1971 年 11 巻 2 号 p. 59-65
母体マウスの年令または体重が,妊娠中に薬物を投与することにより,その胎仔に如何なる障害があるかを副腎皮質ホルモンを用いて調査した.生後4週令より75週令迄の間の未経産ICR-JCL系マウスを妊娠させ,その11日より14日までの関連続4日間,prednisoloneのCMC懸濁液を25mg/kgの割合で背部皮下に注射し,妊娠末期に開腹し胎仔を観察した.なおCMC懸濁液で同様に処理したものを対照例とした.その成績の大要はつぎのようである.1)各年令群における死亡胎仔の頻度を対照例と実験例とで比較したところ52-75週令群では有意の差はなく,他の年令群では実験例で高かった.2)胎仔の死亡率の年令による推移については対照例と実験例は,ほば同様であった.3)実験例における生任中の口蓋裂の発生率は23週令まではほぼ一定でありこれより高年令になるにしたがい減少した.4)各年令群における母獣の体重と口蓋裂の発生率との関係を求めたところ,相関関係はなかった.5)平均生存胎行数と口蓋裂の発生率との関係を各年令群について求めたところ,いずれにおいても両者問の相関関係はみとめられなかった.6)各年令群とも生存胎仔の体重は常に実験例では対照例より優っていた.