2024 年 2024 巻 p. 465-496
2023年のインド政治は,2024年4~5月に予定される第18次連邦下院選挙(以下総選挙)の事実上の前哨戦であった。特に世論の風向きを占う重要な材料である11月のヒンディー語地域3州の州議会選挙でインド人民党(BJP)は完勝し,選挙戦を優勢に進めている。一方,野党陣営は26党からなる反BJP連合,「インド国民発展包摂的連合」(Indian National Developmental Inclusive Alliance: INDIA)を7月18日に発足させた。だが,2023年末の段階でも参加政党間の選挙区調整はようやく緒についたばかりである。野党側の立ち遅れは否めない。
経済では,41年ぶりのマイナス成長となった2020/21年度以降,インドは3年続けて7%を超える成長率を記録している。また,モディ首相との緊密な関係が噂される新興財閥アダニ・グループをめぐって不正疑惑が浮上し,グループ各社の株価が一時急落したものの,株式市場は1年を通して好調を維持した。ただし,インド経済は今後も高い成長率を維持していくという楽観論の一方で,国内総生産(GDP)の半分以上を占める民間最終消費支出の伸びは3%に落ち込んでいる。
対外関係では,2023年の主要20カ国・地域(G20)首脳会議議長国としてのインドは,中ロと欧米日,さらには「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上諸国の対立を無難な首脳宣言のとりまとめによって乗り切ったが,G20の各種会合はむしろ政権の国内世論対策に大々的に利用された。また,グジャラート州首相時代のモディ首相による反ムスリム暴動への関与に焦点を当てたBBCドキュメンタリーの禁圧や,インド政府機関によるカナダ在住シク教徒指導者殺害への関与疑惑などにより,インドの標榜する「世界最大の民主主義国」の内実には国際社会の厳しい眼が向けられている。
BJPは1980年代末以降,アヨーディヤーのラーマ寺院の建立,ジャンムー・カシミール州の「特殊な地位」を規定したインド憲法第370条の廃棄,すべての宗教集団に共通の統一民法典の制定という「ヒンドゥー国家」化の3目標を政綱の核として掲げてきた。第370条の廃棄と統一民法典制定はBJPの前身であるインド人民連盟(Bharatiya Jan Sangha)の創設以来の課題である。
1992年12月のバーブリ・マスジッド破壊から30年余り,ラーマ寺院の建立は最終段階に入っている。寺院の2階と3階は未完成だが,幼児姿のラーマ神像を安置して魂を招じ入れる奉献式(仏教での開眼供養,ヒンディー語でPran prathishta)は2024年1月22日へと前倒しにされた。総選挙キャンペーンの開始とともに祝祭の雰囲気を大々的に演出するためである。
モディ首相はラーマ寺院の建立をもっぱら自らの功績にして,当日は全戸で燈明をかかげるよう呼びかけた。世界ヒンドゥー協会(VHP)はその組織を挙げて世界55カ国で祝典を挙行するという。式には政治家,芸術家,スポーツ関係者,俳優など8000人余りが招待されるが,野党政治家には「踏み絵」となる。モディ政権の政治的な狙いもそこにある。他方で2019年11月の最高裁判所判決で命じられた代替地でのモスク建設はいまだ手つかずの状態にある。
第2のインド憲法第370条の廃棄も,2023年12月11日の最高裁判決をもって確定した。モディ政権は2019年8月5日と6日にかけて立て続けに発した2つの大統領令によって,ジャンムー・カシミール州の「特殊な地位」を規定したインド憲法第370条を廃棄した。さらに8月9日の連邦議会立法によって同州からラダク地区を分離し,その憲法上の地位をともに州から連邦直轄領へと格下げした。この措置に対しては,直ちにカシミールの政治家らによる違憲訴訟が最高裁に対して提起された。D・Y・チャンドラチュド長官ほか4人からなる法廷は,2023年8月から9月にかけての集中的審理ののち,インド政府の立場を全面的に認める判決を下した。
原告側の主な主張を要約すると,第1に,第370条(3)項で規定された同条の廃棄手続きには,州の制憲議会による勧告が必要であり,1957年に制憲議会が解散されたのち州の意思を代表すべき機関がない以上,同条の廃棄は憲法上不可能であること,また第2に,州を連邦直轄領に格下げする連邦議会による立法措置は,それが依拠する憲法第3条では州境の変更,州の分割と統合のみが想定されていること,この2点であった。
判決は第1の点に関してはジャンムー・カシミールの「制憲議会」の権限は,その後州議会によって継承され,2019年のように州が大統領統治下にある場合,大統領が連邦議会を通じて,その機能を代行できるとした。第2の点に関しては,ジャンムー・カシミールの州資格の回復は可及的速やかに行われるべきとしつつも,政府側がそれを約束したことをもって憲法上の判断を避けた。
総じて判決は政治的な既成事実を追認しており,ジャンムー・カシミールにとどまらず,インドの連邦制度のあり方にも重大な影響を与える内容である。
政綱の3つ目の核となる統一民法典については,モディ首相自身が2023年6月27日にその制定を示唆したため,総選挙の大きな争点として浮上してきた。7月末には,ウッタラーカンド州などのBJP与党州での統一民法典作成を先行させて,全国的な法整備の機運を盛り上げる方針が確認された。統一民法典は憲法上,中央と州の双方に管轄権のある「共管事項」なのである。
BJPの宿願である上記3課題が達成されても,BJPやその母体である民族奉仕団(RSS)がムスリム・マイノリティ排除の手を緩めるとは考えられない。マスジッドやイスラム宗教施設のヒンドゥー教徒による奪還要求はすでにヴァラナシーやマトゥラーなどで法廷に持ち込まれている。ハリヤーナー州では7月末から8月初めにかけて,ムスリムの家屋や商店が1000戸以上破壊される暴動が発生した。2020年にムスリムによる激しい反対運動に直面した改正市民権法も,実施細則の制定という課題が残されている。
しかし,インド憲法が規定する「セキュラー」(世俗的)をどのように解釈すれば,ラーマ寺院の起工から神像安置までを首相が取り仕切る国家を「セキュラー国家」と呼ぶことができるだろうか。憲法上の疑義への答えが求められている。
進行するモディ首相の政治的偶像化「ヒンドゥー国家」化と並行して,モディ首相の偶像化が進行中である。13万人を収容するグジャラート州アフマダーバードのクリケット・グラウンドは,トランプ米大統領来訪時の歓迎会場となったその翌年の2021年に「ナレーンドラ・モディ・スタジアム」と命名された。2023年10月に開通したデリー=メーラト間の快速鉄道線は「ナモ・バーラト」と呼ばれる(「ナモ」はナレーンドラ・モディの略称,「バーラト」はインドの古称だが,憲法上の正式国名でもある)。ラーマ寺院建立団体の幹部はモディ首相をヴィシュヌ神の化身とまで讃えた。
仮に次期総選挙での勝利となれば,1950年生まれのモディは2024年9月の誕生日を74歳の首相として迎えることになる。モディ首相が何かにつけて敵対視する初代ネルー首相が,中間政府も含め約18年間の在職ののち1964年5月に死去したのが同じく74歳であった。モディ首相にとって,次期選挙での勝利はネルーに代わるインド政治の偶像(イコン)の座を確かにする象徴的な出来事になるだろう。
モディの偶像化と並行して政治的モニュメントの建設が進んでいる。政権にとっては,ラーマ寺院の建立は「脱ムスリム支配」の,首都デリーの中心官庁街の改造は「脱イギリス支配」のモニュメントである。2つの「脱」があってはじめてインドの「脱植民地支配」が実現するというのが彼ら特有の歴史観である。
首都改造計画の一環である新議事堂は2023年5月28日に除幕式が行われ,博物館から運び出されたヒンドゥー王権の象徴である聖笏(センゴール)がモディ首相と僧侶らの手で議場に据えられた。だが,新議事堂は開幕早々「民主主義の殿堂」らしからぬ汚点を残した。12月13日には青年らが新議事堂内に発煙物を持ち込み失業による窮状を訴えた。この事件をめぐる与野党の応酬のなかで,過去に類例のない146人の野党議員が両院議長によって登院停止処分を受けたのである。
競争的政党政治の衰退ラーマ神像の安置式典やモニュメントの建設によって祝祭的な雰囲気を盛り上げる一方で,モディ政権下では野党州政権への州知事による越権的介入や中央捜査局(CBI),財務省強制執行局(ED),そして所得税局(IT)などによる野党政治家への締め付けが強化されている(『アジア動向年報2023』を参照)。2023年もこの傾向が加速されるとともに,それに加えて政権与党が圧倒的に有利になる選挙ルール作りが進められた。
