佛教文化学会紀要
Online ISSN : 2186-3253
Print ISSN : 0919-6943
ISSN-L : 0919-6943
研究発表
『刓謗録』と『刓謗評破論』について
星 俊明
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 2019 巻 28 号 p. 79-93

詳細
抄録

江戸時代、浄土宗と真宗(一向宗)の間では盛んな教義論争が行われてきた。先行研究においては慶安元年(1648年)の『聖徳太子日本国未来記』をめぐる論争、または寛文元年の『親鸞邪義決』をめぐる論争が、その始まりとみなされている。しかしこの二つの論争は、浄土宗側とされている史料が匿名の著述であり立場を明らかにしていないことと、内容的にも浄土宗のものとは断定し得ないことから、論争史の起点に置くことには問題があるのではないかと考えられる。
 上記の論争に次いで発生が早いものに、寛文四年(1664年)真宗の市隠子による『刓謗録』と、寛文七年(1667年)に浄土宗の匿名僧による反駁書『刓謗評破論』の論争がある。この論争は従来の研究史ではほとんど注目されてこなかったが、明確に浄土宗と真宗の間で論争が行われているものとしては最初期のものであるといえる。本論はこの『刓謗録』及び『刓謗評破論』について考察を行うものである。

著者関連情報
© 2019 佛教文化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top