抄録
著者らは先に聴覚障害児に対して行われるacoupedic (聴覚からの教育) とよばれる教育法の発達の歴史について本誌で述べた。 この方法は, 聴覚障害を早期に発見して補聴器をつけ, 残聴を最大限に活用する事がいかに重要であるかを強調したもので, 聴力障害児が言語を習得するのに聴覚を使う事ができるようになるまで読話をさしひかえさせて, 聴く事に重きを置く教育法である。 この理論的裏ずけは先の論文にのべられている。
この論文では, 1) acoupedic method (あるいはeducational audiology) のプログラムが聴力障害児に対して発語ならびに言語の学習効果ならびにその発達は聴力正常児と比較してどうであるか? 2) このプログラムによって聴力障害児が就学時までに普通児のクラスでうけいれられる程度までに必要な発語ならびに言語の技術を発達させる事ができるかどうか? 3) この方法で訓練された就学前の聴覚障害児と今までの因襲的な口話法で訓練されたものとの発語・言語能力に相違があるかどうか, あるとすれば, どの様な面に相違が出て来るか? という点について検討した。
研究はDenver大学聴覚診療センターとCleveland聴覚言語診療センターで同じ様な規準で選ばれた早期に発見された聴覚障害児グループを対象とし, 前者はacoupedic methodにより, 後者にはその対照として因襲的な口話法と聴能訓練を併用した方法によって訓練を行ない, その結果を5才の誕生日の時点で分析しようとしたものである。前篇ではこの研究のprocedure, subjects, data collection, case history, audiometric dataについて詳しく述べた。後篇では研究の結果の分析と結論について述べる予定である。