第1は選挙委員会に対する人事権である。大統領直属の選挙管理委員会は,連邦から州に至る各種選挙の運営と監視に当たる本来独立中立の機関である。3人の委員からなり,その長を互選で選出する(事実上は最先任者)。その地位は最高裁の長官と判事に準じている。従来から政治的任命がなかったわけではないが,政権は委員の選任を首相,閣僚,野党(第一党)指導者の3人の合議体にゆだね,与党が事実上選任を左右する仕組みを新たに法制化した。
第2は,R・N・コーヴィンド前大統領を長とする中央・州・地方自治体3層の同時選挙制度を検討する委員会の設置である。名目は,選挙公示後の新規政策が禁止されている現状による政策的な空白の回避や,選挙費用の節約などが挙げられるが,モディ政権の狙いは同時選挙によってモディを看板とするBJPが中央,州,地方で独り勝ちをすることである。実施に移すには障碍が多いが,2019年総選挙前にも検討された事案であり,BJPの恒久政権化の手段としていずれは実現される可能性がある。
以上の2点に加えて,2017年に導入され,BJPへの政党献金を圧倒的に有利にする選挙債券(Electoral bond)も政治問題化した。この制度では,政党献金を公共部門の銀行であるステイト・バンク・オブ・インディアから購入した無記名の選挙債券によって賄う。2018年度から2022年度までに購入された債券総額の57%がBJPへの献金であった。2024年総選挙を前にしてこの制度の不透明性,不公平性が政治問題化するなかで,最高裁での選挙債券制度をめぐる違憲訴訟の審理が2023年11月に終了した。判決は2024年2月中旬に予定されているが,それによって政治資金面でのBJPの優位が揺がないまでも,政党献金のあり方は選挙戦でのひとつの争点となるだろう。
このようにインドの選挙制度は,もともとの小選挙区制のうえに,圧倒的に与党BJPに有利な仕組みが作られつつある。野党やメディアへの締め付けとあわせて競争的な政党政治は急速に衰退している。
BJPと州議会選挙2023年の州議会選挙は,2月の東北3州(トリプラ,メガラヤ,ナガランド),5月に南部カルナータカ州,そして11月にヒンディー語地域の3州(ラージャスターン,マディヤ・プラデーシュ,チャッティースガル)に東北部ミゾラム州と南部テーランガーナー州の合計9州で実施された(表1)。
(出所) インド選挙委員会のデータ(https://tmp.eci.gov.in/statistical-reports)に基づき作成。
5月10日のカルナータカ州の投票では,州の野党であるインド国民会議派(以下会議派)が42.9%の票を集めて135議席の単独過半数を得た。BJPは36.0%の得票率で66議席にとどまった。BJPは敗北とはいえ,得票率は前回(2018年)の36.2%とほぼ変わらない。州首相には元州首相のシッダラーマイヤ,副首相に今回の選挙で組織活動に大きく貢献したD・K・シヴァクマールが就いた。
その後10月9日,選挙委員会は5州の州議会選挙日程を発表した。ヒンディー語地域3州ではBJPと会議派が,テーランガーナー州では会議派と州与党であるバーラト(旧テーランガーナー)民族会議(BRS)が対立する構図にある(ミゾラムについては東北インドの3州とあわせて後述)。
ヒンディー語地域3州でのBJPによる選挙戦術には著しい共通点があった。
第1に,現職の連邦議会議員や中央閣僚を辞職させて州議選に立候補させた。3州合計18人の連邦議会議員が州議会選挙に立候補し,うち12人が当選した。また,現職ないしは過去の州首相経験者には選挙戦で重要な役割を与えなかった。いずれも州実力者の影響力を削ぎ,中央指導部の統制力を強める狙いがあった。
第2に,末端での有権者対策をきめ細かく行った。その際に無料食糧や家庭用液化石油ガス(LPG)配布などの首相主導の福祉事業を重視し,その受益者を集中的に組織した。
こうした選挙戦略によって,BJPは不利と予想された与党州マディヤ・プラデーシュでも得票率を7ポイント以上引き上げて政権を維持した。会議派の与党州であるラージャスターンとチャッティースガルでも,BJPは得票率をそれぞれ3ポイントおよび13ポイント引きあげて政権を奪還した。他方,会議派の得票率増減はどの州でも1ポイント未満で,前回選挙とほとんど変わらない。BJPがその組織力で圧倒した選挙であった。
一方,南インドのテーランガーナー州では会議派がBRSの3選を阻んだ。隣州カルナータカでの会議派の勝利も追い風となった。BRSはこの9年間,2014年の州新設の立役者として有権者から評価を受けてきたが,今回は若年層の失業,農民負債防止を目的とする支援融資事業の乱脈など,統治実績の欠如が問われた。10月5日には,かつてRSS系の学生団体に属し,会議派歴も6年しかないレヴァント・レッディが中央指導部によって州首相に指名された。2023年の州議会選挙を通じてBJPが圧倒的な力を示す北部,会議派や地域政党などの野党が優位な南部という大まかなインドの政治地図ができようとしている。
「モディの保証」BJPはヒンディー語地域3州での勝利後,12月10日から12日にかけて3州の州首相を指名した。指名されたチャッティースガル州首相のヴィシュヌ・デーヴ・サーエ,マディヤ・プラデーシュ州首相のモーハン・ヤーダヴ,ラージャスターン州首相のB・L・シャルマーは下馬評にも上っていなかった人物である。ベテランの州首相経験者を排除して州指導部の世代交代を促し,党中央指導部に権限を集中することが,この一連の州首相人事の狙いであった。
これらの州議会選挙を通じて,2024年を見据えたBJPの選挙戦略が浮かび上がってきた。政治偶像化がますます進行するモディを前面に立て,野党を圧倒する党資金を背景に末端組織を動員し,先頭にPM(首相)の名がつく中央政府の福祉事業による恩恵を強調する。その恩恵をもたらすのが「モディの保証」(Modi ki Guarantee)である。野党州政権は言うまでもなく,州ないし州首相独自の施策は不要であり,州政府は中央(モディ)の事業を実行すればよい。これは連邦主義の空洞化を意味する。BJPは2024年総選挙において,「モディの保証」を掲げて2019年の得票率37.36%,303議席を大きく上回る勝利を目指している。
インド東北部の州政治とBJPインド東北部では2023年2月16日にトリプラ,同27日にメガラヤとナガランドの3州で,そして11月7日にミゾラム州で州議会の改選が行われた(表1)。
トリプラ州ではBJPが第1党となりトリプラ先住民族戦線(IPFT)との連立政権を維持した。しかし得票率は前回(2018年)の43.6%から39.0%と4.6ポイント減少した。IPFTの得票率も7.4%から1.3%へと低下した。両党が得票率を減少させたのは今回の州議会選挙に初めて進出して13議席(得票率19.7%)を獲得したトリプラ先住進歩地域連合(TIPRA Motha)の影響が大きい。同党は独立時のトリプラ藩王の孫であるP・デババルマが率いる先住民主体の政党である。その参加者の多くは元BJP,IPFTからの移籍者である。
メガラヤとナガランドの2州は住民の多数派がキリスト教徒であり,BJPは州の主流政党との連立で州政治に食い込み,中央政府とのパイプ役となる戦術を採ってきた。今回の選挙では,メガラヤではBJPが連携する民族人民党(NPP)が得票率を前回(2018年)から約11ポイント,議席を19から26へと大幅に増やした。NPPのC・サングマが引き続き政権を担う。
ナガランドも,メガラヤの状況に似ている。BJPの連携政党であるナショナリスト民主進歩党(NDPP)が前回選挙(2018年)から得票率を25.3%から32.2%に伸ばし,議席を17から25に増やした。BJPは前回と同じ12議席である。NDPPのN・リオが5期目の州首相の座についた。
11月のミゾラム州議会選挙では,1987年の州昇格以来初の非ミゾ民族戦線(MNF)・非会議派政権が誕生し,ゾーラム人民運動(Zoram People’s Movement: ZPM)の指導者ラルドゥホマが12月8日に州首相に就任した。彼は元インド警察職の行政官で,ZPMは2017年に6つの小党とNGOを統合して結成された。ZPMはミゾ・ナショナリズムを強調し,MNFが中央政治でBJP主導の国民民主連合(NDA)に参加してきたことを批判している。
現在,BJPは東北インドのアッサム,アルナーチャル・プラデーシュ,トリプラ,マニプルで州政権を主導しているが,マニプル州では2023年3月以降,BJPの統治能力が厳しい試練にさらされている。
