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論文
ヒヨドリHypsipetes amaurotis の鳴き出し時間のバラツキ比較 (大磯、仙台、密陽)と鳴き出し時刻の照度推定
大坂 英樹
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2016 年 23 巻 p. 1-17

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抄録

神奈川県大磯町丘陵にて2014年07月から2016年03月までの期間、ヒヨドリの鳴き出し時間とそれに続く鳴き声の頻度を聞き取りにより求めた。鳴き声は増幅され、その音をヘッドフォンで聞きながら現地でパソコンに記録した。また自動録音も併用した。

ヒヨドリの日の出に対する鳴き出し時間は市民薄明開始時間に相関するように年2回変動した。鳴き出しから日の出後90分まで、1分刻みで鳴き声の頻度を求めた。頻度は季節で変動し、繁殖期に当たる5月と6月と冬期の11月から2月は80%と高率だが、3月は約40%、7月と8月は約55%と下がった。また他の鳥にみられる鳴き出しから30分で鳴き止むということは周年を通じて無かった。

また、仙台と密陽(韓国)のヒヨドリの日の出に対する鳴き出し時間と比較した結果、大磯のヒヨドリは鳴き出しは平均も早く、バラツキも小さかった。理由として観察地が森林である大磯は、市街地の仙台、農地の密陽に対しヒヨドリの生息密度が高いこと、また音の増幅で可聴領域が広がったことがあげられる。これら観察個体数が増えたことで、鳴き出しの平均が早まり、バラツキが小さくなることを統計的に示した。環境要因に対する鳴き出し時間の関係を調べるにはバラツキを抑える高密度の生息場所の選定と広い可聴領域が重要である。

更に繁殖期と非繁殖期の自然環境下でのヒヨドリの鳴き出し時と天気から水平面照度を推定した。その結果、繁殖期の中でも5月~7月は18 ± 22.7 Lx、非繁殖期で冬期の1月~2月は13.4 ± 6.3 Lx が鳴き出し時刻の照度であった。この照度はヒヨドリが毎朝鳴くと言う行動を決める概日時計と光周性に関係すると考えられる。

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© 2016 日本野鳥の会 神奈川支部
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