公の場で発言した。

こうした批判に対して,ALは一貫して強硬な姿勢を保っている。対するBNPも,10月7日にファクルル幹事長が「ALとの対話の余地はない」と発言しているほか,12月11日には政府に対する反対運動の一環としてBNP所属の国会議員7人が議員辞職を願い出るなど,与野党が歩み寄りを見せる兆しはまったくといってよいほど見られない。

選挙管理委員会は8月に,次期国会選挙では150の選挙区でEVMを使用すると決定した。しかし新規にEVMを導入するために新たに871億1000万タカもの費用が必要であると試算されたほか,現状で保有しているEVM機材の30%がメンテナンス不足から使用不可能であるとして,計画の再考が求められる事態となった。国会選挙を1年後に控え,公正な選挙に向けた準備はまったく整っていない。選挙そのものに対する国民の信頼はますます低下しているといえる。

ロヒンギャ難民キャンプの治安悪化と難民流出

ミャンマー軍による大規模掃討作戦を機にバングラデシュへ70万人を超えるロヒンギャが難民として流入してから,2022年で5年が経つ。2021年2月に発生した軍事クーデタの終結の目途が立たないなか,バングラデシュに避難してきたロヒンギャの人々の帰還はますます遠ざかっているといわざるを得ない。避難が長期化し,キャンプの情勢も不安定化したことから,海を越えて第三国へと危険な脱出を試みる人々が増加して問題となった。

1月から2月にかけてはロヒンギャの人々が避難するコックスバザールの難民キャンプで不審火による大規模火災が相次いだ。特に1月9日にウキヤのキャンプ16で発生した火災では1200棟が焼失し,少なくとも3万人が住む場所を失った。

また,人身売買,薬物取引,殺人等の問題も相次いでおり,ロヒンギャ難民キャンプにおけるアラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)の活動の活発化が背景にあるのではないかとの噂がメディアを賑わせた。もともとARSAは,ロヒンギャの人々が大挙して国外に逃れることを余儀なくされた2017年のミャンマー軍による大規模な掃討作戦のきっかけとなる襲撃事件を起こした武装組織として知られている。バングラデシュでの避難生活が長期化しキャンプの治安が悪化するなかで,ARSAがバングラデシュ側で活動を活発化させているのではないかと指摘する声が高まっていた。2021年9月,ミャンマーでの迫害やキャンプでの生活に関してロヒンギャ難民自身の声を発信しようと取り組んできた団体のモヒブ・ウッラー代表が殺害される事件が発生すると,ARSAの存在が再度脚光を浴びることとなった。

2022年に入り,現地報道では,ARSAが薬物取引を行いキャンプ内で影響力を増すなかで,ロヒンギャコミュニティの指導者らとの間に摩擦が生じていることが指摘されている。確かに2021年に殺害されたモヒブ・ウッラーはARSAによる薬物売買や脅迫に反対する立場を取り,問題の平和的な解決を望んでいたごく一般のロヒンギャの人々から支持を集めていた。また,2022年8月9日に殺害された難民キャンプの指導者2人もバングラデシュ当局に対してARSAの動向に関する情報を提供していたとされる。こうした事態を受け,10月28日深夜から29日にかけてバングラデシュ警察の特殊部隊とコックスバザール県警がロヒンギャ難民キャンプで作戦を実施し,ARSAや古くからのロヒンギャ武装勢力であるロヒンギャ連帯機構(Rohingya Solidarity Organization: RSO)などの武装組織に所属しているとみられる41人を逮捕した。

さらには,ミャンマー国軍とミャンマー国内の武装組織であるアラカン・アーミー(Arakan Army)との間での衝突が激化し,国境地帯に避難していたロヒンギャの生活に影を落とした。9月にはバングラデシュとミャンマーの国境付近でミャンマー国軍によるものと思われる爆撃が複数回あり,同月16日には国境の緩衝地帯に避難していた1人が死亡,子ども2人を含む5人が負傷した。また,国境を越えたバングラデシュ人がミャンマー側で地雷の爆発により足を失う怪我を負ったこともあった。こうした状況に,10月30日にバングラデシュ国境警備隊がミャンマー国境警備警察の代表団に抗議を申し入れ,ミャンマー側が正式に謝罪した。もっとも,ミャンマー国軍と,軍事クーデタに抗議する民主派勢力や少数民族武装勢力との対立が収まったわけではなく,根本的な問題解決には至っていない。ミャンマー国内における武力衝突から逃れるため,バングラデシュ側にはさらなるロヒンギャ難民が流入した。

避難が長期化し今後の先行きが見えないなか,キャンプを離れてマレーシアやインドネシア等の第三国を目指すロヒンギャが急増した。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば2022年にベンガル湾やインド洋のアンダマン海を渡って国外に逃れようとしたロヒンギャの数は3500人以上に上った。前年2021年の人数が700人前後であったことを考慮すると,記録的な増加であることがわかる。12月には故障したボートで1カ月以上もアンダマン海を漂流していたロヒンギャ難民174人が,インドネシアのアチェ州で救助された。食料や水も尽き,医薬品もない状態で,緊急の医療措置が必要な状態であった。その後も同様にボートで漂流するロヒンギャ難民が後を絶たず,UNHCRは周辺国に救助を呼びかけたが,積極的な協力は得られず海上で多くのロヒンギャが死亡した。こうした密航には国際的な人身売買組織も関わっているとして,バングラデシュの難民キャンプでは監視態勢を強化しているが,就労や教育,国籍を求めてキャンプ脱出を試みる難民は後を絶たず,数十万タカの手数料を払って東南アジアへと向かう。

