2025 Volume 65 Issue 1 Pages 4-8
細胞膜には突起と陥入構造がある.細胞膜の突起および陥入構造は,アクチン細胞骨格とおよそ70種類のBARドメインスーパーファミリータンパク質による脂質膜の微細な鋳型によって造形される.陥入構造は切断され,エンドサイトーシス小胞となり,細胞突起は,切断され,細胞外小胞となる.

The plasma membrane has protrusions and invaginations. The protrusions are filopodia, lamellipodia, and so on, and the invaginations are clathrin-coated pits, caveolae, and so on. The specific shape of these membrane protrusions and invaginations are made by the actin cytoskeleton and the fine molds of the membrane, which are BAR domain superfamily proteins of ~70 members. The invaginations are cleaved off into intracellular vesicles for endocytosis. Because of the similar molecular architectures, the protrusions are cleaved off into extracellular vesicles in a reminiscent manner as the cleavage of the invagination into the endocytic vesicles.
細胞膜は,細胞の内と外を区切る脂質二重膜(脂質膜)である.細胞が数十マイクロメートルであるとすると,細胞膜には,サブミクロン-ミクロンスケールの,つまり,細胞のおおよそ1/100から1/1000の大きさに相当する,微細構造が多数見られる.これらの微細構造は,突起構造と陥入構造に分けられる.突起構造ではフィロポディア(糸状仮足)やラメリポディア(葉状仮足)などが,陥入構造ではクラスリンで被覆されたピット(クラスリン被覆小孔)やカベオラなどが代表的である.これらの陥入構造の多くは切断され細胞内の輸送小胞となる一方で,フィロポディアもまた切断されて細胞外小胞となる.
突起構造と陥入構造やこれらに由来する脂質膜小胞のほとんどの形成には,アクチン細胞骨格と,さまざまな脂質と相互作用するタンパク質が関与している.さまざまな突起構造と陥入構造は,ヒトにおいて~70種類存在することでさまざまな膜の曲率に対応する立体構造を持つBin-Amphiphysin-Rvs(BAR)ドメインスーパーファミリータンパク質によって説明できる1).
脂質膜は,両親媒性のリン脂質を中心として構成されている.流動モザイクモデルで示されるように,脂質分子は相互に連結していない.そのため,脂質膜の形態形成は主に脂質膜の裏打ちタンパク質によってなされる.
細胞膜の裏打ち構造は,電子顕微鏡観察によって明らかにされてきた.電子顕微鏡観察などで特徴的な観察像を示すクラスリン被覆小孔やカベオラなどは,それぞれクラスリンタンパク質やカベオリンタンパク質などの特有の形態形成タンパク質によって特徴づけられる.さらに,クラスリン被覆小孔やカベオラを含む大部分の細胞膜微細構造は,アクチン細胞骨格と連結している2).ところが,アクチン細胞骨格は,脂質膜やクラスリンやカベオリンには直接結合することができないので,介在するタンパク質が必要である.これらの介在するタンパク質には,脂質膜に直接結合するBARドメインを有するタンパク質や,Ezrin-Radixin-Moesin(ERM)タンパク質が代表的である.BARドメインを持つタンパク質は,アクチン繊維形成を制御するWASPやWAVEタンパク質と分子複合体を形成し3),クラスリン被覆小孔,カベオラ,フィロポディア,ラメリポディア,ファゴサイトーシスカップといった細胞膜の微細構造の構築に関与する.
最初に解析されたAmphiphysinのBARドメインの精製タンパク質は,試験管内で再構成リポソームをチューブ状に変化させる4).AmphiphysinのBARドメインの立体構造は,バナナ型(あるいは三日月型)であり,三日月のカーブ曲率が,BARドメインがチューブの表面に結合する場合のチューブの曲率に対応している(図1).

BARドメインのオリゴマー形成.BAR,F-BAR,I-BARドメインの二量体の立体構造と結合する脂質膜を上に示す.二量体のそれぞれの分子を青と緑で示す.下には,オリゴマー形成の模式図を示す.陥入膜でのBARおよびF-BARドメインは緑で,突出膜でのI-BARドメインは赤で,細胞質部分を黄色で示す.平面膜でのF-BARあるいはI-BARドメインは紫で示す.文献5より改変.
