2024 年 2024 巻 p. 415-440
2023年のミャンマーは,二重政府状態下で内戦が続くなか,軍政は発足当初の予定を超えてなし崩し的に長期化し,選挙実施の見込みも立たなかった。10月末からは反軍勢力の攻勢が強まり,複数の戦線で軍が押し込まれた。
国内政治では,軍政は期間延長の正当化に腐心し,拘束下の民主派指導者の処遇を宣伝工作に利用した。人事面では,年央の経済混乱で国民に不満が募るなか,軍政の重要人物2人が汚職を理由に解任された。並行政府と4つの少数民族武装組織を中心とする反軍勢力では,多様なアクターが協働する地域統括組織の整備が進んだ。内戦では10月末,従来は明示的に並行政府と共闘してこなかった兄弟同盟を名乗る3つの少数民族武装組織が,シャン州北部で軍に大規模な一斉攻撃を仕掛けた。これを契機に全国的に戦闘が激化して軍が劣勢になった。国内避難民は増加を続け,5月のサイクロン被害も相まって人道危機は深刻さを増した。
経済は停滞が続いた。外国投資は激減し,輸出減により貿易赤字が膨らんだ。欧米の制裁と軍政の悪手でチャットがさらに下落し,物価が上昇して人々の生活を圧迫した。10月末以降の内戦激化は,中国との国境貿易や国内の物流を阻害し,経済にいっそうの悪影響を及ぼした。非合法経済は拡大を続け,なかでも国境域におけるオンライン特殊詐欺拠点の勃興が,内戦激化の一要因になるなど国内政治と対外関係の焦点となった。
対外関係は,欧米の軍政に対する経済制裁が一段と強化され,軍政の外貨へのアクセスがより難しくなった。他方でアメリカによる反軍勢力への援助は,期待された拡充が見られなかった。軍政はロシアと関係強化を続けるとともに,中国と急接近した。中国はオンライン特殊詐欺拠点の勃興に懸念を示し,この問題が軍や少数民族武装組織との関係に影響を与えた。また,ASEANの仲介が手詰まりに陥るなか,タイは独自に軍政への関与を続けた。
2021年のクーデタによる政権奪取から2年が経過した本年2月1日,軍政は,軍最高司令官に全権を委ねる国家非常事態宣言の期間をさらに半年間延長すると発表した。軍政が依拠する2008年憲法の規定によれば,国家非常事態宣言の有効期間は原則1年であり,軍最高司令官が必要とすれば,6カ月の延長を「通常は」2回まで可能である。3度目となる本年2月の延長は,上記の規定が内戦の状況を理由に柔軟に解釈されたものだ。これを正当化するように,同月2日と22日,激戦地のザガイン管区域を中心として全国で合計40の郡に戒厳令が発せられた。さらに8月1日には,国家非常事態宣言の4度目の6カ月間延長も実施され,なし崩し的なかたちで軍政が継続することになった。
ミンアウンフライン軍最高司令官はかねてより,国家非常事態宣言の期間終了後,具体的には2023年8月までに総選挙を実施すると公言していたが,この総選挙実施も見込みが立たないままとなった。そうしたなか,軍政は選挙の準備を着々と進めているという体裁を保とうとした。本年1月には政党登録法を制定し,既存政党に60日以内の再登録を求めた。結果として,3月29日,この要請に応じなかった国民民主連盟(NLD)を含む40政党が登録抹消された。長年にわたり民主化運動を牽引し,軍に対抗してきたNLDを次期選挙から排除することは軍政の既定路線であり,その方針に従って具体的な施策が取られたことになる。
他方,2016~2021年のNLD政権の最高権力者であり,クーデタ以来,軍の拘束下にあるアウンサンスーチー(以下,スーチー)については,年央に,軍政が処遇を緩和したとする報道や発表が相次いだ。情報の真偽や軍政側の意図に不明瞭なところはあるが,スーチーの高い知名度ゆえに国内外に波紋を呼んだ。まず,7月12日,ジャカルタでのASEAN外相会議の折,タイのドーン副首相兼外相が直前のミャンマー訪問時にスーチーと面会したと明かし,スーチーが国内の対立勢力間の対話を促す発言をしたと述べた。さらに同月末の報道では,NLD関係筋からの情報として,スーチーが約1年ぶりに刑務所から移送されて官舎での軟禁に戻され,その前後に中国の鄧錫軍アジア担当特使と面会したと伝えられた(France 24, 7月28日)。これまでASEAN特使などとスーチーとの面会を軍政が許可しないことが,和解に向けた外国の仲介を行き詰まらせてきた経緯があり,スーチーと外国要人の面会のニュースは,軍政が態度を軟化させる可能性を諸外国に向けて仄めかす効果をもった。また,軍政には,一貫して非暴力主義の立場を堅持してきたことでも知られるスーチーを話題に上らせることで,武装闘争での団結を目指す反軍勢力に揺さぶりをかける狙いがあったかもしれない。
軍政の4度目の期間延長が実行された本年8月1日は,たまたまミャンマーの伝統的な仏教祭日であるワゾー祭と重なり,軍政はこの機会もプロパガンダのために利用した。首都ネーピードーでは,ミンアウンフライン肝煎りで建立されたマーラウィザヤ仏像の完成式典が催され,座像としては世界最大の大理石製の仏像であることが喧伝された。仏教徒が多数派を占める国民に対して,仏教の護持者として自らをアピールし,統治の正統性を主張しようとする意図が透ける。また同日,軍政は7700人超の受刑者に恩赦を与えて条件付きで釈放し,スーチーや前NLD政権のウィンミン大統領の減刑も発表した。クーデタ時に軍に拘束されたスーチーとウィンミンは,軍政支配下の裁判所によって複数の罪状で有罪判決が申し渡され,禁錮・懲役を合わせた刑期は前年末までにそれぞれ33年と12年に至っていた。この恩赦で2人の刑期はそれぞれ6年分と4年分だけ減免された。2人が依然として軍の拘束下にあり,軍政が再度の刑期延長も自在にできるだろうことを考えれば,こうした恩赦も宣伝工作としての性格が濃いと言える。恩赦の報を受けて,軍政打倒を掲げる並行政府は同日,たとえスーチーが解放されても現状の政治路線に変更はない旨の発表をした。
軍政の人事再編と汚職問題軍政は,2月および8月の2度の期間延長のタイミングに合わせて,最高統治機関の国家行政評議会(SAC)とその下に置かれた内閣の人事を再編した。ミンアウンフライン上級大将とソーウィン上級大将補の上位2人が,軍の正副司令官,SACの正副議長,内閣の正副首相を占めることに変わりはなかったものの,9月にSACの重要メンバー2人が汚職を理由に解任されたこともあり,軍政の陣容は前年からかなり変化した(章末「参考資料」参照)。
SACは,現役軍人と非軍人をほぼ10人ずつとする構成が本年も基本的に維持された。8月までの再編の特徴は,非軍人の大幅な入れ替えである。SACの非軍人メンバーは,少数民族などの登用で多様性を強調することに主眼があり,実際の議事における役割は限定的だと考えられる。しかし,2011~2016年の連邦団結発展党(USDP)政権および現軍政下で外相を長く務めたワナマウンルィンが,2月に外相を退いてSACに加わったことで,非軍人メンバーのなかでも異彩を放つ存在となった。また,現役軍人では1人だけ,前年から実質的な解任状態にあったマウンマウンチョーが2月に正式に解任された。
