AUDIOLOGY JAPAN
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総説
両耳間時差検出の神経回路機構
久場 博司
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2016 年 59 巻 4 号 p. 211-217

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抄録

要旨: 我々が音の来る方向を聞き分ける (音源定位) 際には, 左右の耳に達する音のマイクロ秒レベルの時間差 (両耳間時差) が, 脳の聴覚神経回路で検出される。 この聴覚神経回路には, 音の周波数に応じた分子・細胞レベルでの様々な分化がみられる。 例えば, 聴神経からの時間情報を中継する蝸牛神経核では, シナプスの伝達様式とイオンチャネルの発現量が異なることにより, 周波数帯域間での神経活動の時間揺らぎの違いが補正され, 正確な時間情報の伝達が可能になる。 一方, 左右の蝸牛神経核からの時間情報を比較することで, 時間差情報の検出を行なう神経核では, イオンチャネルの発現量と局在が異なることにより, 周波数帯域に応じた入力頻度の違いに関わらず正確な時間情報の比較を行うことができる。 このように, 脳の聴覚神経回路の形態と機能は, 音の周波数に応じて異なり, このことにより正確な両耳間時差の検出が実現されている。

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© 2016 日本聴覚医学会
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