抄録
第二次大戦前の日本において、諸外国とくらべて相対的に独自の労務管理が形成されたのは、第一次大戦をはさむ、その前後の時期であった。この時期には、第二次産業の諸分野で企業が発達し、機械制大工場制度が本格的に定着しつつあったことから、機械化、組織化の進展の下で、生産の担い手である労働者をいかに効率的に管理するか、という課題が重視されるようになってきた。同時に、企業外では、量的に増大した労働者の地位改善の要求はようやく激しさを加え、その圧力は企業経営にも及び、その対策もまた経営者にとっての重要関心事となった。こうして、それまでの、いわばその場しのぎの労働統轄にかえて、一貫性、体系性をもった労務管理が作られねばならなくなってきた。