2011 年 54 巻 6 号 p. 678-685
低音部に残存聴力を有する高音急墜, 漸傾型の感音難聴の場合, 補聴器を装用しても良好な聴取能が得られない場合が多い。欧米ではこのような症例に対する治療法として, 低音部分を経外耳道的に音響刺激を行い, 高音部を人工内耳で電気刺激する「残存聴力活用型人工内耳 (EAS: electric acoustic stimulation)」が開発されてきた。我々はその有効性を検証するため3症例に対してEAS専用のMED-EL社製FLEXeas電極の埋め込みを行い, 術後1年経過した。低音部の残存聴力は1年後でも温存されていた。福田版の単音節では補聴器装用下で平均17.3%が音入れ後12ヶ月で67.7%に改善を認めた。欧米ではその有効性が認められ, すでに臨床応用されているが, 日本人においても低音部に残存聴力のある症例に対してEASは有効な治療法になることが示唆された。