内閣では,軍政序列第2位のソーウィンだけに限られていた副首相のポストが,2月に大幅に増設され,重要閣僚4人(国防相,内務相,運輸・通信相,計画・財務相)がそれを兼任した。ソーウィンの立場が幾分か相対化されると同時に,新副首相の4人中3人がSACにも席を持つ現役軍人であり,軍政の中核を担う将軍たちにさらなる重みづけがなされたとも言える。しかし8月には,これら軍人閣僚の間に異動があり,微妙な変化がうかがわれた。国防相のミャトゥンウー大将と運輸・通信相のティンアウンサン大将は,それぞれ副首相の地位を維持したまま,互いの閣僚ポストを取り換えた。かつて軍の序列第3位にまで昇り,次期最高司令官かとも噂されたミャトゥンウーの国防相から運輸・通信相への異動は,出世コースからのさらなる逸脱だと世間には受け止められた。また,NLD政権期から軍最高司令官の指名で内務相を務めてきたソートゥッ中将は,より明瞭な降格人事で副首相を外され,連邦内閣府相へと異動した。内務相の後任には,少数民族武装組織との交渉担当として存在感を増すヤービエ中将が就いたが副首相は兼任せず,2月から外相を務めるタンスェが新たに副首相を兼任した。
人事再編に一区切りついたかと思われた矢先の9月,経済の混乱で軍政に対する社会の不満が高じるなかで,軍政上層部に大きなスキャンダルが持ち上がった。SACの重要メンバー2人がそれぞれ汚職を疑われ,同月25日に解任されたのである。1人は先の内閣再編で降格されたソートゥッ中将であり,SACからの解任と同時に連邦内閣府相も外され,11月に懲役5年の有罪判決を受けた。もう1人のモーミントゥン中将は,ミンアウンフラインの引き立てで異例のスピード出世を遂げたために有力な後継者候補と目された人物で,投資委員会委員長,外国為替監督委員会委員長,商品流通是正加速中央委員会委員長という経済運営上の要職も兼ねていた。SACからの解任に先立つ9月18日,モーミントゥンは上記の3つの委員長ポストを外され,10月には軍法会議で実質的な終身刑を宣告された。3ポストの後任にはミャトゥンウーが就き,斜陽かと思われた彼の立場がモーミントゥンの退場で再浮上しつつあるように見える。
解任の2人に代わりSACに加入したのは,軍序列第3位の三軍統合参謀総長マウンマウンエー大将と,軍所有の複合企業ミャンマー・エコノミック・コーポレーションの会長を務めるニョーソー中将である。ニョーソーは前年8月に設置されたロシア産燃油調達委員会の委員長でもあり,本年7月には連邦大臣級のSAC議長顧問に任じられていた。さらに,SAC加入後の10月に新設された予算事前審査委員会では,ニョーソーが委員長に任命され,副委員長のウィンシェイン副首相兼計画・財務相を抑えて,財務分野の責任者と位置づけられた。
並行政府と反軍勢力:複数組織の共闘,地域ごとの統合模索2021年クーデタ以来の内戦は,一方の軍と,他方の並行政府および4つの少数民族武装組織を中心とする反軍勢力との対立という基本的構図のもとで展開してきた。軍政打倒と民主連邦制国家樹立を掲げる並行政府は,NLD中心の臨時立法府である連邦議会代表委員会(CRPH)と,より多様な勢力が参画する臨時執政府である国民統一政府(NUG)などから構成される(章末「参考資料」参照)。NUG傘下の人民防衛隊(PDF)は,クーデタ後に自発的に叢生した数百もの市民武装組織の一部に,並行政府が共通の名前を与えて組織化したものであり,実態としては,元の各市民武装組織が相当の自律性を残している。各地で編成されたPDF以外に,そもそもNUGの指揮下に入らない市民武装組織も多数存在する。
少数民族武装組織の方は,国内に20ほどあった有力な既存組織のうち,4つが並行政府と明示的な共闘関係を築いてきた。カレン民族同盟(KNU),カチン独立機構(KIO),カレンニー民族進歩党(KNPP),チン民族戦線(CNF)である。これら4組織は,クーデタ直後から軍の弾圧を逃れた若者たちに軍事訓練と武器供与を行って上述の市民武装組織叢生の素地をつくり,NLD関係者との協議を通じて並行政府の立ち上げにも関与した。こうして,これら4組織と,並行政府および数百もの新興武装組織とが多様な連携関係を結びながら軍と戦うことで,全国的に内戦が激化してきた。なかでも,従来はほとんど紛争がなかったザガイン管区域など国土北西部一帯が最大の激戦地となった。
本年には,反軍政の諸組織間の連携を促進するための地域統括組織の形成がボトムアップで進んだ。多数の新興武装組織が集中するザガイン管区域では,5月末に173もの在地の市民組織がザガイン・フォーラムという会議を開催し,管区域レベルの地域統括組織の設立を目指すことで合意した。さらに9月には,NUGの指揮系統下にない複数の市民武装組織が結集し,ビルマ国民革命軍(BNRA)と称する大規模な軍事組織を新たに立ち上げた。いずれの動きも並行政府の権威に表立って挑戦するものではないが,このようにまとまりつつある地方勢力と,中央政府を自任するNUGとの関係が今後どのように推移していくか注目される。
カヤー州やチン州でも関連する動きが見られた。両州では,既存の少数民族武装組織が比較的弱小で,それらと地元の新興武装組織との連携が重要な意味をもってきた。どちらの州でも,クーデタが起きた2021年のうちに最初の地域統括組織が設立されており,本年はそこからの新展開があった。カヤー州では6月,古株のKNPPと新興のカレンニー諸民族防衛隊(KNDF)などが協働する既存の地域統括組織のもと,それに連なる行政機関としてカレンニー州暫定執行評議会が設立された。他方でチン州では,12月,1988年設立のCNFが中心となり,クーデタ後に州内各地に形成されたチンランド防衛隊(CDF)の一部などと合同で,チンランド評議会の設立を定めたチンランド憲法を制定した。こちらは,既存の地域統括組織から本年4月に脱退したCNFが,別の統括組織の立ち上げに向けて動いたものであり,同州の反軍勢力内部の不和を示唆する展開となった。
反軍勢力の全国的攻勢:兄弟同盟の「1027作戦」を契機に前年に激化した内戦は,前年末から本年前半にかけて若干下火になったものの,本年の後半には再度エスカレートした。特に10月末に兄弟同盟を名乗る3つの少数民族武装組織がシャン州北部で軍の複数拠点に一斉攻撃を仕掛けて以降,全国各地で反軍政の諸組織による攻勢が一挙に強まった。多くの戦線で押し込まれた軍は,1960年代以降で最大の窮地に立たされた。
本年10月以降の事態の新しさは,前述の内戦の基本的構図のなかで独特の位置を占める兄弟同盟3組織が,内戦への参入の度合いを格段に高めたことにある。兄弟同盟とは,シャン州北部の漢族系少数民族からなるミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA),同じくシャン州北部のタアン民族解放軍(TNLA),ヤカイン(ラカイン)州に拠点を置くアラカン軍(AA)が緊密な協力関係を示すために用いる自称であり,以前は,これにKIOを加えた4組織で北部同盟を名乗ることもあった。クーデタ後の兄弟同盟3組織は,明確に並行政府に与したKIOとは一線を画した立場を取り,軍と敵対し,非公式に反軍勢力を援助しても,軍政打倒を掲げて並行政府と明示的に共闘してはこなかった。しかし,本年10月27日に始まり,日付から「1027作戦」と銘打たれたシャン州北部での軍への一斉攻撃は,従来とは段違いに大規模な軍事行動となったうえに,作戦開始に際する3組織連名の声明では,「国民全体の望みである軍事独裁の根絶」が目的のひとつに掲げられた。
1027作戦が緒戦から大きな戦果を挙げると,敗北が続いた軍政の側では,11月8日開催の国防治安評議会でミンアウンフラインが「しかるべき報復を行う」と述べた。国防治安評議会は,軍事・外交の重要事項を協議するための2008年憲法下での最高レベルの会議体であり,クーデタ後に,国家非常事態宣言の発出と期間延長以外の機会で開催されたのはこれが初めてであった。軍政が事態を重く受け止めていたことがうかがわれる。11月12日には,シャン州北部の8郡に戒厳令が発せられた。しかし,シャン州戦線での軍の劣勢は続き,軍は中国国境の要所をいくつも失った(1027作戦とシャン州の戦況については次項で詳述)。
