Chem-Bio Informatics Journal
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抗体精製における溶出プロファイルの制御を目的としたプロテインAの論理的設計および改変
吉田 慎一村田 大平良 俊一井口 恵太高野 昌行中野 喜之水口 和信
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2012 年 12 巻 p. 1-13

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抄録

医薬用モノクローナル抗体は、その三次元立体構造が似ているにもかかわらず、プロテインAクロマトグラフィー(医薬用抗体の精製プロセスにおける標準的なアフィニティー精製手法)の溶出ステップにおいて異なる挙動を示す。特に、従来型のプロテインAとVH3型(VH遺伝子ファミリー)抗体の可変領域との相互作用が抗体溶出特性に悪影響を与えることがよく知られている。その相互作用がプロテインAへの変異G29Aの導入によって低減されることも明らかになっていたが、その効果は常に十分とは言えない。我々は、三次元立体構造に基づいた計算化学での評価によって、新たな変異(S33EおよびD36R)を設計した。これらの変異は、抗体の可変領域との相互作用の消失だけではなく、プロテインA担体の効果的な洗浄に要求されるアルカリへの耐性を維持することも意図して設計された。次に、優れた特性を有するCドメインのG29A変異体をモデル・タンパク質としたin vitro実験によって、設計した変異の効果を検証した。ビアコア実験によって、変異体がVH3型抗体の可変領域への結合を示さないことを確認した。また、変異体を固定化した担体を用いたクロマト実験によって、VH3型抗体の溶出プロファイルが実際に改善されること、および、アルカリ耐性が維持されていることを確認した。このように抗体の可変領域への結合力を消失させたプロテインAリガンドは、例えば、抗体酵素消化反応物からのFab断片の分離精製を可能とする。このような計算化学による論理的変異設計は、タンパク質リガンド改変の効率化を可能とするだろう。

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2012 Chem-Bio Informatics Society
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