Seibutsu Butsuri
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2023 Volume 63 Issue 4 Pages 232-233

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はじめに

2022と23年度の東北支部長を務めます中林孝和(東北大院薬)と申します.よろしくお願いします.この2年間は,幹事職に田中良和先生(東北大院生命)と吉田一也先生(山形大院理工),会計職は田原進也先生(東北大院薬)にお願いさせて頂き,私を含めた4名が中心となり東北支部会を運営させて頂いています.今回の支部だよりでは,今年3月に行われました北海道支部・東北支部合同例会,支部例会の意義,東北大青葉山新キャンパス内に整備中の次世代放射光施設「ナノテラス」について記させて頂きます.

北海道支部・東北支部合同例会

2022度の生物物理学会北海道支部・東北支部合同例会は,3月4日(土)にzoomにて行われました.すべて口頭発表になり,21件の講演,当日は70名の参加者となりました.オンラインではあまり質問がでないことがありますが,この合同例会では活発な質問が飛び交い,盛況であったと思います.数名の先生に講演賞審査員として就任して頂き,講演賞と最多得票者に対する最優秀講演賞を学生の方に授与しました.本年度は以下の5名の学生に授与しました(図1).

図1

最優秀発表賞受賞者の方と記念撮影.

【最優秀発表賞】

「酸化および浸透圧ストレスに応答した生細胞内LLPSの構成成分解析」澁谷蓮(東北大院薬)

【優秀発表賞】

「システインリッチ蛋白質組換え発現時にPichia pastorisが異常分泌するミスフォールド蛋白質の解析」吉川一歩(北大理)

「筋萎縮性側索硬化症の原因タンパク質TDP43凝集体を防ぐシャペロンRNA」藤本愛(北大院生命)「Incorporation of bovine heart cytochrome c oxidase into bicelles and its electron transfer activity」Bon Leif D. Amalla(北大理)

「パワーストローク型人工分子モーターの実現に向けて」福田朗大(東北大院工)

特別講演として,高橋 聡先生(東北大学多元研)にご依頼をさせて頂き,タンパク質のフォールディング・アンフォールディング研究の成果と今後の展望,一分子計測・FRETを用いた構造変化ダイナミクスを測定するユニークな手法などについて,平易な言葉で説明を行って頂きました.

講演内容では,各種生物現象または測定法に関する機械学習を含めた理論的な取り扱い,タンパク質の構造・機能解析,蛍光・ラマンを用いたバイオイメージングなど,今の生物物理のトピックスを凝縮した内容となりました.発表は日本語と英語の選択可としました.英語化の目標とは異なるかもしれませんが,生物物理学会は英語で行われるために,英語にハードルがある学生も講演しやすいようにしました.日本語OKとしたこともあるかと思いますが,発表者に学部4年生の方が散見され,この合同例会が学会デビューという方もいたようです.個人的にはこの傾向は大変良いことかと思っており,これからも,この支部会が学会発表のきっかけになることを願っています.北海道支部との合同例会は一昨年度に続き2回目になりますが,北海道支部との交流が深まり,合同で開催することは非常に意義があると感じています.また,講演数や参加者も当然ですが増え,会自体もさらに盛りあがったと思います.次年度も北海道支部との合同例会を検討しています.北海道支部長を務められています小松崎民樹先生(北大電子研)には様々なご尽力を頂き,大変お世話になりました.有難うございました.

オンラインは,私が接続・ホスト係となり,終日接続することとなりました.しかし,当日は私の研究室がある東北大の青葉山キャンパスが停電であったために,私の自宅で接続を行い,会の運営を行いました.すべて自宅のために不安でしたが,大きな接続トラブルもなく乗り切ることができました.

支部例会の意義・今後の在り方

支部会の目的の一つは,その地区での交流があると思います.また,普段中々発表を行う機会がない学生にも気軽に発表してもらえる場でもあるかと思います.私は研究室を渡り歩く中で様々な支部例会に参加してきましたが,ほぼ一つの大学のみに参加が集中し,交流という目的を果たしていない支部例会もありました.一部の大学に集中することは,どの支部例会でも増加傾向にあり,支部例会の意義が霞んできているようにも思います.その中でオンラインでの開催は,参加拡大という点では有効な方法です.旅費の節約,出張の時間が省けることは参加を促すことでは非常に有効であると思います.真の交流の点では対面は大事ですが,オンラインで様々な大学・研究室が参加をしてくれることが,今後の支部会の在り方・存在意義という点でも大事かと思います.個人的には全国大会は対面,支部会はオンラインという棲み分けがあっても良いのかなと思います.

次世代放射光施設ナノテラス

最後に東北大内にて整備中の次世代放射光施設「ナノテラス」を紹介します.ナノテラスは東北大青葉山新キャンパスの農学研究科の横に現在整備中であり,東北大が現在進めているサイエンスパークの中核を担う施設になります.2024年度からの本格運用を予定しています.ナノテラスの特徴は高輝度の軟X線が得られることであり,既存の国内施設の100倍の輝度の軟X線を得ることができます.

ナノテラスには28本のビームラインがあり,運用開始までに10本のビームラインが整備される予定です.10本の中で3本のビームラインは量子科学技術研究開発機構(QST)が中心となり使用し,一般ユーザーは7本のビームラインを主に使います.各ビームラインの計測手法は以下になります.

【QST側】軟X線超高分解能共鳴非弾性散乱,軟X線ナノ光電子分光,軟X線ナノ吸収分光.

【一般ユーザー側】軟X線電子状態解析,軟X線オペランド分光,X線構造-電子状態トータル解析,X線オペランド分光,X線階層的構造解析,X線コヒーレントイメージング,軟X線磁気イメージング.

現時点ではマテリアルサイエンスとしての機能性材料が主な測定対象となり,生命系への応用では,臓器のCTイメージングなどのバルク測定または小角X線散乱が中心になります.タンパク質のX線結晶構造解析や単一細胞のイメージングなどはまだ行うことができないようですが,今後これらの実験も十分に行えるように整備されると聴いています.

私は3月にナノテラス内を見学させて頂き,順調に整備が進んでいる説明などを頂きました(図2).内部はそこまで広いという感じではありませんでしたが,十分にコントロールされた環境の中で実験ができることがわかりました.

図2

ナノテラスの外観の一部.中の写真も沢山撮りましたが掲載は見送ります.

高輝度軟X線が特徴の施設ですが,ナノテラスのメリットの一つに交通の便が良いことがあります.仙台駅から約5 kmほどの所にあり,地下鉄で青葉山駅まで9分,その後歩いて10分ほどで施設に着くことができます.車でも仙台駅から20-30分で施設に行くことができます.東京駅から約2時間で施設に行くことができ,東京からの日帰り測定も十分に可能です.東北大からは歩いて施設に行くことができます.このような放射光施設は他にはなく,ぜひ,交通の便の良さも考慮に入れ,積極的に利用されることを願っています.

ナノテラスは100万都市仙台の中心である仙台駅から5 kmほどなのですが,熊と猪と鹿とアナグマが周囲にでますので(青葉山近辺の熊の出没情報は毎年何度も報告されています).そのような自然(?)も味わって頂ければと思います.

 
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