1027作戦開始後,他地域でも反軍政の諸組織が次々と攻勢を強めた。こうした動きが事前に調整されたものであったかは不明だが,シャン州での兄弟同盟の成功が,他地域の反軍勢力を鼓舞したことは間違いない。カヤー州では,11月11日,KNPPやKNDFなどが州都ロイコーの奪取を目的とする「1111作戦」を開始し,同市内で激しい攻防が繰り広げられた。チン州では同月13日,CNFなどがインド国境の町リッコダールを奪取した。同日,ヤカイン州では,兄弟同盟の一角であるAAが,州内での軍との戦闘を再開し,前年11月から続いていた一時的停戦が終焉した。ザガイン管区域では,NUGが11月6日にコーリン市の制圧を発表し,12月3日に同市のある郡に独自の行政を敷いたと宣言した。
こうして年末までに,軍はいくつかの重要な国境地域から撤退を強いられ,複数の町と数百の前哨基地を失った。兵士の損耗が激しく,新兵採用も困難な軍は12月3日,脱走兵の帰還を認める旨の異例の通達を発した。ただし,反軍勢力の奪取した町の多くが,戦闘と軍による空爆などのため,ほとんど無人の廃墟となっている点には注意を要する。国内避難民の数は10月末からさらに60万人増加し,年末までに推定260万人に達した。ミャンマーは紛争のみならず気候変動のリスクにも曝されており,人道危機は深刻さを増すばかりである。本年5月には大型サイクロン・モカがヤカイン州を直撃し100万人以上が被災した。
シャン州の戦況:コーカン地方争奪,国境貿易路寸断,中国の利害関心長年にわたって内戦の主要な舞台であったシャン州北部は,クーデタ後の2年半の間,ザガイン管区域などと比べると内戦の強度が相対的に低かったが,本年の1027作戦の展開で再び最大の激戦地のひとつとなった。この過程に国境を接する中国の思惑も絡み,諸勢力間の複雑な関係が流動化した。
1027作戦の主眼は,MNDAAが故地である州北東端のコーカン地方を奪還することにあった。そもそもMNDAAは,ビルマ共産党内の彭家声が率いる一派であったが,1989年の同党崩壊時に自立し,ミャンマー軍との停戦に合意する見返りにコーカン地方の自治を保証された。ところが,2009年,民政移管を前に諸武装勢力の傘下への編入を企てたミャンマー軍がMNDAAを攻撃した際,軍と手を結んだ白所成ら内部勢力に追われて彭家声は逃亡を余儀なくされた。以後,白所成一派が地方行政体としてのコーカン自治地域を形成し,その兵員を軍傘下のコーカン国境警備隊へと再編して,軍の後ろ盾のもとで自治と種々のビジネスを展開した。他方,コーカン奪還を悲願とする彭家声は,再建したMNDAAで2015年に捲土重来を期すが失敗し,2022年に身を寄せていた別の武装組織の拠点(シャン州東部のモンラー)で客死した。現MNDAA指導者の彭德仁はその息子である。1027作戦開始後の快進撃の結果,年末の時点でMNDAAはコーカン地方のほぼ全域を手中に収め,中心都市ラウカイ(ラオカイ)の奪還も目前であった。
MNDAAの友軍TNLAは,州北西部で勢力を伸張させた。TNLAは,この地方の山地に多く住むタアン(パラウン)人の利害を代表するため,2009年に設立された比較的新しい武装組織である。KIOや国内最大の武装組織であるワ州連合軍(UWSA)の庇護下で急速に強大化し,2010年代を通じてミャンマー軍と激しく戦った。クーデタ後は,非公式に反軍勢力を支援しつつも,自身が軍と正面衝突することは極力避け,自領の行政組織整備に注力していた。しかし,TNLAは1027作戦で再び軍との全面戦争に舵を切り,年末までに6つの町を陥落させて自領を拡張し,軍が押さえてきた中国との国境貿易の主要幹線道路を寸断した。
その他の武装組織の動向として,中国を後ろ盾に強大な軍事力を有するUWSAは,クーデタ後に軍と反軍勢力の双方から距離を保ち,シャン州内における他組織への影響力を強めてきた。UWSAの後援を受けたTNLAとシャン州進歩党(SSPP)は,前年にライバルのシャン州復興評議会(RCSS)を州北部から排除し,州南部へと押し戻した。しかし,本年に入り,共通の敵をなくしたTNLAとSSPPの間で緊張が高まり,1027作戦後のTNLAの台頭のなかで,11月29日,10年近く敵対してきたSSPPとRCSSが停戦協定を結んだ。
1027作戦の展開には,すぐ隣の大国である中国の思惑も絡んだ(「経済」「対外関係」の項目も参照)。本年,中国は国境のミャンマー側におけるオンライン特殊詐欺拠点の急増に深刻な懸念を示し,軍政や関係する諸武装組織に何度も取り締まりを要請していた。そうした特殊詐欺の中心地のひとつがコーカンであった。しかし,そこでの首謀者と思しき白所成らは,2009年当時の軍のコーカン攻略担当指揮官であったミンアウンフラインとの関係が深いとされ,中国の要請に対する軍政の反応は鈍かった。9月末,コーカン自治地域当局は詐欺拠点の取り締まりと称して,そこで働く中国人377人を逮捕し中国に送還しようとした。しかし,これは中国の圧力をかわすための目眩ましである可能性が高く,逮捕者のほとんどは犯罪者というより,強制的に働かされていた人身取引被害者であると考えられた。そこで中国公安は10月1日,コーカンと国境を挟んだ中国側の町を訪れていたコーカン自治地域の幹部11人の逮捕に踏み切った。1027作戦はこうした文脈のうえで敢行されたのである。兄弟同盟による前述の作戦開始声明では,軍事独裁根絶と並んで,オンライン詐欺の撲滅も目的に掲げられた。国境域の治安悪化や国境貿易の途絶は中国の望むところではないが,兄弟同盟はオンライン詐欺撲滅を目標とすることによって,軍および白所成一派への攻撃に対する中国の了解を得ようとし,中国もそれを黙認したと思われる。
年の前半は内戦が若干下火になり,経済も上向くかに見えた。しかし,新型コロナウイルス禍後の経済が動き出すなかで,欧米の制裁強化,軍政の悪手,内戦の再エスカレートなどが重なり,年の後半には混乱が目立ち,停滞が続くこととなった。世界銀行(世銀)の調査チームは12月の報告で,2022/23年度と2023/24年度(いずれも4月始まり,以下同じ)の実質国内総生産(GDP)成長率をそれぞれ4.0%と1.0%と予測した。2023年から2024年にかけての成長率については,10月前半まで複数の国際金融機関が年間約3%の成長を予測していたが,世銀チームは10月末以降の内戦状況を鑑みてこれを下方修正した。コロナ禍とクーデタ後の動乱による大幅の落ち込みからの回復にはほど遠く,この予測での2024年のGDPは,2019年時点よりも10%ほど低いままにとどまっている。
外国投資は2年連続で半減するペースである。軍政の投資企業管理局(DICA)によると,ティラワ経済特区への投資を除く認可ベースの対内直接投資額は,2022/23年度の1年間で16億4067万ドル(前年同期比48.4%減),2023/24年度の4月から12月までの9カ月間で6億223万ドル(同58.8%減)であった。