バングラデシュ政府は,キャンプの過密を解消し環境を改善する目的でベンガル湾に浮かぶバシャンチョール島に10万人を収容可能な大規模居住施設等を自国の予算で建設し,コックスバザールのキャンプからロヒンギャの人々の移送を進めている。10月17日までの時点でバシャンチョールに移送された人数は累計で3万79人に上った。移送開始当初は島の災害に対する脆弱性への懸念を示していた国際社会も,近年は移住した人々の生活をいかに支援していくかを検討する段階へと移っている。2月13日から18日にはケリー・T・クレメンツUNHCR事務所次長とインドゥリカ・ラトワッテ同アジア太平洋局長がバシャンチョール島を訪問し,島の状況に改善が見られるとしつつも,福祉・教育サービスの拡大や就労へのアクセス等に今後の難民の生活が懸かっているとして,国際社会に支援を呼びかけた。その後3月3日にはEU,韓国,カナダ,ドイツ,スウェーデン,ノルウェー,デンマーク,アメリカの外交官らが,6月6日には中国大使がそれぞれバシャンチョール島を訪問している。

各国が島への支援を前向きに進めていることは避難者の生活の改善という点ではよい兆候だが,依然ロヒンギャの人々が厳しい状況に置かれていることに変わりはない。2022年も前年に引き続き,バシャンチョールから脱走してバングラデシュ本土に移動しようとしたロヒンギャの人々が拘束されたことが複数回報じられた。ミャンマー本国の情勢の安定化とロヒンギャの人々が望む市民権の保障という根本的な問題解決が一刻も早く待たれるが,バングラデシュ国内では長期化することを前提とした難民政策への切り替えが求められる段階に来ている。

大規模な洪水の発生

もともと洪水被害が絶えないバングラデシュだが,2022年は例年以上に大規模な被害が発生した。5月第2週頃に北部シレット県やスナムゴンジ県で発生した洪水は,その後北部・北東部の18県に拡大し,現地報道によれば7月26日までに131人が死亡し,2800万人が被災する事態となった。政府はこの洪水による経済的損失は8681億1000万タカに上ると発表した。デルタ地帯に位置し洪水常襲地域として知られるバングラデシュだが,今回被害があった北部や北東部は過去に深刻な洪水被害が発生することはほとんどなかったため,十分な対策が取られておらず,被害の拡大につながった。

他方でバングラデシュにおける7月の平均降水量は211ミリと,過去30年の同月の平均値の57.6%にしか満たなかった。こうした極端な気象現象は,世界的な気候変動による影響なのではないかとの見方も出ている。

今回の洪水被害を受け,国連や世界銀行,アジア開発銀行(ADB)等の国際機関が緊急援助や復興,防災力強化のため相次いで支援を表明したが,パキスタンで過去に例のない大規模な洪水が発生したこともあり,バングラデシュが国際的な関心を集めるには至らなかった。気候変動に起因する災害リスクが今後も高まるとみられるうえ,災害対応の遅れは国会選挙にも大きく影響することから,ALは対策資金を国際社会から集めるため気候変動に伴う災害の深刻さを積極的にアピールしている。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行をめぐる状況

新型コロナウイルスのオミクロン株の世界的流行が起きたことにより,それまで比較的落ち着いていたバングラデシュでも感染者数が一時急増した。バングラデシュで最初のオミクロン株感染者が確認されたのは2021年12月9日であったが,そこから感染者数が増加を始めた。2022年1月1日時点で2.43%であった検査の陽性率は,ピークとなった1月28日には33.37%にまで上昇した。

こうした状況を政府は警戒し,1月13日から公共交通機関をはじめとする特定の場所でのマスク着用義務化等の措置を取ったほか,1月21日からはすべての教育機関が閉鎖となった。これらの措置は延長を経て2月22日まで続いた。また,2022年6月後半から感染者数は再度増加に転じたが,7月後半には減少し,その後は感染拡大の兆候は見られなかった。

バングラデシュは2021年2月7日から全国的にワクチン接種を開始し,2022年12月時点で対人口比1回接種率87.2%,同2回接種率73.8%,同3回接種率35.4%と,世界保健機関(WHO)が掲げる目標接種率70%を2回接種まで達成した。

経 済

物価高とタカ安に翻弄されるも好調を維持した経済

バングラデシュの2021/22会計年度(2021年7月~2022年6月)のGDPは30兆3524億9600万タカで,7.10%の成長率を記録した(基準年2015/16会計年度)。これまでに引き続き第二次産業と第三次産業がそれぞれ9.86%,6.26%と,GDPの伸びを牽引した。特に縫製業を中心とする第二次産業の寄与が大きい。世界貿易機関(WTO)が11月に発表した「世界貿易統計レビュー2022」によると,2021年の衣料品輸出は,中国が世界1位で輸出額1760億ドル,32.8%のシェアを占めている。次いでEUが510億ドル,28.1%となっているが,国単体では340億ドルで6.4%を占めるバングラデシュが2位となった。2010年時のシェア(4.2%)と比較すると2.2ポイント上昇しており,バングラデシュが衣料品輸出国として国際社会で存在感を増しているといえる。