同州では,3月27日にマニプル高等裁判所が平野部の多数派住民であるメイテイをインド憲法の指定部族と認定するよう州政府に命令した。丘陵部のクキやナガらがこれに抗議すると武力抗争に発展し,丘陵部ではメイテイが,平野部ではクキがそれぞれ相手側の標的になるなどして,死者が急増した(推定200人以上)。BJPのマニプル州政権はあきらかにメイテイ寄りの対応を取り,クキ住民は彼らの居住地域の行政的分離と州政権の解任を要求した。中央のBJP政権は事態を治安の観点から捉えるのみで,マニプル州政権の解任や大統領統治を拒否した。
州政府およびBJP関係者の側からは,3月以来の一連の紛争の原因を内戦状態にあるミャンマーからの難民の急増に求める動きが出ている。これに呼応してメイテイの団体のなかからは「不法流入者」排除のための国民登録簿作成の要求が出されている。シン州首相は9月23日,一時入国ビザ制度の凍結を中央政府に要請し,国民登録簿作成や国境フェンスの建設を主張した。ミャンマー内戦による難民の流入は疑いない事実だが,2023年3月以降の紛争の原因はBJPの中央,州政権による州内の民族関係処理の失敗にある。
選挙協力を模索する野党モディの政治偶像化と非競争的な政党政治のもとで,2024年総選挙に向けて野党が活路を見出すには,幅広い選挙協力が不可欠である。協力の成否を握るのは最大野党である会議派と他党との協調,とくに州レベルで政権を維持している庶民党[AAP](デリー,パンジャーブ),ジャナタ・ダル(統一派)[JD-U](ビハール),全インド草の根会議派[AITMC](西ベンガル),インド共産党(マルクス主義)[CPIM](ケーララ),ドラヴィダ進歩同盟[DMK](タミルナードゥ),BRS(テーランガーナー),YSR会議派党[YSRCP](アーンドラ・プラデーシュ),ビジュー・ジャナタ・ダル[BJD](オディシャ)などとの協調が鍵を握っている。このうちビハールでは会議派も州政権に参加している。
最大野党の会議派はラーフル・ガンディーを先頭に,亜大陸の南端カンニャクマーリーからカシミールのスリナガルまで12州,距離にして約4000キロの「バーラト(インド)をつなぐ行進」(Bharat Jodo Yatra)を計画し,2022年9月7日から2023年1月29日にかけて実施した。国民を社会的に分断するBJP政治を批判し,国民の団結を促すことが行進の目的であった。1月30日のスリナガルでの野党集会では,会議派による32野党への呼びかけに応じて8政党が参加した。ついで2月25日には,会議派全国委員会の決議で「共通のイデオロギー」に基づく統一進歩連合(UPA)のような会議派主導の野党統一を主張した。
会議派と他の野党との協調を後押ししたのは,BJPによるラーフルの議員資格剥奪問題である。3月23日グジャラート州スーラト県刑事裁判所は,2019年4月の連邦下院選挙戦での「モディ」姓を侮辱するラーフルの発言を名誉棄損として懲役2年の判決を下した。翌24日,判決を受けて連邦下院事務局はラーフルの議員資格喪失を認定した(最高裁の執行停止命令により8月7日に資格回復)。
3月27日,野党16党議員による抗議集会がもたれた。ラーフルの議員資格剥奪問題でやや距離が縮まった会議派とその他の野党のさらなる接近に乗り出したのが,ビハール州首相ニティシュ・クマールであった。ニティシュは4月から5月にかけて会議派と必ずしも良い関係にはない野党も含め幅広く接触して,選挙協力の構築を目指した。4月にはビハール州でのカースト調査を開始し,11月に公表されたその結果は野党の政策に大きな影響を与えることになった(後述)。
徐々に結集の方向に動き出した野党陣営に,5月のカルナータカ州での会議派の勝利は追い風になった。
野党連合「INDIA」の結成6月23日,ビハール州首相ニティシュ・クマールの調整工作が実り,パトナーで15野党の党首が一堂に会した。初の会談であることもあって,デリーで対立する会議派とAAPなど,陣営内の溝も露呈した。
野党の第2回会合は7月17日から18日にかけてベンガルルで開催され,26党からなる反BJP連合が結成された(のち28党)。野党連合は略称INDIA(Indian National Developmental Inclusive Alliance)と名付けられ,国民代表としての正統性がシンボリックに謳いあげられたが,BJPはこれ以降インドの国名Indiaをことさらバーラト(Bharat)と強調しはじめた。州政権を担当する有力野党のうち,BRS,BJD,YSRCPは連合に参加していない。翌19日には,メイン・スローガンが「バーラトはつながりINDIAは勝つ」(Judega Bharat Jeetega INDIA)に決定された。
10月2日,ビハール州のニティシュ・クマール首相は,4月に開始されたカースト人口調査結果を発表した。その結果は,いわゆる後進諸階級が州の総人口1億3073万人の63%を占めるというもので,これまで公的施策が依拠してきた1931年センサスの全国比率である53%をはるかに凌駕した。これは従来の後進諸階級に対する公職や教育上の優遇措置が不十分であることを示唆する。後進諸階級に対しては,近年でこそBJPの進出が著しいが,本来はビハールのJD-Uや民族ジャナタ・ダル(RJD),ウッタル・プラデーシュの社会主義党(SP)をはじめとするINDIAに結集する野党の基盤的支持層であった。会議派のラーフルもこの結果を受けて全国的なカースト調査の実施を主張し,後進諸階級問題への従来の消極的姿勢を転換した。
2023年12月19日のINDIA第3回会合では,AAPのケージュリワルとAITMCのマムタ・バナージが会議派総裁カルゲーを首相候補に推した。提案はラーフルとニティシュ・クマールへのけん制とみられるが,独立以来大統領はともかく首相を出したことのない不可触民(指定カースト)出身のカルゲーを野党連合が首相候補として推せば,勝敗はともかく政治的なインパクトは無視できない。
会議派は12月21日の運営委員会(CWC)の議論を受けて,同27日にラーフルを先頭に経済的,社会的,政治的正義をかかげた「バーラト(インド)正義の行進」を2024年1月14日から3月20日にかけて実施すると発表した(のち「バーラトをつなぐ正義の行進」と改称)。行進はマニプルを起点にムンバイまでの東西1400キロをバスと一部徒歩で踏破する。インドを南北に縦断した「インドをつなぐ行進」の二番煎じである。会議派のラーフル依存体質の根深さを示すだけでなく,野党連合としての選挙キャンペーンの精力が分散されることにもなる。2023年12月29日には,INDIA内の野党との候補者調整を準備する5人からなる会議派内の全国連合委員会(NAC)が党内調整を開始した。INDIA内部の容易ならぬ駆引きは2024年の年明けから本格化する。
(佐藤)
2024年2月29日にインド統計・事業実施省国家統計局(NSO)が公表したプレスノートによると,2023/24年度(2023年4月~2024年3月)のインドの実質GDP成長率は7.6%と予想されている。新型コロナウイルスの感染拡大と全土封鎖の影響により,2020/21年度には-5.8%と41年ぶりのマイナス成長を記録したが,それ以降は3年続けて,7%を超える高い成長率を持続している(表2)。
(注) 2011/12年度価格。産業別の成長率は,基本価格表示の粗付加価値(GVA)に基づいている。
(出所)統計・事業実施省国家統計局(NSO)のプレスノート(2024年 2月29日付)に基づき作成。
生産部門別では,鉱工業とサービス業の全部門で6%以上の成長率が見込まれている。一方,前年度に4.7%を記録した農林水産業の成長率は,2023/24年度には0.7%に落ち込むと予想されている。
支出別にみると,実質GDPの半分以上を占める民間最終消費支出は,2021/22年度にはパンデミック前の水準を回復し,その後も増加を続けている。ただし,民間最終消費支出の成長率は,2021/22年度に11.7%,2022/23年度に6.8%を記録したのに対し,2023/24年度は3.0%にとどまると予想されている。パンデミック下の2020/21年度を除くと,これは21年ぶりの低い水準である。民間消費の伸びがGDP全体の伸びを大きく下回る現状は,インド経済が今後も高い成長率を維持し,市場として急拡大していくという見方に影を落としている。
物価は,全般的に前年よりも低い水準で推移したが,7月以降,食料価格の上昇にともなって消費者物価も押し上げられた(図1)。総選挙を目前に控えて,モディ政権は食料価格の抑制のために農作物の輸出規制を次々と実行している(詳しくは次節を参照)。
(注) 前年同月比。CPI全体に占めるCPI食料のウェイトは,47.25である。
(出所) 統計・事業実施省国家統計局(NSO)のデータに基づき作成。
