2023 年 2023 巻 p. 471-502
国民民主連合(NDA)を率いるインド人民党(BJP)のナレンドラ・モディ政権は,新型コロナウイルス禍が峠を越えたことを見据えて,政治的安定を維持しつつ党勢拡大を追求している。しかし,モディ政権の下では政治的自由の侵害とみられる事件が目立ち,ジャーナリズムや野党からの反発が強まっている。また,中央の捜査機関や知事からの政治的な意図が疑われる介入例があり,モディ政権は非BJP州政権や野党と軋轢を生んだ。しかし,BJPへの支持は根強く7州で行われた州議会選挙のうち,5州でBJPは勝利した。BJPが政権についている州ではヒンドゥー民族主義が教育に持ち込まれるなど,問題が生じている。
経済は,成長の鈍化と物価上昇に向き合う1年となった。世界的なエネルギーや食料価格の高騰を受けてインフレ率が上昇し,政策当局は食糧や原油の確保と金融引き締め策を実施した。しかし,物価高と金利の引き上げは製造業を中心に実体経済にマイナスの影響を与えた。2022/23年度実質国内総生産(GDP)成長率は,コロナ禍からの回復基調を維持したものの,前年度を下回る見込みである。質の高い雇用の創出も依然として大きな課題として残されている。
対外関係ではロシアのウクライナ侵攻という事態にインドはアメリカなどが求める反ロシアの立場をとらず大国間でバランスをとる独自外交を貫いている。パキスタンとの関係はジャンムー・カシミール(JK)地域の未確定境界の実効支配線(LoC)が安定しているため関係改善の兆しがみえる。経済危機にあえぐスリランカには経済支援を強化し中国のプレゼンスを薄めようとしている。
NDAを率いるBJPのナレンドラ・モディ政権は政治的安定を維持しつつ党勢拡大を追求している。
新型コロナの第3波は2022年2月までにピークを越え,政府は状況が改善したことを受けて3月23日に,新型コロナ対策の法的基礎となっている災害管理法を4月以降は適用しないと発表した。一方,世界保健機関(WHO)は5月5日にインドでの2020,2021年の新型コロナの直接,間接の超過死亡者を公式推定の9.8倍にあたる470万人と発表したが政府は過大として反発した。ワクチンに対する需要が縮小することを見据えて,保健・家族福祉省は10月16日にワクチンを今後は調達しないと発表した。
モディ政権は新型コロナ対策に対する野党の批判に過敏になっており,例えば,予算国会中,3月31日には会議派のソニア・ガンディー総裁の批判に強く反論した。ソニア総裁は失業にあえぐ農村貧困層に雇用を供給する旗艦事業であるマハトマ・ガンディー全国農村雇用保証法(MGNREGA)の事業の執行に問題があると批判したが,政府は会議派政権期に同事業は予算未消化が頻繁で,腐敗も広がっていたと反論し紛糾した。モディ政権は農民に所得を補償する首相農民尊重基金などさまざまな福祉事業を強化しており批判には敏感である。6月13日にモディ首相は,中央政府は100万人の政府雇用を実施すると発表した。
モディ政権は強い中央を指向しつつも,国内融和に配慮する姿勢もみせている。モディ首相は,2019年8月に当時のJK州の憲法上の特別な権利を剥奪して以来,初めて4月24日にジャンムーを訪問した。厳戒下の演説で首相はカシミールの青年は前世代が受けた苦痛を受けることはないと述べた。また,北東部の武装闘争に対する抑圧的対応を可能にし,人権侵害を招いている1958年軍(特別権限)法(AFSPA)について,モディ首相は4月28日に同法を北東部から撤廃する可能性が高くなったと述べ,北東部諸州の撤廃要求に配慮した。
一方,政府は後進的状況にある部族民などの不満をなだめるため,各種の優遇措置を受けられる「指定部族」に指定する立法を数次にわたり冬期国会で行った。
モディ政権の下で狭まる政治的自由第2次モディ政権はそのヒンドゥー民族主義と相まって,近年,政治的自由に対する制約を強めている。中央政府下にあるJK連邦直轄領では,1月17日にジャーナリスト団体のカシミール記者クラブが強制的に閉鎖された。同クラブはJKでジャーナリストの拠点となっていた。閉鎖に対してインド編集者組合は18日に国家によるジャーナリズムへの抑圧として非難した。
また中央政府は2月7日に,「中央メディア認可ガイドライン2022」を発表し,国の安全,主権,外国との友好関係,社会的秩序にとって有害と判断された場合,ジャーナリストに与えた政府の公的指定情報へのアクセスの許可を撤回すると発表した。これに対してインド編集者組合は20日に同ガイドラインが曖昧かつ恣意的で受け入れられないとして反発した。
政治的自由への圧迫と考えられる事案は,2002年のグジャラート州の大宗派暴動で当時の同州首相であったモディ首相の役割を告発した活動家ティースタ・セタルヴァドの逮捕劇でもみられた。同氏は暴徒によって殺害された会議派指導者エフサン・ジャフリの未亡人ザキア・ジャフリが当時のモディ州首相などの責任を訴えた訴訟を支える活動家である。最高裁判所は,2012年に最高裁が任命した特別捜査チームがモディ州首相に疑わしい点はないと結論したことを根拠に,2022年6月24日に訴えを退けた。判決直後,連邦内務大臣アミット・シャーはセタルヴァドを根拠のない情報でモディ首相のイメージを汚したとして非難した。翌25日にグジャラート警察はセタルヴァドなどを証拠捏造の罪で逮捕した。逮捕に対しては市民団体,国際人権団体から非難の声が上がった。最高裁はセタルヴァドに対してグジャラート高裁の裁判が始まるまでの暫定保釈を与える決定を行い,同氏は9月3日に釈放された。その後グジャラート警察は9月21日に同氏をモディ首相などに対する虚偽の刑事訴訟を行ったとして起訴した。
6月27日にはデリー警察は事実検証のウェブ・メディアAlt Newsの創設者モハンメッド・ズバイルを,Twitterで宗教感情を害する発信をしたとして刑法に基づき逮捕した。これに対してジャーナリスト,野党,市民団体は反発し即刻釈放を求めた。最高裁は7月20日にズバイルを告訴した6つの事案について暫定保釈を認め,ズバイルは拘置所から釈放された。
中央からの介入に対する非BJP州政権の反発モディ政権が中央の捜査機関や知事(中央政府が州に任命)を介して非BJP州政権に揺さぶりをかけているとの批判が広がっている。4月2日,会議派の主任報道官R・スルジェワラは中央捜査局(CBI),強制執行局(ED),所得税局(IT)がBJPの「政治的な引き立て役」をしているとして,最高裁に調査を求めた。西ベンガル州,タミル・ナードゥ(TN)州など非BJP州政権からも同様の批判が出された。4月6日にマハーラーシュトラ州の与党連合(当時)のナショナリスト会議派総裁シャラード・パワルはデリーでモディ首相と面談したとき,州与党指導者に対して中央政府の調査機関が動いていることに疑問を呈した。
また非BJP州は知事が不当に介入しているとして非難している。TN州では州議会を通過したにもかかわらず,21の法案がR・N・ラヴィ知事の裁可(法案成立のためには知事の裁可が必要)を得られていないとして,6月2日に州首相M・K・スターリンは裁可を要請した。州政府は10月30日に知事はBJPを喜ばせるため行動しているとして対立は決定的となった。ケーララ州でもアリフ・モハンメッド・カーン知事と左翼民主戦線政府は州立大学の副学長の任命などをめぐって対立した。州首相P・ヴィジャヤンは11月2日に知事は州大学へ介入し高等教育をヒンドゥー民族主義のコントロール下に置こうとしていると非難した。
このようなモディ政権への反発の背景にはBJPの拡大路線がある。7月2~3日のハイデラバードでのBJP全国執行委員会では,決議で社会的弱者,貧困層への福祉が強調される一方で,政治面では会議派やその協力政党による「王朝」政治,カースト主義,地方主義を攻撃した。BJPは従来から会議派のガンディー家支配を王朝政治として批判してきたが,その批判が州政党にも向けられたのである。この決議はあらためてBJPに対する州政党の警戒感を強めることとなった。
大統領選挙連邦上・下院議員,および州議会議員が投票する大統領選挙が7月に行われ,NDAが擁立した前ジャールカンド州知事で,オディシャ州出身のドロウパディー・ムルムーが選出された。初の部族民出身者で,女性としては2人目である。25日に第15代大統領に就任した。8月6日には連邦上・下院議員による副大統領選挙が行われ,BJPのJ・ダンカールが当選し8月11日に就任した。
