2009 年 52 巻 3 号 p. 157-165
全国のろう学校幼稚部を対象に, 聴覚障害の他に何らかの障害を合併している幼児の在籍状況を調査するとともに, 明らかな障害とは診断されていないが注意欠陥・多動性障害 (以下ADHD), 広汎性発達障害 (以下PDD) 等の発達障害の傾向がみられる幼児の在籍状況を調査した結果, 聴覚障害の他に何らかの障害を合併している幼児の合計は約31%, 発達障害の合併とその傾向がみられる幼児は約19%であった。発達障害の傾向をADHD傾向, PDD傾向等に分類し, ADHDの合併およびその傾向がみられる幼児の発達的な特徴を調査した結果, 聴覚障害のみの幼児と比較すると, 聴取・言語能力, コミュニケーション手段 (音声言語, 口型, 文字) の使用において, 3歳台では差が有意ではなかったが, 4歳台, 5歳台では差が有意になった。また, ADHDの合併およびその傾向がみられる幼児の36%に手指の微細運動の遅れが, 10%にチック症状が確認された。