アジア動向年報
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各国・地域の動向
2022年のアフガニスタン ターリバーン実効支配が継続,一方で課題が山積
青木 健太(あおき けんた)
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2023 年 2023 巻 p. 575-596

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2022年のアフガニスタン

概 況

2022年のアフガニスタンは,2021年8月15日に復権したターリバーンが軍事的優位を保ちつつ,ほぼ全土を実効支配する情勢で推移した。事前の公約とは裏腹に,ターリバーン暫定政権には,2001年12月のボン合意から暫定政権期を含め約20年間続いたアフガニスタン・イスラーム共和国(以下,イスラーム共和国)政権高官らが含まれず,民族的にも最大民族パシュトゥーン人が中枢を占める陣容となった。2021年以前と大きく変化したのが社会状況であり,家父長制を基盤とする保守的な土壌を背景に,ターリバーンは独自の解釈に基づくイスラーム統治を推し進め,特に女性の教育・就労に対する厳しい制限を科し,諸外国から大きな批判を浴びた。治安情勢は全般的には改善傾向を辿ったが,反ターリバーン勢力による攻撃のほか,ターリバーン内部でも権力闘争の兆候がみられた。「イスラーム国ホラーサーン州」(ISKP)がとりわけシーア派教徒を標的とした攻撃を繰り返し,最大の治安上の脅威となった。

経済面では,ターリバーンは体系的な経済政策を打ち出さず,諸外国がアフガニスタン在外資産の凍結を継続したことから,財政状況は悪化の一途を辿った。

対外関係面では,ターリバーンを政府承認する国はひとつも現れず,同勢力と諸外国との間の溝が広がった。それでも,中国,ロシアなどはターリバーンを新たな現実として認識したうえで,ターリバーンが派遣した外交官を信任するなど「事実上の権力」として実利的に向き合った。

国内政治

独自の解釈に基づくイスラーム統治を展開

2021年8月15日に2001年以来再び実権を掌握したターリバーンは独自の解釈に基づき,シャリーア(イスラーム法)に則った国造りを推し進めた。このため,西側諸国からの支援を受け,欧米型の自由を国民の多くが謳歌していたイスラーム共和国政権時と比べ,社会の様相は一変した。

ターリバーンは公式には組織の綱領やそれに類する文書を発していないが,ハイバトゥッラー・アーホンドザーダ最高指導者(パシュトゥーン人。第1次ターリバーン「政権」元裁判所長官)は,イスラーム統治の実現を標榜する基本指針をたびたび示しているため,冒頭でまず確認しておきたい。これを通じて,後述するターリバーンによるハッド刑(イスラーム刑法上の量刑が固定された身体刑)やキサース刑(同害報復刑)の適用,女性に対するヒジャーブ(頭髪を覆うヴェール)の着用義務化や教育・就労制限などのターリバーン独自の政策が施行される思想的背景への理解が可能となる。

同指導者は2022年7月6日のイード・アル=アドハー(犠牲祭)の声明において,「アフガニスタン・イスラーム首長国(筆者注:ターリバーンを指す)は,イスラームのシャリーアに基づく体制を念頭に,治安改善,発展,および,国の再建に向けて細心の注意を払っている」と述べている(Voice of Jihad,2022年7月6日)。同指導者は10月13日にも,「過去20年間に各省庁でできた規則をイスラーム法学者が検証し,シャリーアに即していないものは全て廃止する」と発言した(BBC Farsi,2022年10月13日)。このように,ターリバーン指導部は,イスラーム統治の実現を目指す方針を一貫して堅持した。なお,シャリーアとは,成文法ではなく,アッラー(唯一絶対の神)から預言者ムハンマドに下された啓示であるクルアーンとスンナ(預言者の慣行)のうち,人間の行為規範に関わる総体を指す(小杉泰「シャリーア」,『岩波イスラーム辞典』岩波書店,466ページ)。

ターリバーンは,不文法であるシャリーアと,これとは別に近代国民国家法を法典化することとの整合性について明確な立場こそ示していないが,アブドゥルカリーム・ハイダル司法副大臣代行は,「クルアーン,スンナ,および,その他のイスラーム法学が我々の依拠すべき法であり,アフガニスタンに憲法を制定する必要はない」と発言している(Tolo News,2022年9月4日)。つまり,ターリバーンにとって依拠すべき法は既に存在しており,新たに憲法を制定する必要はないことになる。したがって,ターリバーンはファトワー(法見解)や特別法令を随時発出する形で政策指針を表明し,いわば「接ぎ木」のような形での国造りを行うことになると推定される。

なお,ターリバーンの構成員の多くは最大民族パシュトゥーン人であり,同勢力の行動様式が,保守的な男性優位社会の伝統と慣習の影響を強く受けている点にも留意が要る。地方社会では,女性は結婚できる年齢になれば,若くして多額の婚資と引き換えに親が決めた家に嫁がされ,出産・育児・家事を担うことを社会的に強く期待されてきた。また,部族社会では,部族や家族の間で諍いが生じた際,賠償金の代わりに娘を与える因習も存在した。シャリーアに加えて同国の部族慣習法も考慮される必要がある。さらに,1973年以来50年にも及ぶ戦争の負の遺産,それに伴う教育不足も無視できないことはいうまでもない。

ターリバーン暫定政権による「権力の独占」

ターリバーンは2021年9月7日に発表した暫定的な国家機構図と閣僚(「参考資料」を参照)を基に,国家の舵取りを行っている。ターリバーン暫定政権はほぼすべてターリバーン構成員から成っており,ハーミド・カルザイ元大統領(パシュトゥーン人)やアブドゥッラー・アブドゥッラー元国家和解高等評議会議長(タジク人)などのイスラーム共和国政権高官らは一切含まれなかった。民族的にも,パシュトゥーン人が主体であり,タジク人,ウズベク人,ハザーラ人などはわずかのポストを配分されたにすぎない。女性閣僚は1人も登用されていない。