貿易は拡大から縮小へ転じ,赤字が膨らんだ。軍政の商業省によると,2022/23年度の年間の輸出額は166億2018万ドル(前年同期比4.9%増),輸入額は173億5272万ドル(同16.7%増)で,貿易全体の規模は拡大したが,輸入の伸びが輸出の伸びを大きく上回り,前年まで黒字であった収支は赤字となった。2023/24年度の4月から11月までの8カ月間では,輸出額は96億2769万ドル(同14.4%減),輸入額は110億2382万ドル(同5.3%減)となり,輸出入ともに減少したが,外需の不振による輸出の落ち込みが激しく,貿易赤字はむしろ膨らんだ。
2023/24年度の8カ月間における貿易相手国別の第5位までのシェアは,輸出では,タイ25.7%,中国20.3%,日本8.1%,インド5.9%,アメリカ4.3%,輸入では,中国32.8%,シンガポール21.1%,タイ12.0%,マレーシア7.4%,インドネシア7.3%であった。輸出総額の大幅減は,対中国輸出の減少(前年同期比15.3%減)によるところが大きく,さらに本年10月末以降の中国国境域での内戦の激化が陸路での対中国貿易に深刻な打撃を与えた。本稿執筆時点では年度末までの1年間の統計は得られないが,2022/23年度まで約10年にわたって最大の輸出相手国であった中国がその地位から転落する可能性が高い。
止まらないチャット下落とインフレ,効果薄い軍政の対策為替はチャット下落が続くなかで,軍政支配下の中央銀行(中銀)が定める参考レートと市場の実勢レートとがさらに乖離した。参考レートが前年8月以来の1ドル=2100チャットに据え置かれたのに対し,実勢レートの方は,本年前半のうちは1ドル=2800チャットくらいで推移していたものの,6月21日にアメリカが軍政支配下の国営銀行2行に制裁を科したことを契機として,外貨流入の先細りへの懸念が広がり,チャットの急速な下落が再開した。
これに対して軍政は,規制を一部緩和することで対応した。例えば,中銀は6月22日から外国為替のオンライン取引プラットフォームを導入した。同プラットフォームは,認可を受けた銀行間または銀行・顧客間の為替取引を中銀の管理下で行うためのもので,そこでのレートは導入時点での実勢レートに近い1ドル=2920~2922チャットの範囲内に固定された。また7月13日には,輸出企業が輸出で得た外貨収入のうち1営業日以内に参考レートでチャットへ両替しなければならない割合を50%へとさらに引き下げた。この強制両替制度はクーデタ後に導入され,当初100%であった割合が前年8月に65%に引き下げられていた。強制両替の対象外となり輸出企業の手元に残った外貨は,上述のオンライン取引プラットフォームで公式に「実勢レート」で売ることができた。
しかし,7月から8月にかけて,市場の実勢レートでのチャット下落は止まらず,実勢レート,オンライン取引プラットフォームのレート,参考レートが併存する為替レートの三重化が起きた。さらなるチャット下落の要因には,7月末に軍政が高額の2万チャット記念紙幣を唐突に発行したことや,8月初めの報道(Nikkei Asia,8月9日)で,シンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)がミャンマーの銀行に対し,ミャンマー以外の国の銀行との送金取引中継業務を停止すると通知した事実が明らかになったことなどがあった。後者のUOBの動きは,軍への制裁を強めるアメリカに同調するものと見られ,軍政の外貨へのアクセスをより難しくする。乱高下しながらチャット安へ動いた実勢レートは,8月のピーク時には1ドル=4000チャット近くにまで至り,9月には比較的落ち着いて1ドル=3300チャット近辺で推移する状況となった。
物価の上昇にも歯止めがかからない。国際食糧政策研究所(IFPRI)によると,クーデタ前の2020年6月から本年2月までにコメや食用油などの主要食品の価格がすでに2倍以上に上がっており,上述の世銀チームの報告では,6月のインフレ率は年率28.6%であった。そこに7月・8月のチャット下落が重なり,インフレをさらに加速させた。軍政は対策として,8月28日,コメと食用油の価格統制を始めた。設定された卸売参考価格は,市場価格よりコメは10~25%,食用油は60%も低く,小売りでの利ざやも10%以内に収めるように指示された。2日後には,見せしめのように食用油販売業者協会の幹部5人が価格統制への違反容疑で逮捕された。しかし,こうした市場介入の効果は限定的で,物価水準は総じて年の前半よりも高いままであり,強引な手法への反感が社会に募った。軍政内で外国為替監督と物価統制の責任者であったモーミントゥンが,9月に汚職を理由に追放されたことは,以上の状況と無関係ではないだろう。10月以降の紛争の激化で国内の物流が困難を増し,物価上昇への圧力はさらに高まった。
外国投資激減,輸出減と貿易赤字の増加,コロナ禍後に観光業の回復が見られないことに加え,欧米による制裁やチャットの継続的下落が国際収支の悪化に結びついていると考えられる。こうした状況下で軍政は年末にさらなる規制緩和を実施し,外貨流入促進を図った。12月5日,中銀は,上述の外国為替オンライン取引プラットフォームにおけるレートの設定を止め,取引当事者間で市場のレートに基づいて自由にレートを決められると通達した。さらに翌6日には,輸出外貨収入の強制両替の割合を50%から35%へと再度低減させた。
非合法経済の拡大と少数民族武装組織の統治ミャンマーの周縁部では,20世紀半ばから内戦が長く続く状況下で,政府統計に計上されない非公式ないし非合法の経済が展開してきた。軍,軍の傘下で一定の自律性を維持する国境警備隊や民兵組織,より独立的な少数民族武装組織などの数多くの軍事勢力と越境的な犯罪シンジケートが関わるこの経済は,木材の伐採,鉱物資源の採掘,麻薬の製造,それらの密輸,人身取引,カジノやオンライン・ギャンブルの運営などを含む。その規模は,数値化が難しいものの,国家の公式の経済を凌駕するほどに大きい可能性がある。特に2021年以降,辺境での軍の存在感と統制力が低減したことで非合法経済は拡大傾向にあるとされる。この過程で,新たなビジネスとしてオンライン特殊詐欺が興隆した。これは,拠点とするビルなどに労働者を置き,ネット上で投資詐欺や恋愛詐欺などに従事させるもので,多くの場合,労働者たち自体がSNS上の偽の求人広告などで騙されて拠点に連行・監禁された人身取引被害者だった。オンライン特殊詐欺興隆の背景には,コロナ禍のオンライン化進展や労働者の経済的苦境があった。
本年は,こうした非合法経済が国内政治や対外関係の重要な焦点となり,前述の1027作戦のほかにも,一部の強力な少数民族武装組織に注目すべき動きがあった。まず,シャン州東部の国内最大勢力UWSAは4月,資源保護のために自領での錫の採掘を8月1日から一時中止すると発表し,実際に予定通り採掘を中止した。ミャンマーは世界第3位の錫鉱石生産国であり,そのほとんどがUWSA領内で生産されて正規の税関を経由せず中国へ輸出されていた。錫の鉱石と地金の両方で世界最大の生産国である中国にとっても,UWSAは錫鉱石輸入量の過半を占める重要な供給源であった。錫の採掘中止は,緊密と見られてきた中国とUWSAの関係の微妙なひずみを示唆しているのかもしれない。中国は,コーカン当局や軍政に対してと同様にUWSAに対しても,オンライン詐欺の問題で圧力をかけていたようだ。9月にUWSAが領内で目眩ましと見られる詐欺拠点取り締まりを実施し,1207人もの「犯罪者」を逮捕して中国側へ身柄を引き渡した後,10月には,中国公安が詐欺首謀の容疑でUWSAの行政部門幹部2人に逮捕状を発出した。数日後にUWSAは両者を解任・除名したと発表したものの,それ以外に2人の消息は明かさず,中国側への身柄の引き渡しもしなかった。