BARドメインに類似のアミノ酸配列を持つタンパク質ドメインには,FCH-BAR(F-BAR)あるいはExtended FCH(EFC)ドメイン,Inverse BAR(I-BAR)ドメインあるいはIRSp53-MIM-homology domain(IMD)がある.BARドメイン,F-BARドメイン,I-BARドメインを合わせて,BARドメインスーパーファミリーと呼ばれる.
CIP4やFBP17タンパク質のF-BARドメインの立体構造は,三日月型であるが,そのカーブ曲率は,AmphiphysinのBARドメインよりも緩やかである6).この曲率に対応して,これらのF-BARドメインが誘導する脂質膜チューブの曲率は緩やかで,形成されるチューブ直径は,AmphiphysinのBARドメインよりも大きい.これらのBARドメインやF-BARドメインの形成する再構成リポソームの脂質膜チューブは,細胞膜の陥入構造として観察される.
I-BARドメインは,逆三日月型,あるいはゼッペリン飛行船型,葉巻型と呼ばれる構造をとる7).このため,脂質膜チューブの表面に結合するBARドメインやF-BARドメインとは異なり,I-BARドメインはチューブの内腔に結合する.したがって,試験管内では球状の再構成リポソームの内腔にチューブを誘導し,これは細胞膜の突起に対応する(図1).
BARドメインは,このようにタンパク質立体構造に多様性があり,脂質膜に結合するタンパク質表面の曲率が,形成される脂質膜の形状に対応している.さまざまな曲率を持つBARドメインの中には,細胞突起と比べると比較的平坦な膜曲率を持つラメリポディアやファゴサイトーシスカップなどの膜構造に局在するものもある.平坦な曲率に対応する場合には,タンパク質の立体構造がより直線的であり,膜結合面の曲率が緩やかであることが多い.例えばGAS7タンパク質では,膜結合面は比較的直線的であり,ファゴサイトーシスカップに対応したオリゴマーを形成する8)(図1).
細胞を構成する脂質膜のうち,細胞膜からのエンドサイトーシス先であるエンドソームや細胞膜の脂質膜は,フォスファチジルセリン(PS)を含み,PSは負電荷を持つので,負に帯電している.一方,小胞体(ER)やゴルジ体などにはPSはそれほど含まれていない.細胞内のシグナルの活性化に伴って形成されるPIP2などのホスホイノシタイド(PIPx)は,フォスファチジルイノシトールのイノシトール基がリン酸化され,リン酸は負電荷を持つ.PIPxは細胞膜にも存在するので,PSとPIPxによって細胞膜は負電荷を帯びている.
BARドメインは二量体を形成し,二量体が機能ユニットである.その二量体タンパク質の表面には,リジンやアルギニンの偏在が見られる.リジンやアルギニンは,正電荷を持つことから,BARドメインの特定の表面は正電荷を帯びている.この正電荷を帯びた表面が,脂質膜に結合する表面である6),7)(図1).
Amphiphysin,エンドフィリン,SNXなどの一部のBARドメインスーパーファミリータンパク質は両親媒性ヘリックスや疎水性の脂質膜挿入ループさらにはphosphoinositide-binding phox homology(PX)ドメインなどを併せ持ち,BARドメインの電荷による相互作用と複合的に脂質膜と相互作用する9),10).
タンパク質1分子は,膜構造に比べると小さく,膜構造に対応する大きさの構造物を形成するためには,オリゴマーを形成する必要がある.BARドメインのオリゴマー形成は,試験管内では自発的にも生じる.一方で,細胞内ではBARドメインは,エンドサイトーシス小胞に変換される小孔や細胞突起などの特定の細胞構造構築に関与し,オリゴマー形成は制御されていると考えることができる.
BARドメインを持つタンパク質のほとんどは,SH3ドメインを持つ.SH3ドメインはプロリンを持つ配列に結合する.N-WASPなどには,ポリプロリン配列があり,複数のSH3ドメインが同時に結合できる11).したがって,多数のBARドメインを持つタンパク質が同時に結合する(多価相互作用)ことができる.このような多価相互作用は,細胞質中でタンパク質の相分離として表現される濃縮状態を形成する.多価相互作用による相分離では,例えばN-WASPとアダプタータンパク質Nckなどで見られるように,タンパク質同士の位置関係の振れ幅が大きい.ところが,BARドメインの形成する「らせん」や「リング」あるいは「シート」のような膜形態形成に必要と思われるオリゴマーの中では,BARドメインタンパク質の相対位置はタンパク質の立体構造により規定された「秩序だった」様式である.したがって,BARドメインは,ポリプロリンなどを介した多価相互作用によって濃縮することがきっかけとなり,秩序だったオリゴマー形成を開始すると考えられる.