党勢立て直しを試みる会議派会議派は党勢立て直しを目指しているが目立った成果はなかった。3月10日に開票されたウッタル・プラデーシュ(UP)州,ウッタラーカンド州,パンジャーブ州,ゴア州,マニプル州の州議会選挙では全州で敗北した(後述)。州政権にあったパンジャーブでも庶民党に政権を奪われた。ソニア総裁は3月15日に責任を明確にするため惨敗した5州の会議派州総裁を辞任させた。党内では指導部への不信が強まり,党内有力者23人は集団指導体制の確立など党改革を求めた。8月26日にはG・N・アーザードなどベテラン指導者の離党も起こった。
会議派は,党員獲得運動などさまざまなプログラムを行った。なかでもラーフール・ガンディーが先頭に立って開始した「インド絆行進」が注目された。9月7日にインド南端のカンニャクマリから北端に近いスリナガルまで約4000キロメートルを縦断する行進はメディアに大きくとりあげられ(2023年1月30日に到着),他の野党も運動を支持した。また総裁選挙を10月に行った。ガンディー家のメンバーが出馬を見合わせたなかで,カルナータカ州出身で連邦上院議員のM・カルゲーが選出され,26日に正式に総裁に就任した。改革の成果は未知数であるが,12月8日に開票された州議会選挙結果はグジャラート州で惨敗した一方,ヒマーチャル・プラデーシュ(HP)州ではBJPから政権を奪い返した。
5州での州議会選挙2月から3月にかけて上記5州で州議会選挙が行われ3月10日に一斉開票された。パンジャーブ州をのぞきBJPが勝利した(表1)。
(注)略称は,AAP:庶民党,AD(S):我が党(ソネーラール派),BJP:インド人民党,BSP:大衆社会党,INC:会議派,JD(U):ジャナター・ダル(統一派),KPA:クキ人民連合,MGP:マハーラーシュトラ・ゴア党,NISHAD:インドの弱く搾取されている我々庶民の党,NPF:ナガ人民戦線,NPP:民族人民党,RLD:民族ローク・ダル,SAD:アカリー・ダル,SBSP:スヘルデーヴ・インド社会党,SP:社会主義党。
(出所)インド選挙管理委員会(https://results.eci.gov.in/ResultAcGenMar2022/ConstituencywiseS0510.htm?ac=10), Times of India (March 10, 2022)などから作成。
UP州でBJPは「我が党(ソネーラール派)」(AD[S])や「インドの弱く搾取されている我々庶民の党」(NISHAD)などとNDA連合を組み,経済開発を掲げて選挙に臨んだ。BJPが後進階級を代表する小政党と連携したのは後進階級のBJP離れが懸念されたからである。1月11にヨギ・アディティヤナート州首相率いるBJP政権から,S・P・マウリア大臣が,政府はその他後進階級(OBCs),指定カースト(近年は「ダリト(被抑圧階層)」とも呼ばれる),農民などを重視していないとして政権を非難し辞任した。これら階層は近年,州政府へ不満を募らせ,社会主義党(SP)へ支持を移行する傾向にあった。また有力な農民組織である統一農民戦線もSP連合を支持した。
一方,SPは西部の農民などを支持基盤とする民族ローク・ダル,東部のOBCsなどを支持基盤とするスヘルデーヴ・インド社会党と連合を組み選挙に臨んだ。大衆社会党,会議派は単独で戦った。選挙結果はBJPが255議席で大勝し単独過半数を制した。3月25日にアディティヤナートが州首相に就任した。
安定政権を樹立したBJP政権は経済開発を最優先する一方,少数派のムスリムへの圧力ともとられかねない政策を実行している。例えばイスラームの教育機関マドラサを近代化するためとして,登録調査を9月10日から10月20日にかけて行った。調査に対してムスリムの諸組織は必ずしも強く反対していないが,ヒンドゥー教の修道院であるマットなどの調査は行わないのに対してマドラサの調査を行ったことはムスリムの反感を高めている。
パンジャーブ州では庶民党が圧勝した。パンジャーブ州は農業先進州として最も高い所得水準を誇っていたが,近年,農業発展は鈍化し,一方,工業化は遅れ,若者の失業,麻薬など問題が広がった。そのため既存の会議派やアカリー・ダルに対して州民の不満が蓄積していた。このような状況が庶民党への支持につながった。また,与党であった会議派が2021年9月に州人事刷新で州首相をアマリンデル・シンからチャランジット・シン・チャンニに交代させたことは会議派の弱体化の一要因となった。これは党の若返り,そして,チャンニがダリト出身でもあり,州のダリト・カーストなどを引きつけようとする狙いからであった。アマリンデル・シンは2021年11月に離党した。それが会議派をさらに弱体化させた。庶民党は92議席と単独過半数を得て,2022年3月16日にバグワント・マンが州首相に就任した。
ウッタラーカンド州では2000年の州創設以来,BJPと会議派が交互に選挙で勝利していたが,今回はBJPが前回に続き勝利した。両党は選挙前に互いの有力者を取り込むべく働きかけた。1月17日には前会議派州議会議員で党女性部長S・アルヤ,1月27日には元会議派州総裁のK・ウパディヤイがBJPに加わった。逆に1月21日にはBJPの元州政府大臣H・S・ラワトが会議派に鞍替えした。両党とも社会経済発展を掲げたが,会議派は失業や教育など,より地域的争点を強調した。結果はモディ首相人気もありBJPが高カースト層やOBCsの支持を集め勝利した。州首相にはP・シン・ダーミーが再任され3月23日に就任した。
ゴア州ではBJPが支持基盤のヒンドゥー票を押さえ,半数の20議席を確保し政権についた。BJPは2012年以降政権を維持している。州首相にはプラモード・サワントが3月28日に就任した。BJPは州議会過半数を確保していないため,会議派議員の取り込みをはかり,9月14日に会議派議員11人中,8人をBJPに鞍替えさせることに成功した。反党籍変更法が定める3分の2以上の鞍替えであったため造反議員は議席を失わず,BJPは安定多数の確保に成功した。
マニプル州ではBJPが開発推進を唱えたのに対して野党の会議派はAFSPA撤廃などを唱えて支持を求めた。BJPはNDAの枠組みでジャナター・ダル(統一派)(JD[U]),ナガ人民戦線と協力関係にあるが,選挙調整はせず全選挙区で候補者を立てた。選挙はBJPが過半数を制した。N・B・シン州首相の続投が決まり3月21日に就任した。JD(U)に関しては,JD(U)中央が8月9日にBJPと決別する決定を行ったことから(後述),州のJD(U)の動きが注目されたが,9月2日にJD(U)議員6人の内5人が離党しBJPと合併した。
カルナータカ州のBJP政権:ヒンドゥー民族主義の拡散と混乱カルナータカ州では2019年7月の政変でジャナター・ダル(世俗主義)と会議派の連立政権が崩壊しBJP政権が成立した。州首相にはB・S・イェデュラッパ,そして2021年7月からはB・ボンマイが就任している。近年,BJP州政権の下ではヒンドゥー民族主義が顕在化し,そのなかで宗教的争点が問題化した。
2022年に入り,沿岸部ウドゥピのカレッジで一部のムスリム女学生がヒジャブ(女性が頭や身体を覆う布)を着用し登校していることが大きな問題となった。学校でのヒジャブ着用を求めるムスリム女学生に対して,2月5日に州政府は規定された服装規定に従わなければならないとして禁止を命じた。議論はエスカレートしヒンドゥー教徒の一部学生もサフラン(ヒンドゥー教を象徴する色)のショールを着用し対抗した。ムスリム社会は反発し,3月17日には種々のムスリム組織のよびかけでストライキを行うなど混乱が広がった。女学生は学校でのヒジャブ着用の許可を求める請願書をカルナータカ高等裁判所に提出したが,高裁は,ヒジャブ着用はイスラームにおいて不可欠な宗教的慣行でなく,憲法の第25条の宗教の自由の権利によっても守られないとして,3月15日に州政府の禁止令を支持する判断を示した。10月13日の最高裁に持ち込まれた審理では判断が分かれ,問題は大法廷で判断されることになった。
教育面でも州政府によるヒンドゥー民族主義の強化が目立つ。5月14日には第10学年のカンナダ語教科書のレッスンのひとつとしてBJPを支える民族奉仕団(RSS)創設者のK・B・ヘードゲワールのスピーチが採用され問題となった。同スピーチの採用に抗議して著名人7人が自らの著作の教科書での使用を拒否した。州政府はこれに対して9月23日に7人の著作に触れないよう指示をだしたが,10月29日には年度途中で変更は好ましくないとして指示を撤回した。
マハーラーシュトラ州:大開発戦線(MVA)政権の崩壊マハーラーシュトラ州では2019年11月の州議会選挙で過半数政党が現れなかったため連立政権となったが安定しなかった。BJPが一旦組閣したが政権維持の見込みが立たず,結局シヴ・セーナー(SHS),ナショナリスト会議派党,会議派からなるMVA連立政権が成立し,SHSのウッダヴ・タークレーが州首相に就任した。しかし,2022年にBJPの揺さぶりを受けて,MVA政権は崩壊した。