一方,政策金利(レポレート)は,2023年2月8日に6.25%から6.5%に引き上げられて以降,据え置かれている。これは,2019年1月以来の高い水準である。インド準備銀行(RBI)は,物価上昇を抑制する狙いから,2022年に5度にわたって金利の引き上げを行い,政策金利が4.00%から6.25%にまで上昇した。
為替レートは,アメリカの金融引き締めにともなうドル高圧力により,ルピー安が若干進んだが,1年を通して1ドル=81~83ルピーで比較的安定して推移した。特に,8月以降の為替レートは,1ドル=83ルピー前後と非常に安定していた。これに関して,12月に国際通貨基金(IMF)は,インドの金融当局が適正な水準を超える規模で為替介入を行っている可能性を報告書で指摘し,それにRBIが反論するという一幕もあった。
株式市場では,インドの代表的な株価指数であるSENSEXが,一年を通して上昇を続けた。2023年1月には6万ポイント前後で推移していたが,12月末に7万2000ポイントを突破して最高値をつけた。
1月には,アメリカの投資会社ヒンデンブルグ・リサーチが,アダニ・グループによる会計不正と株価操作を告発する調査報告書を発表し,グループ各社の株価が急落した。8月にも,調査ジャーナリストの世界的ネットワークの組織犯罪・汚職報道プロジェクト(OCCRP)が,アダニ・グループについて新たな疑惑を報じている。しかし,2023年半ばから,アダニ・グループ関連の株価は回復をみせている。特に,ヒンディー語地域の3州で実施された州議会選挙がBJPの大勝で終わると(「国内政治」を参照),モディ首相と近い関係にあるアダニ・グループ関連株は連日のように大きく値上がりした。まさに,アダニ・グループのビジネスには,「モディの保証」が付いていることを証明するかのような値動きであった。
2023年4月に国連人口基金が,同年半ばにインドの人口が14億2860万人に達し,中国を超し人口世界1位になると発表した。中国の景気後退が話題となるなか,インドが人口世界一になるとのニュースは大きな注目を集めた。しかし,インドでは2021年に予定されていたセンサスが無期限で延期となり,2011年を最後にセンサスの実施が途絶えている(『アジア動向年報2023』を参照)。
最近,政府が統計データの収集と公表に後ろ向きの姿勢をみせるようになり,インドの現状を把握することが困難になっている。センサスの例は,政策の基礎となるはずの客観的データを現政権がいかに軽視しているかを物語っている。
インフレ抑制のための輸出制限次期総選挙が近づくなか,モディ政権の経済運営は有権者からの評価をより強く意識したものとなった。それが最も顕著に現れたのが物価対策であり,過去の選挙でもたびたび重要な争点となった,食料品の価格上昇に政府は神経を尖らせている。最近,インドが農作物を対象に次々と輸出制限を課しているのには,このような背景がある。
2022年5月,ロシアによるウクライナ侵攻の影響で小麦の流通が世界的に滞る事態が懸念されるなか,ヨーロッパ歴訪中のモディ首相は,インドが小麦の輸出を通して「世界を飢餓から救う」と述べた。政府は,2022/23年度の小麦の輸出量を過去最高となる1000万トンに引き上げる目標を打ち出し,輸出先候補の国々に政府代表団を派遣する準備まで進めていた。ところが,モディ首相の発言から10日と経たないうちに,国内価格の上昇を理由に小麦の輸出は禁止された。突然の方針転換に対して,主要7カ国(G7)の農業大臣会合ではインドを非難する意見が表明されたが,小麦の禁輸措置は解除されずに2年近く続いている。
小麦の価格抑制策としてはそのほかにも,政府備蓄の市場への放出,小麦の在庫保有量の上限設定などの手段がとられた。民間業者を対象とした後者の措置は,2023年6月に15年ぶりに発動され,それ以降は9月,12月,2024年2月に在庫保有量の上限が段階的に引き下げられていった。
インドが最大の輸出国であるコメにも,次々と輸出制限が課された。2022年9月の破砕米の輸出禁止とバスマティ米以外の白米(以下,白米)への20%の輸出関税の賦課を皮切りに,2023年に入ってからも,白米の輸出禁止(7月),途上国に多く輸出される加工米(パーボイルド米)への20%の輸出関税の賦課(8月),バスマティ米への最低輸出価格の設定(8月)が,矢継ぎ早に打ち出された。
2023年10月には,前年6月から続く砂糖の輸出制限を11月以降も無期限で継続することが発表された。インドはブラジルに次ぐ世界第2位の砂糖の輸出国だが,ここ数年の生産量の減少を受けて,砂糖の輸出が全面的に禁止される可能性も取りざたされている。また,2023年8月には,インドが世界有数の輸出国であるタマネギに40%の輸出関税が賦課された。しかし,その後も価格高騰が続いたため,政府は10月にタマネギの最低輸出価格を年末まで1トン当たり800ドルとし,さらに12月には,タマネギの輸出を2024年3月末まで禁止した。
農作物の価格上昇の要因のひとつとして,気候変動とエルニーニョ現象による影響があげられる。2023年はインドにとって雨不足に悩まされる1年となった。インド気象局によると,8月の降水量は過去最低を記録し,雨期にあたる6~9月の降水量も5年ぶりの低水準となった。さらに,全般的に雨不足だった一方で,大量に雨が降る地域があったことも農業生産に悪影響を与えた。
農作物の輸出制限は,インド国内の農家に大きな経済的打撃をもたらしたと考えられる。この点は,農作物の輸出によって直接利益を得ていた生産者だけでなく,国内価格の上昇によって間接的に利益を得ていた生産者にも当てはまる。モディ政権は,独立から75周年にあたる2022年までに農家の所得を倍増させるという目標を2016年に打ち出し,2019年総選挙の与党BJPのマニフェストにも明記していた。その実現可能性は当初から疑問視されていたものの,次期総選挙を前にして,政府・与党はこの目標を完全に放棄したようである。
さらに,一連の輸出制限については,農作物の国際価格の上昇を通じて,グローバルサウスの国々の食料安全保障に重大な影響を及ぼすことが懸念されている。実際,インドが白米の輸出を禁止した直後の2023年8月には,コメの国際価格が5年ぶりに高値を更新し,その後も高い水準を維持している。同様に,砂糖の国際価格は,2023年11月に12年ぶりに高値を更新した(図2)。また,インドによる輸出禁止措置のあおりを受けて,周辺国ではタマネギの価格が急上昇したと報じられている。選挙対策を最優先にするモディ政権の姿勢は,「グローバルサウスの代弁者」という自己認識との間で矛盾をきたしている。
(出所) 世界銀行のデータ(https://www.worldbank.org/en/research/commodity-markets)に基づき作成。
IT機器の輸入規制
モディ政権は,新型コロナによる感染拡大の第一波の頃から,「自立したインド」(Aatmanirbhar Bharat)というキャッチフレーズを経済政策の分野で強く打ち出している。「自立したインド」のもとでは,輸入依存を減らしながら,インドがグローバル・サプライチェーンで大きな役割を担えるよう転換を図るという表看板の一方,保護主義的な政策によって国内製造業の振興と雇用創出を図ろうとする姿勢がみてとれる。そして,このような狙いに沿って,輸入関税の引き上げ,輸入ライセンス制や安全基準の導入,海外直接投資(FDI)や公的調達に関するルール変更(実質的な中国の排除)など,内向きの政策が次々と実行に移された。
ただし,関税障壁と非関税障壁による保護主義的な政策が狙いどおりの効果を発揮しているかは疑問であり,恣意的な経済政策が混乱を招く原因になっていることも多い。IT機器の輸入規制をめぐる騒動は,その典型といえるだろう。
インド政府は2023年8月3日に,ノートパソコン,タブレット,一体型PCなどのIT機器の輸入についてライセンスの取得を義務付け,即日で実施すると突然発表した。しかし,政府の通達では,輸入制限の具体的方針やライセンスの取得方法についての説明は一切なく,関連企業や業界団体の間では大きな混乱と反発が広がった。翌日,政府は新たな通達を出し,IT機器の輸入に関するライセンスの義務化を11月から開始するという妥協案を示した。
IT機器の輸入制限については,外国政府からも批判の声が上がった。8月下旬には,アップル,デル,ヒューレットパッカードなどの自国企業に影響が及ぶとして,アメリカが輸入ライセンスの導入についての懸念をインド側に伝えている。アメリカに加えて,中国,韓国,台湾なども輸入ライセンスの導入に反発し,10月中旬には,世界貿易機関(WTO)の市場アクセス委員会でこの問題が取り上げられた。これに対してインドは,輸入ライセンスは安全保障を目的としていると主張したが,これは政府通達の内容とは明らかに矛盾している。
