AUDIOLOGY JAPAN
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原著
補聴器による TRT (Tinnitus Retraining Therapy) を継続し得た症例と継続し得なかった症例の検討
伊藤 まり大石 直樹小川 郁田路 正夫
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2016 年 59 巻 6 号 p. 653-659

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抄録

要旨: 近年, テレビや書籍等メディアを通して, 補聴器を用いた耳鳴の音響療法に対する関心が急速に高まり, 補聴器による TRT (Tinnitus Retraining Therapy) (以下 TRT) が浸透した。 今回, 平成24年4月から平成26年3月まで新百合ケ丘総合病院耳鳴難聴外来を受診した耳鳴患者94例 (男52例女42例) のうち, 補聴器による TRT を継続し得た症例: 継続例24例 (男17例女7例), 補聴器による TRT を継続し得なかった症例: 非継続例31例 (男15例,女16例) を対象とし, 補聴器による TRT を継続し得た症例 (以下継続例) と, 継続し得なかった症例 (以下非継続例) の初診時所見や経過につき比較検討した。 耳鳴の評価としては THI (Tinnitus Handicap Inventory), VAS (Visual Analogue Scale) (1日のうちで耳鳴の気になる時間%), HHIA (Hearing Handicap Inventory for Adults) を施行した。
 今回の我々の統計では TRT 非継続例では継続例と比較し初診時 THI が有意に高値を示し, THI 重症例ほど効果が出づらい可能性があると考えられた。 以上より THI 高値の難治症例では TRT 通院間隔を短くする観察期間も長く取る等診察の回数を増やすことにより利得調整や TRT のカウンセリングの機会を増やす必要性が示唆された。

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© 2016 日本聴覚医学会
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