BJPの元州首相D・ファドナヴィスは5月1日に,SHSは元々BJPと連合していたが権力を得るため会議派と結んだとしてタークレー州首相を批判した。BJPの揺さぶりはSHSの分裂を誘い,6月21日にSHS閣僚エクナート・シンデー大臣はタークレー州首相に反旗を翻し,政権は州議会で多数を失った。26日には州議会の副議長は,反党籍変更法に従って造反したシンデー派の州議会議員の議員資格剥奪を宣告するが,造反派は最高裁に提訴した。最高裁は29日に,州政府が州議会の信任を得ているか確認するため,知事が投票するように要請したのは正当と判断した。それを受けて州議会で多数を確保できないタークレーは辞任した。翌30日にシンデーはBJPの支持を得て州首相に就任し,元州首相ファドナヴィスが副州首相に就任した。州議会第1党のBJPを率いるファドナヴィスが州首相に就かなかったのはSHSのシンデー派と取引があったためとみられている。新政権は7月4日に州議会の信任を得た。SHSの分裂に伴い7月10日に連邦下院でもSHSの19議員のうち造反派の14議員が別グループを形成した。
ビハール州:与党ジャナター・ダル(統一派)のBJPとの決別2015年11月の州議会選挙では,ニティシュ・クマールのJD(U)と民族ジャナター・ダル(RJD),会議派,ナショナリスト会議派党がまとまり反BJPの「大連合」を組み勝利した。ところがJD(U)とRJDの対立が決定的となり2017年7月に連合は分裂し,JD(U)はBJPと連携することで政権を維持した。しかし,2022年に入ると両党の関係は悪化し,8月9日にクマール州首相はBJPとの関係を解消しRJDと再度連合を組む決定を行った。会議派もクマール首相の動きを歓迎した。翌日,クマールが改めて州首相に,RJDのテージャシュウィ・ヤーダヴが副首相に就任し,8月24日には州議会で信任を得た。クマール州首相がBJPとの関係を解消した背景には,JD(U)連邦上院議員でモディ政権の鉄鋼大臣を務めていたRCP・シン(上院議員の任期がきれた7月6日に大臣を辞任)がBJPと緊密な関係にあり,同氏を通じてJD(U)が切り崩されるのではないかという懸念があった。そのためBJPとの連立を続けることは党の利益にならないとの判断があったとされる。12月11日にクマール州首相は,BJPは分裂と反乱を画策することによって,JD(U)を弱体化しようとしたといって非難した。
ビハール州は禁酒州であるが密造酒で多くの人が死亡している。12月には15日までに26人が死亡する事件が起きた。この事態に対して中央政府は国家人権委員会にビハール密造酒死亡事件を調査させる決定を行った。この決定に対して野党は20日に憲法に基づく組織をモディ政権は利用していると反発し,BJP州政権に対しては同様な調査は入っていないと批判した。
グジャラート州,HP州の州議会選挙:前者でBJP,後者で会議派が勝利グジャラート州では1998年以来BJPが政権を維持している。今回はBJP,会議派,今回が本格的な参戦となった庶民党の三つ巴の選挙戦となった。選挙戦ではBJPはベテラン議員に代えフレッシュな候補者を公認したことで,公認を得られなかった議員が無所属として出馬するなど反発が広がった。またBJPは選挙綱領で宗教にとらわれない州統一民法典の制定,経済開発,女性への政府雇用の拡大,都市開発などを掲げた。
会議派は政府雇用の拡大,一定限度の電気料金の無料化,新型コロナで亡くなった遺族への補償金などを掲げ,カルゲー党総裁,ソニア・ガンディー,ラーフール・ガンディーなどが支持を訴えた。庶民党は学校教育の拡充,一定限度の電力の無料化,水道の普及,政府の保健サービスの無料化,女性手当拡充など,庶民生活に直結する行政サービスの充実を掲げて支持を訴えた。
選挙結果はBJPが156議席を獲得し圧勝した。庶民党の参入で会議派は部族民などの支持基盤を奪われ惨敗を喫した。州首相はブーペンドラ・パテールの続投が決まり,12月12日に就任した。
HP州の選挙戦ではBJPは州の開発,統一民法典の実施,若者と女性への雇用などを訴え,会議派は一定限度の電気料金無料化,女性手当の拡充,政府雇用の拡充,政府職員年金制度の改善,移動診療所の整備,起業を目指す若者への無利子融資などを打ち出した。選挙結果は会議派が40議席を獲得してBJPから政権を奪取し,スクヴィンデル・シン・スークーが12月11日に州首相に就任した。
(注)略称は,AAP:庶民党,BJP:インド人民党,INC:会議派。
(出所)インド選挙管理委員会(https://results.eci.gov.in/ResultAcGenDec2022/partywiseresult-S06.htm),The Hindu (December 6 and 8, 2022),その他より作成。
(近藤)
統計・事業実施省国家統計局の2023年2月28日付プレスノートによると,2022/23年度(2022年4月~2023年3月)の実質GDP成長率は7.0%と予測されている。2020/21年度はコロナ禍での経済社会活動の制限や感染拡大により約40年ぶりにマイナス成長となった。翌2021/22年度はデルタ株流行による感染拡大があったものの,経済活動の正常化と前年度の大きな落ち込みの反動もあり9.1%(予測値)の高成長を達成した。2022/23年度においても引き続きコロナ禍からの景気回復基調がみられるが,そのペースは鈍化している。
産業部門別では,商業・ホテル・運輸・通信・放送が前年度の13.8%から14.2%,金融・不動産・専門サービスは4.7%から6.9%にそれぞれ成長率が上昇する見込みである。しかし,それ以外の産業は軒並み成長率が低下した。とくに,建設業は14.8%から9.1%,鉱業は7.1%から3.4%,製造業は11.1%から0.6%へと,鉱工業部門の減速が鮮明となった。
支出別では,消費や投資の回復の勢いが弱まっている。GDPの6割近くを占める民間最終消費支出の成長率は2021/22年度の11.2%から2022/23年度は7.3%に低下する見込みである。物価の高騰,それに対する金融引き締め,後述する雇用の回復の遅れにより需要が伸び悩んだといえる。総固定資本形成は2021/22年度の成長率14.6%から2022/23年度は11.2%に低下した。輸出は前年度比11.5%増となったものの,輸入はそれを上回る18.8%増となり,外需のGDP成長への寄与度は低下している。
物価は,エネルギーや食料の世界的な価格高騰の影響を受けて,インフレターゲットの上限である6%を大きく超えて推移した(図1)。4月には消費者物価指数(CPI)の上昇率が対前年同月比で7.79%に達し,2014年5月(8.33%)の第一次モディ政権発足時以来,8年ぶりの高水準に達した。インドの中央銀行であるインド準備銀行(RBI)は,2020年5月以降4.00%に据え置いてきた政策金利(レポレート)を5月に4.40%に引き上げたのを皮切りに,6月,8月,9月,12月と合計5度にわたって段階的に6.25%まで引き上げて物価上昇の抑制を図った。
(注)前年同月比。
(出所)Ministry of Statistics and Programme Implementation, WPIはOffice of Economic Adviser, Ministry of Commerce and Industryより作成。
一方で政府は,輸入関税の引き下げや輸出の制限によって国内向け食料の安定的供給の確保を優先させ,物価上昇の圧力緩和に努めた。前年からの食用油の輸入関税引き下げ措置を継続するとともに,5月に小麦の輸出を禁止,続く6月に砂糖の輸出量を制限,9月には主に飼料用に利用される破砕米の輸出を禁止し,一部の非バスマティ米に対して20%の輸出関税の賦課を開始した。また消費者に対しては,全国食糧安全保障法に基づく公共配給制度を通じた安価な穀類(コメ,小麦,雑穀)の提供に加えて,2020年にコロナ禍での特別措置として導入した1人当たり5キログラム/月の穀類の無料支給措置を2022年末まで続けた。
インドはコメや小麦の輸出国であるが,原油・石油製品は輸入に大きく依存する。世界的なエネルギー価格の高騰にルピー安を受けて,政府は伝統的な調達先である中東諸国のみならず,欧米などの経済制裁の影響で国際価格の下落したロシアからの原油輸入を大幅に増やすという手段を取った。そのほか中央政府は,5月にガソリンとディーゼルに対する物品税を1リットル当たり8ルピー,6ルピーをそれぞれ削減し,主に貧困層を対象として,調理用燃料として用いられるLPガスシリンダー1本当たり200ルピーの補助金拠出を打ち出した。
