植物分類,地理
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東亜植物考察11
大井 次三郎
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1935 年 4 巻 1 号 p. 30-34

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抄録

183) アヲコヌカグサ 臺灣の山地にコゴメイチゴによく似て全形が稍細く第一苞穎の小形のものがある.此の第一苞穎の小形な點から比律賓で記載された Anisolytron agrostoides MERR. に相當するがそれよりは全形が大形であるので變種とする.Anisolytron MERR. と云ふ屬はヒロハコヌカグサ屬とは第一苞穎が甚だ退化して居ると云ふだけの事しか違はず.臺灣の此の變種では多少伸長して居る塲合もあるので同じ屬のものと考へる.Hitchcock も最近同じ樣な意見を發表した. 184) ハヒチゴササ ハヒチゴササに Isachne Myosotis NEES. をあてるのは正しくない.ハヒチゴザサは後者に比して全形が小形で.葉が薄く.花序の枝は糸状で,苞穎は上部にだけ毛がある違つたものであるから Isachne nipponensis OHWI と新稱する.本州の中南部.四國.九州.朝鮮南部等に分布して居るが.支那にも期待の出來る種類である.紀州新宮産のものを Type に撰定した. 185) ヌカボガヤ 朝鮮西北部及び滿洲の産.全形はヌカボに似た所があつて花は小穗に数個を着けるので一見區別が出來る.歐洲産の Puccincllia distans PARL. に類縁關係のある植物で從來 Atropis distans GRISEB. や Puccinellia distans PARL. var. convoluta HONDA. 等と呼ばれて居たものの一部分である. 186) アヲヌカボガヤ 此も前種と同じ屬のもので全形もよく似て居る.小穗は緑色である.滿洲の大連で以前小林勝氏が採集されたのが Type である.

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© 1935 日本植物分類学会
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