2024 Volume 64 Issue 5 Pages 277-278
2024年5月9日に,第2回生物物理若手の会研究交流会が開催されました(図1).本若手の会だよりでは,生物物理若手の会の副会長として研究交流会を開催した筆者の目線から,研究交流会の趣旨や開催までの経緯などを紹介させていただきます.全国の若き研究者を中心とした皆様に,研究交流の重要性と若手の会の熱が伝わりますと幸いです.
第2回生物物理若手の会研究交流会の集合写真
近年,生物物理若手の会は長い歴史の中でも類ない盛り上がりを見せています.年に1度の若手の会の象徴的なイベントである生物物理若手の会夏の学校(以下,夏学)においてもその盛り上がりを感じることができ,昨年開催された第63回は参加者数が250人を超える歴史に残るような会でした1).
しかし,急速な発展を見せる若手の会の問題点の1つに年間を通じた「研究交流の場の少なさ」が挙げられてきました.若手の会は,夏学が1大イベントとなり,それ以外の全国的な交流がほとんどない状況にありました.さらに,経済的,地理的な理由や参加者数の限りにより,現地が主体の夏学への参加を断念する方も少なくないようです.
若手のうちから多様な分野の研究者と交流することは,特に生物物理という多様な研究分野を包含する学際的研究分野においては,新規的な研究を生み出すうえで重要であると考えています.そのうえで交流を提供できる場が少ないということは,若手の会としてもこれまで問題視してきました.
このような背景があり,若手の会は,夏学以外の全国的な研究交流の場を増やすべく「研究交流会」を年間を通して実施していく形となりました.
駆け出しとなる,第1回研究交流会は昨年の10月にオンライン開催し,27名の方に参加登録いただきました.研究交流会を立ち上げるにあたり,想定外の問題も多々あり,多くの反省点を参加者やスタッフよりいただきました.これらの解決案を講じ,第2回の開催に繋げていきました.
第2回生物物理若手の会研究交流会では,32名に参加登録いただきました.当日は学部生から研究員まで幅広い年代,国内国外,多様な研究分野と,様々なバックグラウンドの参加者の方々で賑わいました.
本研究会のプログラムは,「グループ別の研究交流(以後,グループ交流)」に加え,新たに「希望者による全体への研究発表(以後,全体発表)」を追加しました.全体発表では,分野の異なる4名に発表いただきました.また,グループ交流では,およそ30分ごとの席替えを2,3回行ないながら,5人程度のグループで,事前に用意いただいた自己紹介資料も交えつつ自由に交流をしていただきました.
全体発表で発表いただいた分野にも多様性があり,様々な視点からの質問が見られ,参加者にとって分野を越えた学びが得られたと思われます.また,参加者より「活発な議論ができた」,「参加者の研究内容が興味深かった」との声をいただき,参加後アンケートでは全員が満足いただけたという結果となりました.
一方で,「グループ交流の時間を調節した方が良い」,「グループへの移動の際に戸惑った」などの意見もいただきました.これらを元に,今後の研究交流会をさらに発展していければと思います.
【全体発表の発表者】
1.目黒瑛暉(名古屋大・M1)
「植物左右ねじれ伸長創発機構の解明」
2.武川祐一郎(北海道大・M1)
「phialotide A生合成に関与するトランスエノイル還元酵素PhiaBのX線結晶構造解析」
3.水野陽介(名古屋工業大・D1)
「赤外分光法を用いた光受容タンパク質の異様な光反応特性の解明」
4.藤井真子(神戸大・M2)
「Integrated model membrane arrays generated by self-spreading of lipid bilayers」
本研究交流会では,より多くの人が参加しやすいよう,参加のハードルを下げるために尽力しました.オンライン開催にすることで参加に伴う地理的,経済的な障壁を取り除きました.また,参加者の予定も考慮して途中入退室を許可する他,グループ交流の各グループにファシリテーターを配置することで,初めて参加する学部生などでも気軽に研究交流ができる環境を作りました.また,宣伝活動には力を入れ,若手の会公式のX(旧Twitter)アカウント2)を中心に,多くの人に認知していただこうと努めました.その1つの取り組みとして,本研究交流会の宣伝には生物物理らしさを意識したキャッチーなポスター(図2)を用いました.これらポスターを多くの方々に好評をいただき喜ばしかったです.
生物物理若手の会研究交流会の宣伝画像
本研究交流会は,近年の生物物理若手の会が抱える問題である「年間を通じた全国的な研究交流の場の少なさ」に対する解決の糸口となると期待されます.また,より多くの人に研究交流の機会を提供するため,若手の会は経済面,地理面,時間面といった研究交流会への参加に伴うあらゆる障壁を取り除くよう尽力しています.この多くの人を巻き込んだ研究交流の場づくりは,新たな研究を生み出すことに繋がるため重視すべきと考えます.
第2回研究交流会は,全国の若き研究者の交流の場づくりの良い駆け出しになったと考えています.これも参加者,スタッフの皆様の支えによるものだと思います.特に,スタッフの方々は開催や進行にあたり,各々の役割を迅速かつ完璧に果たしてくださいました.立ち上げの段階で,体制が十分に整っていない状況の本研究交流会は,彼ら無しでは成功しなかったと断言できます.是非とも彼らを賞賛いただければと思います.
今後も生物物理若手の会は,年間を通じて若き研究者を中心とした研究交流の機会を積極的に提供していく所存です.次回の第3回研究交流会は,日本生物物理学会よりサブグループ支援をいただける運びとなったため,参加者同士の交流をより活発にできるような仕掛けを作りたいと考えております.今年度中に開催予定ですので,少しでも興味がある方は是非ご参加ください.
我々と一緒に,生物物理の若手コミュニティを盛り上げていきましょう!
竹森健太(九州工業大・M1),目黒瑛暉(名古屋大・M1),柏原智香(京都大・D1),中村草平(九州大・M1),柴垣光希(北海道大・D1),武川祐一郎(北海道大・M1),千葉元太(東京大・M2),犬飼紫乃(名古屋工業大・D1),晏晞(京都大・D1),藤井真子(神戸大・M2),高橋大地(岡山大・PD)