CPI,卸売物価指数(WPI)の伸び率はそれぞれ11月および12月に初めて6%を下回る水準に達した。しかし,国際的な原油価格の下落傾向にもかかわらず,燃料・電力価格指数は依然として高い水準にとどまっている。
上半期(4~9月)の国際収支は,原油高やルピー安に伴う輸入額の急増で貿易赤字が拡大した。とくに最大の輸入相手国である対中国の貿易赤字が膨らみ,初めて1000億ドル(2022年暦年)を超える見込みである。貿易赤字はサービス収支や移転収支の黒字を大幅に上回り,経常赤字は前年同期の対GDP比0.2%から3.3%に拡大した。
2022/23年度の貿易における特筆すべき事項として,インドは2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻に対する経済制裁に加わらず,国際価格の下落したロシアからの格安の原油輸入を大幅に増加させた点が挙げられる。インドの原油輸入相手国は主に中東諸国(イラク,サウジアラビア,アラブ首長国連邦)であり,前年度までのロシアからの輸入シェアは1~2%程度であった。4月に政府はロシアからの原油輸入を正式に発表したが,ロシアの主要銀行は欧米を中心とする経済制裁により国際決済網から排除されており,主要通貨による対ロシア貿易には障壁が生じていた。そこでRBIは,インドからの輸出力強化と国際的なインド・ルピー決済への関心の高まりに応じるという名目で,インド・ルピー建て国際決済の仕組みを7月に導入した。これにより市中銀行はRBIから事前に認可を取得したうえで,専用のボストロ・アカウント(ロシア側取引先の決済用口座)を通じてのロシアとの取引が可能となった。商工業省輸出入データバンクによると,2022年4~11月のロシアからの原油輸入額はイラク243億9112万ドル(シェア21.5%),サウジアラビア206億5711万ドル(同18.2%)に次ぐ192億3724万ドル(同16.9%)であるが,10月,11月には輸入量,額ともに両国をしのいでトップとなっている。12月にEUやG7などがロシア産原油価格1バレル60ドルの上限設定に合意すると,ロシアからの輸入はさらに増加していると報じられている。
上半期の金融収支をみると,ポートフォリオ投資が80億9800万ドルの流出超となっている。これは,アメリカの金融引き締め政策による新興国からの資金引き上げの動きを反映しており,結果としてルピー下落につながったとみられる。
為替レートは,年初1ドル=74ルピー台であったが,アメリカの金融引き締め策によるドル高圧力や貿易赤字の拡大でルピー安が進んだ。RBIは為替介入を実施したが,9月後半以降は1ドル=80~83ルピーで推移した。
財政面では,財政赤字が依然として高水準にある。2022/23年度当初8カ月(2022年4~11月)の歳出をみると,2021年10月に16省庁の縦割りを排して発足したインフラ整備プロジェクトを中心として資本支出が前年度同期比63.4%増となっている。歳入は経常収入が前年同期比4.8%増,資本収入が42.3%増となったが歳出増を補いきれず,財政収支赤字は40.6%増となった。2022/23年度の財政赤字は対GDP比6.4%となる見込みである。コロナ禍以降,2020/21年度はコロナ対策の財政支出を余儀なくされたため9.3%,2021/22年度は6.7%と財政責任・予算管理法に定められた財政赤字対GDP比3%を大きく超過してきた。これに対して政府は2025/26年度に4.5%以下まで低下させる道筋をつけているようである。この数値は,2021年2月に政府に提出された第15次財政委員会(2021~2026年)最終報告書のなかで,コロナ禍からの景気回復が最も遅れた場合の財政赤字の目標値として設定されている。
雇用情勢目下,インド経済にとっての最重要課題のひとつは雇用創出である。コロナ禍以前から経済成長が十分な雇用増を伴っておらず,とくに人口の半分強を占める30歳以下の若年層の失業が大きな問題となってきた。また約9割の労働者が社会保障,雇用契約書,有給休暇の権利のいずれかの欠けた形態であるインフォーマルな雇用に従事しており,雇用の質も問われている。
2020年3月からの新型コロナウイルス感染症拡大防止のための経済活動の制限は,雇用に大きな打撃を与えた。都市部の失業率は,コロナ禍初期の厳格なロックダウン時期(2020年4~6月期)にピークに達している(図2)。その後,感染第2波となったデルタ株流行期(2021年4~6月期)に再び上昇したものの,失業率は一貫して低下してきた。しかし,雇用情勢は統計局の発表する数字ほど改善していないとみられる。求職活動を諦めた労働市場からの脱落者が増加しているだけでなく,都市,農村部ともに労働者の実質賃金がコロナ禍以前よりも低下しており,無給の家族従業員や劣悪な労働条件のインフォーマルな雇用の増加が雇用情勢の表面上の改善に貢献していると考えられる。何よりも若年層(15~29歳)の失業率はコロナ禍以前から高く,依然として2桁の高水準にとどまっている。とくに高学歴層ほど失業率の高い傾向がみられ,教育水準の上昇とともにそれに見合う雇用機会をめぐる競争も激化している。例えば,公的部門の国鉄職員3万5000人の募集に対して,1250万人の応募があったという。1月,その採用プロセスにおいて不満を抱いた若年層が暴徒化する事態となった。
(注)失業とは,調査日の前週7日間,求職活動を行ったか仕事があれば就労の意志があったにもかかわらず1時間も就労しなかった状態。
(出所)National Statistical Office,Quarterly Bulletin Periodic Labour Force Survey (PLFS),各号より作成。
そもそも公的部門では,財政状況の悪化に伴い,給与,年金支出を抑制するため,正規の職員より低い賃金体系かつ年金受給の権利のない有期雇用契約が近年拡大してきた。その対象は,行政官のみならず,教員や医療従事者などの幅広い職種に及んでいる。2022年はその潮流がついに軍にまで及んだ。6月14日,モディ首相は今後1年半の間に連邦政府職員として100万人を採用する,とTwitterに投稿した。その直後に軍により明らかにされたのは,軍の若返りと給与・年金支出を抑制するための下級兵士採用に関する大きな方針転換であった。新しい採用計画によると,兵士(2022年は4万6000人採用)は4年間の契約雇用を基本とし,そのうち最大25%が契約期間終了時に軍に正式採用される。契約終了時に退職金,年金は支給されない。仮に軍に正式に採用された場合でも,その時点から勤続15年後に現行の軍給与体系に組み込まれ,4年間の契約勤務期間は軍での勤続年数として退職金や年金には反映されない。年間採用人数が減少するだけでなく,雇用の非正規化や社会保障の欠如など,現役兵士の勤務条件と比べて明らかに劣る内容であった。新採用方針に対して全国で若年層による抗議活動が展開されたが,政府は2022年採用分のみコロナ禍での採用停止期間を考慮し,年齢制限の上限を21歳から23歳へ引き上げると表明するにとどまり,9月より採用活動が開始された。
現政権はまた,2014年の政権発足直後から製造業振興策「メーク・イン・インディア」を掲げ,2022年までに1億の新規雇用を創出することをひとつの柱としてきた。2022年,商工業省は製造業の就業者数が2017/18年度の5700万人から2019/20年度には6240万人に増加したとの報道発表を繰り返し行い,振興策の成果を強調した。しかし,コロナ禍以前から製造業の就業者数は減少しており,コロナ禍でさらに悪化したとの見方も少なくない。ほぼフォーマル部門に該当する従業員10人以上の事業所を対象とする労働・雇用省の季刊労働力調査(QES)では,製造業の就業者は2021年4~6月期の1252万人から2022年1~3月期には1225万人に減少している。インフォーマル部門に該当する従業員9人以下の事業所を対象とした調査(AFES)も並行して実施されたが,結果は公表されていない。しかし,コロナ禍で大きなマイナスの影響を受けたとみられる同部門の雇用が大きく伸びたとは考えにくい。統計局の家計調査をもとにした定期労働力調査(PLFS)においても,就業者に占める製造業の比率は12.1%(2017年7月~2018年6月)から11.6%(2021年7月~2022年6月)に減少している。対照的に,GDPの約15%を占めるに過ぎない農業の就業者は同期間に44.1%から45.5%に増加しており,非農業部門から農業部門に労働力が戻っていることが示唆されている。
