CHEMOTHERAPY
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コバルトプ口卜ポルフィリン錯塩の悪性腫瘍に対する治療的応用 特に実験腫瘍への親和性について
高橋 正宜山本 野実浦部 幹雄
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1962 年 10 巻 1 号 p. 82-87

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抄録
1958年以来ヘマトポルフィリン水銀塩の制癌効果は,それを考案した飯島らをはじめ多数の臨床的及び基礎的蘇究の報告がなされている。
飯島らは担癌動物の肝に於ける著明な肝カタラーゼ活性の低下,銅第1分劃の上昇,フリーポルフィリン増加及び金属ポルフィリン減少などが所謂腫瘍物質によつて惹起されると思われる事実から,抗トキソホルモン作用を有する物質をもつて癌治療に応用しようとしてヘマトポルフィリン水銀を取り上げたことは,腫瘍細胞を直接攻撃する従来の抗癌剤と全く異つた観点に立つ点で極めて意義深いものがある。神前も癌患者の尿中ポルフィリン排泄量の増加,血中ポルフィリン量の上昇に注日し,癌に於てポルフイリン体平衡は金属ポルフィリンを減少させる状態にあるといい,ポルフィリン体分布の異常は癌発生の 1次的要因の 1つではないかと想定した。
我々も之等の説を継承する立場に於てヘマトポルフィリンの換りに生体内ポルフィリン体の 1つであるプロトポルフィリンのコパルト錯塩について癌の治療的応用を試みようとするものである。而して細胞内酸化触媒作用として重要な金属ポルフィリンのうち,最も安定な金属ポルフィリンであり且細胞内酸化の作用の顕著とされるコパルトポルフィリン体を選び,光感作用のないプロトポルフィリンの金属錯塩として使用した。他方,ポルフィリン体が癌治療物質として利用の端緒をなしたのはAULER,FIGGEらの云うポルフィリン体の新生腫蕩組織に対する親和性の問題である。即ち FIGGEらは動物の自然発生及び移植癌組織にポルフィリン体及び金属ポルフィリン体の蓄積を蛍光によつて確認している。今回はコバルトプ口卜ポルフィリンの治療的応用を検討するに先立ち動物移植癌に対する親和性について得た成績を報告する。
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© 社団法人日本化学療法学会
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