AUDIOLOGY JAPAN
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原著
補聴器装用児の聴覚補償と WISC-IV の関係
佐々木 美奈間 三千夫中原 啓宝上 竜也硲田 猛真河野 淳榎本 雅夫
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キーワード: 補聴器, 小児, WISC-IV, 聴覚検査
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2017 年 60 巻 6 号 p. 509-514

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抄録

要旨: 難聴児の療育に関わる問題として, 難聴発見の遅れ1), 療育経過中の難聴の進行1)2), 保護者の認識不足1)3) などの理由から難聴児が補聴器装用に至らないといった点が指摘され1), 難聴の早期発見, 早期療育の重要性は諸家により報告されている4)5)。 しかし, 児の聴覚補償の状態と言語発達状況との関係を詳細に述べたものは数少ない。 筆者らは WISC-IV 検査の言語理解指標 (VCI) と知覚推理指標 (PRI) に着目し, 聴覚補償の状態と言語成績との関係について調べ, 観察期間中の臨床例の実態を検討したので報告する。 対象は当センターで経過観察中の補聴器装用児のうち必要な評価が可能な12名とした。 聴取成績は標準純音聴力検査,補聴器装用閾値, 語音検査, 雑音負荷時の聴取能検査で評価した。 VCI と PRI の指標得点と聴取状態との間に関連はみられなかった。 WISC-IV 検査において PRI に比べて VCI の指標得点が有意に低い児が5例認められた。 VCI と PRI の指標得点が乖離していることは, 児の本来の能力程度に言語獲得が進んでいないことを示すものの, VCIの指標得点は平均の下限以上には達していることが示された。

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© 2017 日本聴覚医学会
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