2012 年 55 巻 3 号 p. 175-181
平成21年から22年の間, 聴覚障害児の日本語言語発達に影響を与える因子と, 発達を保障する方法を考える目的で行われた感覚器障害戦略研究・症例対照研究のデータを元に, 人工内耳手術年齢による言語発達の傾向について検討した。
対象は生下時から聴覚障害を持つ4歳から12歳までの平均聴力レベル70dB以上の638名のうち, 聴覚障害のみを有すると考えられる人工内耳装用児182名を, 補聴器の装用開始年齢, 人工内耳の手術年齢のピークで4群に分け比較した。
結果を語彙, 構文レベルの発達と, 理解系, 産生系課題とに分けてみると, 語彙, 構文共に, 理解系の課題においては, 補聴器装用早期群の成績が良好で, 産生系の課題については, 人工内耳手術年齢早期群の成績が良好であった。
このことから, 早期に音を入れることが言語理解に, 早期に十分弁別可能な補聴をすることが言語産生に影響を与える可能性があるという結果が得られた。