10月13日,商工省次官がIT機器の輸入を「制限」するのではなく「監視」する予定であると発言し,10月19日には,IT機器について「輸入管理システム」(Import Management System)の運用を11月1日から開始することが正式に発表された。これは,専用のポータルサイトから輸入品の数量,価格,輸出先国などの情報を入力して電子申請すると,自動的に許可がおりる仕組みである。
結果的に,IT機器の輸入制限は当面行われないことになったが,輸入管理システムから取得した許可の有効期限は,2024年9月30日までとなっており,2024年10月以降については現時点では不明である。したがって,2023年11月から2024年9月末までは,輸入ライセンスを導入するための移行期間という位置付けである可能性も否定できない。実際,8月3日付の当初の通達は取り消されておらず,電子情報技術省の次官は,輸入管理システムから得られたデータを検討したうえで,その後の方針を決めると述べている。
輸入ライセンスの導入がどのような経緯で決定されたのかは定かではないが,国内での生産拡大と貿易面での中国依存からの脱却を図ろうとする狙いがあったのは間違いないだろう。しかし,今回のケースのように,政府が大きな制度変更を突然発表し,その後に二転三転を繰り返すことは,国内外の企業による投資を阻害する要因となりかねない。
なお,2022/23年度には,中国からの輸入額が過去最高の1185億ドルを記録する一方,中国への輸出額は175億ドルにとどまったため,中国との間の貿易赤字は初めて1000億ドルを突破した。「自立したインド」というキャッチフレーズとは裏腹に,インドは中国への貿易依存を深めている。
「自立したインド」と生産連動型優遇策(PLI)モディ政権が推し進める「自立したインド」の重要な柱をなす産業政策のひとつに,生産連動型優遇策(PLI)がある。2020年に始まったPLIは,自動車とその関連部品,電子機器,白物家電,特殊鋼,繊維など,14の主要な産業部門を対象とする補助金政策であり,5年間で1兆9700億ルピー(約3兆5000億円)を支出する予定となっている。
政府はPLIの目的として,国内製造業の国際競争力を高め,製造業の「グローバル・チャンピオン」を生み出すことを掲げている。この狙いを実現するために,PLIでは,14分野のそれぞれについて対象企業を選定したうえで,対象企業がインド国内で製造した製品の売上高が基準年度を上回った分について,その一定割合を補助金として支給する。2023年11月の時点で,PLIの対象として受理された申請は746件にのぼる。
モディ政権はPLIに多額の予算を割き,その意義を大々的に宣伝してきた。その一方で,PLIに関しては断片的なデータしか公表されておらず,どの程度の成果を生み出しているのか十分な検証が行われていない。そのため,PLIには政府が主張するほどの効果はないのではないかとの懐疑的な見方が根強くある。
PLIの「成功事例」としてよく言及される携帯電話産業を例に,この点についてみてみよう。携帯電話(1万5000ルピー以上)を含む電子機器に関するスキームの場合,基準年である2019/20年と比較して売り上げが増加した分について,携帯電話のインボイス価格の4~6%の奨励金が,政府から対象企業に支給される。
携帯電話がPLIの「成功事例」と喧伝されるのは,輸入超過から輸出超過に転換したからである。ところが,RBI元総裁で経済学者のラグラム・ラジャンらの分析によると,PLIの実施後,携帯電話の関連部品(半導体など)の輸入も同時に増えており,携帯電話と関連部品を合わせると輸入超過の状態が続いている。そのため,PLIの対象企業は,インドを組み立てのための場所として利用して補助金を得る一方,インドでの付加価値の創出や技術力向上に貢献していない可能性があるとラジャンらは指摘している。PLIが終了し,政府による補助金の支払いがなくなった後,携帯電話の生産企業が撤退する可能性もある。
(湊)
2023年7月4日,インドは2017年に正式メンバーとなって以来,初めて議長国を務め,SCO首脳会議をオンラインで実施した。モディ首相は6月に訪米しており,その直後の中ロ首脳との対面会談を避けるためのオンライン開催とみられたが,これをインドによるSCO軽視と捉える加盟国もあった。また中国の「一帯一路」政策をめぐって,インドはSCO内で完全に孤立した。共同声明では,議長国インドを除く8カ国(中国,ロシア,パキスタン,カザフスタン,キルギス,タジキスタン,ウズベキスタン,イラン)が「一帯一路」政策を支持した。
8月に南アフリカで行われたBRICS首脳会議でも,インドは中国の影響力を強く意識した。首脳会議ではアルゼンチン,エジプト,エチオピア,イラン,サウジアラビア,アラブ首長国連邦(UAE)の6カ国の加盟が最初のステップとして認められた(アルゼンチンはミレイ政権が加盟を拒否)。この拡大の背景にはBRICSをG7の対抗勢力に育て上げようとする中国の意図があるとしてインドは警戒した。また議長国南アフリカのラマポーザ大統領が習近平主席を空港に出迎えたのに対して,モディ首相の出迎えには閣僚が当てられた(のちに副大統領に変更)ことも,インドが中国よりも軽視されているという印象を生んだ。BRICS+5は2024年1月から発足するが,インドは新たな議長国ロシアとの連携を強化して中国の影響力の抑制に努めるだろう。
G20議長国,中ロ首脳の欠席インドネシアと順番を入れ替えてまで,2023年にG20議長国を務められるようインドが工作したのは,言うまでもなく2024年総選挙を見据えてのことであった。9月のG20サミットまでに250の各種会議が全国60都市で開催されるという国を挙げた一大キャンペーンが繰り広げられた。
しかしながらサミットに先行する閣僚レベルの会合ではロシアのウクライナ侵攻がもたらした参加国間の亀裂を反映して共同文書の作成はことごとく失敗した。サミットまで1カ月を切った8月末,ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席の首脳会議欠席が確実になった。中ロ首脳の欠席でG20の意義は大きく減退し,そのうえに首脳宣言が不調に終われば,G20の存在そのものに疑問符がつくだけでなく,国内でG20の大キャンペーンを張ったモディ首相自身の威信に傷がつく恐れもあった。
しかし幕を開けると首脳宣言は9月9日の開会日冒頭,議長国インドのモディ首相によって突然発表された。ウクライナ侵攻をめぐって宣言は,「すべての国は領土獲得のための威嚇や武力の行使を控えなければならない」として,2022年のバリ宣言のようなロシアを名指しする非難を避けた。ウクライナ外務省報道官は「ウクライナ侵略に関するかぎり誇れるものは何もない」とこれを酷評した。
首脳宣言の発出については,ブラジル,インドネシア,南アフリカなど新興国の働きかけを重視する見方もあるが,G20の失敗の露呈を恐れ,中国と対抗するインドとモディ首相の威信を傷つけたくない欧米が「バリ宣言以下」で妥協した側面もある。
G20サミットでは中ロ首脳の欠席もあって,本来の議事外でアメリカが戦略的首脳外交を積極的に展開した。アメリカの呼びかけによるIMEC構想にインドも積極的に参加した。これは中国の「一帯一路」に対抗する「India-Middle East-Europe Economic Corridor」の略称で,インド,UAE,サウジアラビア,ヨルダン,イスラエル,ギリシャが念頭に置かれている。
アメリカ,フランスとの高度技術・防衛産業協力2023年にはG20の場以外でも,インドはアメリカおよびフランスとの間で,高度技術や防衛産業での協力を深化させた。アメリカとの間では,両国の国家安全保障補佐官が2月と6月の2回にわたって,半導体製造など7分野での米印重要新興技術イニシアティブ(iCET)に基づく協議を行った。6月には国防長官間で防衛産業協力の「新たなロードマップ」に合意し,高度防衛技術の提携,移転が進行した。これらの合意を土台に6月20日から24日まで,モディ首相は国賓待遇でアメリカを訪問し,上下両院合同議会で彼自身2度目の演説を行った。
ロシアによるウクライナ侵攻がもたらした不確定な情勢のなかで,インドはロシアに大きく依存してきた兵器調達の多角化を迫られている。7月14日,モディ首相はフランスの革命記念日式典に招かれ,マクロン大統領と会談した。この訪問でインドとフランスは「戦略的パートナーシップの25年と今後の25年」を主題に,安全保障,地球・宇宙,交流の3分野で83項目,12件の協定を締結した。なかでも軍事協力では戦闘機と多目的ヘリコプターのエンジン共同開発,ラファール戦闘機36機の早期引き渡しなどが注目される。またマクロン大統領は,2024年のインドの共和国記念日式典に招待された。
