アジア動向年報
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各国・地域の動向
2023年のティモール・レステ シャナナ・グスマン政権の誕生
福武 慎太郎(ふくたけ しんたろう)
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2024 年 2024 巻 p. 399-414

詳細

2023年のティモール・レステ

概 況

2023年のティモール・レステは5年ぶりの国民議会選挙が実施され,独立運動の英雄,シャナナ・グスマン率いる野党・ティモール再建国民会議(CNRT)が第1党となり,CNRTは3年ぶりに与党に,グスマンは8年ぶりに首相に返り咲いた。グスマン政権の最重要課題はグレーター・サンライズガス田開発とASEAN正式加盟である。2006年の生産開始以降,国家財政を15年以上支えてきたバユ・ウンダン油田・ガス田が生産終了を迎えたことにより,グレーター・サンライズ開発の早期着工は,グスマン政権だけでなく,ティモール・レステの国家財政にとっての生命線である。前年にASEAN加盟が原則承認され,2025年の正式加盟へ向けて,政府はオブザーバーとして,ASEAN会合に参加しながら各国との関係強化に努めてきた。中国とも外交関係を一段階上げ,包括的戦略的パートナーシップを締結した。

国内政治

第9回国民議会選挙とシャナナ・グスマン政権の誕生

21回目の「独立の回復」記念日である2023年5月21日,第9回国民議会選挙が実施された。有権者数は89万145人,その79.28%にあたる70万5693人が投票を行った。投票率は前回の2018年国民議会選挙より若干下がったが,はじめて有権者となった17〜21歳以下の若者が約15%を占め,彼らの多くが投票を行ったことで,過去最大の投票者数となった。

結果はシャナナ・グスマン率いるCNRTが得票率41.62%で,65議席中31議席を獲得し,現有議席より9議席増やして第1党となった。しかし絶対過半数の33議席には届かず,得票率第3位(9.32%)の民主党(PD)との連立政権が発足した。民主党は1議席を上積みして合計6議席となった。

他方,前政権を構成していた3政党の得票率の合計は39%にとどまり,得票率2位のティモール・レステ独立革命戦線(FRETILIN)は19議席(得票率25.75%),ティモール国民統一党(KHUNTO)は5議席(同7.25%),人民解放党(PLP)は4議席(同5.88%)であった。タウル・マタン・ルアク首相率いるPLPは8議席から議席数を半減させ,FRETILINは4議席を減らし,連立与党の3党ではKHUNTOだけが現在の5議席を維持した。議席獲得基準である得票率4%を上回ったのは以上の5政党であり,残りの12の政党は議席を獲得できず,総投票数の約10%が死票となった。

議会に占める女性議員の割合は,前回の40%(65議席中26議席)より下がり33.85%(65議席中22議席)だった。とはいえ2006年に女性議員クオータ制が導入され,さらに2011年の選挙法改正で,各政党の女性候補者の割合を4分の1から3分の1以上に引き上げたことによって,ティモール・レステは依然として東南アジアで最も高い女性議員比率を維持している。また,今回の議会では女性議長がはじめて誕生した。国会運営を司る国会事務局の主要ポストは,マリア・フェルナンダ・レイ議長のほか,第1副議長,事務局長,そして2つの副事務局長のポストの合計6ポスト中5つのポストに女性議員が登用された。

他方で,国会議員の高齢化がさらに進み,世代交代が課題として浮き彫りになった。独立からの21年間,「75年世代」と呼ばれる独立運動第一世代が政治の実権を握り続けてきた。しかし1946年生まれのシャナナ・グスマンが77歳,FRETILINの指導者マリ・アルカティリは1949年生まれの74歳である。今回,最も若い議員は36歳であった。30歳未満の若い年齢層が全人口の64.6%を占める人口バランスを考えると,より若い世代の政治参加が望まれている。

特に若い世代の声を政治に反映させることは,今後の国家建設にとって重要な意味をもつ。この選挙ではじめて有権者となった17〜21歳の年齢層は,正式独立した2002年以降に生まれたベビーブーム世代である。政治への関心も十分にあるが死票が約10%あったことを考えると,彼らの声がどの程度選挙に反映されたかどうかは疑わしい。5年間で世代交代を進め独立後世代の声をより政治に届ける道筋を整えることが,「75年世代」にとって残された課題といえる。