復権以降,ターリバーンは自らを「アフガニスタン・イスラーム首長国」と呼称し続けており,その首長に,アミール=アル・ムウミニーン(信徒たちの長)と称される第3代最高指導者ハイバトゥッラー・アーホンドザーダが就任した。同最高指導者の下で,ムハンマド・ハサン・アーホンド(パシュトゥーン人。第1次ターリバーン「政権」元副首相)が首相代行を担い,3人の副官が支える機構となっている。そして,ターリバーン暫定政権の組織構成は,基本的に,2021年8月15日のムハンマド・アシュラフ・ガニー大統領(パシュトゥーン人。元世界銀行エコノミスト)の国外逃亡によって崩壊したイスラーム共和国の省庁を踏襲する形となっている。

このターリバーン暫定政権の成立に当たっては,急に権力を手中に収めて組閣を迫られるなか,いわば弥縫策としてイスラーム共和国政権の機構の多くを活かす形で進められた。この過程では,閣僚としての適性に加えて,それまでの論功行賞の意味合いも考慮されたと見られる。つまり,ターリバーン暫定政権の組織構成は,反政府武装勢力時代の力関係の延長線上にある間に合わせのものである。

ターリバーン暫定政権下では,復権の翌月には女性課題省が廃止され,その建物が新しく設置された宣教・教導・勧善懲悪省に取って代わられたほか,2021年12月にはイスラーム共和国時代に存在した独立選挙委員会等が解体されていた。また,2022年5月には,人権委員会,国家安全保障評議会,憲法監督委員会,下院事務局,国家和解高等評議会の5つの機構がさらに解体されるなど,ターリバーン指導部の統治方針を反映し,欧米起源の思想を排除する形での,大きな機構改革が続いた。

こうしたなか,2022年6月30日~7月2日の3日間,カーブル工科大学内のロヤ・ジルガ(部族大会議)ホールにおいて,全国34州から3500人以上を集めたウラマー大会議が開催されたことが注目された。最終日に参加者らが採択した12項目の宣言書では,アフガニスタン・イスラーム首長国への忠誠やイスラーム統治への支持などが表明された。この会合は,包摂的政権の成立や女性の権利保障に関する議論に進展をもたらすものではないかと期待を集めたが,実際には同会合はアフガニスタンで伝統的に開催されてきた国家的行事で,全国各地の長が議論するロヤ・ジルガではなく,ターリバーンが各地から自勢力に近しいウラマーらを招集した「官製集会」と呼べる会合だった。一方,権力基盤の盤石さを示したいターリバーンとしては,暫定政権発足から1周年を迎えようかというタイミングで,自勢力を支持する保守層(宗教界,部族長老,等)から改めて忠誠・支持を取り付けた点は大きな成果になったといえる。

最高指導者のカンダハールからの影響力拡大と「二重権力構造」の出現

通常,ターリバーン暫定政権では,ハサン・アーホンド首相代行がカーブルで主宰する閣議において,国家としての重要事項や喫緊の課題についての審議・決定が行われる。しかし,2022年を通じて,アーホンドザーダ最高指導者の政治的影響力が徐々に拡大し,同指導者は対外関係や国内政策方針のみならず,細かな人事にも介入するようになった。

アーホンドザーダ最高指導者は,カーブルでの閣議とは別に,故地カンダハール州で閣僚を集めたジルガ(集会)を主宰し始めた。例えば,2022年3月中旬,同指導者はカンダハール州で側近らを集めジルガを開いたとされる。それらの場では,法に従った人民への対応,経済問題の解決,治安機関の対応などの重要事項が関係各所に指示された。実際,3月23日の女子中等教育再開の撤回は,最高指導者のトップダウンによる判断に基づくといわれた。最高指導者は,全国の州知事,国防省,情報局,裁判官・判事,および,宣教・教導・勧善懲悪省関係者らを集めた会合を折に触れて開き,イスラーム統治を全土で徹底させるよう,個別に厳重な指示を出すなどの対応を講じた。

つまり,ターリバーン暫定政権の公式の国家機構図とは別に,最高指導者の「鶴の一声」で物事が決まる二重権力構造が生まれつつあり,ターリバーン内部の権力構造は複雑化する傾向にある。この点は,諸外国によるターリバーンへの働きかけが,有効に機能しない一因となっている。今後,最高指導者の動向,ひいては同人に対するパキスタンをはじめとする近隣諸国による影響力の行使について注視する必要がある。

ターリバーン内部に分裂の兆候

もうひとつの大きな内政上の動きとして,ターリバーン内部における分裂の兆候が見られたことが挙げられる。具体的には,民族的出自に沿った対立であり,とりわけ最大民族パシュトゥーン人と,それ以外の民族(タジク人,ウズベク人,ハザーラ人等)との間に緊張関係が顕在化した。例えば,2022年6月中~下旬にかけて,北部サレポル州バルハーブ郡で,ターリバーン本体と元ターリバーン司令官のマウラウィー・マフディー・ムジャーヒド(ハザーラ人)との間で衝突が勃発する事態となった(8月17日,ターリバーン国防省は,同司令官がイラン側への逃亡を図ったところを殺害したと発表)。また,10月中旬,ターリバーンのサラーフッディーン・アユービー司令官(ウズベク人)が,権力の独占と民族差別を理由にターリバーン本体から分派した事例もある。

