2011 年 27 巻 p. 30-39
本稿では企業のオーナーシップが企業と銀行とのリレーションシップに与える影響の分析を行った。先行研究によると,危機時企業とメインバンクとの物理的距離が近づくほど両者のリレーションシップは強まり,企業の再生に繋がるとされる。但し,所有と経営の一致度が高い企業は外部の介入を受け入れない傾向にあるため,メインバンクとの物理的距離が近づいても再生に繋がらない可能性がある。分析の結果,代表者と筆頭株主が一致しない企業ではメインバンクとの物理的距離が近づくと再生に繋がり,代表者と筆頭株主が一致する企業では倒産前にメインバンクを変更することが再生に繋がることが示された。