「グローバルサウス」とインドロシアによるウクライナ侵攻に起因する世界的な食糧危機やインフレ,切迫する途上国の飢餓や債務危機を背景に「グローバルサウス」が国際政治の焦点として浮上した。インドは,2022年9月22日の国連総会でのジャイシャンカル外相演説以降,「グローバルサウス」の代弁者をもって任じている。2023年にはG20議長国の活動の一環として「グローバルサウスの声サミット」を1月と11月の2度にわたって主催した。6月17日にはモディ首相がアフリカ連合をG20に加えることを提唱し,実現させた。
だが現実にはインド外交にとって「グローバルサウス」の優先順位は必ずしも高くない。例えば,7月の非バスマティ(低級)米輸出停止,8月以降のタマネギの輸出規制は,それらを輸入するバングラデシュなどの周辺国やアフリカ,中東諸国に負担をもたらした。国内の物価対策を優先することで,安定的な農産物供給国には程遠いインドの現状を示すことになった(詳細は「経済」参照)。
ガザの問題でもインドは多くの「グローバルサウス」諸国とは食い違う立ち位置にある。10月7日のハマスによるイスラエル攻撃を契機とするガザ地区に対するイスラエルによる破壊的な爆撃は,中東のみならず「グローバルサウス」の多くの国々の批判を招いた。そのなかにあってインドの親イスラエルの姿勢は際立っている。同月10日にはネタニヤフ首相との電話会談でモディ首相はイスラエルとの連帯を表明した。27日の国連総会でインドはヨルダンなどが提案した人道的休戦決議を棄権した(インド以外の南アジア7カ国は決議に賛成)。さすがに12月12日の国連総会緊急特別総会では,ガザでの即時人道的停戦決議に賛成したが,この間インドはイスラエルに対してパレスチナ人の代替労働力の提供に同意したり,国内でのパレスチナ支援集会を警察が妨害したりするなど,親イスラエル姿勢は明瞭である。「グローバルサウス」の有力国である南アフリカ,ブラジルなどが明確な反イスラエル姿勢を打ち出しているのとは対照的である。
名実乖離する「世界最大の民主主義国」2023年1月24日付の『日本経済新聞』は,「『世界最大の民主主義』を謳いつつ,その名実を乖離させながら大国化へひた走るインド」という表題で,イギリスBBCによるドキュメンタリーの禁圧問題を報じた。ドキュメンタリーは1月17日放映の前半部分で2002年のグジャラート暴動におけるモディ州首相(当時)の責任に焦点を当てた(後半は24日放映)。インド政府は直ちに反応した。19日にはインド外務省報道官がBBCドキュメンタリーを「植民地的心性」によるものと批判し,20日には情報放送省が情報技術法規則によってYouTubeとTwitter社(当時)に対してドキュメンタリーの削除を命令した。2月14日には,所得税当局がデリーとムンバイのBBC支局に懲罰的立ち入り調査を強行した。モディ政権はNDTVやNewsClickなどの国内メディアに同種の介入を行ってきたが,外国のメディアがあからさまな標的になったのは初めてである。
また,インド政府が「テロリスト」と認定する海外の団体・個人に対して諜報機関による秘密殺害計画を実行している疑いもこの間浮上した。9月18日,カナダのトルドー首相は下院議会で,カナダ国籍をもつシク教徒団体「カーリスターン・タイガー・フォース」のH・S・ニッジャルが6月にカナダ国内で殺害された事件にカナダ駐在のインド外交官が関与していたと証言した。インドの対外諜報機関である調査分析班(RAW)に所属するこの外交官は追放処分を受けたが,インド側は報復措置としてカナダの外交官1人を追放した。その後,両国政府間で外交官の引き揚げ,ビザの停止など関係悪化が続いた。
事態の収拾が難航するなか,11月29日には,在米シク教徒指導者の殺害計画の中心人物とされるニキル・グプタが米連邦検察局によって起訴された。グプタは6月30日にチェコで逮捕されている。アメリカからの通報によってインド政府は11月18日に調査を開始していると表明し,カナダ政府に対する居丈高な反応とは対照的に柔軟な姿勢を示した。
BBC問題もシク教徒指導者暗殺事件もインドの国際看板である「世界最大の民主主義国」に暗い影を投げかけているが,インドも欧米諸国も,これらの事件が外交関係の悪化につながるとはみていない。何よりも冒頭の『日本経済新聞』記事が結ぶように,モディ政権は「中国を念頭にインドを取り込みたい欧米日は(インドを)見放さない」と見通しているのであろう。
周辺諸国との関係2023年のインドの周辺諸国外交は,もっぱら二国間外交に終始した。5月30日に,前年12月に就任したばかりのネパール首相P・K・ダハールが訪印し,6月1日に首脳会談がもたれた。ネパールからの電力供給や両国間の河川交通などで合意した。7月21日には,訪印したスリランカ大統領のR・ウィクレマシンハとの間で,「経済連携のビジョン・ドキュメント」が交わされた。11月3日には,8日間の予定でブータン国王が訪印し,モディ首相との共同声明のほか,両国間の鉄道敷設,貿易や人的交流促進などに合意した。ブータンは1月に昆明で中国国境に関する専門家グループ会合,10月には外相レベルでの第25回の国境協議と,インド注視のもとに中国との国境交渉を進めている。
インドが黙視できない動きを示したのがモルディブとミャンマーである。9月30日,モルディブ大統領選挙の2回目投票でインド兵撤退を掲げる野党人民民族会議(PNC)のムハンマド・ムイズが当選した。11月18日の就任演説でムイズは改めて総員80人ほどのインド兵の撤退を要求した。2024年早々に撤退交渉が両国の課題となる。
ミャンマーでの10月27日以降の兄弟同盟を名乗る3つの少数民族武装組織による反軍政攻勢は,インドのマニプル州やミゾラム州などへの難民流入など,インド東北部に波紋を広げている(「国内政治」参照)。中国が兄弟同盟と政府軍の停戦仲介者としてミャンマーでの影響力を強めていることもインド政府は憂慮している。
(佐藤)
2024年総選挙でのBJP勝利の可能性はきわめて高い。BJPはそれを過去10年間のモディ政権への信任としてだけではなく,将来に向けての白紙委任として祝うだろう。「ヒンドゥー国家化」のアジェンダはいっそう加速化され,競争的政党政治の衰退にも拍車がかかる。「セキュラリズム」から州自治を支える連邦制にいたるまで,国の根本的なあり方をめぐって,憲法論争をも含む深刻な亀裂が広がることは避けられない。
経済については,高い経済成長率,世界一の人口規模,中国の景気低迷などを背景に,「インドの時代」が到来したかのような楽観論が国内外で目立つ。しかし,その足元では,経済統計の信頼性は大きく揺らいでいるし,格差の拡大,雇用不足,農村経済の停滞が一段と深刻化しているとの指摘が絶えない。総選挙の結果にかかわらず,これらの問題は引き続きインドに重くのしかかるだろう。
対外関係では,進行中のウクライナとガザの問題で,インドはいずれも侵攻国側,つまりロシアとイスラエルとの友好関係を同時に維持するという特異な立場に立っている。中国との対立や競争上,インドとの連携を重視する欧米および日本の姿勢が,こうした「綱渡り外交」を可能にしている。このインドの立ち位置は,国際環境の大きな変化がないかぎり維持されるだろう。
(佐藤:南アジア研究者)
(湊:地域研究センター)
1月 | |
1日 | マハトマ・ガンディー全国農村雇用保証法(MGNREGA)による雇用事業で,労働参加の電子化を開始。時刻認証と位置情報のある写真を専用アプリでアップロードすることが義務付けられる。 |
2日 | 最高裁判所法廷,4対1の多数で2016年11月の高額紙幣廃貨措置をインド準備銀行法に基づく措置として是認。 |
17日 | BBC,2002年のグジャラート暴動でのモディ州首相(当時)の責任を告発するドキュメンタリー番組をイギリス国内で放送。 |
18日 | リオ五輪の銅メダリストらインドの代表的女子レスリング選手複数人,インド・レスリング協会長(BJPの連邦下院議員)とコーチのセクハラを公開告発。 |
19日 | インド外務省報道官,BBCドキュメンタリーを「植民地的心性」と批判。 |
20日 | 情報・放送省,IT法規則によりYouTubeとTwitter社(当時)に対してBBCドキュメンタリーの削除を命令。 |
24日 | 米投資会社ヒンデンブルグ・リサーチ,アダニ・グループによる会計不正と株価操作を告発する調査報告書を発表。その後,グループ各社の株価が大幅下落。 |