こうした状況下で,マハトマ・ガンディー全国農村雇用保証法(MGNREGA)の重要性は増している。同法では農村全世帯に年間100日以上の非熟練肉体労働の機会が保障されている。求職者は申請から15日以内に雇用が提供されなければ,失業手当が支給されることになっており,労働をする権利と社会保障が一体的に提供されるのが特徴である。コロナ禍では農村貧困世帯のセーフティーネットとして重要な役割を果たしており,2020/21年度38億9090万人日,2021/22年度36億3240万人日,2022/23年度25億6800万人日(2月初旬時点)の農村雇用を生み出した。しかし,財務省「2022/23年度経済白書」では,農村経済の正常化により公的雇用の需要は低下していると指摘され,総選挙前最後の通年予算案となった2023/24年度MGNREGA予算は6000億ルピーとなった。これはコロナ禍以前(2019/20年度当初予算)の水準を実質的に下回ることになる。もちろん,年度途中に補正予算が編成される可能性もあるが,予算案ではインフラ整備予算の大きな伸びに対して,農村雇用とともに食糧安全保障,農村開発の予算は軒並み削減されており,政権にとっての農村貧困層の優先度は下がっているように見受けられる。
2021年センサスのさらなる延期インドの全人口を調査対象とするセンサス(国勢調査)は,イギリス植民地時代の1872年に開始され,1881年以降は10年に1度,旧宗主国イギリスと同じ西暦下1桁が「1」の年に一度も途切れることなく実施されてきた。第16回となる2021年センサスは,学校教員ら調査員330万人を動員しての伝統的な「紙」の調査のほかに,デジタル化への第一歩として専用のアプリへの回答入力を調査員または本人が行える,という選択肢が与えられたことが特徴である。当初,2020年4~9月に住居リスト作成と家屋調査および人口登録簿の更新,2021年2月に世帯調査が実施される予定であった。しかし,コロナ禍で延期を余儀なくされ,その後も理由は明らかにされずに延期を繰り返してきた。2022年3月,調査員による面接調査以外に自己記入も認めるという規定の改定が行われたため,にわかにセンサス実施への期待が高まった。ところが調査の前段階で実施される行政区分の確定作業が2023年6月末まで順延されたため,センサスも2023年10月以降に先送りされた。実際には2024年総選挙後にずれ込む可能性が高い。
センサスは国民や世帯の実態を把握できるだけでなく,各種経済社会政策,大規模経済社会標本調査,選挙区の区割りなど,広範囲に用いられる重要な基礎データとなる。そのため,国民に不利益が生じている点が懸念されている。例えば,全国食糧安全保障法では農村部75%,都市部50%の国民に低価格での食糧購入が保障されているが,現在でも2011年センサスをもとに対象人口が算定されているため,本来の受益者が1億人以上除外されていると指摘される。
(辻田)
2022年のインドはロシアのウクライナ侵攻により国際政治で立ち位置が問われた。2月24日にロシアの侵攻が始まったとき,欧米日などはロシアに制裁を科し,ウクライナに軍事・経済支援を拡大した。一方,インドはロシアと西側諸国との間で巧みにバランスをとった。その基本的な理由はインドがソ連/ロシアと1960年代末以降,親密な関係にあるからである。両国は2010年に「特別で特権的な戦略パートナーシップ」を結んでいる。
戦略パートナーシップの最も重要な要素は,インドが兵器輸入でロシアに大きく依存していることである。近年ではアメリカの反対にもかかわらず,最新式の地対空ミサイルシステムS-400をロシアから調達し,昨年から搬入が開始された。2022年は4月15日から第2陣の搬入が行われた。巡航ミサイル・ブラフモなど兵器の共同開発も行われている。また,ロシアは国際政治ではインドのカシミール政策を支持し,エネルギー面ではTN州のクダンクラム原子力発電所の建設や核燃料の供給を請負っている。ロシアのサハリンI石油開発プロジェクトにはインドの石油天然ガス公社が参加している。このような協力関係にある以上,西側諸国から批判があろうとも,インドはロシアとの関係を容易に転換できない。
2月24日のロシアの軍事侵攻直後には,モディ首相はプーチン大統領と電話会談を行い自制,停戦を求め,また在留インド人の紛争地帯からの撤退への協力を要請した。しかし,インドはあからさまに西側寄りの姿勢はとらず,対話と外交による紛争解決を求めながら,ロシアと西側との間でバランスを取る従来からの姿勢を基本として続けている。これは国連の場で明らかである。
2月26日に国連安全保障理事会に提出されたロシア非難決議ではインドは非常任理事国であったが棄権した。その後も,3月2日の国連総会でのロシア軍の即時かつ無条件の撤退を求める決議,3日の国際原子力機関(IAEA)の緊急理事会でのロシア非難決議,4日の国連人権理事会によるロシア軍の人権違反を調査するための国際調査委員会設立決議,24日のウクライナでの交戦状態の停止・緊急の人道的支援に関する国連総会の決議,4月7日の国連人権理事会からのロシア追放決議,10月13日の国連総会におけるウクライナのロシア占領地で「非合法の」国民投票や土地併合に対する非難決議などで,一貫して棄権している。
ただしロシアへの支持は無条件ではない。ウクライナの首都キーウの郊外ブチャで民間人虐殺が明らかになった後の4月5日の国連安全保障理事会でティルムルティ大使は虐殺を非難し,調査実施を支持した。また,9月16日に始まったウズベキスタンでの上海協力機構首脳会議でモディ首相はプーチン大統領と会談し,「今は戦争の時代ではなく,民主主義,外交と対話こそが世界を動かす」と伝えた。しかし,3月3日の日米豪印(QUAD)首脳会議,4月11日のバイデン大統領とモディ首相のオンライン会談,5月24日に東京で開かれたQUAD首脳会議などでインドは対ロシア政策の変更を促されたが,その姿勢を変えていない。
インドは西側諸国からの非難にもかかわらず4月1日に制裁下のロシアから石油購入を開始すると宣言した。インドは物価高騰にあえぎ安価な石油の輸入は政権にとって大きな意味をもつ。その後,輸入は急増しロシアのシェアは11月にはイラクを抜きトップとなった(「経済」 参照)。一方,ジャイシャンカル外務大臣が同月7日にモスクワを訪問する前,ロシアはインドに自動車,航空機および列車部品など500以上の製品を輸出することを求めた。両国間の貿易でインドは大幅な赤字であるが,赤字を解消するためにもインドは要請に前向きである。
インドはアメリカの批判を受けつつも,9月1日から7日にかけて行われたロシアの極東での軍事演習「ボストーク2022」に参加し,11月16日には「アフガニスタンについてのモスクワ協議」に参加した。これらは,ロシアとの関係を基本的に維持していくことをインドが重視していることを示している。
中国,アメリカとの関係:西側と連携し中国を牽制中国とは政治的には両国間の実効支配線(LAC)をめぐり緊張が続いた。両国関係は,2020年6月に東ラダックのLACをめぐり起こった軍事衝突以来冷え込んだままである。両国とも関係修復を模索しているがLACでは小競り合いが散発的に起こり,インドは不信感を払拭できない。インドはラダックで戦闘に加わった中国人民解放軍兵士が聖火リレー走者に含まれるとして2022年2月3日に北京冬季オリンピックの外交的ボイコットを発表した。また12日にジャイシャンカル外相は,中国がLACに部隊を集結させていることを非難した。
現地の軍部隊レベルでは関係安定化のため,3月11日に第15ラウンド,7月17日に第16ラウンド,12月20日に第17ラウンドの協議が行われ,部分的には緊張緩和が進んだ。この間,9月13日に東ラダックのゴグラ地域から両軍は撤退した。しかし,国防大臣ラージナート・シンが,中国軍が12月9日にアルナーチャル・プラデーシュ州でLACの現状を変更しようとしたが,インド軍は阻んだと国会で説明したように対立は続いている。またインドが反発するなかで,中国は8月16日のスリランカのハンバントタ港入港に続き,12月6日にも衛星・ミサイルを追跡・監視できる調査船「遠望5号」をインド洋に送った。
このような緊張が続くなか,インドは西側諸国との軍事関係を緊密化し中国に対抗している。2月27日から3月10日にカルナータカ州ベルガウムでは陸軍と日本の陸上自衛隊との対テロ共同訓練「ダルマ・ガーディアン」,11月8日から15日にかけては日本近海での日米印豪海軍の共同訓練「マラバール」,11月19日から12月3日にかけてはウッタラーカンド州のLAC近くでのアメリカとの共同軍事演習「ユドゥ・アビヤース」などが行われた。これらは定期的演習であるが,中国との関係が緊張するなかで行われたことは,インドが対中国関係において西側諸国との関係を戦略的に重視していることを示している。
