抄録
本研究の目的は、看護婦学校への進路選択と進路指導の実態が看護学生の職業的同一性形成に及ぼす影響を明らかにするとともに、看護職を志す生徒への進路指導のあり方を検討することである。看護学生1,057名を対象として、自作の職業的同一性地位テストならびに進路選択・進路指導の実態に関する質問紙法による調査を行い、788名(74.6%)の有効回答を得た。その結果、看護婦学校進学のための進路指導は十分に行われていない実態にあった。職業的同一性形成は進学決定時期によって強く影響を受けていた。進路決定の時期が小・中学校あるいは高校在学中であったものは、高校卒業直後あるいは看護婦学校入学直前のものより職業的同一性達成が高かった。また職業的同一性早期完了についても決定時期が早いほどその得点が高かった。職業的同一性拡散については高校3年以後に決定したものは、小学校時に決定したものより拡散得点が高かった。職業的同一性形成の規定因としては、「自分に向いた仕事がもっと他にあるのではないか」という進路決定上の迷い、「他に進む道が見つけられなくて」という消極的な進学動機、「一生役立つ知識・技術の習得のため」や「自己の興味・適性からみて」看護婦学校進学を決めたという積極的な進学動機、「小さいころからあこがれて」看護婦学校入学を決定したことなどが主要な規定因として認められた。以上の結果から、進路指導の時期、方法に関してのいくつかの示唆を得ることができた。