日本ベントス学会誌
Online ISSN : 2186-4535
Print ISSN : 0289-4548
ISSN-L : 0289-4548
大槌湾に生息するフリソデガイYoldia notabilis YOKOYAMAの外部成長輪による年齢査定および成長の解析
仲岡 雅裕
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 1992 巻 43 号 p. 53-66

詳細
抄録

大槌湾に生息するフリソデガイYoldia notabilis YOKOYAMAについて,1989年12月から1990年12月までの期間に毎月採集した試料をもとに,年齢査定および成長様式の解析を行った.フリソデガイの殻表には2種類の成長輪が観察される.そのうち“major ring”は年に1回,冬から春にかけて形成されることが明らかになった.年齢査定は,(1)成長輪解析,(2)殻長頻度分布を用いたコホート解析,の2方法を用いて行った.その結果,成長輪解析からは7才年級群まで査定できるのに対し,殻長頻度分布からは4才年級群までしか分離できず,前者の有効性が示唆された.また,2方法により分離された対応する年級群の平均殻長は同じであった.成長輪の形成間隔より成長様式を調べたところ,フリソデガイの成長は0才年級群では非常に遅く,1年目の冬までに殻長1.3mm程度にしか達しないことが判明した.1才以降成長速度は増加し,7才で平均殻長32.0mmに達する.この結果得られた成長曲線はシグモイド型を示し,Gompertzの成長方程式に最もよく一致する.

著者関連情報
© 日本ベントス学会
前の記事 次の記事
feedback
Top