抄録
高橋安人による制御理論の書籍「システムと制御」(1968年)の第1章第1節には,制御理論におけるシステムの認知について,他のほぼ全ての書籍に類を見ない特異な表記がある.他の書籍に見られないことに照らせば,この特異な表記が制御理論の基礎を学習し実用するにあたり必要ではないかあるいは学習し実用するにあたり妨げとなるということが通常の考え方であろう.では,なぜ高橋は当該の表記をあえて示したのか.本稿においては,高橋の経歴,当該の表記,および他の著作から,システムの認知に関するこの特異な表記があえて示された理由とその意義に考察を加えた.