抄録
新しいCephalosporin系抗生物質Cefuroximeに関する細菌学的評価を既知のCephalothinとCefazolinを比較薬として検討し, 次のような成績を得た。
1. CefuroximeはCephalothin、Cefazolinと同様にグラム陽性菌、陰性菌に幅広い抗菌スペクトラムを有し, その抗菌力は特にグラム陰性菌においてすぐれていた。
2. 臨床分離株に対する感受性分布を検討した結果, ブドウ球菌ではCephalothinが良好な感受性を示したが, indole陽性の変形菌を含むグラム陰性菌に対してはCefuroximeが良好な成績を示した。
3. 抗菌力に及ぼす諸因子の影響を検討した結果, グラム陰性菌を用いた場合にCephalothin, Cefaz01inでは酸性側で, Cefuroximeではアルカリ側で抗菌力の増強を認めた。
4. 大腸菌, 肺炎桿菌の増殖曲線に及ぼす影響を殺菌作用の面から検討した。3薬とも薬物濃度に応じた殺菌作用を認めることができたが, 肺炎桿菌を用いた場合, 短時間内における殺菌率に差が認められた。
5. マウスにおける血清中および臓器内濃度を検討したところCefuroximeの各臓器における濃度は15分にピークが存在し, 腎, 肝, 血清, 肺, 脾の順であった。
6. マウス実験的感染症に対する治療効果は肺炎球菌, 大腸菌, 肺炎桿菌などいずれの菌株を用いた場合にもCefuroximeの効果が他の2薬よりすぐれていた。特にCephalothin, Cefazolin感受性株を用いた場合より, それら耐性株を用いた場合にその差が顕著であった。