バングラデシュはコロナ禍においてもプラス成長を維持し,今後も6%を超える堅調な経済成長が見込まれるが,世界銀行はインフレ率の高進やエネルギー価格の上昇とそれに伴う供給制約,輸入制限などにより,2022/23年度(2022年7月~2023年6月)の成長率は5.2%に減速すると予想した。

インフレ率は2016年以降,5%台の目標値近傍にておおむね安定していたものの,2022年2月以降はロシアによるウクライナ侵攻により国際的な食料品・燃料・資源価格等の上昇を受けて,6%超が継続した。加えて国内では生活必需品の国際的な価格高騰にかこつけた便乗値上げとも呼べる行動をとる業者もあり,物価の高騰が特に深刻だった8月にはインフレ率が前年同月比で9.52%となり,その後も国全体のインフレ率は9%に迫る値で推移した。ガソリンやディーゼル燃料,石炭の価格が大幅に引き上げられたことにより,特に非食料品での上昇率が顕著で,11月には国全体で前年同月比9.98%,農村部では10.31%と,10%を超える上昇率が見られた。物価高は一般市民の生活を直撃し,野党関係者が抗議活動を行う根拠のひとつともなっていることから,政府は神経を尖らせている。2021/22会計年度の消費者物価指数を基準としたインフレ率は年平均で6.15%となり,うち食料品は6.05%,非食料品は6.31%であった。

ウクライナ危機に加え,3月以降アメリカが長期金利を引き上げ,米ドルとバングラデシュ通貨タカの金利差が縮小し,対ドルでタカ安が急速に進んだことも物価高騰の背景にある。2月時点の為替レートは月平均で1ドル=86.00タカだったが,9月には一時95.62タカにまで下落した。タカの下落により輸入価格に上昇圧力がかかり,インフレに拍車をかける要因となった。

以前から課題として指摘されていた貿易赤字の拡大も進んでいる。2021/22会計年度は332億4900万ドル相当の赤字を計上した。経常収支は海外労働者からの送金が大きく寄与しているものの,貿易赤字が拡大しており,経常収支全体では186億9700ドル(推計値)相当の赤字となっている。バングラデシュでは過去数年間,経常収支の赤字は対GDP比3%前後を推移している。今後は特にウクライナ情勢等を受けた資源価格や食料価格の上昇が貿易収支や経常収支の赤字拡大を加速させる可能性があり,注意が必要である。

なお,海外労働者からの送金は,バングラデシュにとって重要な外貨獲得源であり,コロナ禍からの経済回復を支える要素のひとつともなっている。中央銀行にあたるバングラデシュ銀行によれば,2021/22年度の初めの8カ間(2021年7月~2022年2月)にバングラデシュから海外に576万人が移住し,送金額は134億3850万ドルに上った。移住先でCOVID-19が流行し労働者が失業していることを背景に,送金額は前年同期比で19.47%の減少となっているが,それでもバングラデシュ経済を支える主要な収入源のひとつであることに変わりはない。

外貨準備高が減少に転じたのも特筆すべき点である。2020/21会計年度には463億9100万ドルだった外貨準備高は,2021/22年度に418億2700万ドルに減少した。深刻な減少ではないといわれているものの,隣国スリランカのデフォルトが記憶に新しいなか,バングラデシュ政府は警戒を強め,一時は公務員の海外渡航を部分的に制限する措置までとった。さらに,予防的措置として10月から11月にかけてIMFとの間で借り入れに関する協議を行った。12月末の時点で外貨準備高は337億ドルと輸入4~5カ月分を確保しており,今すぐにも危機的状況に陥ることはないとみられる。ロシアによるウクライナ侵攻下におけるエネルギー価格上昇やタカ安傾向も進行しているなか,輸入抑制による外貨準備高の保持が長期的な課題になることが見込まれている。

進む大規模インフラ開発プロジェクト

2022年は都市部を中心に進められてきた多数のインフラ開発プロジェクトが完了した1年であった。特に象徴的であったのは6月25日のポッダ川にかかる多目的橋の開通である。ポッダ橋建設は2009年に開始され,2014年に完成が見込まれていたが,汚職疑惑を背景に世界銀行をはじめとするドナーが融資を中止したことから開通が危ぶまれていた。今回の開通に市民は大いに沸き,近隣のブータンとモルディブの首相やスリランカの大統領からも祝辞が送られた。当局によれば,一般市民の通行が開始された6月26日の午前6時から午後2時までの間に1万5200台もの車両が橋を通過した。

また,12月6日に,住友商事とバングラデシュ経済特区庁(BEZA)が共同開発する経済特区がナラヤンゴンジ県ライハジャールで開業した。開発にあたっては日本政府が通信や変電所をはじめとしたインフラ設備を提供した。同経済特区はダカ中心部から東に約20キロメートル,車で1時間程度の好立地にあることから,投資先として国内外から大きな期待が寄せられている。開業式にはシェイク・ハシナ首相がオンラインで参加し,開業を宣言した。

深刻な電力不足

10月4日,バングラデシュでは過去8年間で最大規模といわれる停電が発生した。現地報道によれば原因は変電所での故障で,これにより全土の半分以上で8時間以上電力供給が停止した。供給は回復したものの,その後しばらくは電力需要が供給を上回り,過負荷となって大規模な停電が起こることを防ぐために計画的に給電を停止する「電力平均分配」の措置がしばしば取られた。

