2019 年 62 巻 2 号 p. 142-149
要旨: もの忘れセンター受診高齢難聴者に対し, 補聴器導入6 ヶ月間の前後で Mini-Mental State Examination (MMSE) による認知機能評価を行い, 6 ヶ月後に悪化した認知機能悪化群, 不変または改善した認知機能維持群の各群に, 聴力レベルや語音弁別能の特徴がみられないかを検討した。 前後比較ができたのは38名で, 補聴器開始前後の MMSE 得点に有意な差は認められなかった。 認知機能悪化群を基準とした, 認知機能維持への効果に関するロジスティック回帰分析の結果は, 年齢, 性, 良聴耳聴力, 良弁別能のいずれも有意な効果を示さなかった。 一方, 認知機能や弁別能が不良であっても, 補聴器継続と認知機能維持という結果を得ることは可能であることが示された。 54名のエントリー症例を対象にした解析では, 良好な弁別能と良好な MMSE は関連している傾向を認めた。 今後さらに規模の大きな集団での検討が必要である。