この多価相互作用によるオリゴマー形成の開始機構の一つには,SH2ドメインとSH3ドメインを持つアダプタータンパク質とチロシンリン酸化受容体の結合により開始される,WASPファミリータンパク質やCdc42などの低分子量Gタンパク質とBARドメインを含むタンパク質の相互作用がある12).
BARドメインは,クラスリン,カベオラ,ファゴサイトーシスなどのエンドサイトーシスに関与している.これらのエンドサイトーシスはPIPxの産生と消失によって制御されている.エンドサイトーシスの開始には,エンドサイトーシスの対象物の分子認識も重要な役割を果たしている.クラスリンエンドサイトーシスにおいては,クラスリンのアダプターであるAP-2はEPS15タンパク質を介してF-BARドメインを持つFCHo1/2と結合する13).ユビキチン化などのエンドサイトーシスの目標を指標に,FCHo1/2が局在化することもある.FCHo1/2の形成する陥入は比較的大きく,エンドサイトーシス小胞へと切り出される前に,小さな直径に適したBARドメインに入れ替わる.
クラスリン非依存性のエンドサイトーシスでは,BARドメインを持つエンドフィリンのように受容体などのエンドサイトーシス基質と直接結合し,高速エンドフィリン依存性エンドサイトーシス(Fast-Endophilin-mediated endocytosis (FEME))が実行される場合もある14).
これらの膜陥入構造は,細胞骨格と連結したモータータンパク質による引っ張り力や,ひねり切る力を発生するダイナミンにより,小胞として切り出される15),16).BARドメインなどのタンパク質がオリゴマーとして形成した脂質膜の領域は,BARドメインと膜分子の結合により,膜の流動性が異なると考えられる.この脂質膜の物性の境目で切断が生じると考えられる(図2).

BARドメインの関与する細胞膜構造.BARドメインの関与する細胞膜構造をアクチン繊維とともに示す.文献5より改変.
カベオラは,エンドサイトーシスを担う構造と考えられるが,一方で,膜の表面積を増大させ,張力に応じて膜面積を拡大させるための緩衝作用を持つ折り畳み構造でもある.カベオラ形成には,F-BARドメインを持つPACSIN2やPACSIN3が関与している17).
ファゴサイトーシスは,クラスリン依存性エンドサイトーシス,カベオラ依存性エンドサイトーシス,FEMEなどよりも,大きな病原体などを含む構造を取り込む.ファゴサイトーシスは,後述する細胞突起のうちラメリポディアと類似のカップ状の構造である.脂質膜の曲率は,タンパク質の大きさを考えるとほぼ平面である.ファゴサイトーシスカップには平面状のオリゴマーを形成できるF-BARドメインを持つGAS7タンパク質が関与する8).
これらのエンドサイトーシスを経て,細胞内に輸送小胞が形成される.エンドサイトーシス後は,まずエンドソームに輸送される.エンドソームとエンドサイトーシス小胞は融合し,エンドソーム内腔にエンドサイトーシス小胞の内容物が放出される.この状態では,膜貫通タンパク質の細胞質側は細胞質に露出したままである.エンドソームの陥入が生じ,エンドソームの内腔に隔離小胞あるいはエンドソーム内腔小胞(Intraluminal vesicle: ILV)が形成される.一方で,エンドソームは,細胞膜へリサイクルする輸送などを担う小胞も形成する.そのような小胞はSNXなどのBARドメインを持つタンパク質によって形成される10).
針のようなフィロポディアは,I-BARドメインに対応した構造である.フィロポディアの長さは,数マイクロメートルである.一方で,ウイルスの出芽などに関与する出芽構造は,数百ナノメートルの長さ(突出)であるが,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のようにI-BARドメインを持つタンパク質に依存する場合がある18).