この他,ターリバーン内部には,元軍事委員会を中心とした「軍事部門」と,元カタール政治事務所と元政治委員会を中心とした「政治部門」との間に対立が存在する。さらに,出身地域・部族に沿った対立もある。ターリバーン内の強硬派であるハッカーニー・ネットワーク構成員らは,南東部の大パクティアー地方出身であり,その多くはパキスタン北西部のハイバル・パフトゥンフワー州にあるハッカーニヤー学院で学んだものが多い。一方,ヤクーブ国防相代行やバラーダル副首相代行らを中心とする派閥は,大カンダハール地方出身であり,こうした2大派閥間には目に見えぬ軋轢が存在する。総じて,ターリバーンの権力基盤が盤石であると断定することは難しい状況であり,内部分裂の兆候が確認できる。

反ターリバーン勢力蜂起の動き

内部分裂に加え,反ターリバーン勢力が結集しさまざまな形での抵抗活動が継続したことから,政治・治安状況は流動的であった。反ターリバーンのなかで最大勢力は,アフマド・マスード(タジク人。故アフマド・シャー・マスード司令官の息子)率いる国民抵抗戦線(NRF)である。NRFは,ターリバーンが2021年8月15日にカーブルを包囲し,国内が緊張に包まれるなかで,マスードやアムルッラー・サーレフ元イスラーム共和国副大統領(タジク人)らが天然の要塞である中央部パンジシール州の渓谷に武器や弾薬を運び込み,そこを拠点として結成された。以来,NRFは,ターリバーンからの「自由」と「独立」を求めるとともに,ターリバーン支配によってアフガニスタンが再び国際テロの巣窟となることを防ぐため,政治・軍事の両面で活動を展開した。

両勢力間での交戦は,2021年末頃から伝えられるようになった。特に,戦闘が激しかったのがパンジシール州と北東部バダフシャーン州であった。パンジシール州では戦闘が激しさを増すなか,ターリバーンのアーホンドザーダ最高指導者が,2022年8月21日にアブドゥルガユーム・ザーキル(パシュトゥーン人。元軍事委員長)をパンジシール州方面の総司令官に,9月20日には新しいパンジシール州知事にムハンマド・モフセン・ハーシミー(元内務省治安副局長)を任命した。バダフシャーン州でも,ターリバーンとNRFの交戦は,日を追うごとに激しさを増した。10月4日には,NRFがバダフシャーン州シェカイ郡を陥落させ,ターリバーンが派遣する郡知事を拘束したと発表するなど,激化の様相を呈した。ただしターリバーン側は州の陥落を否定している。こうしたNRFの弛まない武装抵抗を受けて,翌々日の10月6日,ターリバーンは,アマヌッディン・マンスール空軍司令官をバダフシャーン州知事に任命するなど,同州も警戒対象地域に加える姿勢を示した。

反ターリバーン勢力は,軍事的側面での抵抗活動のみならず,ターリバーンとの交渉を通じた政治的解決も志向する立場を見せている。2022年1月には,イランの仲介で,ターリバーンのアミール・ハーン・モッタキー外相代行(パシュトゥーン人)が,イラン滞在中にマスードとイスマーイール・ハーン元野戦指揮官(タジク人)と会合を持った。大きな進展はなかったものの,政治・軍事両面で,ターリバーンと反ターリバーン勢力が事態の解決に向けて取り組んでいる。

また,トルコを舞台として,アブドゥルラシード・ドゥーストム元第一副大統領(ウズベク人)が主導する形で「アフガニスタン救国のための抵抗高等評議会」が2022年5月に結成されたほか,ムハンマド・ハニーフ・アトマル元外相(パシュトゥーン人)は10月16日,「和平と公正のための国民運動」を設立した。同様に,10月24日,サルワル・ダーネシュ元第二副大統領(ハザーラ人)が連邦共和制設立を目指す「アフガニスタン公正・自由党」を結党している。

なお,ターリバーンは,在外アフガニスタン人連絡・帰還委員会を設置するとともに,国外に逃れた同胞の帰国を促し,いくらかの政治有力者が帰国した。

厳しい風紀取り締まりと女性の権利制限などで激変する社会

ターリバーンの独自の解釈に基づくイスラーム統治が始まったことで,社会状況は一変し,特に司法と風紀取り締まり,および,女性の権利制限において顕著な変化が見られた。司法分野では,姦通罪や窃盗罪に対して,ハッド刑が執行される事例が増加した。2022年11月23日には,中央部ローガル州で,ターリバーンは「姦淫や窃盗」を理由に,女性3人,男性9人をサッカー・スタジアムにおいて鞭打ち刑に処した。12月7日には,西部ファラーフ州で,ターリバーンは殺人犯1人をキサース刑に処したと発表した。同処刑には,バラーダル副首相代行や,アブドゥルハキーム・ハッカーニー最高裁判所長官らも同席したことから,ターリバーン指導部としては自らのシャリーアに基づく司法の適用を内外にアピールしたものと考えられる。

一方,ターリバーン指導部による恩赦の方針にもかかわらず,イスラーム共和国国軍兵士らへの報復行為なども見られた。2022年4月12日付『ニューヨーク・タイムズ』紙は,ターリバーンが実権を掌握した後,前政権の治安部隊要員500人以上を処刑したと報じた。このほか,強制移住や強制結婚,ハザーラ人への迫害なども報じられた。概して,長年のジハード(聖戦,奮闘努力)に勝利したと考えるターリバーン構成員らが,州,郡,村レベルの司令官の判断で単独行動を取っているものとみられる。

また,ターリバーンは風紀取り締まりも強化し始めた。ターリバーン宣教・教導・勧善懲悪省は,南部ヘルマンド州で男性の髭剃りを禁止するよう理髪店に通達したほか,首都カーブルでは美容院や商店に対して,女性の写真を飾らないよう指示したりした。2022年9月には,南西部ニームルーズ州の宣教・教導・勧善懲悪省州支部が,州内のコーヒーショップに対して営業をしないよう通知し,店主らに対して集団礼拝に参加するよう求めたほか,ウエディング・ホールで音楽を流すことを禁止するなどした。この他,ターリバーンは,メディア活動やSNS使用に関する厳しい制限も科した。

