2018 年 61 巻 6 号 p. 555-561
要旨 : 聴覚障害児の書記言語においては, 形式的, 内容的な問題が生じるとされており, 副詞においての使用頻度や種類の少なさについても指摘されている。本研究では, 学齢期にある健聴児22名, 聴覚障害児7名を対象に, 副詞表現について検討し, 表現内容についても分析した。課題は主語と動詞の間に副詞を穴埋めする単文15題とし, 対象児には当てはまる表現をできるだけ多く回答するよう求め, 両群の結果を観察した。その結果, 健聴児は生活年齢に伴い副詞表現が増加し, 語彙の種類や表現の幅に広がりがみられ, さらに述部の意味に応じた内容も増加する傾向をみとめた。
聴覚障害児は, 健聴児と同様に副詞表現数が多くみられたが, 語彙の種類や表現については, 一部で健聴児との相違がみられた。
聴覚障害児の言語指導においては, このような適切な副詞表現の使用についても留意し, 表現力向上について検討する必要性が示唆された。