上皮細胞などには,頂端面(アピカル面)の長い突起である微絨毛,また,神経細胞にはスパインやシナプスなどの特徴的な突起構造もある.これらの構造にはI-BARドメインを持つタンパク質が関与していることが多い.
ラメリポディアはフィロポディアと比べ比較的平坦な扇型構造である.ところがI-BARドメインを持つタンパク質やF-BARドメインを持つタンパク質が局在する.F-BARドメインを持つタンパク質では,GAS7のように平面膜に適したオリゴマーになるような立体構造を持っているものがある.一方で,FBP17やCIP4などの立体構造は膜チューブ構造,すなわち,エンドサイトーシスの関与を示し,実際FBP17やCIP4はエンドサイトーシスに関与するが,ラメリポディアにも局在する.その際には,オリゴマーを形成せずに局在するか,あるいは,オリゴマーを形成しつつも,膜結合面を少しずらす形で,平面膜に局在することも考えられている.I-BARドメインも同様に,膜結合面がずれ,平坦な膜に適合している可能性がある8),19).
これらの細胞膜の突起や陥入構造は,BARドメインによる膜の形態形成と呼応してアクチン繊維が形成されることで力学的に安定な構造となる.突起構造を形成するアクチン繊維は,WASPやWAVEとその下流のArp2/3複合体によって形成される20).I-BARドメインを持つタンパク質の関与する細胞突起は,細胞運動のための突出膜構造であるという理解が一般的である21)が,細胞間の情報伝達も担う.
細胞突起の先端には,アクチン繊維によって満たされていないが,I-BARドメインを含むタンパク質が存在する領域がある22),23).このような突起の内部構造の不連続性は,細胞突起の切断を促す.例えば,細胞間の接着がずれる場合や,細胞間の液体が流れることで細胞外から力が加わった場合,細胞突起の先端が切断され,細胞外小胞となる.この切断は,毛細血管にかかる程度の圧力で十分である24).また細胞突起に存在するミオシンが関与している可能性も高い.細胞突起の切断による細胞外小胞形成は,I-BARドメインの関与するフィロポディアと微絨毛で見られる24),25)(図2).
フィロポディアの細胞間情報伝達への関与は,細胞外小胞以外にも報告されている.サイトネーム(Cytoneme)は,細胞突起であり,ほぼフィロポディアと同一の分子から構成される.サイトネーム/フィロポディアは,隣接細胞に接着し,その後に先端を切り離して,細胞間の物質輸送を行う26).トンネリングナノチューブ(Tunneling Nano-tube(TNT))は,細胞突起の先端が隣接細胞に接着する点ではサイトネームと同一であるが,その後,突起の先端が融合し,二つの細胞質が直接連絡する27)(図3).TNTにもI-BARドメインを持つタンパク質が関与する28).

細胞外小胞,細胞突起,サイトネーム,トンネリングナノチューブ.細胞外小胞のうち,エンドソーム由来のエクソソームと細胞膜由来のマイクロベシクル/エクトソームの形成と,受容細胞への物質伝達の様子を模式的に示す.さらに,フィロポディア/サイトネームおよびトンネリングナノチューブによる物質輸送の様子も示す.文献27より改変.
細胞外小胞の起源としては,上記に述べた細胞膜の突起構造以外にも,エンドソーム内腔小胞が,エンドソームと細胞膜の融合により放出されること,また,細胞死による細胞の断片化もある.上記で述べた細胞膜由来の細胞外小胞は,まとめてマイクロベシクルあるいはエクトソーム(Ectosome)と呼ばれ,エンドソーム由来の細胞外小胞を,エクソソーム(Exosome)と呼ぶ(図3).両者を含むすべての細胞外小胞をまとめて細胞外小胞と呼ぶことが,細胞外小胞学会などにより提案されている.従来の研究では,エンドソーム由来のエクソソームが注目されてきたが,細胞突起および細胞膜由来のエクトソームがより重要な役割を担っている可能性がある29).
BARドメインによる膜構造構築は,細胞膜などの脂質の持つ負電荷とタンパク質の正電荷との相互作用に加えてタンパク質の立体構造に依存したオリゴマー形成による.この形成機構は,脂質膜の変形だけではなく,その小胞化にも関与している.その結果,細胞内のエンドサイトーシス小胞などの輸送小胞と細胞外の細胞外小胞が形成される.