これらの多くはイスラームに基づくとターリバーンは主張するが,なかには女子教育・就労の制限など,イスラーム法学者らからも異論が出る政策も含まれている。ターリバーンは復権以降,女性の権利を制限する政策を次々に講じた(表1参照)。例えば,女性は72キロメートル以上移動する場合にマハラム(近親の男性の家族構成員)の同伴がなければならないと指示が出され,女性の公共空間での活動は著しく制約された。全体として,現代世界に一般に流布する社会通念からすれば,女性の著しい自由の侵害と言い得る社会状況が出現した。

表1 ターリバーンによる女性の権利を巡る主な政策

(出所)公開情報を基に筆者作成。

もうひとつの特徴が,イスラーム共和国政権下での諸政策の否定と,パシュトゥーン民族主義に基づく諸政策である。例えば,2021年9月20日,カーブルにある公立大学の正式名称が,ブルハーヌッディーン・ラッバーニー大学からカーブル教育大学に変更された。ラッバーニーは,内戦時代(1992~1996年)にターリバーンと敵対していた北部同盟の指導者であるため,政治性を有さない名称への変更が決定された。また,2022年9月には,北部バルフ州にあるバルフ大学の看板から,大学を指すダリー語(ダーネシュガー)が消され,パシュトゥー語(プーハントゥーン)だけに変更されたことがSNS上で拡散した。これを受けて,ターリバーンはアフガニスタンの多様性を無視しているとの非難が巻き起こった。

一方,2022年4月には,ターリバーンは全土でのケシ栽培を禁ずる方針を打ち出したり,8月にはアーホンドザーダ最高指導者がバラーダル副首相代行に対して,カーブル市内にいる物乞いの管理を指示し,労働スキルを保有する物乞いは生体認証の後に仕事を付与されるようにした。ターリバーン指導部として,大義と実態を一致させるべく努力している様子も垣間見えた。

回復傾向をみせる全般治安情勢と「イスラーム国ホラーサーン州」の脅威

アフガニスタンの治安情勢は,カーブル陥落を経て全体的には回復傾向を見せた。国連アフガニスタン支援ミッションが2022年7月に発行した報告書によると,2021年1月1日~8月14日の期間,武力紛争によって民間人7400人(死者2091人,負傷者5309人)が死傷した。しかし,ターリバーンが復権した2021年8月15日~2022年6月15日の期間,民間人の死傷者数は2106人(死者700人,負傷者1406人)に減少した。これは,ターリバーンが「占領者」と見なす外国軍が完全撤退したことにより戦闘が減ったためであり,アフガニスタン人にとっては望ましい状況が到来したことを意味し,同勢力の功績と位置付けることは可能だ。

こうしたなか,ISKPの散発的な攻撃が続き,大きな治安上の脅威となった。ISKPは,主に東部ナンガルハール州,クナル州,および中央部に位置するカーブル州において,シーア派教徒を標的とした攻撃を活発に仕掛けた。ISKPは9月5日にロシア大使館に対する攻撃を実行し,ロシア大使館職員2人を含め少なくとも6人を殺害した。また,ISKPは12月2日にパキスタン大使館を襲撃し,臨時代理大使の警護官を殺害する事件を引き起こした。さらに,12月12日には,カーブルにある中国人利用客の多いホテルを襲撃し,30人以上を殺傷した。ISKPの一連の攻撃によって,治安回復をアピールするターリバーンの威信は揺るぎ,日本を含む各国は治安悪化への警戒を強める結果となった。

経 済

ターリバーンは経済的自立を目指し投資を呼びかけ

在外資産の凍結により国庫が枯渇するなか,ターリバーンは5月14日,アフガン暦1401年度(2022年3月21日~2023年3月20日)の予算案を閣議で可決した。その総額は2310億アフガニー(約26億ドル)で,これを国内歳入ですべて賄う計画が策定された。このうち,2030億アフガニーが経常的予算,279億アフガニーが開発予算である。440億アフガニーの歳入不足が見込まれているほか,特に開発予算に充当する資金が不足するなど問題を多く抱えている。他方,イスラーム共和国政府の予算の多くが諸外国からの援助に依存していた事実に鑑みれば,ターリバーンが経済的自立を目指し援助依存からの脱却を志向していることがわかる。

こうしたなか,開発予算への充当が想定される歳入確保の手段として,投資誘致が念頭に置かれている。6月18日には,バラーダル副首相代行が,国営の「アフガン投資有限会社」の設立を発表し,国内外の投資家からの活発な投資を呼び掛けるなどした。アフガニスタンは農業立国で天然資源も豊富であることから,ターリバーンとしてはこれらを輸出し,外貨を獲得する形での財政危機の克服を目指している。ターリバーンは,中国等の近隣諸国向けに,松の実,アーモンド,ピスタチオ等のナッツ,果物・ドライフルーツ,野菜,薬草等の農畜産品の輸出に力を入れた。また,ターリバーンの呼びかけに応じ,中国が中央部ローガル州アイナク銅山採掘の作業再開に意欲を見せた。

中産階級における失業の深刻化と自然災害の発生

カーブル陥落を経て,それまであった諸外国による多額の援助が停止したことで,特に都市部の中産階級の失業が深刻化した。国連開発計画が10月に発行した報告書によると,国内総生産はただの1年間で50億ドルも急下降し,70万以上の雇用機会が失われた。ロシアのウクライナ侵攻に伴う物価高騰,通貨下落も相まって,路上で家財道具を売り払う人々や,寡婦のなかには子どもを止む無く身売りする事例も見られた。加えて,6月22日に,南東部パクティアー州とホースト州を中心としたマグニチュード5.9の大震災が発生し,ターリバーン発表によれば死者1000人以上を記録するなど,自然災害も猛威を振るった。夏季には旱魃が各地を襲い,冬季には厳しい寒さ故に人々や家畜が凍死する事態も発生した。総じて,国民生活は困窮化し,国際社会による支援で最悪の事態は免れたものの,人道的危機と呼べる状況が続いた。