バングラデシュの電力の半分は天然ガスを燃料とする火力発電が占めており,そのガスの4分の1は輸入によって賄われている。ロシアによるウクライナ侵攻によって燃料価格が高騰し,バングラデシュにおける燃料の供給が不足するなか,電力の供給にも障害が生じていると見られる。

バングラデシュは2026年に後発開発途上国(Least Developed Countries: LDCs)のカテゴリーを卒業することが決定している。それまで受けてきた特恵関税等の恩恵を受けられなくなることから,産業界,特に輸出を前提として進められてきた既成衣料品産業には強い逆風が吹くと見られており,今後は競争力の強化や産業の多角化が必要となる。そのために電力の安定供給は必要不可欠な要素であり,電力インフラの改善はバングラデシュにとって急務となるだろう。

対外関係

国際的な対立の間に立たされたバングラデシュ

2022年2月にウクライナにロシアが侵攻してから,国際的には欧米各国とロシアとの間での対立が深まっており,グローバル・サウスの国々はその間で微妙なバランスを保ちながら外交政策を展開することを余儀なくされた。欧米諸国とロシアとの間ではグローバル・サウスの国々に対する影響力拡大をめぐる駆け引きが続いており,バングラデシュにおいても,ウクライナ情勢をめぐって対立するアメリカとロシアの構図が露わになる出来事が起きた。

12月14日,アメリカのピーター・ハース駐バングラデシュ大使が,行方不明となっているBNP指導者サジェドゥル・イスラム・シュモンの自宅を訪問し,現政権下で不可解な状況で行方不明となっている「強制失踪」の被害者家族らと面会した。この時,「マエル・カンナ」(Mayer Kanna)という団体のメンバーが内政干渉であるとして住宅前で抗議活動を行い,一部が建物内に侵入して面会を妨害しようとしたことから,ハース大使は予定よりも早く面会を終了せざるを得なかった。同団体はジアウル・ラーマン政権下の1977年,クーデタ未遂事件に関与したとして軍事裁判にかけられ,処刑されたり収監されたりした軍人らの遺族・親族が結成したグループであり,今回の抗議活動に加わっていたのは「マエル・カンナ」内のALメンバーではないかとの見方が出ている。このことについて,外交官の安全が脅かされているとしてハース大使はAKアブドゥル・モメン外相に懸念を伝えた。

こうした一連の出来事についてロシア大使館が12月20日,アメリカがバングラデシュの国内失踪事件に関与するのは内政不干渉の原則に反しているとして非難した。これに対しアメリカ大使館はTwitterで「それはウクライナにも適用されるのか?」というツイートを「#StandWithUkraine」のハッシュタグと共に投稿し,ウクライナに侵攻したロシアを非難した。すると同日,今度はロシア大使館が当てつけのようにアメリカを揶揄した風刺画を掲載し,25日には正式に名指しで非難する声明をだした。

一連のウクライナ侵攻をめぐる問題に対しては,ハシナ首相が7月に「この戦争は武器産業を利するだけであり,国際経済が脅かされている」との趣旨の発言をするなど,バングラデシュ経済に深刻な影響が及びかねないことに強い懸念を持っている。しかしながら,国際政治場裏で欧米とロシアの対立構造が先鋭化するなか,バングラデシュはそのどちらにも付かない外交姿勢を貫こうとしている。ウクライナ侵攻をめぐっては2022年の間に5回,国連総会の緊急特別会合が開催され,決議が採択されたが,バングラデシュはこのうち2回は賛成したものの,3回は棄権にまわっている(表1)。

表1 国連総会緊急特別会合におけるバングラデシュの投票行動

(出所)国連ウェブサイト(https://research.un.org/en/docs/ga/quick/emergency)を基に筆者作成。

バングラデシュは,独立時にソ連(当時)による支援を受けたことを背景にロシアとは友好的な二国間関係を維持しており,2022年には国交樹立50周年を迎えた。2013年にはハシナ首相が訪ロし,ループプール原子力発電所建設支援等を含む多様なセクターにおける覚書を締結した。ロシアの国営企業ロスアトム社が主導する同原子力発電所はバングラデシュ史上最大規模のインフラ整備プロジェクトで,石炭火力発電所などの化石燃料から脱却するための重要な取り組みとなっている。費用の9割をロシアからの融資によって建設が進められ,2024年末に稼働開始が予定されている。フル稼働すれば2400MWの電力を発電でき,電力不足に苦しむ国内の1500万世帯に電力を供給できる。

しかし,ロシアが欧米からの制裁によって国際銀行間通信協会(SWIFT)から締め出されたため,ロシア側からの融資の振り込みとバングラデシュ側からの債務の返済が困難となった。また,12月にバングラデシュはアメリカの制裁のため,原発用の設備を積んだロシアの大型貨物船の入港を拒否することを余儀なくされた。船はその後インドの港で積み荷を降ろし,陸路でバングラデシュへ輸送する計画に練り直されたことから,コストが膨張するとともに,建設作業が大幅に滞った。侵攻開始から1年が経過し,依然終結に向けた見通しが立たないなか,バングラデシュは欧米とロシアの間で外交上の微妙な舵取りを迫られることになる。