新政権と国家機構の再編

CNRT党首のシャナナ・グスマンは6月の議会で第9代首相に選出され,7月1日に同党とPDの連立政権を発足した。2人の副首相にはCNRTのフランシスコ・カルブアディ・レイ(経済問題調整大臣および観光・環境大臣を兼任),民主党のマリアノ・サビノ・ロペス(社会問題調整大臣および農村開発・コミュニティー住宅大臣)が任命された。

新政権は最重要課題としてASEAN正式加盟,そして経済産業の多様化と雇用の創出を掲げている。また国民への必要不可欠なサービス,とりわけ保健と教育分野を重点化するとしている。これに合わせ新政府は若干の省庁再編を行った。従来の教育青年スポーツ省は,教育省と青年・スポーツ・芸術文化省に二分割され,中等教育・専門学校庁は教育省の下に置かれた。食料の輸入依存から脱却し,国内の農林水産業の確立と発展のために,農業・水産・畜産・林業省の下に畜産庁,水産庁,林業庁が新たに置かれることになった。国会担当および社会コミュニケーション省は廃止され,代わりに大臣委員会の下に平等庁と社会コミュニケーション庁が置かれた。従来,開発計画・領土省が担ってきた機能は,新たに経済問題調整大臣局,観光・環境省,農村開発・コミュニティー住宅省が担う。

経 済

マクロ概況

2023年の石油部門を除く実質国内総生産(GDP)成長率は,2022年の4.0%(32億470万ドル)から2.3%に減速した。これは政権交代にともなう補正予算の遅れに起因する経済の鈍化が影響している。政府消費は3.6%増と,経済活動に刺激を与えるべく政府の支出の拡大が見られた。公共投資支出はインフラ開発など大規模なプロジェクトが活発で7.8%の大幅な伸びを示している。他方,開発パートナー支出は4.4%の減少である。この落ち込みは,新政権による補正予算を含む優先順位プロセスの遅れに起因している。海外送金の増加に支えられて民間消費は3.2%の伸びである。財・サービス輸出は,2年連続コーヒー豆輸出量が減少しているにもかかわらず,サービスの輸出の増加により3.0%増加した。輸入量は資本財の輸入の大幅な増加により4.3%の伸びである。これは公共投資支出の伸びと一致している。国際収支では,2022年の経常収支は2億7300万ドルを計上したが,2023年は3億7200万ドルの赤字が見込まれている(IMF予測)。消費者物価指数は平均8.4%と2022年の7.0%から上昇した。

コメの価格高騰が続く

2022年から続く国際的な食糧価格の高騰は,2023年に入っても国内経済に影響を与えている。とくに7月にインド政府がコメの一部輸出を禁止して以降,コメの国際価格は高騰し,インド産米に大きく依存していたティモール・レステは,とりわけ大きな影響を受けた。2020年には輸入米に占めるインド産米は10%だったが(1位はベトナム産米55%),2022年には80%を占めるようになり,インド産米への依存度が急激に増した矢先だった。インド産米の一部輸出規制後,ベトナムやタイのコメ輸出業者は価格を20%程度引き上げた。世界食糧計画(WFP)によるとティモール・レステの7月の米価は1キログラム当たり0.66ドルで,前年同月比16%上昇した。

政府は8月,インフレ対策として輸入関税の減税と砂糖の物品税廃止,そしてコメの価格安定策を盛り込み,当初予算の21億ドルから18%削減した17億7000万ドルの補正予算案を提出し,国会は可決した。コメの市場価格引き下げのために,政府はさらに1200万ドルの予算を投じ国内のコメ輸入業者に補助金を支給した。これにより輸入米の価格が25キログラム当たり12ドルまで下がることを期待したが,2023年末時点では依然20ドル前後のままであった。国家統計局発表の12月におけるコメの消費者物価指数は前年同月比27.2%上昇している。

