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Print ISSN : 0919-2719
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直流成分ゼロのガボールウェーブレットを用いた輪郭追跡法の生物構造体超薄切片電子顕微鏡像への応用
前田 元馬場 美鈴馬場 則男
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2023 年 31 巻 p. 1-17

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抄録

電子顕微鏡像の画像解析において、機械学習によるセグメンテーションは非常に有効な手法となっている。しかしながら訓練データの作成には一般に長い時間と労力を必要とする。本論文で取り上げる生物超薄切片の電子顕微鏡像から細胞小器官の輪郭抽出によるセグメンテーションにおいても、画像処理手法による抽出法は様々あるものの実際には手描き入力で行っていることも多い。したがって、手描きによらず容易で正確な輪郭抽出法が望まれている。また、このような手法はそれだけで即座の小規模な画像解析データを提供することに役立つ。我々は、これを目指した、独自のガボールウェーブレットによる輪郭抽出法を考案した。従来のガボールウェーブレットの実用式に深刻な欠点を発見し、これを完全に排除した直流成分ゼロのガボールウェーブレットによる、リッジライン、ステップエッジ、パターン境界の輪郭抽出法である。この手法により、電子顕微鏡による超薄切片像に現れた細胞小器官など様々な形態の輪郭が不明瞭であっても抽出が簡易な人為的操作だけで正確に行えることが分かった。これらについてはシミュレーションによって検証した。本論文では、酵母の液胞の陥入によって生じた複雑な糸巻き状の形態を示す液胞膜の輪郭抽出などに応用し、本手法の有用性を示した。

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© 日本バイオイメージング学会
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