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論文
配偶様式の違いが現れたメジロとウグイスの夜明けの鳴き声頻度
大坂 英樹
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2017 年 24 巻 p. 27-40

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抄録

1)神奈川県大磯町丘陵にて2014 年07 月から2016年03月までの期間、メジロ Zosterops japonicus とウグイス Horornis diphone の鳴き出し時間とそれに続く鳴き声の頻度を聞き取りにより求めた。また太陽高度と天気から両種の繁殖期と非繁殖期(冬期)の鳴き出し水平面照度を推定した。

・メジロの鳴き出し時間と照度(平均± SD):

繁殖期( 4月〜7月)(n=19):-18.3 ± 4.4 分、59.0 ± 67.5 Lx

冬 期(11月〜1月)(n=22):-24.8 ± 7.9 分、21.7 ± 25.7 Lx

・ウグイスの鳴き出し時間と照度:

繁殖期( 3月〜6月)(n=19):-15.5 ± 4.0 分、 96.6 ± 86.4 Lx

冬 期(11月〜1月)(n=22):-12.36 ± 10.37 分、201 ± 459 Lx

メジロの鳴き出し照度はウグイスに比べ繁殖期も冬期も安定しており、概日時計制御の入力である照度依存が高いと思われる。

2)2015 年の繁殖期の囀りは日の出時刻を基準に、ウグイスでは-18.3 ± 4.4 分に囀り出し、観察終了の日の出後90 分まで早朝も囀り続けた。他方、メジロは-18.8 ± 3.5 分から+6.1 ± 6.4 分まで続けて囀ったが、それ以降の早朝は極端に回数が減った。 囀りの長さは25.0 ± 5.6 分であった。

3)メジロとウグイスの早朝の囀りの違いの理由として配偶様式の差があると考えられる。社会的にも遺伝的にも一夫一妻制のメジロは番い関係が強く、番いで営巣、抱卵、育雛を行うメジロはオスがなわばり維持のための夜明けだけ囀り、早朝囀せず子育てに貢献していると考えられる。他方、一夫多妻制のウグイスはオスが交尾となわばりの維持以外は繁殖に参加せず、育雛支援の機能もあるもののなわばりの維持とメス求愛のための囀りをやめないと解釈できる。

4)ウグイスもメジロも繁殖初期の囀りは夜明けも早朝も断続的だがその意味は異なるかもしれない。その意味はメジロでは繁殖成功率に直結する営巣場所選定のためのなわばり確定と確保のため、ウグイスではなわばり確保を兼ねた囀りの練習のためかもしれない。この時期のメジロの囀りも短く、練習の可能性もある。

5)ウグイスは繁殖最盛期の5月17日に夜明け囀りも早朝囀りも乱れた。この日はホトトギスの渡来直後であり、托卵鳥の出現のせいかもしれない。

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© 2017 日本野鳥の会 神奈川支部
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