29日 | インド国民会議派(以下,会議派)ラーフル・ガンディーの「インドをつなぐ行進」,最終地スリナガルに到達。 |
29日 | 政府,2月1日からMGNREGAの賃金支払いをアーダール基盤支払システム(ABPS)に限ると州政府に通知。その後,実施が延期され,2024年1月1日に開始。 |
31日 | 連邦議会予算会期,開会。2022/23年度経済白書,発表。 |
2月 | |
1日 | 2023/24年度予算案,発表。 |
1日 | 米首都ワシントンで印米の国家安全保障補佐官,米印重要新興技術イニシアティブ(iCET)の骨格に合意。 |
1日 | アダニ・グループの中核企業アダニ・エンタープライゼズ,総額25億ドルの公募増資を中止すると発表。 |
7日 | 連邦下院で野党がアダニ問題に関する両院特別委員会(JPC)による審議を要求。 |
8日 | インド準備銀行(RBI),政策金利(レポレート)を6.25%から6.5%に引き上げ。 |
14日 | 税務当局,デリーとムンバイにあるBBCの現地事務所を家宅捜索。 |
14日 | エア・インディア,ボーイングとエアバスから計470機の航空機を購入することで合意したと発表。民間航空機の発注としては過去最大の規模。6月20日に契約締結。 |
14日 | 公共放送プラサール・バールティ,民族奉仕団(RSS)系列の通信社ヒンドゥスターン・サマーチャールと配信契約を締結。 |
23日 | 国連特別会合,侵攻開始から1年経ち,ロシアのウクライナ撤退などを要求する決議を賛成141,反対7,棄権32(インド,中国を含む)で採択。 |
25日 | 会議派全国委員会(AICC)で野党の反国民民主連合(NDA)結集を呼びかけ。総裁のカルゲーは統一進歩連合(UPA)方式による会議派主導の統一を主張。 |
26日 | 庶民党(AAP)のシソディア・デリー副首相,酒類の営業ライセンスをめぐる収賄の疑いで逮捕。 |
3月 | |
7日 | メガラヤ,ナガランドでBJPを含む連立政権成立。トリプラはBJPが政権維持。 |
10日 | ゴーヤル商工相,レモンド米商務長官と半導体供給網に関する覚書に調印。 |
20日 | 岸田首相訪印(~21日),20日に首脳会談。インド太平洋の安全保障,G7サミットへの招待などを協議。 |
23日 | グジャラート州スーラト県裁判所,ラーフル・ガンディーに名誉棄損で懲役2年の判決。 |
24日 | 連邦下院事務局,スーラト県裁判所判決を受け,ラーフル・ガンディーの議員資格喪失を認定。 |
4月 | |
3日 | ブータン国王訪印(~5日)。4日に首脳会談。 |
19日 | 国連人口基金,2023年半ばにインドの人口が14億2860万人で世界1位になると発表。 |
20日 | ジャンムー・カシミール州プーンチで陸軍のトラックが襲撃され,国家ライフル銃隊(Rashtriya Rifles)の兵士5人が死亡。 |
30日 | モディ首相のラジオ講話「Mann ki Baat」,第100回が放送。 |
5月 | |
2日 | 82歳のシャラド・パワル,民族主義会議派党首辞任を表明。後継党首選出委員会に党幹部18人を指名。 |
3日 | マニプル州で丘陵部クキ族と平野部メイテイ族の間で衝突が発生。 |
5日 | パワル,自らの任命した18人の後継指名委員会の要請を受け,民族会議派党党首辞任を撤回。 |
5日 | ジャンムー・カシミール州ラージョーリーで武装グループの攻撃により,下士官・兵士5人が死亡。 |
13日 | カルナータカ州議会選挙開票。会議派,135議席で単独過半数を獲得。 |
19日 | 広島G7サミット。モディ・岸田会談。 |
19日 | RBI,2000ルピー札の流通停止を発表。9月末までに銀行口座への預け入れを推奨。その後,銀行での交換期限を10月7日まで延長。 |
22日 | パプア・ニューギニアで同国とインドが共催する太平洋地域14カ国首脳会議。モディ首相,出席。 |
22日 | モディ首相,オーストラリア訪問(~24日)。 |
23日 | 主要20カ国・地域(G20)の観光作業部会,スリナガルで開会(~25日)。中国,サウジアラビア,トルコ,エジプト(招待国)は不参加。 |
28日 | 新連邦議会議事堂の除幕式,野党21党がボイコット。 |
30日 | ネパール首相P・K・ダハール訪印。翌6月1日に両首相が会談し,国境問題,電力供給などについて意見交換。 |
6月 | |
2日 | オディシャ州バラソール南方で,列車の二重衝突事故発生。死者293人。 |
12日 | 政府,穀物価格の上昇を受け,15年ぶりに小麦の在庫保有量に上限設定。150億トンの小麦を市場に供給することも決定。 |
17日 | モディ首相,アフリカ連合をG20に加えることを提唱。 |
22日 | モディ首相,訪米しバイデン米大統領と会談。戦闘機エンジンの共同製造,技術提携が主題。Micron社がグジャラートに半導体チップの組み立て工場設立に合意。 |
22日 | モディ首相,米上下両院合同議会で演説。 |
23日 | パトナーで15野党会談,2024年選挙に向けての最初の会合。 |
24日 | モディ首相,エジプト訪問。シシ大統領と会談(25日)。戦略的パートナーシップに合意。 |
24日 | マニプル情勢をめぐる全党会議。野党はシン州首相の辞職,大統領統治など要求。 |
27日 | モディ首相,統一民法典制定を示唆。 |
7月 | |
2日 | マハーラーシュトラ州の民族主義会議派党のアジット・パワルら9人,BJPとシヴ・セーナー(シンデー派)連立内閣に参加。 |
4日 | 上海協力機構(SCO)首脳会議オンライン開催。 |
7日 | グジャラート高裁,ラーフル・ガンディーに対する県刑事裁判所の判決を支持。ガンディー側は最高裁に上告。 |
14日 | モディ首相,フランス訪問。マクロン大統領と首脳会談,文書「戦略的パートナーシップの25年と今後の25年」に合意。 |
18日 | 野党26党の反BJP戦線結成。略称INDIA(Indian National Developmental Inclusive Alliance)。一方,NDAは38党がデリーに結集。 |
20日 | 政府,バスマティ米以外の白米の輸出を禁止。 |
20日 | スリランカのR・ウィクレマシンハ大統領訪印。21日に「経済連携のビジョン・ドキュメント」に合意。 |
25日 | 農村開発相,2022/23年度に前年度比3.5倍となる,5000万人以上のMGNREGA労働者をリストから削除したと連邦議会で答弁。 |
31日 | ハリヤーナー州のヌーでヒンドゥー・ムスリム暴動発生。グルガオンでも8月1日に発生。 |
8月 | |
3日 | 政府,ノートパソコンなどのIT機器の輸入に免許取得を課す新制度を即日で導入すると通達。翌4日には,開始日が11月1日に先送りされる。 |
4日 | 最高裁,ラーフル・ガンディーに対するグジャラート高裁による名誉棄損判決の執行を停止。 |
8日 | 会計検査院,貧困世帯向けの医療保険制度(Pradhan Mantri Jan Arogya Yojana)に関する報告書でさまざまな不正行為を指摘。 |
10日 | モディ首相,下院で不信任案に反論し野党批判を展開。 |
19日 | 政府,タマネギに40%の輸出関税を課すと発表。 |
23日 | インド宇宙研究機関(ISRO)の月探査機チャンドラヤーン3号,月面着陸成功。 |
24日 | BRICS,6カ国の正式加盟を決定。2024年1月から。アルゼンチン,エジプト,エチオピア,イラン,サウジアラビア,UAE。 |
25日 | モディ首相,印首相として40年ぶりにギリシャ訪問。戦略的パートナーシップの締結。 |
25日 | 政府,パーボイルド米に20%の輸出関税を課すと発表。 |
27日 | 政府,バスマティ米の最低輸出価格を1トンあたり1200ドルとすると発表。10月には950ドルに引き下げ。 |
29日 | 民族対立で開催の危ぶまれたマニプル州議会,11分間の議事で閉会。 |
29日 | 国営石油販売会社,家庭用液化石油ガス(LPG)シリンダー価格を200ルピー引き下げ。 |
30日 | 調査ジャーナリストの世界的ネットワークの組織犯罪・汚職報道プロジェクト,アダニ・グループについて新たな疑惑を報道。 |
31日 | ムンバイで野党会合(~9月1日)。参加政党は26党から28党に。 |
9月 | |
1日 | 政府,R・コーヴィンド前大統領を長とする委員会を設け,連邦と州の同時選挙実施を検討。報告は連邦議会に提出される。 |
2日 | 太陽観測衛星「Aditya L1」打ち上げ成功。 |
