2022 年 65 巻 6 号 p. 549-555
要旨: 成人・高齢難聴者の傾向と課題, 文章追唱法を用いた補聴器聴覚リハビリテーションの実際とその効果について概要を述べた。難聴による日常生活や社会生活における支障度を基準に,成人期では軽度難聴や一側性難聴への対応,老年期では適切かつ有用な補聴器活用への対応が必要である。高齢難聴者では, 周波数分解能や時間分解能などの聴覚機能の低下に加え, 認知処理速度や注意, ワーキングメモリの低下によって, 言語聴取がさらに困難になることも補聴器装用の障壁となりやすい。高齢難聴者が補聴器を活用して言語聴取能やコミュニケーションを改善するためには, 個人の残存する聴覚機能を向上させ, 聴覚情報を最大限に活用可能とする体系的な聴覚リハビリテーションが必要と考える。高齢難聴者の補聴支援として, 聴覚リハビリテーションの重要性が広く認知されることに期待したい。