以上のように緊張は続いているが両国とも関係改善の契機を模索していることも事実である。経済面では2021/22年度にアメリカが中国をわずかに抜いて最大の貿易相手国になったとはいえ,中国は依然としてインドの最大の貿易相手国のひとつである。戦略的分野以外では中国からの外国直接投資もあり,緊張関係の継続は好ましくない。9月15~16日にサマルカンドで行われた上海協力機構の首脳会議ではモディ首相と習近平主席の接触はなかったものの,インドネシアのバリで開かれた主要20カ国・地域(G20)サミットで11月15日にモディ首相はバイデン大統領との会談を行う一方で,習主席と3年ぶりに言葉を交わした。
アメリカとの関係に関しては,最大の焦点はロシアのウクライナ侵攻におけるインドの立ち位置であった。アメリカはインドを西側に引き込もうとしたが,上述のように国連などでの西側主導のロシア非難決議でインドはことごとく棄権し,バランス外交を基本的に維持した。
アメリカは,ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣のデリー来訪直前に,国家安全保障アドバイザーのディリープ・シンを派遣したが,シンは3月31日に,中国とのLACで紛争になったとき,ロシアがインドを助けると期待しない方がよいと述べてインドをけん制した。首脳レベルでは4月11日のワシントンでの両国の外務・防衛大臣会合冒頭でのモディ首相とバイデン大統領とのオンライン会談,5月24日に東京で開催されたQUADの4カ国の首脳会議において,バイデン大統領はモディ首相にウクライナ問題でインドの政策変更を求めたが,インドは明確な回答を与えなかった。
経済ではアメリカとの連携に積極的である。アメリカは,地域的な包括的経済連携(RCEP)に参加し,環太平洋パートナーシップ(TPP)にも参加を求めて存在感を増す中国への対抗を意識して,2021年10月に新たな経済連携「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)を提案した。その立ち上げがQUAD首脳会議の直前5月23日に発表された。IPEFは貿易促進,サプライチェーン強靭化,脱炭素化,公正な経済などをカバーする緩やかな国際ルールの形成をめざす経済連携である。インドは貿易分野交渉以外の分野でIPEF交渉に参加を開始した。
一方,アメリカは近年のインド国内の政治的自由,人権状況を懸念しており,この点で両国の関係には齟齬がある。例えば4月25日に米国際宗教自由委員会(USCIRF)は,信教の自由がインドにおいて2021年には「際立って悪化」したとして,3年続けてインドを「特に懸念される国」で政府の役割が不完全とした。またアメリカ国務省は10月20日に,ピューリツァー賞を受賞したカシミールのジャーナリストが受賞式典のために10月17日にデリーからニューヨーク行きのフライトに乗ることを妨げられた事件を注視していると表明した。このようなアメリカの姿勢に対してインド政府は反発を示し,例えばUSCIRFの批判に対して外務省は11月23日に反論している。
パキスタンとの関係パキスタンとの関係は比較的安定した状況にある。両国はJK地方の両国間の実効支配線(LoC)をめぐる衝突防止のため2003年に停戦合意したが,その後,パキスタン側から浸透してきた過激派戦闘員によって2019年2月にプルワーマー県で大規模テロ事件が起こるなど,軍事的緊張が高まった。しかし紛争拡大を望まない両国は2021年2月に共同声明で改めて停戦合意の遵守を確認した。2022年12月17日のインド国防省の発表によると,2021年2月以降,LoCの「違反」は3件だけとなっており,信頼醸成の努力が続けられている。
2022年1月5日には前年7月に再開された両国間の国境警備隊レベル協議が行われた。協議でインドはパキスタンから飛来してくるドローンを問題としたが,両国は定期的に会合を開き,コミュニケーションをオープンにすることを確認した。インドは,人道的支援としてパキスタン陸路経由でアフガニスタンに小麦5万トンを送ることで2月12日に世界食糧計画(WFP)と協定に署名した。4月17日にパキスタンは小麦や医薬品の輸送期間を2カ月延長することを認めた。
両国間の関係が緊張のなかでも比較的に安定していることは,3月10日にインドから発射されたミサイルが技術的事故でパキスタン領域に着弾したとき,パキスタンはインドの説明を受け入れなかったものの,結局は大きな問題にならなかったことからも明らかである。8月29日にモディ首相はパキスタンの大洪水の犠牲者に「心からの弔辞」を表明し,一方,パキスタン政府は野菜輸入などでインドと通商再開を考慮すると表明した。また9月5日にパキスタンは,パキスタンからインドに侵入し殺害された戦闘員の遺体を受け入れた。パキスタンは1999年のカルギルでの局地戦争からインド側で殺された戦闘員の死体受け入れを拒否してきた経緯があり,これは稀な例である。JK地域の領有権については両国とも妥協することはないが,信頼醸成の努力は続いている。
スリランカとの関係スリランカでは経済破綻と政治混乱が7月15日のゴタバヤ・ラージャパクサ大統領の辞任につながったが,インドは安定化のため積極的に経済支援した。インドが信用供与枠の供与,通貨スワップ協定,債務繰り延べなど経済支援を行ったことに対して,2月7日に来訪したスリランカ外務大臣G・L・ペイリスは謝意を表した。また外国為替危機に陥ったスリランカに対し,食糧,薬などを調達するための支援として3月17日にインド・ステート銀行とスリランカ政府との間で10億ドルの信用枠設定の協定が来訪中のスリランカ財務大臣バジル・ラージャパクサの署名によってなされた。その後も,インドはスリランカの肥料調達を支援したり(5月13日),TN州政府が5月18日にコメなど救援援助物資の第1陣を送るなど,支援を続けている。
インドがスリランカを積極的に支援する背景には中国のプレゼンスを低下させる思惑がある。中国の遠望5号が8月16日にスリランカのハンバントタに入港したことに対してインドが懸念を表明したのは上述のとおりである。11月9日に建設が開始されたインフラ建設プロジェクトであるコロンボ西岸コンテナ・ターミナルの建設にインドのアダニ・グループが参加するなど経済関係の強化も進んでいる。経済関係強化は中国の影響力を相対的に低下させる意味を持つ。
(近藤)
内政面では政府は,政権の政治的自由への圧迫に対する内外からの批判にどう答えるか,非BJP州政権による中央からの介入への反発にどう対処するかが問われている。一方,野党会議派は2024年に迫った連邦下院選挙を念頭にどう党勢を復活させるか,道筋を明らかにすることを迫られている。
経済では,モディ政権が総選挙をにらみながら物価抑制,製造業振興,雇用創出といった短中期的課題にどのように取り組むかが注目される。
対外関係ではウクライナ戦争が続くなか,ロシア,アメリカ,中国の間でのバランシングの維持,パキスタンとの関係改善の推進が求められる。
(近藤:地域研究センター)
(辻田:新領域研究センター)
1月 | |
11日 | ハリヤーナー州政府,医療従事者のストで麻痺した医療を回復するため,必須サービス維持法を発動。 |
11日 | 政府,海外からの入国者に対して7日間の隔離措置を義務化(2月14日に解除)。 |
17日 | ジャンムー・カシミール(JK)連邦直轄領行政府,カシミール記者クラブを閉鎖。インド編集者組合,政府による抑圧と非難。 |
20日 | 最高裁判所,医科系の全国入学資格試験でその他後進階級(OBCs)の留保を合憲判断。 |
27日 | 政府,国営航空会社エア・インディアの株式をターター財閥グループ企業に売却完了。 |
27日 | インド,最初のインド・中央アジア首脳会議を開催(オンライン)。インドと中央アジア内陸国との連結性改善などを議論。 |
2月 | |
1日 | 2022/23年度予算案,発表。 |
3日 | インドは,国境紛争に関わった中国の兵士が聖火リレー走者に含まれるとして北京冬季オリンピックを外交的ボイコット。 |
7日 | 連邦政府,中央メディア認可ガイドライン2022を発表。インド編集者組合,曖昧で恣意的と反発。 |
14日 | 政府,中国製54アプリを禁止。 |
18日 | グジャラート州アーメダバードで56人が死亡した2008年の連続爆弾事件の特別法廷,38人に死刑,11人に終身刑を宣告。 |
22日 | パキスタンを経由するアフガニスタンへの小麦の食糧援助の第1陣がパンジャーブ州アタリから出発。 |
24日 | ロシアのウクライナ侵攻でモディ首相,プーチン大統領に停戦を求める。 |
