抄録
ddN系およびCF#1系マウスとWistar系ラットの幼若胚の正常な発生進度を器官形成期における各種器官の出現時期を指標として観察した結果,それぞれの系統について発生段階の差がみとめられた.CF#1系はddN系に比較して約1/2日の差で先行し,ラットは約1日の遅れを示す.従来の多くの研究において実験結果のバラツキは系統差あるいは種族差として説明されてきたが,このうちには真の系統差あるいは種族差と単なる発生進度の差によるものとが重複していると考えられる.この両者を明瞭に区別する必要があろう.稿を終るにあたり,発表の機会を与えていただいたバイエル薬品株式会社副社長,オットー・ルーデシャー博士,および御助言,御指導を賜わり,また本稿の御校閲にあたられた名古屋大学環境医学研究所村上氏廣教授に深甚なる謝意を表わしたい.