1974 年 14 巻 2 号 p. 85-94
ヒキガエル幼生を肢芽期初期より30±1℃の高温で飼育すると、種々の欠損的な趾奇形が生ずるが、この場合の臨界期は肢芽期にあるとみなされる(Muto、1969 a、b、1971 b)。ところがこのたびヒキガエル幼生を上記の臨界期後である足板期より33±1℃の高温で飼育したところ、以前にみられたものとは異なる型の足異常が生ずることがわかった。このような異常のうち最も顕著なものは第1、2趾の合趾であったが、これはただ1例を除きすべて所謂軟組織ゆ合で、骨のゆ合はみられなかった。なお1例の硬組織合趾(骨合趾)の場合にも、中足骨のゆ合はみられず、第1、2趾の趾骨だけが互にゆ合していた。以前にみられた欠趾や合趾では、中足骨の欠損、発育不全、ゆ合などがしばしばみられ、これが欠損的な趾奇形成立の重要な要因をなしているとみたされたが、このたびの合趾にはこのような中足骨の異常がみられないのは特異であった。つぎに趾骨数不足がしばしばみられたが、これは第3-5趾にだけみられ、第1、2趾には全くみられなかった。この点も以前と異なる特異なところであった。以前には欠損的た趾奇形成立の要因として肢芽における細胞分裂率の低下による予定骨格中胚葉の量の不足が考えられたが、このたびの足異常はこのようなものとは異なった機構により生じたものでないかと思われる。なお蹠外側部の突出がしばしばみられたが、これは第5中足骨の内方への屈曲によるものであることがわかった。