27日 | 陸上自衛隊とインド陸軍の対テロ共同訓練「ダルマ・ガーディアン」開始(~3月10日)。 |
3月 | |
3日 | オンラインのQUAD首脳会議。インドはウクライナ問題で独自姿勢。 |
10日 | 州議会選挙開票。ウッタラーカンド,ウッタル・プラデーシュ(UP),マニプル,ゴア各州ではインド人民党(BJP)が勝利。パンジャーブ州では庶民党(AAP)が勝利。 |
11日 | 2021年センサスに調査員による面接調査に加えて自己記入式も認められる。 |
11日 | インドと中国,ラダックでの両国間の実効支配線(LAC)をめぐる現地部隊レベルの第15ラウンド会合開催。 |
14日 | インド新聞評議会(PCI)によって設立された事実調査委員会は,JK地域,特にカシミール地域のニュース・メディアは,政府によって抑圧されていると非難。 |
14日 | インド準備銀行(RBI),マイクロファイナンスに関する新しい規制を発表(4月1日施行)。 |
15日 | カルナータカ高等裁判所は州政府による女子学生のヒジャブ禁止令を支持。 |
16日 | 会議派の分裂露わに。23人の指導者グループ,集団指導体制を求める。 |
16日 | 12~14歳を対象とした新型コロナウイルスワクチン接種が開始される。 |
16日 | 政府,156カ国での5年間の観光ビザ発給を再開。 |
22日 | 西ベンガル州ビルブーム県での村長殺害に端を発する暴力で8人が焼殺される。 |
22日 | 政府,ガソリン,ディーゼル,LPガスシリンダーの値上げを決定。 |
27日 | 政府,2020年3月23日以来運航停止していた国際商用定期便を再開。 |
28日 | 連邦政府の民営化政策などに抗議して労働組合センターの全インドストライキ(~29日)。 |
4月 | |
1日 | 財務大臣シーターラーマン,ロシアから安価に石油の購入を開始したと発表。 |
2日 | インドとオーストラリア,経済協力貿易協定に署名。12月29日発効。 |
5日 | インド,ウクライナの首都キーウ郊外ブチャでの民間人殺害を非難。 |
10日 | 2回目接種から9カ月以上経った18歳以上を対象に新型コロナワクチン3回目接種が開始される。 |
11日 | インド,アメリカと外務・防衛大臣会合をワシントンで開催。 |
16日 | デリー北部で行われたハヌマーン生誕祭で宗派暴動。 |
21日 | ボリス・ジョンソン英首相来訪。 |
21日 | インド,日本がウクライナ周辺国へ人道支援物資を空輸するためムンバイに派遣する自衛隊機の受け入れを拒否。 |
25日 | 米国際宗教自由委員会,インドでの信教の自由が2021年以来「際立って悪化」と批判。 |
5月 | |
1日 | アラブ首長国連邦との包括的経済連携協定発効。 |
2日 | ナレンドラ・モディ首相,ドイツ,北欧諸国,フランスを訪問。戦略的提携,環境問題など相互協力の重要性について協議(~5日)。 |
3日 | ラージャスターン州ジョドプルでイード・アル=フィトルを控えて宗派暴動。 |
4日 | RBI,政策金利(レポレート)を4.00%から4.40%に引き上げ。 |
5日 | 世界保健機関,2020~2021年の新型コロナウイルスによるインドの超過死者数を約470万人と発表。インド政府発表数値(48万人)の約9.8倍。 |
14日 | 小麦価格の世界的高騰で,食糧安全保障への脅威から連邦政府は輸出を禁止。 |
14日 | カルナータカ州第10学年の学校カリキュラムで民族奉仕団(RSS)の創設者ヘードゲワールのスピーチが採用される。 |
16日 | デリーでパキスタン,ロシア,中国と4つの中央アジアの国の反テロ当局者が集まる上海協力機構-地域反テロ構造(SCO-RATS)が開催。 |
19日 | 最高裁,輸入業者に対する海上運賃への物品・サービス税(GST)課税を違法との判決を下す。 |
20日 | アッサム州27県でモンスーンの洪水。耕地の約6万4000ヘクタールが浸水し広範囲で被害。 |
21日 | 財務大臣,ガソリン,ディーゼルへの中央政府物品税の引き下げ,LPガスシリンダーへの補助金などの物価対策を発表。 |
25日 | 特別法廷,テロ資金のケースでJK連邦直轄領の分離主義者ヤシン・マリクに終身刑宣告。人々が反発し警察と衝突。 |
25日 | 政府,国内価格を安定させるため6月から10月末までの砂糖輸出量の制限を発表。その後,2023年10月末まで延長。 |
6月 | |
5日 | デリー大学でBJP報道官ヌプル・シャルマが預言者ムハンマドについて冒涜的スピーチを行い党から停職処分に。イスラーム諸国も批判。 |
8日 | RBI,レポレートを4.40%から4.90%に引き上げ。 |
14日 | 政府,3軍への4年間の契約雇用計画(アグニパトゥ)を発表。期限付き雇用に反発する青年による抗議運動が各地に広がる。 |
23日 | オンラインでBRICS首脳会合。プーチン大統領が出席した会議ではウクライナ,アフガニスタンについて議論。 |
24日 | 最高裁,2002年のグジャラート宗派暴動で亡くなった会議派指導者E・ジャフリの未亡人による,当時のモディ州首相などが暴動へ関与したとする主張を却下。警察は関与を主張するジャーナリスト,T・セタルヴァドを逮捕(25日)。 |
27日 | デリー警察はヒンドゥー教徒の宗教感情を侮辱したとして事実検証のウェブ・メディアを主催するモハンメッド・ズバイルを逮捕。最高裁は暫定的に保釈を認め釈放(7月20日)。 |
29日 | マハーラーシュトラ州首相でシヴ・セーナーのウッダヴ・タークレー,党内の造反で州議会の信任を維持できず辞任。造反派エクナート・シンデーがBJPの支持を得て州首相に就任(30日)。 |
29日 | 2日間にわたる第47回GST評議会終了。7月18日から家庭用品などの税率改定へ。 |
7月 | |
6日 | RBI,インド・ルピー安定化のため外資流入を促進する措置を発表。 |
11日 | RBI,ルピー建て国際決済の導入を発表。 |
11日 | 国連,2023年にインドが中国を抜いて世界最多になるとの人口推計を発表。 |
17日 | インドと中国,東ラダックのLACでの紛争拡大防止のための第16ラウンド会合を開催。 |
21日 | 前ジャールカンド州知事でBJPのD・ムルムー,第15代大統領に選出。初の部族民出身大統領(25日就任)。女性大統領は2人目。 |
8月 | |
5日 | RBI,レポレートを4.90%から5.40%に引き上げることを決定。 |
6日 | 元西ベンガル知事でBJPのJ・ダーンカールが副大統領に選出され就任(11日)。 |
9日 | ビハール州でニティシュ・クマール州首相,BJPとの連携をやめ,民族ジャナター・ダル(RJD)との協力関係に戻る。 |
16日 | スリランカのハンバントタに入港した中国の調査船「遠望5号」に対してアメリカとともにインド政府も懸念を表明。 |
9月 | |
1日 | ロシアの極東での軍事演習「ボストーク2022」にインド参加。アメリカは批判。 |
5日 | 統一進歩連盟(UPA)政府を率いるジャールカンド解放戦線のH・ソーレン州首相,州議会で信任投票を乗り切る。 |
5日 | バングラデシュ首相シェイク・ハシナ来訪。 |
7日 | 会議派のラーフール・ガンディー,カンニャクマリから示威行進開始。 |
9日 | 政府,破砕米の輸出禁止,非バスマティ米の輸出に20%の課税を開始。 |
10日 | UP州政府,イスラーム教の教育機関(マドラサ)の実態調査を開始。 |
14日 | ゴア州議会で会議派の議員11人中8人がBJPに党籍変更。 |
16日 | サマルカンドでの上海協力機構首脳会議でモディ首相はプーチン大統領と会談し,「今は戦争の時代ではなく,民主主義,外交と対話こそが世界を動かす」と伝える。 |
17日 | 政府,物流コストの削減を目的とする国家ロジスティックス政策を発表。 |
22日 | インド人民戦線(PFI)に対する全国的取り締まり。国家捜査機関(NIA),警察などにより活動家など109人が逮捕。 |
27日 | モディ首相,安倍首相の国葬出席。 |
30日 | RBI,レポレートを5.40%から5.90%に引き上げることを決定。 |
10月 | |
1日 | 第5世代移動通信システム(5G)の運用が開始される。 |
7日 | 国連人権理事会に提出された,中国の新彊地域の人権侵害を討論することに反対する決議で,インド棄権。 |
7日 | 政府,インド産業開発銀行(IDBI)の株式売却手続きを開始。 |
19日 | 会議派,M・カルゲーを新総裁に選出。 |
30日 | グジャラート州モールビーでつり橋崩落。135人死亡。 |