2024年度国家予算 変わらぬ石油基金依存

国会は12月,2024年度の国家予算を22億3762万ドルで可決した。内訳は中央行政予算は18.3億ドルで,オエクシ・アンベノ特別地区(RAEOA)予算は6000万ドル,社会保障予算が3億4762万ドルとなっている。予算財源の70.6%は石油基金からの引き出しであり,依然として国家財政の同基金への依存は変わらないままである。基金の主要財源であったバユ・ウンダン油田・ガス田が2023年末をもって操業を停止した。このまま石油基金に依存し続ければ2034年には基金は底をつき,ティモール・レステの経済は深刻な影響を受けると,開発問題の監視・分析を行う国内NGOラオハムトゥクは警告している。この深刻な「財政の崖」を克服するため,前FRETILIN連合政権は抜本的な支出削減と税制改革により収入を確保することを検討していた。しかしグスマン政権は,2022年から続く国際的な食糧価格の高騰で,1月に2.5%から5%に引き上げられた輸入関税を10月から2.5%に再び引き下げ,砂糖の物品税も廃止した。したがってシャナナ・グスマン新政権にとって,グレーター・サンライズ開発の早期決着は急務であり,オーストラリアとの交渉を一刻も早く決着させ,事業を開始する必要がある(「対外関係」を参照)。

またラオハムトゥクは,重視するべき保健・公衆衛生,教育,農業部門には,それぞれ5.5%,10.1%,2.2%と,十分な予算が配分されておらず,変わらぬインフラ開発偏重の政府の姿勢を批判している。2024年予算においても,大規模インフラ開発事業である「タシマネ」プロジェクトとグレーター・サンライズ開発に合計2600万ドルの追加投資が見込まれている。これまで政府はグレーター・サンライズ事業参加のために累計6億5000万ドル(利払いがさらに1億3000万ドル),タシマネ・プロジェクトに13億ドル以上を投資している。

対外関係

協調路線を進むオーストラリア関係

2023年は,交渉が停滞していたグレーター・サンライズのガス田開発に進展があった。ティモール・レステのティモール・ギャップ社(出資比率56.56%),オーストラリアのウッドサイド社(同33.44%),そして大阪ガス(同10%)の合弁事業であるグレーター・サンライズ開発は2018年3月に海洋境界と利益配分率がティモール・レステの主張にほぼ沿った内容で確定し,一気に進展するかに見えた。だが,海底パイプラインをオーストラリア側かティモール・レステ側のどちらに敷設するかをめぐり再び交渉は停滞していた。

しかし2022年5月,オーストラリアでアルバニージー首相の労働党政権が誕生した影響もあり事態は好転しはじめている。2022年10月にグレーター・サンライズ開発交渉をめぐるオーストリア政府特別代表に,ヴィクトリア州元首相で2007年の第一次グスマン政権で政府特別顧問を務めたスティーブ・ブラックスが就任し,協調路線が鮮明になった。

ウッドサイド社とティモール・ギャップ社は2023年2月,ティモール側へのパイプライン敷設に関する実行可能性調査に着手することを発表した。オーストラリアのペニー・ウォン外相は7月7日,就任後はじめて首都ディリを訪問し,グレーター・サンライズ開発の争点だった領海交渉における過去のオーストラリア政府の態度を「友好的ではなかった」ことを認めた。領海交渉を有利に運ぶために2004年,オーストラリアの諜報機関がティモール・レステの事務所に盗聴器を仕掛けたとの疑いがある。ウォン外相の発言は,ティモール・レステ政府が求めている公式の謝罪ではないが,グレーター・サンライズ開発に関して協調路線に活路を見出す姿勢を改めて印象づけた。スティーブ・ブラックス特別代表は9月,ディリにおけるグスマン首相との会談後,2024年7月までに海底パイプライン敷設に関する実行可能性調査を終える予定であると述べている。並行して石油採掘に関わる法的枠組,税制,生産分与契約に関わる文書策定作業に入ることも明らかにした。

