植物分類,地理
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日本産菊科新植物VII.
北村 四郎
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1934 年 3 巻 2 号 p. 97-111

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抄録

ユキヨモギ(Artemisia Momiyamae KITAMURA). 同好の友人籾山泰一氏は小生の願ひをかなえて,この珍種を送つて下さつた.從來のヨモギ群のもので,葉は上面にも白柔毛があつて,頭花は筒状4粍,長1.5粍幅の小さいもの,これが非常に澤山につく.相模,稲村ケ崎の産. ウスバヨモギ(Artemisia debilis KITAMURA). 珍種,葉は有柄二回羽状中裂,両面とも白柔毛がなく,緑色薄質,頭花は少なく大きく球形である.小泉源一博士の朝鮮智異山で採集されたものである. タイトウヤマヂノギク(Aster altaicus WILLD.) 從來我が國では Aster altaicus WILLD. が産する樣に考へられてゐたが,私はアルタイ地方の本場の Aster altaicus WILLD. を昨年ロシヤのトムスク大學から送つてもらつた.驚いた事には我が國のヤマヂノギクとは全く異なり葉は非常に細く針金の如く,びつしり短毛が生えてこれこそ私が先年台灣の台東ヒナン大溪のガラガラの河原で採集し,タイトウヤマヂノギク(Aster altaicus var. taitoensis KITAM.)なる學名を附したのと同じである.不明を謝し訂正する.この植物は沙漠の植物で滿州里で佐藤潤平氏の採集されたものが北の方では分布の東限である.蒙古にもある. コウライヤマヂノギク(Aster ciliosa KITAMURA). 上述の理由に依り朝鮮のヤマヂノギクに新學名を附する.尚本州でヤマヂノギクと云われてゐる者の中には Heteropappus 屬の邊花の冠毛が祖先返りで一部延長したものも入つてゐるがこの場合は延長したと云つても非常に發達が悪く,これは Heteropappus 屬に入るべきである.朝鮮には上述の如きでない Aster ciliosa KITAMURA を産する.内地のヤマヂノギクに就いては今後の研究が必要である.尚筆者には草木圖説のヤマヂノギクの圖は Heteropappus hispidus LESS. の樣にも思える. バンヂンガンクビサウ(Carpesium Hosokawae KITAM.) ホソバガンクビサウに似てゐるが頭花小さく花梗長く,葉は小さく質硬く毛多き点で異なる,台灣の山地處々に生ずる.細川隆英氏の下さつた標品から出た新種.

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© 1934 日本植物分類学会
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