対外関係

ターリバーンを政府承認する国はひとつも現れず

2022年を通じて,ターリバーンを政府承認する国はひとつも現れず,むしろ女性の権利保障や国際テロ組織との関係を巡って諸外国は批判を強めた。一方,ロシア,中国,トルクメニスタン,パキスタン,イランなどは,ターリバーンが派遣する外交官を信任するなど,「事実上の承認」とも呼べる対応を講じた。3月17日,ターリバーンは,駐トルクメニスタン大使として新しくファズル・ムハンマド・サーベルを任命した。また,4月9日,ターリバーン外務省は,ロシアにあるアフガニスタン大使館がターリバーンに移譲されたと発表している。同様に,4月25日,イラン政府は,ターリバーン暫定政権が派遣した外交官3人を信任したほか,同月28日,中国が北京にあるアフガニスタン大使館をターリバーンに引き渡したと発表した。近隣諸国としては,アフガニスタンの平和と安定は自国の安全保障に直結する問題であり,現実的な対応をとったといえる。

ロシアによる燃料・食料の輸出取引開始に代表される主導的な役割

欧米各国がターリバーンと一定の距離を置いて対応するなか,9月28日,ロシアは,ガソリン100万トン,ディーゼル燃料100万トン,調理用ガス50万トン,小麦200万トンを輸出する暫定合意をターリバーンと締結した。ターリバーンのアズィーズィー商業相は,アフガニスタンは国際市場価格より低価格でこれら物資をロシアから輸入できると述べた。両者に異存がなければ,将来,正式な合意が結ばれることになる。天然資源産出国ロシアにとって,この動きがウクライナ戦争を続けるなかでエネルギー輸出の代替相手先の確保に資するとはいえない。しかし,アメリカが在外資産を凍結するなか,アフガニスタンは財政難に陥っており,ロシアがターリバーンと関係を強化することでユーラシア大陸中央部での影響力を確保する動きではある。また,ロシアは11月16日,近隣諸国を招いたアフガニスタンに関するモスクワ会合を主催するなど,主導的な役割を担った。

中国による国際会合の主催と天然資源開発に向けた関心

中国は引き続き,アフガニスタンに埋蔵される天然資源開発に高い関心を示した。アフガニスタンには,アメリカ地質調査団による推計によれば約1兆ドルの天然資源が埋蔵されている。中国はローガル州アイナク銅山,および北部のアム河流域での石油採掘の開発を巡ってターリバーン暫定政権高官と協議を続けた。また,3月31日,中国は同国東部の安徽省屯渓で,アフガニスタンに関する近隣7カ国外相会合を主催するなど,ロシアと並んで主導的な立場を示した。それに先立ち,中国政府は3月24日に,王毅外相をカーブルに送っており,ロシアが特使級での対応を続けるなか,さらに踏み込んだ対応を講じた。

パキスタンとの山あり谷ありの関係

パキスタン軍部は長らく「戦略的縦深性」の観点からターリバーンを支持していると囁かれてきたため,ターリバーン復権によって優位性を確保すると見る向きもあった。しかし,二国間には,パキスタン・ターリバーン運動(TTP)を巡る対応や国境問題で認識の相違が生じており,パキスタンが手放しで喜んでいるとはいえない状況である。確かに,1月29日のパキスタンのユーセフ国家安全保障評議会書記による訪問や,11月29日のヒナ・ラッバーニー外務担当閣外相によるカーブル訪問に見られるように,二国間ではハイレベルの要人往来が行われた。一方,二国間では国境を巡る係争や,TTPがアフガニスタンを飛び板にしてパキスタン領内に危害を加えているとの疑念をパキスタン側が持ったことなどがあり,関係は悪化した。4月16日には,ターリバーンが武装勢力を匿っているとして,パキスタン軍機による越境攻撃が南東部で発生し,市民40人以上が死亡する事案が発生した。2022年後半には,南部カンダハール州で国境警備隊同士の小競り合いで死傷者が生じるなど,緊張が高まった。

イランの和平仲介,難民受け入れ,水利権を巡る問題

隣国イランも,和平に向けた第三者仲介やアフガニスタン難民受け入れで存在感を発揮した。イランは推計450万人ともいわれるアフガニスタン移民・難民を受け入れており,とりわけアメリカによる「占領」が終結した状況を歓迎するターリバーンと近しい考えを有しているため,両国は接近の様相を見せた。上述のとおり,1月にはターリバーンとNRFとの協議を仲介した。一方,二国間では国境付近での警備隊同士による小競り合いが頻繁に発生したほか,イラン当局によるアフガニスタン難民の強制送還や乱暴な扱いなどが問題視された。また,両国は,1973年に締結されたヘルマンド川の水利権に関する条約の履行を巡って係争を抱えており,この問題についての協議が続いた。

アル=カーイダ指導者ザワーヒリーの殺害と国際テロ組織との関係継続

対外関係面で,諸外国とターリバーンとの間で大きな争点となったのが,国際テロ組織との関係継続であった。7月31日には,カーブルのシェールプール地区で,アメリカのドローン精密照準攻撃によって,アル=カーイダ(AQ)のアイマン・ザワーヒリー指導者が殺害された(翌日アメリカ発表)。ターリバーンは主権の侵害と批判したが,2020年2月29日締結のドーハ合意違反に当たることから,アメリカをはじめ諸外国は,ターリバーンが依然としてAQをはじめとする国際テロ組織と密接な関係を有することに落胆した。この他,複数の国際テロ組織がターリバーンの庇護を受けながら,アフガニスタンに潜伏する状況が続いた。