対印関係:ハシナ首相の訪印にみる良好な二国間関係

地域大国インドとの間では良好な関係が続いている。2021年3月にはインドのモディ首相がバングラデシュの独立50周年にあわせてバングラデシュを訪問した。2022年は5月と6月にモメン外相が,9月にはハシナ首相がインドを訪問し,外交政策における対印関係の重要性をうかがわせた。ハシナ首相は9月5日から8日の4日間の日程でインドを訪れ,5日にインドのジャイシャンカル外相と,6日にモディ首相とそれぞれ会談した。両首相は会談時に両国にまたがるクシヤラ川からの取水に関する覚書を交わしたほか,インドとバングラデシュの合弁企業によって開発されたクルナのマイトリ発電所の稼働記念式典を行い,二国間関係の親密ぶりを内外に印象付けた。

両国の間にはティスタ川の水使用をめぐる問題など課題は依然残っているが,バングラデシュとしてもインドとしても,ウクライナ危機で国際情勢が不安定化するなか,地域の安定のために引き続き良好な関係を維持したいところであろう。

対中関係:高まる開発パートナーとしての存在感

バングラデシュとの関係強化を期待しているのはもうひとつの地域大国・中国も同様である。8月6日から7日の日程で中国の王毅外相(中国共産党中央外事工作委員会弁公室主任)がバングラデシュを訪問し,7日にハシナ首相と会談した。会談において中国側はバングラデシュの発展に向けた戦略的パートナーとして貢献していくことやロヒンギャのミャンマーへの帰還に向けた協力を強調し,バングラデシュ側は「一つの中国」政策を支持することを改めて確認した。

バングラデシュにとって今や中国は重要な開発ドナーのひとつである。3月21日,中国の出資のもと建設が進められてきたパエラ火力発電所が完成し,操業が開始された。同発電所は火力発電所としては国内最大級の規模となる。開所の記念式典にはハシナ首相が対面で出席して演説を行うという,COVID-19パンデミック以降としては異例の対応が取られた。

さらに10月9日には李极明駐バングラデシュ大使がロングプル県を流れるティスタ川を訪れ,中国がバングラデシュ政府に対して提案している開発プロジェクトが進展することに期待を示した。ティスタ川は上述のとおり水使用の問題がバングラデシュとインドとの関係に影を落としている場所であり,中国が両国に割って入る形で開発プロジェクトを進めようとしていることにインドは警戒を強めた。

対日関係:伝統的友好関係の基盤となる援助外交

日本とバングラデシュは,2022年2月10日に国交樹立50周年を迎えた。バングラデシュは1971年3月26日に独立を宣言し,約9カ月におよぶ当時の西パキスタン(現パキスタン)との戦争を経て,12月16日に独立した。それを受け,翌1972年2月10日,日本はアメリカより早い段階でバングラデシュを国家承認した。記念すべき年を迎えるにあたり,日本は二国間トップドナーとしてバングラデシュへの関与を強める動きを見せた。2021/22会計年度にバングラデシュ政府との間に締結された援助の契約に関して,日本は累計17億2874万9000ドルと,二国間援助としては最高額,多国間援助を含めても世界銀行に次ぐ2位の位置を占めた。また,2021/22会計年度の間に支払われたのは22億782万ドルで,ADBに次ぐ金額となった。

4月11日にはモメン外相が日本を訪れ,林芳正外相と会談した。7月に安倍晋三元首相が殺害された際には,ハシナ首相が哀悼の意を表明したほか,9月に行われた国葬にはモメン外相が出席している。

12月28日には,日本の支援で建設が進められてきた都市高速鉄道が首都ダカで部分開業した。バングラデシュ初の都市高速鉄道の開通を現地メディアも大体的に報じ,両国関係の発展を象徴するかのような出来事となった。

なお,12月12日付で,日本の外務省と経済産業省は,日本・バングラデシュ両政府の間で「あり得べき日・バングラデシュ経済連携協定(EPA)に関する共同研究」を立ち上げることで一致した。日本政府としては,経済成長著しい潜在的親日国のバングラデシュとの間で経済的関係を深め,日本企業の進出と市場拡大を後押ししたいという思惑があるとみられる。

2023年の課題

2022年をとおして,バングラデシュでは野党関係者への暴力事件や超法規的な拘束等,人権上懸念すべき状況が度々発生している。2024年1月の次期国会選挙にむけて,政権与党による野党や報道機関に対する強権的な振る舞いが激しさをます可能性があることから,国際社会は自由で公平な選挙が行われるよう今後の準備プロセスを注視する必要がある。

経済面では,ウクライナ危機やアメリカの利上げの影響で外貨準備高が2022年に入り減少に転じたが,12月末時点では輸入額の約4~5カ月分を確保している。政府は危機的状況ではないと説明しつつも,予防的措置としてIMFに47億ドルの借入要請をだし2023年1月に承認された。ほかにもADB,世界銀行,日本にも財政支援を要請しており,ドナー支援等を通じて外貨準備高を安定させる計画だ。

政府はIMFからの借り入れが実現したことをバングラデシュの潜在的経済力が証明された結果だとして,むしろ国民に積極的にアピールしている。一方で,パキスタンの経済危機やスリランカの債務不履行など周辺国の不安定な経済情勢から,国民の自国経済に対する不安は高まっている。物価の抑制や電力の安定供給など,国民が実感できる形で経済を安定させ信頼向上につなげられなければ,抗議デモの激化など社会が不安定化する恐れがある。