カチン州に本拠を置くKIOもまた4月に,領内での新規レアアース採掘事業を中止すると発表したが,こちらでは住民の反対運動が契機となった。国際NGOの調べによると,2010年代後半からミャンマーのレアアース採掘量は急増し,そのすべてがレアアース加工の世界的中心地である中国に向けて非公式に輸出されてきた。レアアース採掘の環境負荷はきわめて大きく,中国国内では規制が強化されて多くの採掘所が閉鎖したため,鉱床のあるミャンマーのカチン州が代替供給地として勃興したという(Global Witness, Myanmar's Poisoned Mountains, 2022)。レアアース採掘の国内最大の中心はカチン州北部の国境警備隊の自治地域だが,KIO領内でも採掘が行われてきた。ところが,地元住民から採掘による環境汚染を危惧する反対運動が起こり,本年3月に大規模な抗議集会が開かれるに至って,KIOは新規事業の中止を決定したのである。KIOが住民の声を施政に反映させる傾向をもつことは,これまでもしばしば指摘されており,クーデタ後すぐに反軍政の態度を明確にしたことの要因にも挙げられてきた。
カイン州では,タイ国境付近の3つの開発プロジェクトがそれぞれ非合法ビジネスの中心地に発展し,うちひとつにKNU幹部の関与が疑われてきた(『アジア動向年報2021』参照)。カレン人社会では,KNUの反軍政の姿勢がおおむね支持される一方,非合法ビジネス関与への批判が広がった。そうしたなか,コロナ禍で2年以上延期されてきたKNU第17回大会が4月末から開催され,新執行部が選出された。数人を除き,新執行部の顔ぶれに大きな変化はなかったが,組織内でも軍事部門の有力な旅団などは非合法ビジネスへの反対を示し続けた。1027作戦の展開以降,オンライン詐欺拠点がシャン州からカイン州へと移転していると見られ,KNU新執行部の対応が内外から注視される状況となった。
アメリカは前年に続き,イギリス,EU,カナダと連携して軍政への制裁を強化した。本年は特に,空爆などの軍の過剰な暴力行使を止めるため,資金や物資の供給を断つことが重視された。6月21日,アメリカは国営銀行のミャンマー外国貿易銀行とミャンマー投資商業銀行に制裁を科した。この2行は複数の外国銀行に現地通貨建ての口座を有しており,主にこれらを通じて軍政が武器などを購入したり,15億ドルにも上ると言われる天然ガス輸出での外貨収入を得たりしていると考えられた。そのため,制裁によって外国銀行に2行との関係の制限を促し,軍政の外貨へのアクセスを難しくするのが目的であった。実際,前述のシンガポールの銀行であるUOBのように,制裁に呼応する動きが見られた。
軍政の主要な財源となってきた天然ガス事業は,前年1月の欧米大手企業の撤退表明から制裁対象となり,前年2月にはEUが軍政支配下のミャンマー石油ガス公社(MOGE)に初めて制裁を科した。本年7月のビルマ語報道(Myanmar Now,7月4日)では,4月の日付があるリーク文書の内容として,軍政が制裁回避のため,MOGEの外貨建て隠し口座を偽の名義でミャンマー経済銀行(上記2行とは別の国営銀行)に開設するよう指示していたことが伝えられた。報道直後に軍政はリーク元の探索に動き,MOGEを強制捜査して幹部数人を逮捕した。ガス事業への制裁を軍政が脅威と見ていることを示す出来事であった。アメリカも,本年1月末にMOGE幹部2人を制裁対象に加え,10月にはMOGE自体に対する初の制裁を発表した。ただし,後者の内容は,在米資産凍結を含まず,12月15日以降にアメリカの国民・居住者・団体がMOGEに対して特定の金融サービスを提供することなどを禁止するという限定的なものだった。
他方,前年末にアメリカでミャンマー民主化を支援するための「ビルマ法」が国防権限法の一部として成立し,アメリカからの殺人兵器を含まない軍事援助の可能性が開かれたことで,反軍勢力の期待が高まった。本年に入り,並行政府は高官を何度もアメリカに送って内容・規模両面での援助拡充を求めるロビー活動を行い,2月にはワシントンD.C.にNUGの連絡事務所も開設された。しかし,それにもかかわらず,本年のアメリカの援助は従来通りの人道支援のみに限られ,援助額の規模はむしろ過去2年の実績を下回るほど少なかった。
並行政府はアメリカ以外のイギリス,カナダ,日本などの国々にも閣僚を派遣して関係構築を図った。また,7月にNUG外相がティモール・レステを訪問した後,軍政が8月に同国との国交断絶という強硬な対応を取ったことが注目された。
中国と軍政との接近が加速するなか,オンライン特殊詐欺が焦点にクーデタ後,軍政は中国とロシアからの支持を頼りにしてきた。ロシアは,自身もウクライナ侵攻後に国際的孤立を深めたこともあり,軍事協力を中心に一貫して軍政との関係を強化してきた。これに対して,長い国境で接し,経済関係も深い中国は,軍政支持を基本としつつも,その多岐にわたる利害を反映してより複雑な態度を取ってきた。しかしながら,おそらく前年末のアメリカによる「ビルマ法」制定を契機として,本年,中国は軍政との接近を急加速させた。
まず,要人往来の頻度と重みが格段に増した。5月初めには中国の秦剛・国務委員兼外交部長が来訪し,クーデタ後初めてミンアウンフラインが中国高官と会談した。同じく中国外交部の鄧錫軍アジア担当特使は,前年末の初来訪以来,前任者を優に超える頻度で来訪を繰り返し,軍政要人や少数民族武装組織と接触した。ほかにも4月から5月にかけて,中国から雲南省党委員会,共産党中央対外連絡部,中央軍事委員会連合参謀部情報局の高官が次々と来訪した。
中国はこれらの機会に,関係が悪化する軍政と兄弟同盟3組織との対話を促して国境域の安定を図り,6月初めには両者の協議が実現した。また中国は,前述のように国境域のオンライン詐欺拠点の取り締まりも各方面に要請した。詐欺行為を強制された人身取引被害者はアジア全域に,詐欺の標的はネットを通じて世界中に広がるが,どちらにも中国人が多く,中国の損失が甚大だったからである。コーカンやUWSA領などの中国国境域のみならず,カイン州のタイ国境域にある非合法ビジネス中心地も中国の注視の対象となった。6月6日,タイの地方配電公社がカイン州側の非合法ビジネス中心地への越境送電を停止した。軍政がタイ政府に要請したことによるが,中国の意向に沿うためであった可能性が高い。
しかし,コーカンについては軍政の反応が鈍く,それが兄弟同盟による1027作戦敢行を中国が黙認する要因となった(前述)。1027作戦の開始後,軍政内部に中国への不信感が強まり,11月19日にはヤンゴンの中国大使館前での異例の抗議デモが軍支持者によって組織された。しかし,その前後を通じて,ミャンマー軍政からは副首相級の訪中が続き,中国からも王小洪・国務委員兼公安部長兼共産党中央書記処書記の来訪があるなど,ハイレベルの要人往来が維持された。兄弟同盟とその他の反軍勢力による攻勢の度合いはおそらく中国の予想を超えていたが,中国は国境域安定とオンライン詐欺撲滅という2つの目的に向かって行動した。11月末の中国人民解放軍による国境の雲南省側での実戦演習とヤンゴン港への駆逐艦派遣で軍事的威圧をかけつつ,軍政と兄弟同盟との停戦協議の場を繰り返し設け,現場での戦闘が止まないなかで事態のコントロールを図った。同時に,コーカン当局への圧力を強め,12月10日には白所成ら最高幹部10人にも逮捕状を発出した。彼らの処遇については,軍政は1カ月以上にわたって沈黙を続けたが,2024年1月30日に白所成を含む6人の身柄を中国に引き渡した。