日本大使館の業務一部再開

欧米諸国の関与が限定的ななか,9月下旬,日本は在カーブル日本国大使館の一部業務を再開した。アメリカにとってアフガニスタン問題が「敗戦処理」の様相を呈し,また欧州各国もターリバーンとの関与に及び腰であったため,日本のアプローチは独自のものといえた。ターリバーンによる実効支配が当面続くと仮定すれば,同勢力に対して状況の改善を促すほかなく,そのための一手だった可能性がある。

2023年の課題

2022年末時点において,ターリバーンが軍事的優位を保っており,諸外国間で反ターリバーン勢力を支援しようとの動きも見られない。このため,近い将来,勢力均衡が崩れ,体制転換に向かう可能性には疑問符が付く。こうしたなか,今後の趨勢を左右し得るのは,アフガニスタン人民がターリバーン暫定政権による統治をどのように考えるかである。世代交代や情報技術の革新・普及に伴う意識変化が起こり,ターリバーンから人心が離れる事態となれば,これが政治変動に結び付く可能性はある。この意味では,ターリバーンがいかに民心を掌握できるのかが今後のアフガニスタンの平和と安定を見るうえでの試金石となる。

対外関係面では,諸外国とターリバーン暫定政権との関係を決定づけるのは,主に(1)包摂的政権の樹立,(2)女性の権利保障,(3)国際テロ組織との断絶の3点である。これらで改善が見られないかぎり,ターリバーンをアフガニスタンの正統な統治主体と認める国が現れる可能性は低い。ターリバーンの内在的論理が理解できたとして,多様性溢れるアフガニスタンにおいて,特定の政治派閥,民族,そして女性を政治・公共空間から一方的に排除することが国際的な非難の的となるのは必至だ。また,イスラーム過激派諸派がアフガニスタンに潜伏する状況は,9・11事件の再発を引き起こす危険性を内包している。ウクライナ戦争の勃発により世界中で分断が進む状況下,対話や妥協を通じ,どのように考えの異なる集団が共存できるのか,ターリバーンは私たちに難問を突き付けている。

(中東調査会研究主幹)

