Seibutsu Butsuri
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Perspective
Busan 2026: Our Next Challenge for International Cooperation
Satoshi TAKAHASHI
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2025 Volume 65 Issue 1 Pages 1

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研究の意義は何か,学会の役割は何かという問いについて書かせてください.最初の研究の意義は何かという問いについて,博士研究を開始した頃の私はシニカルに捉えていました.シトクロム酸化酵素のCuAサイトの共鳴ラマン散乱を計測できたとして,科学史上の大発見ではないかもしれないし,病気を治す役に立つとも思えない.研究にそれほど意義はないのかもしれない.まあ,実験は楽しいしそれでいいやと思っていました.

しかし,研究指導をいただいた方々や学生仲間との交流が深まり,また,世界の研究者による研究対象への挑戦の歴史を学ぶなかで,私の意見は次第に変化しました.博士2年生の頃には,シトクロム酸化酵素という単語を読むと,ワールブルグ,ケイリン,ギブソン,奥貫,ミッチェル,ウィックストローム,ブルノリ,折井,吉川,新澤,北川,小倉などの研究者と,彼らが生涯をかけた(かけている)プロジェクトの凄さや努力を想起するようになったのです.自らのテーマに対しても,実験が楽しいと思う以上のモチベーションが湧くようになりました.研究の意義や面白さは,成果のもたらす利益だけではなく,研究対象に取り組む研究者の努力や思い入れにより形作られるのではないでしょうか.

学会の役割は何かという問いに対しても,私は同様の意見を持っています.良い年会に参加できたと私が感じるのは,発表者が思わず吐露した思いや苦労を聞くことができた時や,シンポジウム企画などを一緒に負担することで,新しい研究者と友人になれた時が多かったと思います.学会の役割や使命は,研究者同士が成果を共有するだけではなく,研究に取り組む思いや情熱,人間性を伝え合う場であることではないかと思います.

IUPAB2024に続く次の国際化の挑戦として,日本生物物理学会は2026年の年会を韓国の釜山で開催する予定です.年会長は朴三用さん(横浜市大)に,さらに,初期準備メンバーを池口満徳さん(横浜市大)と李映昊さん(韓国基礎科学研究院)にお引き受けいただきました.朴さんのこれまでのご努力の結果,この年会は韓国の複数の関連学会との共同開催となる予定です.これまでに経験のない開催地で,未知の研究者と出会い友人となる機会として,Busan 2026は新鮮で楽しい学会になるだろうと思います.皆さんのご協力をどうぞよろしくお願いいたします.

 
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