植物分類,地理
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ヒルギモドキ属(シクンシ科)の花の内部形態
福岡 誠行伊藤 元己岩槻 邦男
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1986 年 37 巻 1-3 号 p. 69-81

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抄録

シクンシ科Combretaceaeは主に熱帯・亜熱帯に分布し,20属450種からなる。この内ヒルギモドキ属LumnitzeraとLaguncularia属がマングローブに生育する。TIAGIはシクンシ科の4属7種について花の内部形態を観察し,この科の頂生胎座型は多数の胚珠をもった側膜胎座型から由来したと考えた。胎座が側膜状となるのでこの考えに賛成である。然し彼はコバテイシTerminalia catappaの子房壁における水平に分枝される短い管束の枝を消失した胚珠へ入る管束の痕跡とみなしているが,この解釈には無理がある。VENKATESWARLU&RAOはヒルギモドキ属2種を含む10属20種の花の内部形態を報告した。彼らはヒルギモドキ属が総状花序で,花は花冠があり,がく片が3管束性で,花盤が多数の管束を受け,雌ずいが8心皮性であることから,シクンシ科の中で最も原始的であるとした。しかし小苞は子房に強く合着し,花盤は下位子房に埋没した特殊な型であり,雄ずいの退化もみられる。シクンシ科は花の管束走向行からヒルギモドキ属にみられるような,子房壁の管束が27〜60本と数が多い群と,子房壁に5本の管束がある群に分けられる。一方は分裂により増数し,他方は合着により減数したと考えられる。マングローブといった特殊な環境に生えるヒルギモドキ属が原始的であるとは考えにくい。むしろ花の管束走行から推測できるように,ヒルギモドキ属とその他の群はそれぞれ特殊化し,これら2群は分類学的に疎遠な関係にあると考えられる。

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© 1986 日本植物分類学会
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