抄録
三重紡・大阪紡の合併による一九一四年の東洋紡成立につづいて、一九一八年には尼崎紡が摂津紡と対等合併して大日本紡と改称、その結果鐘淵紡を含めて、日本紡績業における三大紡の支配的地位が確立した。三大紡は同年下期の全国紡績生産量において、綿糸で五一%、綿布で六七%という圧倒的比重を占めた。
この三大紡に帰結する五社を取り上げ、第一次大戦前の資金調達のあり方を、設備資金と運転資金とに大別して概括的に明らかにしたい。果すべき課題は国際比較の素材提供にあることを考慮し、五社の相互比較というよりはむしろ、五社の共通点、ないしは日本紡績業の発展的様相を代表する側面に重点を置きたい。