Seibutsu Butsuri
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2023 Volume 63 Issue 2 Pages 122-123

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1.  北の国から

2022年度の大きなイベントして,生物物理学会函館年会の開催,北海道支部のホームページの大幅改訂,そして,コロナ禍で対面開催が困難な状況下で逆転の発想で始めました東北支部との生物物理学会北海道支部-東北支部合同例会(特別講演:東北大多元研高橋聡先生)が挙げられます.以下に各イベントについて紹介したいと思います.

2.  生物物理学会函館年会

2022年9月28-30日の3日間の会期で函館アリーナ及び函館市民会館を会場として第60回の日本生物物理学会年会が開催されました.年会長・実行委員長の金城政孝先生(北海道大学)を筆頭に,副実行委員長として相沢,プログラム担当の菊川峰志先生(北海道大学),さらに実行委員として函館地区はもちろん,北海道全域から33名の先生が加わり年会の準備・運営を進めさせていただきました.

今回は60回目という節目を迎えるというだけではなく,いくつかの大きな変化を経験するものとなりました.まず,猛威をふるい続けるコロナ禍のため,第58回の群馬,第59回の東北年会は,完全オンライン開催となり,函館年会についても,対面開催は可能かについて実行委員会でも学会理事会でも議論が続きました.過去2回のオンライン開催では非常に厳しい状況の中で,オンラインならではの工夫が凝らされた素晴らしい年会が開催され,全国からの参加が容易であること,発表画面が見やすく講演に集中できること等のメリットが最大限に活かされていました.反面,生物物理学会の年会だけではなく,多くの学会がオンライン開催を余儀なくされてきた中,対面開催を望む声も大きくなっており,どのようにすれば先の見えないコロナ禍の中,参加者にも負担をかけずに開催が可能かについて入念な検討を繰り返しました.結果,選択肢として選ばれたのが,ハイブリッド形式による年会でした.2年以上前から会場予約等の準備が必要な年会運営では,開催時のコロナ禍での会場使用制限の状況等については全く予想が付きません.最悪の場合,当日の会場利用が完全に不可能な状況も考慮に入れなくてはなりませんでした.また,参加者については,本人に症状がなくても,濃厚接触や大学等所属機関の出張制限などで,現地参加を見送らざるを得ない状況も想定されます.そのため,ハイブリッド形式の中でも最も完全な形,すなわち,「講演者(口頭・ポスター),聴衆のいずれも,対面でもオンラインでも参加できる」という形式に挑戦することになりました.特に,口頭発表で行われる8か所のシンポジウム会場では,会場内外の質疑応答が,チャットではなく画像付きの音声でストレスなく行えるよう,機材とスタッフを整備する形をとりました.これは,年会の最も重要な部分である「討論等のサイエンティフィックな部分のクオリティ」をとにかく最大限大切にしたい,という菊川先生の考えによるものでした.また,ポスター発表についても,会場に掲示するものと完全に同じ電子ファイルを事前にシステムにアップロードして閲覧を可能にするという形で,参加者の負担も少なくしつつ,オンライン参加も可能な形を採用しました.しかしながら,このような「完全ハイブリッド形式」での開催には,対面とオンラインでの開催を合わせただけの予算が必要となり,財政的には非常に厳しいことが予想されました.

このような状況の中でのもう1つの大きな変化は,年会運営を支えていただく企業協賛の依頼等へ,年会実行委員だけでなく学会理事会からも,より積極的に取り組んでいただいた点です.ハイブリッド化に伴って,単純な対面開催と比較すると1.5倍程度の予算が必要となることが分かり,コロナ禍で対面での出展やランチョンセミナーがどのような形で実施できるか不透明な中の協賛依頼は著しい困難が予想され,最悪の場合大幅な赤字も覚悟しなくてはならない状況でした.このような中,学会会長の野地博行先生の「学会理事会も,さらに積極的に年会運営を支援すべき」との考えで多大な協力をいただきました.支援企業への呼びかけを実行委員会だけでなく全理事の分担で行い,実行委員会主催の協賛企業向け説明会に多くの理事にも出席いただく等,全面的なバックアップの中,準備を進めることができました.