経済協力の再加速に向けた動きもあった。本年11月初め,中国国有の中国工商銀行のヤンゴン支店が人民元国際決済システム(CIPS)に参加し,欧米の制裁を迂回するルートができた。また,12月末には中国の関与するチャウッピュー深海港建設の再開に向けた式典が開催された。
ASEANによる仲介の成果乏しく,タイは独自の動きASEANは,クーデタ後の2021年4月に軍政トップのミンアウンフラインも参加した首脳会議で,暴力の即時停止や全当事者による対話開始などを含む「5項目の合意」に至ったものの,その後に軍政がこれを履行する姿勢を示さなかったために手詰まりに陥り,ハイレベル会議に軍政の政治代表を招かない措置を取ってきた。また,加盟国間で立場が割れ,島嶼部の国々が軍政に強硬な姿勢を示す一方,大陸部の国々は軍政との関与を重視する傾向にあった。こうしたなかで本年の議長国インドネシアは,ミャンマー国内の諸勢力と非公式に接触する「沈黙外交」で対話開始の糸口を探ろうとしたが,目ぼしい成果は得られなかった。また,9月初めのASEAN首脳会議では,加盟国間の持ち回り順序に従い予定されていた2026年のミャンマーの議長国就任をスキップすることが決められた。
他方で,隣国のタイは必ずしもASEANの枠組みに捉われず,独自に軍政と接触を続けながら,インドなどほかの近隣国とともにミャンマー問題に関する多国間協議の場を設けた。3月にタイのバンコクで,4月にはインドのデリーで,政府職員と民間有識者の双方が出席するトラック1.5対話が開催され,軍政のほか,ASEANの一部加盟国,インド,バングラデシュなどが参加した。6月に,タイのパタヤでドーン副首相兼外相が主宰した会議には,軍政のタンスェ外相も招かれた。こうしたタイの動きは,ASEANの足並みを乱すものとして批判も受けた。
国内政治では,軍政が劣勢にあるとはいえ,すぐに崩壊に至りそうもなく内戦が継続するだろう。危機感を強める軍政は2024年2月に徴兵の実施に向けて動き出し,社会に衝撃を与えた。徴兵対象となる青年層を中心に,反軍勢力への参加や国外脱出の動きが加速する可能性がある。他方,反軍勢力の側は一枚岩でなく,引き続き諸組織間の調整と協働の仕組みづくりが課題となる。特に,本年に目立った動きをした兄弟同盟3組織については,それらが当面の目標を個別に達成した後も並行政府との共闘を続けるのかどうか,去就が注目される。
経済の展望は明るくない。マクロ経済が安定に向かうと考えられる材料は少なく,徴兵の実施は就労可能な人々がミャンマー経済に貢献する余地をさらに狭めることになるだろう。経済停滞・紛争・自然災害によって深刻さを増す人道危機への国際的な支援が必要だ。
対外関係では,軍政はロシアや中国,並行政府は欧米諸国との関係強化を試み続けると考えられる。国際社会の側では,近隣諸国と協力し,国内の諸勢力と適宜接触しながら,支援を必要とするところへ効果的に届ける努力がなされるべきである。
(地域研究センター)
1月 | |
19日 | タイのチャルームポン・シーサワット国軍最高司令官,来訪(~21日)。ガパリでミンアウンフライン軍最高司令官と会談。第8回ミャンマー・タイ軍高官会議に出席。 |
25日 | オーストラリア,軍政幹部に対して標的制裁を科す。クーデタ後初めて。 |
26日 | 軍政,政党登録法を発布。 |
27日 | カナダ,制裁追加(7回目)。 |
31日 | 米国,制裁追加(15回目)。ミャンマー石油ガス公社(MOGE)幹部2人も対象。 |
31日 | 英国,制裁追加(17回目)。 |
2月 | |
1日 | 軍政,国家非常事態宣言の期間を6カ月延長(3度目)。国家行政評議会(SAC)および内閣の改組。 |
2日 | 軍政,全国37郡に戒厳令発出。 |
6日 | 並行政府のズィンマーアウン国民統一政府(NUG)外相,訪問中の英国でジェームズ・クレバリー外相と会談。 |
6日 | 軍政,ネーピードーに原子力技術情報センター開設。ロシアのロスアトム社との協力。 |
13日 | NUG,米国の首都ワシントンD.C.に連絡事務所を開設。翌日,同地でズィンマーアウンNUG外相がウェンディ・シャーマン国務副長官らと会談。 |
22日 | 軍政,新たに3郡に戒厳令発出。 |
3月 | |
2日 | 米国,制裁追加(16回目)。 |
5日 | バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプで大規模火災。1.6万人以上に影響。 |
6日 | 来訪中の中国の鄧錫軍アジア担当特使,軍政幹部と会談。 |
7日 | 並行政府のアウンチーニュン連邦議会代表委員会(CRPH)委員長,訪米(~9日)。デレク・ショレット国務省顧問,クリス・ヴァン・ホーレン上院議員と会談。 |
7日 | EU,制裁追加(6回目)。 |
13日 | ミャンマー問題に関する多国間トラック1.5対話,タイのバンコクで開催。 |
21日 | カチン州マンスィー郡のカチン独立機構(KIO)支配地域で,約1000人が中国企業のレアアース採掘に対する抗議デモ実施。 |
22日 | 来訪中のロシアのイーゴリ・クラスノフ検事総長,ミンアウンフラインと会談。 |
24日 | 米国,制裁追加(17回目)。 |
27日 | 英国,制裁追加(18回目)。 |
29日 | 軍政,国民民主連盟(NLD)など40政党の登録抹消を発表。 |
4月 | |
3日 | 来訪中の中国の王寧・雲南省党委員会書記,ミンアウンフラインと会談。 |
3日 | 来訪中のロシアのアレクサンドル・フォーミン国防次官,ミンアウンフラインと会談。 |
4日 | チン民族戦線(CNF),クーデタ後に設立されていた地域統括組織からの脱退表明。 |
15日 | KIO,領内でのレアアースの新規採掘事業の中止を発表。 |
16日 | 中国の彭修彬・共産党中央対外連絡部アジア一局局長,来訪(~19日)。前軍政トップのタンシュエなどと会談。 |
17日 | ワ州連合軍(UWSA),8月1日から錫の採掘を一時停止すると発表。これに反応して国際的な錫価格が10%以上高騰。 |
21日 | タイのドーン・ポラマットウィナイ副首相兼外相,来訪。ミンアウンフラインと会談。 |
21日 | スウェーデン・フィンランドのエンジニアリング会社AFRY,ミャンマーの水力発電事業からの撤退を表明。 |
23日 | 潘基文・前国連事務総長,来訪(~24日)。ミンアウンフラインと会談。 |
24日 | カレン民族同盟(KNU),2年以上延期されていた第17回大会を開催(~5月3日)。新執行部選出。 |
25日 | ミャンマー問題に関する多国間トラック1.5対話,インドのデリーで開催。 |
27日 | ノルウェー中央銀行,政府基金からインドガス公社と韓国ガス公社への出資引き揚げ決定を発表。MOGEとの提携を理由に。 |
5月 | |
2日 | 中国の秦剛・国務委員兼外交部長,来訪(~3日)。ミンアウンフライン,タンシュエ前軍政トップ,タンスェ軍政外相と会談。国境域オンライン特殊詐欺拠点の取り締まり強化を要請。来訪直前に雲南国境立ち寄り。 |
3日 | 軍政,恩赦で囚人2000人以上解放。 |
14日 | 大型サイクロン・モカ,ヤカイン州上陸。100万人以上が被災。 |
23日 | 軍政のヤービエ連邦内閣府相兼国家安全保障顧問,ロシア訪問(~27日)。第11回安全保障関連高官会議に出席。 |