重要日誌 アフガニスタン 2022年
   1月
9日ターリバーンのモッタキー外相代行はイラン滞在中に反ターリバーン勢力のアフマド・マスード,およびイスマーイール・ハーンと協議。
9日ターリバーンは閣議において,会計年度を西暦からアフガン歴に変更することを決定。
13日北部ファーリヤーブ州で,ターリバーンによるマフドゥーム・アーレム司令官(ウズベク人)の拘束を受けて抗議デモ発生。
15日ターリバーンのモッタキー外相代行はトルクメニスタンでメレドフ外相と会談。
24日ターリバーンのモッタキー外相代行はノルウェーで,欧米各国特使らと会談。
29日ターリバーンのハナフィー副首相代行はカーブルで,パキスタンのユーセフ国家安全保障評議会書記と会談。
30日ターリバーンは,シャムスッディーン・シャリアティー元農業副大臣を,検察長官代行に任命。
   2月
11日バイデン米大統領は,アフガニスタン中央銀行の凍結資産70億ドルのうち,約35億ドルをアフガニスタンの人道支援のために信託基金に拠出すると発表。
16日ターリバーンのモッタキー外相代行はドーハで欧米16カ国の代表者らと会談。
20日ターリバーンのモッタキー外相代行はカーブルで,マレーシア外務省のアフマド・アザム特別顧問と会談。
22日ターリバーンのハサン・アーホンド首相代行はカーブルで,ウズベキスタンのウマルザーコフ副大統領と会談。
24日南部カンダハール州のパキスタン国境で,ターリバーン戦闘員とパキスタン兵士が交戦,2人以上が死亡,20人が負傷。
25日ターリバーン外務省は,ロシアのウクライナ侵攻を受けて,双方に自制を呼びかけるとともに,対話と平和的手段を通じて紛争を解決するよう求める声明を発表。
   3月
4日イスラーム協力機構(OIC)はカーブルに人道支援の調整を担う事務所を設置。
7日南西部ニームルーズ州のイラン国境付近で,イラン国境警備隊がアフガニスタン領内に越境したためターリバーンと交戦,イラン国境警備隊複数人が死亡。
12日ターリバーンのモッタキー外相代行は,トルコで開催されたアンタルヤ外交フォーラムに出席。
14日ターリバーンは閣議で,在外アフガニスタン人連絡・帰還委員会を設置。
17日ターリバーンは,駐トルクメニスタン大使として新しくファズル・ムハンマド・サーベルを任命。
17日国連安全保障理事会は,国連アフガニスタン支援ミッションのマンデートを1年延長。
21日OICによるアフガニスタンのための人道信託基金が設立。
22日第48回OIC外相級会合がイスラマバードで開催(~23日)。
23日ターリバーン教育省は,新年に当たり学校を再開したが,さらなる通知までの期間,6年生以上の女子生徒の登校制限を発表。
24日中国の王毅外相はカーブルを訪問,ターリバーンのバラーダル副首相代行,およびモッタキー外相代行と会談。
24日ロシアのカブロフ特使がカーブルを訪問,ターリバーン暫定政権高官と会談。
27日ターリバーンは,「BBC」などの国際メディアの放送を制限することを決定。
28日ターリバーンのモッタキー外相代行は,インドネシア外相,およびカタール副外相と会談。
31日中国の屯渓で,アフガニスタン近隣7カ国外相会合が開催。
   4月
3日ターリバーンのアーホンドザーダ最高指導者は,ケシ栽培禁止特別法令を発出。
9日ターリバーン外務省は,ロシアにあるアフガニスタン大使館がターリバーンに移譲されたと発表。
12日『ニューヨーク・タイムズ』紙は,ターリバーンが実権を掌握した後,前政権の治安部隊要員500人以上を処刑したと報道。
16日南東部ホースト州,および,東部クナル州において,パキスタン軍機による越境攻撃が発生し,市民40人以上が死亡。
16日「イスラーム国ホラーサーン州」(ISKP)がウズベキスタン南部へのロケット発射を主張。ウズベキスタン大統領府はこれを否定。
21日北部バルフ州のシーア派モスクに対する攻撃が発生,死者30人以上,負傷者90人以上。ISKPが犯行声明発出。
24日ターリバーンのモッタキー外相代行はドーハで,カタールのムハンマド・ビン・アルドゥルラフマーン副首相兼外相と会談。
25日イラン政府は,ターリバーン暫定政権が派遣した外交官3人を信任。
28日中国は,北京にあるアフガニスタン大使館をターリバーンに引き渡し。
29日カーブル第6区のハーンカー(スーフィー教団の修行施設)で,爆発が発生し,10人以上が死亡,20人以上が負傷。
   5月
7日ターリバーン宣教・教導・勧善懲悪省は,ヒジャーブ着用義務化の法令を発出。
7日ISKPは,タジキスタン領に向けてロケット弾7発を発射したと主張。
14日アフガン暦1401年度の予算案が,閣議で可決。予算総額は,2310億アフガニー。そのうち2030億アフガニーが一般会計,279億アフガニーが開発会計。
17日ターリバーンのカリーミー副報道官は,人権委員会,国家安全保障評議会,憲法監督委員会,下院事務局,国家和解高等評議会の5つの機構を解体すると発表。
17日トルコの首都アンカラにあるドゥーストム元副大統領の邸宅で,反ターリバーン勢力の集会が開催,「アフガニスタン救国のための抵抗高等評議会」の結成で合意。
24日ターリバーン暫定政権はUAE企業のGAACと,カーブル国際空港をはじめとする国内空港4カ所の地上支援業務の運営に関する契約を締結。
27日周辺国の国家安全保障評議会書記級の会合が,ドゥシャンベで開催。
28日ニームルーズ州で,国内で初めてとなるサル痘の感染者2人が発見。
   6月
2日ターリバーンのモッタキー外相代行はインドのJ・P・シン外務次官補と会談。
18日カーブルでシーク寺院を標的にした攻撃発生,シーク教徒1人が死亡,7人が負傷。ISKPが犯行を主張。
18日ターリバーンのバラーダル副首相代行は,国営「アフガン投資有限会社」を設立と発表。
19日ウズベキスタンのカムロフ国家安全保障評議会書記とエルガシェフ大統領特使がカーブルを訪問,ターリバーン暫定政権高官らと個別に会談。
22日南東部でマグニチュード5.9の地震が発生。
23日ターリバーンから離反したムジャーヒド司令官(ハザーラ人)は,北部サレポル州で反ターリバーン運動を開始。
30日各地から3500人以上のウラマー(イスラーム知識人)が参加するウラマー大会議がカーブルのロヤ・ジルガホールで開催。
   7月
2日6月30日から開催されたウラマー大会議が終了,参加者による決議文書が採択。
5日ウズベキスタン外務省は,アフガニスタン領土から飛翔体5発が着弾したと発表。
6日ターリバーンのヤクーブ国防相代行はカタルでタミーム首長らと会談。
12日「BBC」は,英特殊空挺部隊(SAS)がアフガニスタンで拘束した囚人や非武装の民間人を多数殺害していた疑いがあると報告。
26日ウズベキスタン政府主催の「アフガニスタンの安全保障と経済発展」会合が,タシュケントで開催。
31日ニームルーズ州で,ターリバーン戦闘員がイラン国境警備隊と交戦,1人が死亡。
31日カーブルのシェールプール地区で,アメリカのドローン精密照準攻撃によって,アル=カーイダ(AQ)のアイマン・ザワーヒリー指導者が死亡(8月1日アメリカ発表)。
   8月
4日ターリバーンはザワーヒリーAQ指導者に関する情報を有していないとの立場を示し,同指導者を庇護していた疑惑を否定。
5日カーブルでシーア派の宗教儀礼を標的とした爆発があり,市民8人が死亡,18人名が負傷。ISKPが犯行を主張。
15日ターリバーンは実権掌握から1年の節目を迎え,カーブル市内で式典を開催。
17日ターリバーン国防省はムジャーヒド司令官がイラン側に逃亡したようとしたところを殺害したと発表。
17日カーブルの第17地区にあるモスクで爆発が発生,27人が搬送。犠牲者のなかには,高名なウラマーのアミール・ムハンマド・カーブリーも含まれた。
21日ターリバーンのアーホンドザーダ最高指導者は,アブドゥルガユーム・ザーキルをパンジシール州・アンダラーブ郡方面の総司令官に任命。
31日米軍撤退から1周年に当たり,バグラム空軍基地で式典が開催。
   9月
2日西部ヘラート市内にあるモスクで爆発,著名なウラマーであるアンサーリー師を含む8人が死亡,23人が負傷。
2日国連アフガニスタン支援ミッションの新代表に,キルギスのオトゥンバエバ元大統領が任命。
5日ロシア大使館入口近くで爆発,大使館職員2人を含め少なくとも6人が死亡,10人以上が負傷。ISKPが犯行声明を発出。
8日ターリバーンの航空運輸省は,UAE企業のGAACと国内3空港の航空誘導サービスに関する契約を締結。
20日ターリバーンは,教育相代行,パンジシール州知事等13ポストの新人事を発表。
23日カーブルのワズィール・アクバル・ハーン地区のモスクで爆発,少なくとも7人が死亡,41人が負傷。
28日ターリバーンはロシアとの間で,後者がガソリン,ディーゼル,調理用ガス,小麦をアフガニスタンに輸出する契約を締結。
30日カーブル西部のダシュテ・バロチー地区の女子教育センター「カージ」教室内で自爆攻撃が発生,女子生徒25人が死亡,30人が負傷。
  10月
5日ターリバーン内務省のモスク内で爆発が発生,4人が死亡,25人が負傷。
6日ターリバーンは,州知事や副大臣を含む13ポストの新人事を発表。
8日ターリバーンのワスィーク情報局長はドーハで,コーヘン米CIA副長官と会談。
13日ターリバーンのサラーフッディーン・アユービー司令官(ウズベク人)が権力独占と民族差別を理由に分派。
16日アトマル元外相は「和平と公正のための国民運動」を設立,オンライン集会開催。
17日ターリバーンは,カーブル州知事のナダー・ムハンマド・ナディームを高等教育相に任命。
21日「共同通信」は,在アフガニスタン日本国大使館が,9月末に再開したと報道。
23日岡田駐アフガニスタン日本大使は,ターリバーンのハッカーニー内相代行と会談。
24日ダーネシュ元第二副大統領は,「アフガニスタン公正・自由党」を結党。
  11月
1日「RFE/RL」は,ロシアの民間軍事会社ワグネルが,ターリバーン復権後にイランに逃れていた旧政権特殊部隊員をウクライナ戦争に送り込むため雇用していると報道。
3日チェコは,2023年1月1日に,在アフガニスタン大使館を閉鎖すると発表。
5日アブドゥッラー元国家和解高等評議会議長は,故マスード司令官の墓石が破壊されたことへの非難声明を発出。
6日ターリバーン創始者兼初代指導者のウマル師の墓が,南部ザーボル州にあるとムジャーヒド報道官によって発表。
10日ターリバーン宣教・教導・勧善懲悪省は,カーブルで女性が公園や公衆浴場に行くことを禁止する通達。
13日OICは,アフガニスタンに事務所を開設。
14日カンダハール州のスピーン・ボルダック国境が,ターリバーン兵士とパキスタン国境警備隊の交戦を受けて,閉鎖。
16日ロシアが,アフガニスタンに関するモスクワ会合を開催。
20日パキスタン政府は,アフガニスタンとのチャマン国境を再び開放することを決定。
23日中央部ローガル州のサッカー場で,ターリバーンは「姦淫や窃盗」を理由に,女性3人,男性9人に鞭打ち刑を執行。
29日パキスタンのヒナ・ラッバーニー外務担当閣外相率いる一行がカーブルを訪問,ターリバーンのモッタキー外相代行らと会談。
29日第10回「ヘラート安全保障対話」がドゥシャンベで開催。
  12月
1日ターリバーン情報文化省は,「ヴォイス・オブ・アメリカ」と「RFE/RL」(ともに米資本)のFMラジオ放送を禁止。
2日イスラーム党のヘクマティヤール指導者事務所に対する襲撃事件が発生,交戦の末,1人が死亡,2人が負傷。
2日在アフガニスタン・パキスタン大使館に対する襲撃事件が発生。ISKPが実行を主張。
4日ターリバーンのヤクーブ国防相代行は,UAEのムハンマド大統領と会談。
4日アメリカのウエスト特使が日本を訪問,外務省などとアフガニスタンの人道状況,人権,政治対話について協議。
7日ターリバーンのムジャーヒド報道官は,西部ファラーフ州で殺人犯1人をキサース刑(同害報復刑)に処したとの声明を発出。
11日アフガニスタン・パキスタン国境において両軍の衝突が発生,少なくとも7人が死亡,30人以上が負傷。
12日カーブル中心部のシャフレ・ナウ地区の中国人利用客の多いホテルに対する襲撃が発生,宿泊客ら30人以上が死傷。ISKPが犯行声明を発出。
20日ターリバーン高等教育省は,更なる通知があるまで,女子大学生は公私立大学で教育を受けることは出来ないとの書簡を発出。
24日ターリバーン経済省は,国内・海外NGOに対して,女性職員の雇用を更なる通知があるまで控えるよう通達を発出。
25日国際NGO4団体(セーブ・ザ・チルドレン,ノルウェー難民委員会,国際レスキュー委員会,CARE)は,アフガニスタンでの活動停止を発表。
26日北東部バダフシャーン州都ファイザバードの州警察署付近で爆発,ウマル州警察署長が殺害。

