AUDIOLOGY JAPAN
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周波数割り振り変更による語音聴取能の検討 -Nucleus 22人工内耳装用者を対象として-
吉川 智子冨澤 文子河野 淳鈴木 衞
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1998 年 41 巻 4 号 p. 287-295

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抄録

人工内耳の各電極に割り振る周波数帯域を変更し, それに伴う語音聴取の変化を検討した。被験者は, Nucleus 22による人工内耳装用者7名を対象とし, 割り振りの上限をおよそ3,500Hz-10,000Hzの範囲内で検討した。結果は, 1) 周波数割り振りの上限を, およそ4,500Hzから6,700Hzの間に設定すると母音・子音と文の聴取に効果があったが, およそ9,000Hz以上に設定すると聴取は悪化した。2) 子音の了解度は, 割り振りの上限に関係なく一定であった。結果から以下のように考察された。1) 人工内耳のフィルタ, 周波数抽出法及び電気刺激による音声産出の特徴を考慮すると, 割り振りの上限を音声の周波数範囲に対応させて検討することは不適切である。2) 電極に割り振る周波数帯域の設定は, およそ6,700Hz以上の上限を減らし, 対数間隔上の1電極が担う周波数範囲を狭くして, 高音域の周波数分解能を向上させることが必要である。3) 子音の聴取改善には, 時間分解能の補償からの検討が必要と考える。

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