植物分類,地理
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タイ国産キク科植物の分類学的研究8.
小山 博滋
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1988 年 39 巻 4-6 号 p. 151-163

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抄録

本誌37巻で発表したサワギク族tribe Senecioneaeの続きである。サンシチソウ属Gynuraは旧世界の熱帯から亜熱帯にかけて,100余種が分布するとされているが,その実態は未だ十分把握されていない。F. G. DAVIES(1978)によって,東アジアとヒマラヤ産のものが検討されているが,納得できない部分も多い。タイ国の野外で見る限り,多くの種は大きな群落を作らず,個体数も少ない。こゝに記載した新種G. hmopengensisも数個体が滝近くの岩の上に生育していたにすぎない。盤状に発達した根際に多くの芽が形成されていた。(1月15日)。これらの芽が5月まで続く乾期の間に発達するとは考えにくい。果実の稔性も不明である。今後の調査で第二・第三の生育地が発見されることを期待しい。葉身と葉柄が明瞭に区別されること,頭花の基部に苞がないこと,花糸上部が肥厚しないこと,小形の結晶が子房壁に見られることなどの特徴によりサワギク属から区別されたシノセシオ属Sinosenecioには中国中南部を中心に31種あるとされる。全種が中国国内に分布し,うち3種だけが隣国でも見られるという。タイ国ではビルマやベトナムにも見られるS. oldhamianusだけが採集されている。Senecio subg. Synotis C. B. CLARKEの一部の節を除いて独立属とされたシノーティス属Synotisは中国中・西部からヒマラヤにかけて分布し,約50種からなるという。タイ国には4種ある。このうちの1種S. phupeakensisはS.auriculataやS. triligulataに似るが,頭花が大きく,葉柄基部の葉片が耳状に大きく発達するなどの特徴で区別できる新種である。Cissampelopsis(37巻に収録),SinosenecioやSynotisなどを除かれたSenecioはそれでも約1000種からなる大きな植物群で,全世界に広く分布するという。このように種数が多い上に,全世界に広く分布する植物群(属)の全体増にはまだまだ不明な点が多い。ここでは7種を記録した。このうちの2種はタイ国からの新記録で,他の2種は新種である。チェンマイ県の南部に広がる標高約1000mのBo Luang台地で採集されたS. bolungensisは一見S. obtusatusに似るが,頭花が大きく,小花の各部のサイズ比が全く異なるなどの点で区別される。ナムナオ国立公園の山頂部に広がる草原で採集され,新種としたS. namnaoensisは普通花をつける茎と花をつけない茎の2本立ちとなる。いずれの茎も茎葉を数枚から十数枚互生するが,前者は葉が狭披針形で,茎高が200cmに達するが,後者は葉が広披針形で茎高が80cmどまりである。

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© 1988 日本植物分類学会
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