またバングラデシュはすでにLDCs卒業基準に達しており,2026年に同ステータスから正式に脱却する予定である。それに伴い,特恵関税適用や知的所有権の特別緩和措置などが受けられなくなることから,財界との協議のもと政府は対応を求められる。

ロヒンギャ難民の帰還事業はミャンマーのクーデタ以降,実質的に停止状態にある。2022年12月末時点で,バングラデシュ国内のロヒンギャ難民の数は約95万人にまで増加しており,政府はキャンプの過密対策としてバシャンチョール島への移転計画をすすめている。2023年2月17日に発行されたニュースリリースで,国連世界食糧計画(WFP)は2023年3月1日から難民キャンプにおける食糧支援の削減を発表しており,国際社会が混迷を深めるなか,難民の生活をどのようにして守るのかが問われている。

対ロ関係においては,ウクライナ危機によってバングラデシュの悲願であるループプール原子力発電所建設に遅れがでている。欧米からの制裁によってロシアの銀行がSWIFTから排除されたため,SWIFTのロシア版ともいえるSPFSの利用やルーブル払いをロシア側が提示しているが,バングラデシュ側は難色を示している。オスマン科学・技術相はハイレベルの代表団による協議をロシアで実施することを示唆したが,欧米からの圧力も無視できず難しい舵取りが求められる。

(立教大学異文化コミュニケーション学部准教授)