ティモール・レステが主張している同国側の陸上液化天然ガス(LNG)プラント建設は,3000メートル近い大水深域を横断する海底パイプライン敷設が必要であるため,「技術的リスクが非常に高い」とウッドサイド社は懸念を示してきた。経済的にもオーストラリア側のダーウィンLNGプラントと比べてコスト高で,その莫大な敷設費用は190億ドルに上ると見積もられており,石油基金の残額(2023年末時点で182億5000万ドル)をも凌駕する。経済的コストとリスクを度外視してもティモール・レステ側の陸上LNGプラントにこだわるのは,「75年世代」の典型的な資源ナショナリズムともいえる。グレーター・サンライズを含む領海の交渉は,インドネシアの実効支配を受けていた時代に同国とオーストラリア政府の間ではじまっており,当時,そのほとんどの権益が後者側にもたらされた。グレーター・サンライズの権益をティモール側に取り戻すだけでなく,自国の領土でLNGを生産してこそ,ティモール・レステに真の独立の回復がもたらされるとグスマンらは考えていると政府関係者は述べている。

正式加盟へ向けて活発なASEAN関係

2011年にASEAN加盟を申請したティモール・レステは2022年,第11番目の加盟国として原則承認され,当初目指していた2023年中の加盟は実現しなかったものの,2025年までの正式加盟を目指している。

2023年,ティモール・レステ政府はオブザーバーとして積極的にASEANのさまざまな会合に出席した。例えばアダルジザ・マグノ外相(当時)は2月,ジャカルタで開催されたASEAN調整理事会(ACC)の会合にオブザーバーとしてはじめて出席した。シャナナ・グスマン首相は9月5~7日にかけてジャカルタで開催されたASEAN首脳会合に出席している。

こうしたなかグスマン首相が8月,国内メディアに対し「私が首相であるかぎり,ASEANに軍事政権を排除する力がないのであれば,ティモール・レステはASEANに加盟しない」と発言した。その発言は政権内に混乱を招き,関係者が釈明に追われることになった。首相としてなされたこの発言は,現在進められているASEAN加盟準備に影響を及ぼすおそれがあるために,あらためてラモス・ホルタ大統領とグスマンは7月29日,ASEANの加盟時期について討議し,2025年の正式加盟を目指すことを閣僚会議で承認した。

首相発言の背景には,ミャンマーの民主派勢力と関係を深めるティモール・レステ政府に対するミャンマー軍の批判がある。7月1日に行われたグスマン内閣の発足式には,ミャンマー軍がテロ組織と指定する国民統一政府(NUG)のジンマーアウン外相が出席した。さらに8月,同じくNUGのアウンミョーミン人権大臣がディリを訪問し,グスマン首相,ラモス・ホルタ大統領と会談を行った。

こうしたグスマン政権発足後のNUGとの関わりへの報復として,ミャンマー軍は8月末,ティモール・レステの臨時代理大使を9月1日付で国外追放すると発表した。これに対しティモール・レステ政府は「ミャンマーに民主的な秩序を取り戻すためのあらゆる努力を支持することの重要性と,ミャンマー国民との連帯を表明する」と強く抗議し,国会は8月29日,ミャンマー軍事政権に対し,人権の尊重と,平和的かつ建設的な解決策を求める声明の決議案を可決した。

政府がミャンマーの民主派勢力と関係を深めている背景には,ティモール・レステがASEAN加盟国にふさわしい民主主義立国であることを国際的にアピールするねらいがある。ティモール・レステの独立そのものがインドネシアによる軍事的支配への闘いを経て勝ち得たものであること,さらにその闘争が国際的な人権運動に支えられてきたという想いも政府関係者にはある。ラモス・ホルタ大統領自身もアウンサンスーチーと個人的な親交があり,今後もミャンマーの民主派勢力への支持の姿勢を積極的に示してゆくと思われる。

