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ヨウ化メチル系薬剤による生物標本の最適燻蒸条件の検討
小菅 桂子秋山 弘之田口 信洋
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2005 年 5 巻 1 号 p. 21-32

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抄録
生物系標本の燻蒸剤として従来使用されてきた臭化メチルが2005年に使用禁止となる.これに備えて我々は代替燻蒸剤のヨウ化メチルにおける標本DNAへの影響評価を行ってきた.本論文では薬剤濃度,燻蒸温度と時間を変化させた7条件で乾燥標本をヨウ化メチル燻蒸し,標本DNAへの影響がより少なく,標本管理に適した燻蒸条件を検討し,以下の結果をえた. 1)標本DNAへの主な影響は,ヨウ化メチル燻蒸により変性したタンパク質が高分子DNAの抽出を妨害することである.従って,燻蒸標本から高分子DNAを効率よく精製するには,抽出液にタンパク質分解酵素を加えることやクロロフォルム抽出を行うことが最適である. 2)殺徴効果100%条件下での48時間燻蒸を除けば,標本DNAの切断は顕著でない.また,葉緑体と核遺伝子のPCR増幅では,全ての条件で1,000塩基以上のDNA断片が得られた. 3) DNAへの影響を考慮し,殺徴効果100%が必要な場合は薬剤濃度40g/m^3・25℃・24時間燻蒸,殺虫・殺卵のみが必要な場合は薬剤濃度20-40g/m^3・10℃・24時間燻蒸が適している.
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© 2005 日本植物分類学会
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