植物分類,地理
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本州中部産リンドウ属の新種
米澤 信道
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1989 年 40 巻 1-4 号 p. 7-11

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抄録

筆者は,1980年8月,山梨県の北岳にて,明らかに未記載とみなされるリンドウ属の植物を発見した。その後,1985年9月,最初の発見地とは別地点で,群生する本植物を再発見し,豊富な標本資料を得ることが出来た。併せて筆者は,1985年4月~1986年3月の間,京都大学理学部植物学教室研修員として,河野昭一教授の指導の下で,日本産リンドウ属リンドウ節について,別稿の共同研究を行った。その結果,最終的に,この北岳産リンドウ属植物を新種と認識するに至った。日本産リンドウ属リンドウ節(Sect. Pneumonanthe)には,リンドウ,アサマリンドウ,エゾリンドウ,オヤマリンドウの4種が知られているが,キタダケリンドウは,花冠副片の傾きが急で1-2のやや目立つ三角形の小片があり,葉の裏面が淡緑色で縁が多少細波状となるなどの点で,エゾリンドウやオヤマリンドウよりリンドウ・アサマリンドウにより近縁であると思われる。しかし,リンドウとは,萼裂片が葉状で広皮針形,二大三小となり,花期に直立すること,根茎が肥厚し,前年以前の茎の痕跡が密にありくびれないなどの点で異なり,アサマリンドウとは,前記の形質の外に,葉柄がなく,葉縁に小突起があるなどの点で異なっている。キタダケリンドウの生育地は,北岳の亜高山帯上部のダケカンバがまばらに生える草原で(稀に砂礫が露出したところ),付近には,オガラバナ,ムシカリなどの低木,草本ではトリアシシュウマ,ホタルサイコ,オオバセンキュウ,ミヤマセンキュウ,オオカサモチ,ミヤマカラマツ,ミヤマタニタデ,グンナイフウロ,ハクサンフウロ,センジュガンピ,レイジンソウ,ミヤマハナシノブ,ヤマホタルブクロ,ソバナ,キタダケオドリコソウ,クガイソウ,トモエシオガマ,オヤマボクチ,ヤマハハコ,トネアザミ,タカネヒゴタイ,ミヤマアキノキリンソウなどが生育する。

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© 1989 日本植物分類学会
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