31日 | 最高裁は政府に,インド刑法典で扇動を違法とする124A条の下で新しい告発状を登録しないように求める。政府は植民地時代に遡る124A条の再検討を表明。 |
11月 | |
1日 | RBI,卸売り向けのデジタル通貨(e₹-W)の実証実験を開始。 |
2日 | 国際市場で肥料価格が高騰。政府はラビー(冬作)期の肥料補助金を大幅引き上げ。 |
7日 | 最高裁の憲法法廷,経済的弱者層(EWS)へ政府雇用,教育機関で10%の留保を規定する第103次憲法改正を合憲と判断。 |
8日 | 日本主催で日米印豪海軍共同訓練「マラバール」実施(~15日)。 |
15日 | モディ首相はインドネシアのバリでの主要20カ国・地域(G20)首脳会議に参加。 |
15日 | 大学補助金委員会(UGC),「古代テキストと伝統」を賛美する民主主義の講義開催を連邦政府下の大学に指示。これに対しインド民主女性協会は取り消しを求める(17日)。 |
22日 | 最高裁,選挙委員会はイエスマンであってはならないと表明。 |
22日 | 政府,入国時のワクチン接種証明書または出国前検査証明書提出の撤廃など入国ガイドラインを改定。 |
26日 | ラダック連邦直轄領の自治丘陵開発評議会カルギル支部は決議で,州の地位および憲法第6附表の特別の地位を要求。 |
28日 | 第4回インド・フランスの年次防衛対話でフランスの国防大臣来訪。 |
29日 | エア・インディアとヴィスタラの航空会社2社の合併が発表される。 |
30日 | ケーララ州政府,アリフ・モハンメッド・カーン知事を州大学の総長の職務から解く法案を承認。 |
12月 | |
1日 | RBI,小売り向けのデジタル通貨(e₹-R)の実証実験を開始。 |
5日 | インド・バングラデシュ合同ワーキンググループ第18回会合が開催(~6日)。国境不法侵入,テロ,安全保障などを協議。 |
7日 | RBI,レポレートを5.90%から6.25%に引き上げることを決定。 |
8日 | グジャラート,ヒマーチャル・プラデーシュ(HP)州の州議会選挙開票。グジャラートではBJP圧勝,HPでは会議派勝利。 |
9日 | アルナーチャル・プラデーシュのタワン地域のLAC近辺でインドと中国の兵士が小競り合い。数人が軽傷。 |
13日 | ケーララ州議会は,知事を14の州大学の総長職から外す大学法(改正)法案を承認。ただし2大学は除く。 |
15日 | 大陸弾道弾アグニ5発射実験成功。 |
16日 | モディ首相,ロシアのプーチン大統領と電話会談。対話と外交が重要と説く。 |
17日 | 第48回GST評議会開催。2023年1月1日から飲食料品などの税率改定へ。 |
20日 | インド,中国とLACをめぐる第17ラウンド会合。対話継続で合意。 |
23日 | 連邦政府,全国食糧安全保障法の受益者8.1億人に対して無料の穀物を1月1日から1年間提供すると発表。 |
24日 | 政府,国際線乗客の無作為抽出2%に対する入国時PCR検査を再開。 |
27日 | 選挙委員会はアッサム州の選挙区割りを2001年センサスに基づいて行うと説明。アッサム,ナガランド,マニプル,アルナーチャル・プラデーシュでの区割りは紛争で2008年以来延期されたまま。 |
29日 | 政府,2023年1月1日以降に日本など6カ国から入国する全国際線旅客に対してPCR検査による陰性証明の義務付け再開を決定。 |
(出所)政府発表の閣僚名簿(https://www.india.gov.in/my-government/whos-who/council-ministers)およびその他各省庁のウェブサイトなどから筆者作成。
(注)カッコ内政党名略号。BJP:インド人民党,RPI(A):インド共和党(アトヴァレ派),JD(U):ジャナター・ダル(統一派),AD(S):我が党(ソネーラール),RLJP:ラーシュトリア人民の力党。
(出所)政府発表の閣僚名簿(https://www.india.gov.in/my-government/whos-who/council-ministers)およびその他各省庁のウェブサイトなどから筆者作成。
(注)1)暦年。2)年度平均値。2022/23は4~12月の平均値。3)第2次予測値。4)4~12月の平均に対する値。なお12月は暫定値。
(出所)人口はMinistry of Statistics and Programme Implementation(MOSPI), National Accounts Statistics 2022, およびPress Note on First Advance Estimates of National Income 2022-23, 出生率はMinistry of Finance, Economic Survey 2019-20, 2020-21, 2021-22, 2022-23, 食糧穀物生産はMinistry of Agriculture and Farmers Welfare, Second Advance Estimates of Production of Foodgrains for 2022-23,消費者物価上昇率はRBI, Handbook of Statistics on Indian Economy 2021-22, Ministry of Finance, Economic Survey 2022-23, 為替はMinistry of Finance, Economic Survey 2022-23より作成。
(注)1)都市部と農村部の統合指数。2)4~12月。12月は暫定値。3)暫定値。4)4~12月。11月,12月は暫定値。5)4~12月。12月は暫定値。
(出所)鉱工業生産指数はMinistry of Finance, Economic Survey 2022-23およびMOSPI, Press Note on Quick Estimates of Index of Industrial Production and Use-based Index for the Month of December, 2022, 農業生産指数,卸売物価指数はMinistry of Finance, Economic Survey 2022-23, 消費者物価指数はRBI, Handbook of Statistics on Indian Economy 2021-22, およびMinistry of Finance, Economic Survey 2021-22, 2022-23より作成。
(注)1)3次改定値。2)2次改定値。3)1次改定値。4)2次予測値。
(出所)MOSPI, Press Note on First Revised Estimates of National Income, Consumption Expenditure, Saving and Capital Formation for 2021-22, およびPress Note on Second Advance Estimates of National Income 2022-23より作成。
(注)1)3次改定値。2)2次改定値。3)1次改定値。4)2次予測値。5)基本価格表示の粗付加価値(GVA)。
(出所)MOSPI, Press Note on First Revised Estimates of National Income, Consumption Expenditure, Saving and Capital Formation for 2021-22, およびPress Note on Second Advance Estimates of National Income 2022-23より作成。
(注)1)暫定値。2)4~9月の予測値。
(出所)RBI, Handbook of Statistics on Indian Economy 2021-22, およびRBI, Press Release (Development of India's Balance of Payments during the Second Quarter of 2022-23, 29/Dec/2022より作成。
(注)1)アイスランド,ノルウェー,スイス,リヒテンシュタイン。2)非特定地域(unspecified region)を含む。3)暫定値。
(出所)Ministry of Commerce and Industryのウェブサイト・データより作成。
(出所)Ministry of Finance, Union Budget 2021-22, 202-23, および2023-24より作成。