重要日誌 バングラデシュ 2022年
   1月
6日707のユニオンで議会選挙実施。
9日コックスバザール県のロヒンギャ難民キャンプで火災。1200棟以上が全焼。
10日政府,新型コロナウイルスのオミクロン株の流行を受け,マスク着用義務化等の規制の導入を決定(13日から施行)。
16日ナラヤンガンジ特別市市長選挙。
16日タンガイル7区補欠選挙。
21日マレク保健相,国内での新型コロナウイルス感染者数増加傾向を受け,すべての教育機関の2月10日までの閉鎖を発表。
23日裁判所がバングラデシュ民族主義党(BNP)のジア総裁の体調悪化を受け出頭を免除。
25日MBモメン外務次官,新たに就任したノーリンヘイザー国連ミャンマー特使とオンラインで会談。ロヒンギャ問題解決に向け国連の関与を求める。
28日日本大使館,バシャンチョールのロヒンギャ支援のために国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と世界食糧計画(WFP)を通じてそれぞれ100万ドルを提供すると発表。
27日選挙管理委員会設立に関する法案が国会通過。
31日218のユニオンで議会選挙実施。
31日ラナプラザ崩壊事件に関する裁判開始。
   2月
1日政府,コロナ対策のための各種規制の延長を発表。
5日ハミド大統領,選挙管理委員会設置のための調査委員会を設置。
7日138のユニオンで議会選挙実施。
13日UNHCRのクレメンツ次長およびラトワッテ・アジア太平洋所長がバシャンチョールを訪問(~18日)。
23日各種コロナ規制緩和。
   3月
2日国連総会緊急会合でロシアを非難する決議案採択。バングラデシュは棄権。
3日EU,韓国,アメリカなどの外交官らがバシャンチョールを訪問。
24日国連総会緊急会合においてウクライナの人道状況の改善を求める決議案採択。バングラデシュは賛成。
28日教育省,中等教育段階ではラマダン期間中の4月26日まで学校を開くことを発表。コロナによる教育の遅れを取り戻す目的。
29日ロヒンギャ1096人が新たにバシャンチョールに移送される。
   4月
4日モメン外相,ブリンケン米国務長官と会談。両国の国交樹立50周年を祝う。
4日教育省,3月28日の決定を変更。ラマダン中に学校を開く期間を4月20日まで短縮。
6日「県議会改正法案2022」が国会通過。
7日国連総会緊急特別会合開催。ロシアの人権理事会メンバー資格を停止する決議採択。バングラデシュは棄権。
11日モメン外相訪日。林外相と会談。
13日モメン外相,パラオ訪問。
14日ダカ裁判所,2004年にフマユン・アザド教授を殺害した武装組織ジャマーゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)のメンバー4人に死刑判決。
15日過去に死刑判決が決定していたJMBメンバー1人を逮捕。
19日モメン外相,シンガポールのヤコブ大統領と会談。
   5月
11日政府,外貨準備高不足対応として公務員の海外渡航と一部物品の輸入を制限。
17日シレット県およびスナムゴンジ県で洪水被害発生。18県に拡大。
28日モメン外相訪印。5月30日に実施予定だった合同協議会の開催延期が決定。
   6月
4日チョットグラム港近くのコンテナ集積地で大規模な爆発・火災が発生。8日までに少なくとも43人が死亡。
6日中国大使館,李駐バングラデシュ大使がバシャンチョールを訪問したことを発表。
15日クミッラ市長選挙。AL候補が僅差で無所属候補に勝利。
15日チョットグラム県バンシュカリ郡の13のユニオンで議会選挙。パティヤ郡とアンワラ郡のそれぞれ1ユニオンでも補欠選挙実施。
17日洪水被害を受け,6月19日実施予定の中等教育卒業認定(SSC)試験を延期。
19日デリーでバングラデシュ・インド共催の合同協議会開催。モメン外相,ジャイシャンカル印外相が出席。
22日アジア開発銀行(ADB),ロヒンギャ難民支援のためのインフラ改善を目的とした4140万ドルの支援を承認。
22日米政府,バングラデシュの洪水被災者の緊急援助のため,国際開発庁(USAID)を通じて2300万タカを拠出することを発表
23日モメン外相,ルワンダで開催された英連邦外相会議に出席。
24日シャヒドゥル・イスラム駐米大使,バイデン米大統領と会談。
   7月
4日タイのスミットモール駐バングラデシュ大使,コックスバザール県のロヒンギャ難民キャンプを訪問。
8日ハシナ首相,日本の安倍元首相が銃撃により亡くなったことを受け,弔意を表明。
14日国連,洪水被災地での緊急援助のためバングラデシュへの5億ドルの拠出を発表。
14日モメン外相,カンボジアを訪問。翌日にフン・セン首相と会談。
15日軍,洪水被災地支援のため首相管轄の救援・福祉基金に1億タカを拠出。
17日選挙管理委員会,次期国会選挙に向け各党との会談を開始(~31日)。
18日モメン外相,インドネシアを訪問し,ルトノ外相と会談。
18日イスラム地方政府相,ADBでバングラデシュを担当するギンティング担当課長と電話会談。ADB,洪水からの復興に向けた支援の提供を約束。
22日外務省,国際司法裁判所がロヒンギャに対するジェノサイドをめぐる裁判でミャンマー側の反論4点を棄却する決定を下したことについて,歓迎する意向を示す。
24日政府,国際通貨基金(IMF)に対し45億ドルの融資を求める。
24日アラム外務担当大臣,日本の本田外務大臣政務官と会談。会談後,ハシナ首相が訪日の招待を受けたことを発表。
27日タクルガオン県ラニシャンカイル郡バチョール・ユニオンで議会選挙。候補者の支持者間で衝突。巻き込まれた乳児が死亡。
31日新たに11人が最高裁判所の裁判官に就任。
   8月
1日モメン外相,核兵器不拡散条約(NPT)会合に並行しグテーレス国連事務総長,スロベニア外相,ハンガリー外相,アルゼンチン外相らとそれぞれ会談。
3日パキスタンのブットー外相,カンボジアに向かう途中でバングラデシュを訪問。マフムド情報相と会談。
7日ハシナ首相,来訪中の中国の王外相と会談。
7日MBモメン外務次官,来訪中のシソン米国際機関担当国務次官補と会談。
8日為替レート,一時1ドル当たり95タカまで下落。
9日コックスバザール県のロヒンギャ難民キャンプで2人が銃撃により死亡。
11日5~11歳を対象にしたファイザー社製子ども向けコロナワクチンの試験的な接種実施。
11日コックスバザール県のロヒンギャ難民キャンプで2人を殺害したとして3人逮捕。
12日全国166カ所の紅茶農園の労働者が賃上げを求めデモ。
14日バチェレ国連人権高等弁務官,来訪。ハシナ首相,モメン外相,ホック法相,カーン内相らとそれぞれ会談。
25日バングラデシュ・インド合同河川委員会の大臣級会合実施。
30日ロヒンギャ難民65人を乗せたボートがミャンマー当局に拿捕される。
   9月
4日モメン外相,ミャンマーのアウンチョーモー駐バングラデシュ大使を外務省に召喚。国境地帯で続く爆撃に懸念を表明。
5日ハシナ首相訪印。ジャイシャンカル印外相と会談。6日に印モディ首相と会談し,クシヤラ川の水使用等7項目の覚書に調印。
9日バングラデシュ・ミャンマー国境の中間地帯で爆撃。
11日2021年9月にロヒンギャ難民の指導者モヒブ・ウッラーの殺害に関与したとされる29人の裁判開始。
11日チョウドゥリー国会副議長死去。
13日24カ国の陸軍トップがコックスバザール県のロヒンギャ難民キャンプを訪問。
15日ハシナ首相,渡英。
16日バングラデシュ・ミャンマー国境の中間地帯でミャンマー軍によるものと思われる爆撃。ロヒンギャ男性1人が死亡,子ども2人を含む5人が負傷。
19日ハシナ首相,英エリザベス女王の国葬に出席。
19日政府,公務員の渡航制限を緩和。
20日ハシナ首相,渡米。グランディ国連難民高等弁務官と会談。
25日ポンチョゴル県を流れるコロトア川で乗客を乗せた船が転覆。68人死亡,4人が行方不明。
27日日本の安倍元首相の国葬にモメン外相が出席。
  10月
4日過去8年間で最大規模の停電。
9日中国の李駐バングラデシュ大使,ロングプル県を流れるティスタ川を訪問。
10日ダカで4~6時間の電力使用制限。
10日サウジアラビアの支援で建設された第3シトロッキャ橋が開通。
11日中国の李駐バングラデシュ大使,ディナジプール県のボロプクリヤ炭鉱を訪問。
12日ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり,国連総会の緊急特別会合開催。ロシアによるウクライナ4州の併合を非難する決議採択。バングラデシュは賛成。
12日ガイバンダ5区で補欠選挙実施も,選挙不正の疑いで選挙管理委員会が中止を命令。
16日ハシナ首相,来訪中のブルネイのボルキア国王と会談。
17日全国57県で県議会選挙実施。
17日バシャンチャールに新たにロヒンギャ避難民963人を移送。
18日バンドルボン県の2郡で対武装組織作戦実行のため渡航禁止措置。
22日バンドルボン県における渡航禁止措置の対象に新たに2郡が追加。
24日サイクロン「シトラン」により翌25日にかけて各地に被害。
25日ノアカリ県とピロジプル県で大規模停電。
26日IMF代表団,15日間の日程で来訪。
28日武装警察部隊(APBn)とコックスバザール県警がロヒンギャのキャンプで作戦を開始。29日朝までに少なくとも41人を逮捕。
29日ハミド大統領,ドイツに向け出発。
30日バングラデシュ国境警備隊・ミャンマー国境警察の代表団が会談。
31日国連のムラーリー特別報告者,来訪。
  11月
8日バンドルボン県における旅行禁止措置,1つの郡で解除。
9日IMF,バングラデシュへの総額45億ドルの融資を事務レベルで合意。
9日ジャマーテ・イスラーミ指導者の息子逮捕。武装組織に関与しシレットで若者を「ジハード」に勧誘した疑い。
13日ハシナ首相,来訪中のサウジアラビアのナーイフ・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード内相と会談。
14日国連総会,ロシアにウクライナへの戦争賠償の支払いを呼びかける決議採択。バングラデシュは棄権。
17日日本の伊藤駐バングラデシュ大使,マンナン計画相と会談。
20日2015年のアビジット・ロイ殺害事件で死刑判決を受けていた2人が逃走。
20日外務省,23日に予定されていたロシアのラブロフ外相の訪問中止を発表。
23日アジア開発投資銀行(AIIB),バングラデシュに対する2.5億ドルの財政支援を承認。
24日武井外務副大臣,ハシナ首相らを表敬訪問。アラム外務担当大臣との会談時にハシナ首相の訪日延期が決定。
  12月
2日世界銀行,バングラデシュへの2.5億ドルの拠出を承認。
5日中国の李駐バングラデシュ大使,マンナン計画相と会談。
5日特殊部隊(RAB),武装集団ジャマートゥル・アンサル・フィル・ヒンダル・シャルッキヤ(JAFHS)メンバー5人の逮捕を発表。
6日15の国と地域の駐バングラデシュ大使館が合同で,自由で公平,包括的で平和な選挙プロセスの重要性を強調する声明を発表。
6日住友商事とバングラデシュ経済特区庁(BEZA)が共同開発する経済特区がナラヤンゴンジ県アライハジャールで開業。
7日ハシナ首相,次期国会選挙が2024年1月に実施されると発表。
7日BNP活動家と警察との間で衝突が発生。警官1人が死亡,ジャーナリストら50人が負傷。警察はBNP関係者300人以上を拘束。
8日ハース駐バングラデシュ米大使,国連特別報告者,アムネスティ南アジア地域代表らが相次いで7日の衝突に懸念を表明。
9日BNPのファクルル幹事長と党常設委員会のアッバス委員が警察に拘束される。
11日BNP所属の国会議員7人が抗議の一環として辞表を提出。
12日ダカ裁判所,BNPファクルル幹事長と党常設委員会アッバス委員の保釈請求を棄却。
14日ハース駐バングラデシュ米大使,ダカで強制失踪被害者の家族らと面会。
19日RAB,2012年のビスワジット・ダス殺害事件で2013年に終身刑を言い渡されていた1人を逮捕。
22日武装組織JAFHSメンバー2人逮捕。
25日ロシア大使館,ハース駐バングラデシュ米大使が強制失踪被害者の家族と面会したことに関して内政干渉だと非難。
26日コックスバザール県のロヒンギャ難民キャンプでロヒンギャコミュニティのリーダー男性が銃撃され死亡。
27日ロングプル市長選挙。JP候補がAL候補を僅差で破って勝利。
28日ダカで日本のODAで建設された都市高速鉄道ダカメトロ6号線の部分開業式典を開催。
28日BNPが率いる20の政党連合のうち11党が参加した野党連合が新たに発足。