30日 | ザガイン管区域内の市民武装組織など173組織が集まり,第1回ザガイン・フォーラムを開催(~31日)。 |
30日 | 来訪中の中国の楊陽・中央軍事委員会連合参謀部情報局代理局長,ソーウィン軍副司令官と会談。 |
6月 | |
1日 | 軍政のヤービエ中将率いる国民統合和平実現調整委員会,シャン州東部モンラーでミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA),タアン民族解放軍(TNLA),アラカン軍(AA)の兄弟同盟3組織と協議(~2日)。 |
6日 | カヤー州内の反軍勢力,既存地域統括組織の行政機関としてカレンニー州暫定執行評議会を設立。 |
6日 | タイの地方配電公社,カイン州国境域の非合法ビジネス中心地への送電停止。 |
18日 | ミャンマー問題に関する多国間非公式会合,タイのパタヤでドーン外相が主宰し開催(~19日)。軍政のタンスェ外相出席。 |
21日 | 米国,制裁追加(18回目)。軍政国防省および国営銀行2行などが対象に。 |
22日 | 軍政中央銀行(中銀),外国為替のオンライン取引プラットフォームを導入。 |
7月 | |
1日 | ズィンマーアウンNUG外相,ティモール・レステ訪問(~5日)。シャナナ・グスマン新内閣就任式に参加。 |
4日 | 軍政が4月にMOGEの外貨建て隠し口座を国営銀行に開設するよう指示していたことを示すリーク文書に関する報道(Myanmar Now)。 |
5日 | 軍政,ニョーソー中将を連邦大臣級のSAC議長顧問に任命。 |
6日 | 軍政,MOGEを強制捜査して高官数人を逮捕。2日前の報道のリーク元探索か。 |
12日 | タイのドーン外相,直前のミャンマー訪問時にアウンサンスーチー(以下,スーチー)と面会したと発言。ジャカルタでのASEAN外相会議のサイドラインで。 |
13日 | 軍政中銀,輸出外貨収入の現地通貨への強制両替の割合を65%から50%に低減。 |
20日 | EU,制裁追加(7回目)。 |
24日 | 軍政国営メディア,7月31日発行予定の2万チャット記念紙幣を発表。為替と金の市場が動揺。 |
27日 | 中国の鄧錫軍アジア担当特使,来訪(~28日)。軍政要人と会談。 |
28日 | スーチーが刑務所から官舎へ移送され,中国の鄧錫軍アジア担当特使と面会したとの報道(France 24)。 |
8月 | |
1日 | 軍政,国家非常事態宣言の期間を6カ月延長(4度目)。ネーピードーでマーラウィザヤ仏像の完成式典開催。7700人超に恩赦。スーチーとウィンミン前NLD政権大統領も刑期の一部を減免される。 |
1日 | UWSA,自領内での錫採掘を一時停止。 |
2日 | 軍政,SAC改組。翌日に内閣も改組。 |
9日 | シンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)がミャンマーの銀行と外国の銀行との送金取引中継業務を停止する予定であるとの報道(Nikkei Asia)。 |
13日 | ティンアウンサン軍政副首相兼国防相,ロシア訪問(~21日)。モスクワで国際安全保障会議に出席。 |
23日 | 米国,制裁追加(19回目)。 |
25日 | 軍政,ティモール・レステとの国交断絶。 |
28日 | 軍政,コメと食用油の価格統制開始。 |
30日 | 軍政,ミャンマー食用油販売業者協会の幹部5人を価格統制への違反容疑で逮捕。 |
9月 | |
5日 | ASEAN首脳会議で2026年のミャンマーの議長国就任スキップが決定される。 |
6日 | UWSA,自領内のオンライン詐欺拠点を取り締まり(~7日)。逮捕した1207人を中国側に引き渡す。 |
9日 | ザガイン管区域などのNUG傘下にない市民武装組織が結集してビルマ国民革命軍を設立。 |
12日 | タンスェ軍政副首相兼外相,ロシア・ベラルーシ歴訪(~17日)。 |
18日 | 軍政,汚職容疑のあるモーミントゥン中将を3つの経済運営上の要職から更迭。 |
18日 | 来訪中の中国の鄧錫軍アジア担当特使,軍政要人と会談。 |
23日 | ミャトゥンウー軍政副首相兼運輸・通信相,中国訪問(~27日)。グローバル・サステイナブル運輸フォーラムに出席。 |
25日 | 軍政,SAC・内閣改組。SACではモーミントゥンとソートゥッを解任し,マウンマウンエーとニョーソーを任命。 |
25日 | コーカン自治地域当局,自領内のオンライン詐欺拠点を取り締まり(~26日)。377人の中国人を逮捕。 |
10月 | |
1日 | 中国公安,雲南省鎮康県臨滄を訪問中のコーカン自治地域の幹部11人を逮捕。 |
5日 | 軍政,最低賃金引き上げ。5年ぶり。日額5800チャットに。同月初から遡及適用。 |
8日 | 前日からの大雨のためにバゴー川が氾濫してバゴー市が浸水。 |
10日 | 軍政,軍法会議がモーミントゥンに対して反逆罪・腐敗罪で20年の「流刑」(実質的な終身刑か)を宣告したと発表。 |
11日 | 中国公安,UWSA幹部2人に対してオンライン詐欺首謀の容疑で逮捕状発出。 |
14日 | 来訪中のインドのヴィクラム・ミスリ国家安全保障担当副顧問,ミンアウンフラインと会談。 |
15日 | 来訪中の中国の鄧錫軍アジア担当特使,ミンアウンフラインと会談。 |
16日 | ミャトゥンウー軍政副首相兼運輸・通信相,中国訪問(~19日)。第3回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムに出席。 |
16日 | UWSA,中国から逮捕状を出されていた幹部2人を解任・除名したと発表。 |
24日 | 軍政,予算事前審査委員会を設置。 |
27日 | 兄弟同盟3組織,シャン州北部で軍の複数拠点を一斉攻撃し,1027作戦を開始。 |
27日 | カナダ,制裁追加(8回目)。 |
28日 | ティンアウンサン軍政副首相兼国防相,中国訪問(~11月1日)。張又侠・国家中央軍事委員会副主席と会談。 |
30日 | 中国の王小洪・国務委員兼公安部長兼共産党中央書記処書記,来訪(~31日)。第7回法執行安全保障協力会議に出席。ミンアウンフラインと会談。 |
31日 | 米国,制裁追加(20回目)。12月15日以降の米国の国民・居住者・企業によるMOGEへの金融サービス提供などを禁止。 |
31日 | 英国,制裁追加(19回目)。 |
11月 | |
1日 | 中国国有の中国工商銀行のヤンゴン支店,人民元国際決済システム(CIPS)への参加記念式典開催。 |
2日 | ロシア海軍の駆逐艦など3隻,ヤンゴン寄港(~7日)。ニコライ・エフメノフ海軍総司令官が率いる。ミャンマー海軍とロシア太平洋艦隊との初の共同軍事演習のため。 |
3日 | 中国の農融・外交部部長助理,来訪(~5日)。タンスェ軍政副首相兼外相と会談。 |
6日 | NUG,ザガイン管区域コーリン市の制圧を発表。 |
8日 | 軍政,国防治安評議会開催。クーデタ後,国家非常事態宣言の発出と延長以外の案件で招集されるのは初めて。 |
10日 | 軍政,軍法会議がソートゥッに対して腐敗罪で懲役5年を宣告したと発表。 |
11日 | カヤー州の反軍勢力,州都ロイコーの奪取を目指す1111作戦を開始。 |
12日 | 軍政,シャン州北部8郡に戒厳令。 |
12日 | 中国公安,コーカン自治地域幹部の明学昌ら4人に逮捕状発出。 |