さらに結びつきを強める中国関係

グスマン首相は他の閣僚らと共に9月,アジア競技大会の開催都市,中国の杭州を訪問し,習近平国家主席と会談した。首脳会談で両者は二国間の外交関係を一段階上げ,包括的戦略的パートナーシップ協定を新たに締結した。共同声明では,ティモール・レステと中国を結ぶ航空路線の早期開設や,石油・天然ガスの探査や開発協力,農業分野における協力関係の強化が盛り込まれた。これまでも南海岸のスアイの空港,南北縦断の高速道路,港湾建設事業など,主要なインフラ開発を中国企業が担ってきたが,グレーター・サンライズの海底パイプライン,陸上LNGプラントの建設などにおいても中国企業が参画する可能性が高い。

2024年の課題

シャナナ・グスマンは政権の最重要課題をASEAN正式加盟とグレーター・サンライズ開発と位置づけている。特に後者の事業開発は,2008年からの第1次政権期以来のグスマンにとって最重要政策であり,今後も国家財政を石油関連財源に頼り続けるのであれば,待ったなしの状況にある。南海岸への海底パイプラインの敷設とLNGプラント建設着工という積年の夢がついに実現する年となるのか,2024年は国家の将来にとって重要な年となるだろう。また今後の国家財政を左右するグレーター・サンライズ開発は,ASEAN加盟準備にも影響を及ぼす。ティモール・レステのASEAN加盟はすでに既定路線であるが,国家財政と経済発展の展望が十分に示すことができなければ,正式加盟の延期もあり得る。

グレーター・サンライズ開発に関しては,オーストラリア政府がティモール・レステ側の主張を尊重する姿勢を見せているが,懸念が解消されたわけではない。現在行われている海底パイプライン敷設の実行可能性調査の結果によっては,再び暗礁に乗り上げる可能性も十分にある。

シャナナ・グスマンという人物は,これまでも実現不可能と思われていたことを,2度にわたってティモール・レステにもたらし,凱旋帰国の際に国民は熱狂的に迎えた。1度目は1999年の住民投票後,ほとんど実現不可能と思われていたインドネシア支配からの解放をもたらした独立の英雄としての帰国である。そして2度目は2018年,海洋境界局長・主任交渉官という立場でオーストラリア政府と領海交渉を重ね,最終的に中間線に沿った海洋境界に合意し,石油資源共同開発地域のほとんどの権益を勝ち取った英雄として帰国した。グレーター・サンライズ開発の実現とASEAN正式加盟の見通しをつけ,グスマンが再び国家の英雄となり政治家としての有終の美を飾るのか,または大きな政治的,経済的混乱を招くことになるのか,グスマンにとってもティモール・レステにとっても2024年は重要な正念場となる。

とはいえインフラ開発とASEAN外交を優先する政府に対しては,国民の生活の現実を見据えていないという市民社会からの批判がある。政府は,海底パイプライン敷設にかかる経済コストとリスクを度外視して,政府は空港や南北を結ぶ高速道路など,南海岸の陸上LNGプラント建設を前提としたインフラ開発に多額の投資を続けてきた。多くの有識者が指摘するとおり,将来を見据えた国内産業の多角化,食糧の安全保障のための農業育成,教育環境の整備などに重点的に予算を割り当てることも必要であろう。

(上智大学総合グローバル学部教授)