参考資料 アフガニスタン 2022年
①  国家機構図(2022年12月末現在)

(出所)ターリバーン発表や各種報道を参考に筆者作成。なお,故地カンダハールで最高指導者がジルガ(集会)を主宰することがあり,二重構造の様相を呈していることに留意が要る。

②  暫定政権(2022年12月末現在)

(出所)各種報道や発表などを参考に筆者作成。

③  ターリバーン以外の勢力

主要統計 アフガニスタン 2022年
1  基礎統計

(注)ターリバーンが2021年8月に復権した後,会計年度が西暦からアフガン暦に変更された。これに伴い,過去2年分(2019/20,2020/21)の表記はそのまま残し,2021/22年分は,NSIA, Afghanistan Statistical Yearbook 2021に依拠した。1)人口は推計。2)為替レートはカーブル自由市場の年平均値。

(出所)National Statistics and Information Authority (NSIA), Afghanistan Statistical Yearbook 2019, 同2020, 同2021;NSIAウェブサイト。

2  支出別国内総生産(名目価格)

(注)在庫変動と統計誤差(いずれも推定値)を除く。

(出所)表1に同じ。

3  産業別国内総生産(実質価格)1)

(注)1)2016年度を基準とした実質価格。

(出所)表1に同じ。

4  国家財政

(出所)表1に同じ。

5  国別貿易

(注)輸出の「その他」にはウズベキスタン・トルクメニスタンが,輸入の「その他」にはイラクがそれぞれ含まれる。

(出所)表1に同じ。

 
© 2023 日本貿易振興機構 アジア経済研究所
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