植物分類,地理
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東亜羊歯植物考察3 : 摘要
田川 基二
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1932 年 1 巻 4 号 p. 306-313

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抄録

ホソバショリマ Dryopteris Beddomei O. KUNTZE. 本種は南印度,セイロン,ジャバ,フィリッピン,南支那,臺灣に知られて居たが肥前國藤津郡多良村,對馬國琴村にも産することを知つた.ハシゴシダの羽片が下方に漸次縮小したやうなもの.緒方正賛氏の圖集第4卷第167圖を参照されよ. カラフトメンマ Dryopteris crassirhizoma NAKAI var. setosa MIYABE & KUDO. ヲシダの羽片裂片が鋸齒〓乃至稍缺刻状鋸齒〓になつたもので,葉色も遙に美しい〓色のものである.從來樺太の特産と思はれてゐたが,今夏私はこれを甲斐國白根山北嶽に發見した.本州には新發見か. オホカウモリシダ (新稱) Dryopteris cuspidata CHRIST. カウモリシダ Dryopteris triphylla C. CHR. に似て遙に大形,尾状鋭尖頭の羽片が,五六對もあるもので,脈序にも差異を認る.ヒマラヤ,ジャバ.フィリッピン等に産するものであるが,土井美夫氏は西表島に,小泉博士は沖縄國頭郡佐手に採集された.但し模範型に比するに,葉片並に羽片は頗る小く,且つareola の数も少い.多分最小の一型で,變種とする程のものでもあるまい.本邦には新發見の一種であるから,次に簡單に記載しやう.根莖は匍匐,黒色.葉柄は25-35cm. 剛強,褐色,基脚黒色.葉片は25-38 ×10-15cm. 奇数羽状複生,上部羽片の腋には珠芽のあることもある.羽片は4-6對,疎在,斜上開出,短柄又は無柄,楕圓状披針形,8-12×2-2.5cm. 尾状鋭尖頭,通常尖端部稍刀状,楔脚,殆ど全〓,稍革質,羽軸及び兩面共に無毛,上面暗〓色,遊離細脈の先端部は上面に於て白色乃至稍帶赤色の斑點をなす.側脈は顯著脈間隙は中肋邊〓間に5-7,各嚢堆を有しない遊離小脈を入れる.嚢堆は圓形乃至長楕圓形,側脈間に2列,對をなす嚢堆は多く連續する.

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© 1932 日本植物分類学会
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