重要日誌 ティモール・レステ 2023年

   1月
1日 輸入税を5%に引き上げ。
5日 保健省,世界保健機関(WHO),国連児童基金(UNICEF)による乳幼児を対象とした統合予防接種キャンペーンが開始。
16日 ラモス・ホルタ大統領,スイスで開催された世界経済フォーラムに出席。
19日 政府,汚職撲滅委員会委員長に,元検事総長のジョゼ・ダ・コスタ・キシメネス氏を任命。
30日 政府,8812世帯に対し200ドルの生活補助金支給を決定。
   2月
4日 アダルジザ・マグノ外相,ジャカルタにおけるASEAN調整理事会(ACC)にオブザーバーとして参加。
6日 ティモール・ギャップ社,オーストラリアのウッドサイド社および大阪ガス3社が,グレーター・サンライズガス田からティモール南岸への海底パイプライン敷設へ向けた実行可能性調査を開始することに合意。
6日 タウル・マタン・ルアク首相,オーストラリアを公式訪問(〜13日),8日に首都キャンベラでアルバニージー首相と会談。
6日 国民議会(国会),児童および青少年保護法を可決。
11日 首相,インドネシアを公式訪問。13日にジョコ・ウィドド大統領とボゴールで会談。
13日 政府,インドネシアとの国境地域に商業センターを設立する合意書に署名。
14日 国会,改正選挙法案を可決。
23日 大統領,ブルネイ・ダルサラーム国の独立記念式典に出席。
   3月
1日 大統領,選挙法改正法案に対し拒否権を行使。
5日 大統領,カタールの首都ドーハで開催された第5回国連後発開発途上国会議(〜9日)に出席。
7日 大統領,ドーハでシエラレオネのジュリウス・マハダ・ビオ大統領と会談。
7日 大統領,アゼルバイジャンを公式訪問し,イルハム・アリエフ大統領と会談。
8日 政府,マーシャル・アーツ規制法案を承認。
20日 国会,選挙法改正法を再可決。
28日 国営航空会社エアロ・ディリ・トランスポート・サービスA320型機によるディリ=デンパサール,ディリ=シンガポール間の就航開始。
30日 ティモール・レステ=インドネシア間の越境バス運行を開始。
   4月
19日 国民議会選挙公示。
27日 ヴァチカン市国,バウカウ司教区の新司教にレアンドロ・マリア・アルベス神父を任命。
27日 国会,在外ティモール人保護法を可決。
   5月
4日 大統領,キューバ人医師71人に対し,勲章を授与。
6日 グスマン・ティモール再建国民会議(CNRT)党首,プノンペンでカンボジアのフン・セン首相と会談。
11日 首相,インドネシアのラブアンバジョで開催された第15回BIMP東ASEAN成長地域会合(BIMP-EAGA)に出席。
17日 政府,クウェートとの経済投資開発に関する協定に合意。
21日 第5回国会選挙。CNRTが41%の票を獲得し第1党に。
29日 政府,日本政府との共同出資によるニコラウ・ロバト国際空港の滑走路延長工事事業に正式調印。
29日 国会,カタール政府およびニュージーランド政府との航空運航協定を可決。
31日 政府,インドネシア政府との安全保障に関するASEAN地域フォーラムを開催。
31日 大統領,韓国およびシンガポールを歴訪(〜6月5日)。
   6月
12日 保健省,2023年1〜5月のデング熱感染者が2000人を超えたと発表。死者5人。
20日 大統領,フランスとドイツを歴訪(~28日),26日にベルリンにおいてドイツのシュルツ首相と会談。
22日 国会議長に初の女性,マリア・フェルナンダ・レイを就任させることで連立与党合意。
   7月
1日 シャナナ・グスマン新内閣発足式。
6日 大統領,首相,ディリで武井俊輔外務副大臣と会談。
7日 グスマン首相,ディリでオーストラリアのペニー・ウォン外相と会談。
11日 ベンディト・ドス・サントス・フレイタス外相,ジャカルタにおけるASEAN外相会合に出席(〜14日)。
23日 シンガポールのヴィヴィアン・バラクリシュナン外相が公式訪問(〜27日),24日に首相と会談,シンガポール大使館の開設を表明。
25日 ポルトガル・アントニオ・コスタ首相が公式訪問,首相と会談。
   8月
9日 政府,17億米ドルの補正予算を承認,10日に国会に提出。
24日 国会,2023年度補正予算を承認。
28日 ミャンマー軍政,ティモール・レステ臨時代理大使を国外追放すると発表。
29日 国会,ミャンマー軍によるティモール・レステ臨時代理大使の国外追放を非難し,民主化のために戦うミャンマー国民と連帯する決議案を可決。
   9月
4日 首相,ジャカルタでジョコ・ウィドド大統領と会談。
5日 首相,ジャカルタにおけるASEAN首脳会談に出席(~7日)。
6日 首相,訪問中のジャカルタでベトナムのファム・ミン・チン首相と会談。
13日 中央銀行総裁にヘルダー・ロペス財務副大臣が就任。
15日 大統領,外相,国連総会(19~26日)出席のために出発,21日に大統領による演説。
20日 中国杭州で開催される第19回アジア競技大会の開会式に首相ら複数の閣僚が出席(〜26日)。選手団は58人。
23日 首相,中国杭州において,習近平国家主席と「包括的戦略的パートナーシップ締結」について共同声明。
24日 首相,訪問中の中国杭州において韓悳洙・韓国首相と会談。
29日 アン=マリー・トレビリアン英国インド太平洋担当相,ティモール・レステを公式訪問(~10月2日),29日に大統領,首相,外相らと会談。
  10月
10日 首相,インドネシアのバリ島で開催されたバリ・デモクラシー・フォーラムに出席。
13日 大統領,訪問中のアラブ首長国連邦にてムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領と会談。
  11月
5日 大統領,ブルネイ・ダルサラーム国とフィリピン歴訪のために出発。ブルネイにて6日に労働移動に関する協定に署名,7日にハサナル・ボルキア国王と会談。
8日 大統領,フィリピンを訪問(~12日)。10日にマルコス大統領と会談。
  12月
16日 首相,東京で開催された日ASEAN特別首脳会議に出席(〜18日)。16日に岸田首相と会談。
20日 国会,2024年度国家予算案を可決。