13日 | チン州の反軍勢力,インド国境の町リッコダールを奪取。 |
13日 | AA,ヤカイン州での軍との戦闘再開。前年11月からの一時的停戦が終焉。 |
15日 | 軍政,中国が逮捕状を出していたコーカン自治地域の明学昌ら4人に逮捕状発出。逮捕状の出ていた4人中3人は翌日逮捕。うち2人は中国送還,残り1人は死亡。 |
15日 | 軍政,コーカン自治地域の主席にトゥントゥンミン准将を任命。トゥントゥンミンは北東部軍管区司令官からの異動。 |
15日 | 英,仏,独,カナダなど7カ国,国際司法裁判所にロヒンギャ裁判への介入宣言提出。 |
19日 | ヤンゴンの中国大使館前で軍支持者たちが異例の抗議デモ実施。 |
24日 | ズィンマーアウンNUG外相,訪問先の日本で記者会見。 |
25日 | 中国人民解放軍,雲南省のミャンマー国境付近で実戦演習。 |
27日 | 中国人民解放軍海軍の駆逐艦など3隻,ヤンゴン寄港(~12月1日)。 |
29日 | シャン州進歩党(SSPP)とシャン州復興評議会(RCSS),停戦。 |
12月 | |
3日 | 軍政,脱走兵の帰還を認めると通達。翌日にはビルマ語国営紙にも掲載。 |
3日 | NUG,ザガイン管区域コーリン郡に独自の行政を敷いたと宣言。 |
5日 | 来訪中のロシアのニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記,ミンアウンフラインと会談。 |
5日 | タンスェ軍政副首相兼外相,中国訪問(~10日)。第8回メコン―ランツァン協力外相会議に出席。王毅外交部長と共同議長。 |
5日 | 軍政中銀,外国為替オンライン取引プラットフォームにおけるレートの設定を止め,市場の実勢レートを適用可能にすると通達。 |
6日 | 軍政中銀,輸出外貨収入の現地通貨への強制両替の割合を50%から35%に低減。 |
6日 | チン州の反軍勢力,チンランド評議会設立を定めたチンランド憲法を承認。 |
10日 | 中国公安,白所成らコーカン自治地域最高幹部10人に逮捕状発出。 |
11日 | 軍政報道官,中国の仲介で兄弟同盟3組織と協議したと述べる。 |
11日 | EU,制裁追加(8回目)。 |
11日 | 中国外交部,中国の仲介で軍政と兄弟同盟3組織が一時的停戦に合意したと発表。 |
17日 | 軍政,バゴー川の第3タンリン橋の開通式典開催。日本の援助で建設された。 |
18日 | MNDAAと軍との戦闘再開。 |
22日 | 中国雲南省昆明で軍政と兄弟同盟3組織との2度目の協議(~24日)。 |
25日 | ミンアウンフライン,第4回メコン―ランツァン協力首脳会議にオンライン出席。中国の李強総理と共同議長。多国間の首脳会議で議長を務めるのはクーデタ後で初めて。 |
26日 | ネーピードーでチャウッピュー深海港建設の再開に向けた式典開催。 |
(注) 政党・団体名の略称はKNU:カレン民族同盟,KPP:カレン人民党,KSPP:カチン州人民党,PNO:パオ民族機構,USDP:連邦団結発展党,WNP:ワ民族党。
(出所) 軍政発表および各種報道より作成。
(注) 網掛けは,ミンスェ大統領臨時代理は軍政の各種会議にほとんど参加しておらず,政権運営への関与が薄いと思われるため。政党・団体名の略称は,PPP:人民さきがけ党,SAC:国家行政評議会,USDP:連邦団結発展党。
(出所) 軍政発表および各種報道より作成。
(注) 全員が2020年総選挙での当選議員。政党・団体名の略称はNLD:国民民主連盟,NUG:国民統一政府,KySDP:カヤー州民主党,TNP:タアン(パラウン)民族党,KSPP:カチン州人民党。
(出所) 各種報道より作成。
(注) 網掛けは軍の拘束下。政党・団体名の略称はCNF:チン民族戦線,CNLD:チン民族民主連盟,CRPH:連邦議会代表委員会,MUP:モン統一党,NLD:国民民主連盟。
(出所) 各種報道より作成。
* 2021年のミャンマーでは,軍クーデタにより軍政が開始された後,それに対抗する並行政府が樹立され,二重政府状態が現出した。いずれも暫定的な性格を持つため国家機構図は掲載せず,双方の要人名簿のみを掲載することとした。
(注) 2022年に会計年度の変更があった。2020/21年度までは10月~9月。移行期間の2021/22年度は10月~3月の6カ月間。2022/23年度からは4月~3月。人口以外は2020/21年度まですべて出所①の数値。人口(10月1日時点)は出所②の数値。2020/21年度以降の消費者物価指数は出所③の数値。ただし,2022/23年度は4月~7月の平均値。為替レートは,出所④の中央銀行発表の参考レート。ただし,2021/22年度以降は軍政のもとで管理変動相場制が採られ,実勢レートとの乖離がみられた。-データなし。
(出所) ① Central Statistical Organization, Statistical Yearbook 2022; ② Asian Development Bank, Key Indicators for Asia and the Pacific, 2023; ③ Myanmar Statistical Information Service Website (http://mmsis.gov.mm); ④Central Bank of Myanmar, Reference Exchange Rate History Website (http://forex.cbm.gov.mm/index.php/fxrate/history).
(注) 会計年度はすべて10月~9月として算出し直したもの。-データなし。2020/21年度以降は暫定値。
(出所) Central Statistical Organization, Statistical Yearbook 2022, Asian Development Bank, Key Indicators for Asia and the Pacific, 2023.
(注) 2018年に会計年度の変更があったため,2017/18年度までは4月~3月。2018年度は4月~9月の半年間。2018/19年度以降は10月~9月。
(出所) Myanmar Statistical Information Service Website (http://mmsis.gov.mm).
(注) -データなし。IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。したがって,金融収支の符号の(-)は資本流入,(+)は資本流出を意味する。
(出所) Asian Development Bank, Key Indicators for Asia and the Pacific, 2023.
(注) 国境貿易を含む。1)2021/22年度は会計年度変更による移行年度のため10月~3月の6カ月間。2)2023/24年度は4月~11月までの値。
(出所) Ministry of Commerce Website (https://www.commerce.gov.mm/).
(注) 国境貿易を含む。1)2021/22年度は会計年度変更による移行年度のため10月~3月の6カ月間。2)2023/24年度は4月~11月までの値。
(出所) Ministry of Commerce Website (https://www.commerce.gov.mm/).