活発な議論が行われた函館年会ポスター・企業展示会場

そして,最も大きな変化は,実は開催地そのものです.過去5回,北海道で開催された生物物理学会の年会はいずれも札幌でのものでした.札幌も魅力的な土地ではありますが,参加者にさらに広く北海道の魅力を知ってもらいたいという金城先生の思いから,今回は札幌以外の都市での開催の可能性を模索しました.生物物理学会年会の規模になると,道内の主要都市でも開催地選びは難航したのですが,函館が故郷の人気バンドGLAYのこけら落とし公演が実施された函館アリーナは開催に十分な広さがあることが分かり,隣接する函館市民会館と共にハイブリッド開催の対面会場として選定されました.「年会長の年会開催への思いを込めたキャッチフレーズがあるとよい」という学会理事の永井健治先生のお勧めにより,キャッチフレーズ「集え!北へ!函館へ!」を明確に掲げて実施したのも,今回の年会が初めてではないかと思います.

過去最多の約26万人の国内感染者が報告された8月末から順調に感染者数が減り,幸運なことにほとんどの行動制限が解除された中で年会当日を迎えることができました.年会前の8月には函館で観測史上最大の大雨による浸水や,台風による飛行機の欠航などでもハラハラさせられましたが,年会会期中は,それらが嘘のような晴天に恵まれました.最終的には,合計演題数は1232件(一般ポスター演題975件,シンポジウム257件),参加者数は1739名となる,過去最大規模の年会となりました.生物物学会の特徴である,参加者に学生や若手研究者が多いという特徴が現れ,当日もシンポジウム会場,ポスター会場共で熱い議論が繰り広げられました.次回第61回の名古屋年会(2023年11月14-16日),IUPAB総会と合同開催になる第62回京都年会(2024年6月24-28日)へとつながる,大成功を収めた年会となったと考えております.

3.  支部ホームページの改訂

過去10年以上大幅なデザインの改訂をしてこなかった支部会HPのデザインを一新しました(https://www.bsj-hokkaido.org/).トップ画面には,支部会員から集めました研究に関わる画像ファイルをムービー形式で表示するとともに,支部役員の先生方の顔写真を掲示して親近感が湧くように工夫しました.また,北海道支部では若手の会の活動もとても活発で,若手ネットワーク(夏の学校,若手の会)の欄も設けました.今回,他の支部会HPもサーチしたのですが,各支部における若手の活動が必ずしも「見える化」されていないことに気がつきました.若手は次世代の生物物理の担い手です.さらに次の世代の中学生,高校生への情報発信にもなりますし,各支部の若手の会のネットワークの「見える化」も大事かと思います.本来であれば,twitter,SNSなどの設定もしたほうがよかったかもしれませんが,そちらは今後の課題となります(アップデートをしないと逆効果になりますので).このほか,生物物理学に関係する北海道内の研究機関に在籍する支部会員の研究室,研究室HPの掲載,支部講演会お知らせなどを掲載しています.お時間のあるときにご笑覧いただければ幸いです.

4.  北海道支部-東北支部合同例会

コロナ禍で対面開催が困難な状況下を逆手に利用した,2020年度から始めました東北支部との合同例会が2022年度で3回目となります.毎年6名の学生発表賞,特別講演を設けており,昨年は135名が参加してくれました.例えば,2021年度は金城政孝先生(北大現名誉教授)が「タンパク質相互作用解析と蛍光相関分光測定」という題目で,2022年度は次期生物物理学会長の就任を予定している高橋聡先生(東北大)が特別講演していただくことになっています.参加は北海道,東北支部に限定したものではなく,例年,数名他支部からの参加者も散見されます.函館年会で会員の皆さんご自身が感じられたように,対面形式の学会がサイエンスを議論するうえでは本質的に効果的ですが,オンラインならではの便利さも確かに存在します.折角,開始された合同例会なので,ハイブリッド,対面形式など今後も継続していきたいと考えております.

 
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