参考資料 ティモール・レステ 2023年

① 国家機構図(2023年12月末現在)

② 第9次憲政内閣 閣僚名簿(2023年12月末現在。2023年6月30日発足,カッコ内は所属政党)

(注)カッコ内は政党名略称。CNRT=ティモール再建国民会議,PD=民主党。

② 第9次憲政内閣 閣僚名簿(2023年12月末現在。2023年6月30日発足,カッコ内は所属政党)(続き)

(注)カッコ内は政党名略称。CNRT=ティモール再建国民会議,PD=民主党。

③ その他要人名簿

主要統計 ティモール・レステ 2023年

1 基礎統計(2018~2022年)

(出所) National Institute of Statistics Timor-Leste,Timor-Leste in Figures 2021,ただし2022年の人口及び人口成長率はTimor-Leste Population and Housing Census 2022。 2022年の消費者物価上昇率は,CPI Time Series January 2024。

2 支出別国民総所得(名目価格)

(注) 統計誤差を除く。

(出所) National Institute of Statistics, Timor-Leste, Timor-Leste National Accounts 2003-2022.

3 産業別国内総生産(実質価格:2015年基準)

(注) 製造業には電気・ガス・水道・廃棄物処理業を含む。生産・輸入品に課される税や統計誤差を除く。なお,海洋境界画定に関する条約の締結日(2019年8月30日)以降,石油部門が国民経済計算に計上され,鉱業・採石業の項目に原油・天然ガスの採取が計上された。石油部門は2019年9月からの計上のため,2019年の石油部門は4カ月分のみ計上,2020年からは12カ月分計上。

(出所) 表2に同じ。

4 国・地域別貿易

(出所) 2021年は『アジア動向年報2023』より再掲。2022年はNational Institute of Statistics Timor-Leste, External Trade Statistics: Annual Report 2022より作成。

5 石油基金運営状況(2019~2023年)

(出所) 2019~2022年は Ministry of Finance, Petroleum Fund Annual Report 2020, 2021, 2022各号。2023年はPetroleum Fund Quarterly Report (March, June, September, December 2023)より計算。

6 政府予算活動(2019~2023年)

(注) ESIとは基金持続収益(Estimated Sustainable Income)のこと。石油基金の積立金と将来的な石油収入の現在価値を合計した石油資産の3%をESIと呼び,石油基金を長期で維持するために目標とすべき引き出し上限としている。また,2022年は承認予算,2021年・2023年は修正予算。

(出所) 2019年はFinal State Budget 2021: Budget Overview Book 1。 2020~2022年はFinal State Budget 2022 Approved: Budget Overview Book 1。2023年はORÇAMENTO RETIFICATIVO 2023

7 国際収支(2019~2023年)

(注) IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。したがって,金融収支の符号は(-)は資本流入,(+)は資本流出を意味する。

(出所) IMF(https://data.imf.org/regular.aspx?key=62805740).

 
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