参考資料 バングラデシュ 2022年
①  国家機構図(2022年12月末現在)
②  行政単位(2022年12月現在)

(注)Statistical Yearbook of Bangladesh 2021(June 2022 発行)より作成。

③  要人名簿(2022年12月31日現在)

(注)*女性閣僚。

主要統計 バングラデシュ 2022年
1  基礎統計

(注)1)消費者物価上昇率,為替レートは年平均値。2)2021/22年度消費者物価上昇率,為替レートは暫定値。

(出所)人口データはBangaldesh Bureau of Statistics, Gross Domestic Product of Bangladesh, 2021-22(Final)より,その他はBangladesh Bank, Monthly Economic Trends, January 2023より作成。

2  支出別国民総所得(名目価格)

(出所)Bangladesh Bureau of Statistics, Gross Domestic Product of Bangladesh, 2021-22(final)などより作成。

3  産業別国内総生産(基準年2015/16年度価格)

(注)1)市場価格。2)固定市場価格。

(出所)Bangladesh Bank, Monthly Economic Trends, January 2023より作成。

4  主要輸出品

(注)1)2021/22年度は暫定値。

(出所)Bangladesh Bank, Monthly Economic Trends, January 2023より作成。

5  国際収支

(注)IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。ただし金融収支の符号は(+)は資本流入,(-)は資本流出を意味する。1)2020/21,2021/22年度は暫定値。

(出所)Bangladesh Bank, Bangladesh Bank Quarterly, July-September 2022などより作成。

6  政府財政

(出所)Ministry of Finance, Budget in Brief 2022/23などより作成。

 
© 2023 日本貿易振興機構 アジア経済研究所
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