7日 | ジャカルタでASEANインド・サミット20周年記念,開催。 |
8日 | モディ首相,ニューデリーで米バイデン大統領と会談。 |
9日 | ニューデリーでG20サミット開会。ロシアのプーチン大統領,中国の習近平主席欠席。冒頭に首脳宣言採択。 |
18日 | 連邦議会特別会期。旧議事堂で最後の議事。19日からは新議事堂にて開催。 |
18日 | カナダのトルドー首相,カナダ国籍を持つカーリスターン・タイガー・フォース指導者,H・P・ニッジャルの殺害にインド政府関係者が関与と議会で証言。 |
20日 | 第128次憲法改正法案(女性議席留保法案)が連邦下院通過。21日に上院通過。 |
30日 | モルディブ大統領選挙の2回目投票で反インドを掲げる野党人民民族会議(PNC)のムハンマド・ムイズが当選。 |
10月 | |
2日 | ビハール州政府,カースト人口調査結果を発表。野党連合INDIAは全国レベルでのカースト調査を要求。 |
3日 | デリー警察,NewsClick社に対して大規模な強制捜査。中国からの資金流入の嫌疑で編集長と人材総括者の2人逮捕。 |
10日 | モディ首相,イスラエルのネタニヤフ首相と電話会談。ハマスとイスラエルの戦闘を背景に,イスラエルとの連帯を表明。 |
14日 | モディ首相,2036年オリンピックのインドへの招致を目指すと発言。 |
18日 | 政府,2022年6月からの砂糖の輸出制限を11月以降も無期限継続すると発表。 |
20日 | カナダ政府,インド駐在の41人の外交官引き揚げ。 |
26日 | カタールの第一審裁判所,元インド海軍将兵8人をイスラエルに機密情報を流したスパイ容疑で死刑判決。 |
27日 | 国連総会,ガザでの人道的休戦決議を賛成121,反対14,棄権45(インドを含む)で可決。 |
28日 | 政府,年末までタマネギの最低輸出価格を1トン当たり800ドルとすると発表。 |
11月 | |
1日 | 政府,IT機器の輸入に関して,「輸入管理システム」の運用を開始。 |
3日 | ブータン国王訪印。6日にモディ首相と会談し共同声明を発表。両国間の鉄道敷設などを謳う。 |
18日 | モルディブ新大統領,就任式で駐留インド兵の撤退を改めて要求。 |
29日 | インド政府治安関係者の絡む在米シク教徒指導者の殺害計画の中心人物ニキル・グプタを米連邦検察局がニューヨークの連邦裁判所に起訴。グプタはチェコ・プラハで逮捕され勾留中。 |
12月 | |
1日 | モディ首相,ドバイでの国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)に出席。2028年のCOP33の主催を表明。 |
3日 | 4州議会選挙開票。マディヤ・プラデーシュ,チャッティースガル,ラージャスターンでBJPが会議派を制す。テーランガーナーでは会議派がバーラト民族会議(BRS)から政権奪取。 |
8日 | 政府,2024年3月末までのタマネギの輸出禁止を発表。 |
11日 | 最高裁,憲法第370条の廃棄を合憲と判断。 |
12日 | 国連総会緊急特別総会,ガザでの即時人道的停戦決議を,賛成153(インド,日本を含む),反対10,棄権23で採択。 |
13日 | 連邦下院の傍聴席から男性2人が議場に飛び降り発煙物を投げる。議場外でも男女4人を逮捕。 |
15日 | アダニ・グループ,通信社IANSの過半数の株式を取得したと発表。 |
18日 | 国際通貨基金(IMF),インドの金融当局の為替介入が適正な水準を超えている可能性を報告書で指摘。RBIは反論。 |
21日 | 連邦下院,上院から送付の選挙委員会(構成員の選任手続き)法,新聞および逐次刊行物登録法を可決。連邦上院,下院から送付の刑事三法,電気通信法を可決。いずれの法案も委員会に付託されずに可決。 |
27日 | 会議派,経済的,社会的,政治的正義を掲げた「バーラト(インド)正義の行進」(のち「バーラトをつなぐ正義の行進」と改称)の実施(2024年1月14日~3月20日)を発表。 |
(出所) 政府発表の閣僚名簿(https://www.india.gov.in/my-government/whos-who/council-ministers)およびその他各省庁のウェブサイトなどから筆者作成。
(注)カッコ内政党名略号。BJP:インド人民党,RPI(A):インド共和党(アトヴァレ派),AD(S):我が党(ソーネーラール),RLJP:ラーシュトリア人民の力党。
(出所)政府発表の閣僚名簿(https://www.india.gov.in/my-government/whos-who/council-ministers)およびその他各省庁のウェブサイトなどから筆者作成。
(注) 1)暦年。2)年度平均値。2023/24は4~12月の平均値。3)第2次予測値。4)4~12月の平均に対する値。なお12月は暫定値。
(出所) 人口はMinistry of Statistics and Programme Implementation(MOSPI), Press Note on First Advance Estimates of National Income 2023-24, 出生率はMinistry of Finance, Economic Survey 2019-20, 2020-21, 2021-22, 2022-23, 食糧穀物生産はMinistry of Agriculture and Farmers Welfare, Second Advance Estimates of Production of Foodgrains for 2023-24, 消費者物価上昇率はRBI, Handbook of Statistics on the Indian Economy 2022-23, およびMOSPIのウェブサイト・データ,為替はMinistry of Finance, Economic Survey 2022-23, およびRBIのウェブ・サイトデータより作成。
(注) 1)都市部と農村部の統合指数。2)4~12月。12月は暫定値。3)暫定値。4)4~12月。5)4~12月。12月は暫定値。
(出所) 鉱工業生産指数はRBI, Handbook of Statistics on the Indian Economy 2022-23, およびMOSPI, Press Note on Quick Estimates of Index of Industrial Production and Use-based Index for the Month of December, 2023, 農業生産指数,卸売物価指数はRBI, Handbook of Statistics on the Indian Economy 2022-23, およびOffice of Economic Adviserのウェブサイト・データ, 消費者物価指数はRBI, Handbook of Statistics on the Indian Economy 2022-23, およびMOSPIのウェブサイト・データより作成。
(注) 1)3次改定値。2)2次改定値。3)1次改定値。4)2次予測値。
(出所) MOSPI, Press Note on Second Advance Estimates of National Income 2023-24より作成。
(注) 1)3次改定値。2)2次改定値。3)1次改定値。4)2次予測値。5)基本価格表示の粗付加価値(GVA)。
(出所) MOSPI, Press Note on Second Advance Estimates of National Income 2023-24より作成。
(注) 1)暫定値。2)4~9月の予測値。
(出所) RBI, Handbook of Statistics on Indian Economy 2022-23,およびRBI, Press Release(Development of India's Balance of Payments during the Second Quarter of 2023-24, 26/Dec/2023)より作成。BPM5準拠統計による。
(注) 1)アイスランド,ノルウェー,スイス,リヒテンシュタイン。2)非特定地域(unspecified region)を含む。3)暫定値。
(出所) Ministry of Commerce and Industryのウェブサイト・データより作成。
(出所) Ministry of Finance, Union Budget 2022-23, 2023-24, および2024-25より作成。